2人の絶叫だけが長門の部屋に残り、俺たちは奈落の底に落ちていった
永遠とも思える落下の後、ドスンと落ちた俺は腰を打ちつけていた
しかし思ったほど衝撃は少ない
やれやれと思って立ち上がろうとしたら、上からハルヒが落ちてきた
ぐえっ

「アイタタタ・・・・・・」

おいハルヒ、早く下りてくれ。かなり重いぞお前

「ハァ?女子に向かって重いだって? あんた、全地球人類を敵に回すつもり?
 それとも何よ、あたしが重いって言うの? 重い女は嫌いって事?」

いやハルヒさん
それとこれとは別でしょう
ただ上から落ちてきただけですから

「やっぱちょっとダイエットすべきかなー。あたしさー、最近もしかしたらみくるちゃんより重いかも知れないのよね
 ねえキョン、どう思う? あたしもうちょっと痩せた方がいいの?まあ・・・あんたがそう言うんなら、頑張ってみないこともないけどさ」

ハルヒ頼む
悩み事はとりあえず俺の上から下りてからにしてくれ。じゃないとお前のいい匂いで卒倒しそうだ

「ふふーん、キョン
 あんたもだいぶ正直に物が言えるようになってきたわね
 団長として嬉しいわよ。やっとあんたが真人間になりつつあると思うとね」

ああ
もう好きに言ってくれ。こうやってるのも悪くない気分だけど今はそんな場合じゃないだろ

「分かってるわよもう」

ハルヒは俺の上から飛び降りて制服のスカートを直した

「ねえ。見てキョン!あれ!」

ハルヒが指さす方向には何人かの男女が見えた
もちろんすぐに正体は分かる。SOS団と佐々木の1派が争っているのだ

「行くわよキョン!急いで!」

ハルヒは猛ダッシュで駆け出し、俺は慌てて後を追いかけた。30秒ほど走ってかなり近づいた

「有希!今助けるからね!」

そう叫んで走り寄ったハルヒの体は、ゴーンという音を立ててまたもや跳ね返された

ハルヒ大丈夫か?吹っ飛んできたハルヒを危うく受け止め、そっと横たえた

「いったぁーっ・・・」

鼻を押さえてうずくまるハルヒを抱きかかえながら俺はあらためて、自分が来た世界を眺めた

空にはまばゆいばかりの星空がきらめき、地面は真っ黒で何も起伏がない
明らかに地球人の常識からはかけ離れた場所だ

ここから15メートルほど離れた場所で戦う者たちの姿が見えた
激しく動き回っている赤い光はあれは古泉か。この世界じゃあいつの能力も使えるらしいな

少し離れた場所で右往左往している朝比奈さんは、なぜか時々点滅していた
数秒間消えたかと思うとまた現れる

そして横たわっているのは長門だ。まだ意識が戻ってないのか
ピクリとも動かないその長門の足元に立ちはだかり、周防九曜と思われる長い黒髪の女子と激しい攻防を繰り返しているのは・・・

俺の背中にまた鳥肌が立った
振り下ろされるナイフの鈍い光沢、そして脇腹に突き刺さった冷たい金属の感触が、俺の全身から冷や汗を絞り出させた

あ、あ、朝倉涼子がどうしてここにいる?しかも長門を守るようにして
そうか、あいつは長門のバックアップだったっけ
長門がピンチなのを見て駆けつけたのか?

周防九曜は両手の指先から次々と光線のようなものを出し、朝倉を貫こうとする
朝倉涼子はまるでそれを割り箸でも掴んでるかのように手づかみにして、さらにはボキッと折っていた

両者の攻防は互角に見えたが、なかなか朝倉は攻勢に転じられないようだった
朝比奈さんから少し離れた所には、いた!あいつがいる
顔を見ただけで殴りつけてやりたいぐらいにムカつく野郎が
あの藤原が朝比奈さんに手のひらを向け、朝比奈さんの動きに合わせて小さく振っている
そのたびに朝比奈さんはあちこちに逃げ回り、時折りピカッと光って姿を消す
未来人同士の戦争がどんなものなのか、もちろん俺に知る由はないが、おそらくおれはあれでものすごい戦闘を繰り広げているのだろう

赤い光と化した古泉の周囲には分散した青い光が取り囲んでいる
あれは橘京子のものなのだろうか、その1つが時々古泉に向かって突進し、古泉は全身でそれを跳ね返す
青い光は力を失って地面に落下するが、古泉からも光の破片がキラキラとこぼれ落ちており、多少はダメージを負っているのが分かった

予想していた通り、激しい戦闘の真っ最中だったが、俺にとっての気がかりはいまだに目を覚まさない長門と、そして彼らから少し離れた所にいる1人の少女だった

ハルヒの言った通り、やはりあの新入生だった
クルッと巻き毛の天然パーマなのか、繰り広げられる戦闘に目を輝かせながら手に持っているオーパーツを軽く左右に振り回している

俺はハルヒを地面に横たえて、ぶち当たったバリヤーを調べてみた
長門のマンションを覆っていた柔らかいものとは違って、ガラスのように固い物体だった
手で叩いてみてもガンガンと響くだけで向こう側には届かない
どうやらあっち側からはこちらは見えないようだ
大声で古泉の名を呼んでみても何の反応もない

俺は再びハルヒを抱え起こし、揺さぶってみた。おいハルヒしっかりしろ、大丈夫か?
鼻を真っ赤に腫れ上がらせたハルヒがウーンとうなる

「いったぁー、何よ今度はいったい」

またバリヤーみたいだな。しかも今度はえらく固いぞ

「またこじ開けて入ればいいじゃないの」

ハルヒは鼻に手を当てながら立ち上がり、俺がやったようにドンドンとそれを叩いてみた
横たわったままの長門に懸命に声をかけるが当然反応がない

「うーん、ダメねえこれじゃ」

ハルヒは何事かをわめきながらひたすらバリヤーを殴りつけ、地面との隙間に指を突っ込んでこじ開けようとしている
何とかならないかハルヒ?このバリヤーをぶち破る方法は

「それは無理だよキョン」

また後ろから佐々木の声がした。こいつもついてきやがったのか

「どうやらあっちで起こってる事はこっちからはどうしようもないみたいだね」

おい佐々木、もういい加減にしろよ
こんな無駄な争いをして何になるんだよ
お前はこれで満足なのか?
あいつらに戦わせてお前はここで高見の見物かよ

「だってそうしろって言われたんだからしょうがないじゃないか
 大将はのこのこ敵前に出ていくことはないって
 それが仲間の意見ならば、僕は喜んで従うね」

仲間だと?何なんだよその仲間ってのは
こんな変な世界で、ハンディがある相手を叩きのめすのがお前らの戦いなのか?
それがお前らの仲間なのか?

「ふふっ。キョン
 僕にとっては彼女たちはまだあまりよく知らない存在だ
 突然目の前に現れて神様になって下さいとか言われていくら僕でもそんな事を真に受けたりはしないさ
 だけどねキョン、そんな事を言っている連中でも僕を慕ってくれてるんだ
 それを仲間と呼んでどこがいけないのかい?」

だったらお前も中に入って堂々と戦えよ
俺もハルヒもこの中に入れろ
それから長門を目覚めさせてやれ

お前らの下らん神様理論なんかはどうでもいい
条件を対等にしろ
何だかんだ言いながら結局お前らのやってることは卑怯以外の何物でもないじゃないか

長門の能力が怖いから眠らせて、ブチ切れたハルヒを恐れて中に入れようともしない
それがお前の仲間とやらのしてる事じゃねーか
何が仲間だよアホらしい
俺たちの団長を見てみろよ
アホで向こうみずで後先を考えない事ばっかりしてるけど、あいつの仲間を思う気持ちはお前なんかには負けはしない
何が大将は奥でじっとしてろだよ
うちのハルヒを見てみろ
あいつなら、団員を助けるために核融合炉にでも飛び込む覚悟はあるぞ
それが俺たちの団長だよ。SOS団の自慢の団長だよ

「そしてキョンの大好きな彼女だってのか?」

そうだよ
俺はハルヒが大好きだ
あんなバカな女だけど、俺たちを思ってくれる気持はこの銀河系の誰にも負けはしない
あれが俺の大好きな女だ
俺は1人では何もできないけどな、ハルヒと一緒ならどこにだって行けるぞ

佐々木はちょっと遠い目になった

「変わったな・・・キョン」

当たり前だろ
もうお前を自転車に乗せて塾に通ってた頃の俺とは全然違うんだよ
見つけたからな。一生かけて守ってやりたいと思う相手を

「うらやましいよ、キョンが
 そんな風に自分を変えられた君が」

お前は自分を変えようとは思わなかったのか?

「思わなかったよ
 だって変える必要がなかったからね
 このみんなに会えるまではね。チームSOSの仲間に出会うまでは」

チームSOS?何だそれは?

「ははは
 君にはまだ言ってなかったかな?恥ずかしいんだけどちょっとインスパイアさせてもらったよ。僕たちのチームだ

 『静けさを大いに楽しむための佐々木のチーム』だ」

それならSOSチームなんじゃないのか?順序が逆だぞ

「細かい事はいいんだよ別に
 何となく語呂がよかったからさ」

SOSの名を聞きつけたハルヒが佐々木を見つけ、両腕をブンブン振り回しながらやってきた

「ちょっとあんた、いつまでこんな卑怯な事やってんのよ。あたしを中に入れなさい。もちろんキョンもね」

「それはできないわ涼宮さん。 みんなにきつく言われてるから。あなたが入れるのは最後の仕上げだけ」

「いいから早く入れなさい!今すぐに!」

「ご自分でお入りになったら?」

「ええそのつもりよ。キョン!もうそんな女は放っといていいから。体当たりしてでも突入するわよ」

はいはい団長さま

「キョン!本気でそんな事するつもりか?」

当たり前だろ。俺は団長のボディガードだ
団長の行く所ならたとえ地獄にでもお供するぜ
ましてや仲間を助けるためなんだ。SOS団に不可能はないんだよ

「キョン!そんな優等生の分からずやに何言っても無駄よ。まあ同級生のよしみもあるんでしょうけどね」

「待って!それはさせられない」

佐々木の体が大きく震え、クリーム色をしたモヤモヤした物体がハルヒの体を包み込んだ

「ちょっと!何よこれ!動けないじゃないの!キョン!助けて!」

俺は急いでハルヒを包んでいる靄の中に飛び込んだ
と思ったらハルヒの体を通り抜け、反対側に出ていた
もう一度やっても同じだった
俺の指先はハルヒに触れる事もなく、そのまま通過して飛び出してしまう
何だこりゃ?ハルヒ?

「キョン・・・・・・」

待ってろハルヒ、すぐに助け出してやる
おい佐々木、もうやめろ。ハルヒに手を出すんじゃねえ
他のヤツラならともかく、お前にこんな事をさせたくない
だからハルヒに手を出す事だけはやめてくれ

「じゃあ君が身代わりになるかい?」

ああ
それでいいのなら俺は構わない

「キョン!あんたいったい何言ってんのよっ!」

ハルヒ
みんなを助けてくれ
長門を助けろ、お前ならできる
長門さえ起こしてしまえばこっちのもんだ

「ちょっとキョン!」

さあ佐々木、さっさとやれ。俺を好きにしていいからハルヒを助けろ

「ふっ
 君が代わってくれても意味はないんだよ
 あくまで団長は涼宮さんだからね」

いいから変われ
俺とハルヒを入れ替えろ

「それはできない。今の時点での危険因子は涼宮さんだからね」

くっそう
引っかからないかさすがに
俺の背後にはクリーム色の靄にからめられたハルヒがもがいている

「キョン!キョン!」

俺は佐々木を睨みつけたままで
何か策はないかと思い巡らしていた

バリヤーの向こうでの戦いはいったいどれぐらいの時間に及んでいるのか
古泉も朝比奈さんも、もちろん朝倉涼子も、もうかなりのダメージを受けているはず
ほとんど防戦一方の戦いにはたして勝ち目はあるのか
仮に長門が目を覚ましたとしてあの調子で戦いに参加する事はできるのか?
幾つもの疑問が頭を駆け巡る
俺とハルヒはこのまま
仲間が必死で戦ってるのを見殺しにしてしまうのか・・・

「キョン、キョン」

ハルヒの声も苦しそうだ。俺は佐々木に背中を向け、ハルヒの方に向かった
ハルヒどうした?苦しいのか?

「大丈夫よ、動けないだけ
 だけどキョン、こんな悔しい想いは初めてよ。何もできないで負けちゃうなんて・・・
 有希・・・ごめんね・・・一番つらい時に一緒にいられなくて
 みくるちゃん・・・あんなに頼りなかったのに、必死で戦ってるのに何もしてあげられなくて
 古泉くんも・・・いつもわがまま聞いてくれたのに、最後はこんな形になるなんて
 ごめんね・・・これじゃ団長失格だよね。偉そうな事ばっかり言ってたのに
 結局何もできないだけだなんて」

俺の目の奥で何かがはじけた
何か真っ赤なものがパーンとはじけた
俺はゆっくり向き直り、佐々木に静かに告げた
佐々木・・・ハルヒを出してくれ、今すぐに

「それはできないと言っただろ
 君に代わっても何の意味もない事ぐらい分かっているはず」

そうか・・・
俺は肩を落とし、力なくうなだれた
そして次の瞬間、全速力で佐々木に向かって走っていた

もう何も考えられない
ただ無性に腹が立っていた
どうせ何もできないのなら、せめてこいつだけにはひと泡吹かせてやりたい
俺をバカにしたいのならいくらでもすればいい
だけどこれだけは絶対に許さん
ハルヒをバカにする事だけは許さない
俺たちの団長を、俺の大好きなハルヒをバカにする事だけは許せなかった

「ちょ・・・キョン?」

俺は上体を丸めて佐々木に襲いかかった
何かを叫んでいたような気がするが覚えていない
ショルダータックルをぶちかますつもりだったのだが、予定した場所に佐々木はいなかった
空気が漏れるようなシュッという小さな音が聞こえたような気がする
俺は勢い余ってそのまま突進し、バリンという音とともにもんどりうって倒れ込んだ

「キョン!」

気がつくと空気の匂いが違っていた。血なまぐさい臭いが鼻をついた
誰の血の臭いなのかと頭を上げると、目の前には小さな女の子が倒れていた
これは?どんなカラクリなのか、俺はバリアーを抜けたようだった
そして俺が体当たりしたのはこの子なのか
俺の横に転がっている新入生の手に握られたオーパーツを見て、俺は本能に任せて行動した
素早くその手からオーパーツを奪い取り、バリヤーの外にいるハルヒに向かって走り出した
いったい今日はどれぐらい走ってるだろうか。少しは運動能力の向上に役立つだろうか
そんな事を考えていると耳元に誰かの声が聞こえた

「・・・・・・とうとう来た・・・私のきれいな・・・その瞳・・・・・・」

横目でちらりと見ると周防九曜が俺の動きを追っていた
長い黒髪がブラリと横に拡がり、次の瞬間、それが一斉に俺を目がけて飛んできた
追いつかれる前にバリヤーの外にたどり着こうと必死で走ったが、恐ろしいスピードで追いかける槍のような黒髪の方がはるかに早かった

「キョン!」

「キョンくん!」

誰かの悲鳴が聞こえたような気がした
俺の耳元にシュルルルといううなりが聞こえ、今にも無数の槍に貫かれるかと覚悟した瞬間、ブシュブシュブシュと何かが突き刺さる音が聞こえた
ハルヒ・・・
ハルヒ・・・
俺は・・・もう・・・・・・

あれ?痛みがない
呆然とする俺に何か柔らかいものが覆いかぶさった

「早く渡して!」

誰かにそう言われてハッと気がついた
聞き覚えのあるこの声は、朝倉涼子!

「あなたならあのバリヤーを貫通できるはず!走って!」

俺は異を唱える事もせず、ハルヒに向かって走った
再びシュルシュルといううなりが後ろから聞こえ、俺は首をすくめた
ブシュブシュブシュ

「キョンくん・・・」

朝倉・・・

俺の体にかぶさるようにして朝倉涼子が倒れ込んできた
暖かい液体が俺のシャツを濡らす。これは・・・血?

「キョンくん・・・あの時は本当にごめんね。 自分が間違っていたことがやっと分かった
 長門さんの気持ちもね」

朝倉!

「せっかく戻って来られて、キョンくんにちゃんと謝ろうって思ってたのに。またこうなっちゃった
 しょせん私はやっぱり、ただのバックアップにすぎないって事かしら?
 さようなら、キョンくん。できたら私の事は、あまり悪い思い出にしないでほしいな」

朝倉!
体中を周防九曜の長い槍で貫かれた朝倉涼子は
やがていつかのようにサラサラと砂になって崩れ落ちていった

俺はオーパーツをまだ持っている事を確かめた
バリヤーの側にいるハルヒからはあと少しの距離だ
俺は残りの距離を猛ダッシュに賭けた。バリヤーの向こうにいるハルヒに手渡す
これが突き破れなかったら、その時は俺も終わりだ
周防九曜の槍に貫かれて、朝倉のようにサラサラと消滅する事もできず、血にまみれた無残な死体を晒すのか
オーパーツを持った右手をバリヤーの向こうにいるハルヒに必死で突きつけた
ハルヒ、これを持ってこっちに入って来い!

不思議な事に、オーパーツは苦もなくバリヤーを突き抜けた
佐々木が作ったクリーム色の靄すらも通り抜けて、ハルヒはしっかりとそれを握りしめた
また背後からシュルシュルと唸りが聞こえてきた。身を隠せるものは何もない。助けてくれる朝倉ももういない

俺は目を閉じた
そして・・・・・・

何も起こらなかった
体中を串刺しにされる感覚も、焼けるような激痛もなかった
そして俺の後ろに誰かが立っている感覚を感じた

こわごわ目を上げてみると、そこには見慣れた制服姿の小柄な女子が立っていた
周防九曜が放った長い黒髪の槍を片手で鷲づかみにしていた

「ああ・・・・・・あなたは・・・ここにいてはいけない存在・・・・・・不快な・・・とても不愉快なもの・・・・・・」

周防九曜は次々と槍を繰り出し、その女子はそれを片手で受け止め続けた
見上げる俺の全身に安堵感が広がる
あまりの安堵に体中がガタガタと震え出すほどだった

長門・・・・・・
ついに復活したのか長門・・・

長門は氷のような無表情を崩さないまま
あの懐かしい淡々とした口調で

「・・・・・・お待たせ」

そうつぶやいて、九曜の攻撃を跳ね返し続けていた

「・・・・・・離れないで」

長門は右手で攻撃を受けとめながら左手をバリヤーの外に伸ばした
長門の左腕が5メートルぐらいに伸び、ハルヒの腕を掴んだ
バリバリバリと激しい音を立てながら、バリヤーごとハルヒを中に引きずり込んだ

俺は転がり込んでくるハルヒをしっかり受け止めた
これでついに役者が全員揃った。SOS団の勢ぞろいだ
どんな仕組みになってるのかなんて俺には分からない
だけど今、団長以下5人のSOS団メンバーがついに終結したのだ

形勢が一気に逆転した
長門はめまぐるしい動きで周防九曜の攻撃を防ぎながら詠唱し、古泉に群がっていた赤い光を叩き落とす
さらには朝比奈さんと藤原との間に白い光の壁を作った

古泉は力を回復して再び橘京子に襲いかかり、朝比奈さんは変な悲鳴を上げながら

「わ、わた、わたたたたたーっ!」

と叫んで藤原と一緒に姿を消した

ハルヒがバリヤーの中に入ったのを見た佐々木も中に入ってきて、クリーム色の靄を俺たちに向かって放ってきたが、オーパーツを握りしめたハルヒが無造作にそれを踏みつぶした

俺はしっかりとハルヒの手を握りしめていたが、ハルヒはその手をそっと放した
俺たちの前でガードしていた長門の前に出た
すかさず周防九曜が槍を放つが、それらは全てハルヒの手前で力なく失速して落ちた

ハルヒの全身から不思議な光が発光している
古泉が最も恐れていた事態がついに訪れたのか
自分の力を自覚したハルヒが、怒りのあまりにとんでもない大暴走を引き起こそうとしているのか?

おいハルヒ
危険だぞ長門の後ろに戻れ

「・・・・・・やめなさい」

ん?ハルヒ?

「もうやめなさいって言ってるのよ」

初めて聞くハルヒの低い声だ
腹の底から響くようなハルヒの重低音だった

俺はこの時初めて気がついた
本気で怒った時のハルヒは口数が少なくなるのだと

「有希、もういいわ。無事で何より」

長門も攻撃を収めた

「古泉くん、元の姿に戻りなさい。みくるちゃんも、もう帰ってきなさい」

古泉は赤い光球から人間の姿に戻り

「ふぇぇぇぇぇーっ。 7億年前まで遡っちゃいましたぁ」

と言う朝比奈さんは気絶した藤原の手を掴んで戻ってきた

佐々木率いるチームSOS(この名前は使いたくないな)も攻撃の手を休め
じっとハルヒを見つめている
オーパーツを奪われた新入生はキョトンとしていたが
ニッコリ笑って立ち上がった

ハルヒはゆっくり歩いて古泉の前に立った
さすがの古泉も疲れた表情で肩で息をしていたが、近づいてきたハルヒを見てわずかに頬を緩めた
しかし次の瞬間、俺の心臓も凍りついた
パンと乾いた音がして、ハルヒが古泉の頬を叩いていた

「副団長がこんなつまらない争いごとに巻き込まれてどうするのよ! 私の指図もなしに独断専行は許さないわよ!」

古泉は呆然としていたが、ハルヒの目に浮かんでいた大粒の涙を見て顔をこわばらせた

「申し訳ありません、団長」

ハルヒはそのまま朝比奈さんの元に向かい、やはり頬を叩いた

「みくるちゃんはあたしのかわいいマスコットなんだから、こんな危険なことしちゃダメじゃないの!」

朝比奈さんは目をくるくるさせていたが、ハルヒに抱きしめられて大声で泣き出した

「みくるちゃん、ごめんね、無理させて。あたしが早く来れなかったばっかりにこんなひどい目にあわせちゃって」

「すっすっすっ涼宮さーん」

しばらく抱き合っていた2人だったが、やがてハルヒが体を離した
再び俺と長門の前に戻ってきて、やはり長門の頬もパンと叩いた
長門なら軽く避ける事もできたのだろうが、黙ってハルヒの平手打ちを受けた

「有希、有希、あんたはね、何でも1人で抱え込んでるんじゃないの
 つらかったら、1人でいるのがつらい時は電話しなさいっていつも言ってたでしょ?
 あたしたち仲間なんだから、どうして今まで何の相談もしてくれなかったのよ!」

抱きしめられてもまだ無表情の長門だったが、大きく見開かれたその両目から、大粒の涙がぽろりとこぼれた

「・・・・・・申し訳ない」

そしてハルヒは俺の前に戻り、俺をグーで殴りつけた
おいハルヒ、何で俺だけグーパンチなんだよ

「うるさいバカキョン!あんたは全部知ってたんでしょっ!
 知ってるくせに何で私に何も言わなかったのよ!
 あんたの責任が一番重いんだからね!
 一番下っ端のくせに!一番あたしと一緒にいたくせに!
 あんたがもっと早く話してくれたらこんな事にはならなかったのに!
 有希も古泉くんもみくるちゃんも、こんな目に会わずに済んだかもしれないのに!」

いやハルヒ
これにはいろいろと事情があってだな

「黙りなさいっ!!!」

ハルヒは再び俺をグーで殴った
そしてハルヒはくるっと体を反転させて佐々木に指を突きつけた

「神さまになりたいのなら好きにすればいいわ
 世界を作り変えたいのならいつでもどうぞ
 ただし、1つだけ言っておくわ
 あたしの大事なSOS団員に指一本でも触れたら、今度はただじゃおかないからね!
 あんたがどこの世界のどんな神さまだろうと、あたしが必ず探し出してこの世から消し去ってやる!」

佐々木はしばらく呆然とハルヒを見ていたが
やがてクスクス笑いだした

「さすがは涼宮さんね
 やっぱり私はかなわないわ
 ちょっとだけだけど神さまなんて言われていい気になってたのかもしれないわね
 ごめんね涼宮さん
 あなたの大事な仲間をこんな所にまで連れて来てしまってごめんなさい

 でも1つだけ分かってほしいの
 あの子は全然悪くないから
 あの子のために、この世界を作り直すエネルギーを分けてほしいって頼まれて
 それで周防さんにも協力してもらって今回の作戦になったの
 責任は全て私にあります。憎むなら私を憎んで下さい
 だけどこの子は別だから。一人ぼっちでここで生きていくのがかわいそうだと思ったから
 だからこの子だけは許してあげて」

ハルヒは無邪気に笑う新入生をじっと見た

「あなた、名前は?」

「名前はまだありません」

「もう北高はやめちゃうの?」

「えっと、まだ決めてません」

「そう、じゃあいいわ。でもこれはもうしばらく預かっとくから、後で学校に取りに来なさい」

「はい!」

ハルヒはそれ以上何も言わずに戻ってきた
呆然とする古泉と、泣きじゃくる朝比奈さん、そして無表情のままで涙をこぼす長門を俺の前まで引っ張ってきた

「さあキョン、帰るわよ」

ああ
これだけ暴れりゃ充分だろ
暴れ足りないのはハルヒだけじゃないのか?

「・・・キョン」

え?

「マジで殺されたいの?」

・・・・・・

「帰るわよ」

俺たちは輪になって手をつないだ

「みんな、目を閉じて元の世界を念じるのよ
 有希のマンションのあの部屋をね」

「・・・・・・それでは不足・・・・・・終わらせない・・・・・・」

後ろから小さな声が響き、長い髪の毛を狼のように空気で膨らませた周防九曜が襲いかかってきた
ハルヒの持っているオーパーツを目がけてギラギラした光の束が襲いかかる
すぐに反応したのは長門だった
高速呪文を唱える余裕はなく、長門は瞬間移動でハルヒの前に立った

「有希!」

長門は小さな体を太い光に貫かれ、その目を大きく見開いている

「有希!」

「長門さん!」

長門!

「・・・・・・いい・・・・・・肉体の損傷は無視できるレベル」

周防九曜はその長い髪が大きく膨れ上がり
小柄な体を5倍ほどの大きさに見せていた

「・・・・・・ここで終わる事はできない・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・」

長門が素早く詠唱し、俺たちを包むように、白い光の壁が発生した

「早く戻った方がいい」

「・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・この場所にはふさわしくない」

周防九曜の体もオレンジ色の光に包まれ、ゆっくりと空中に浮かびあがった
すかさず長門が追従し、同じように空中に浮かんだ

「有希!もうやめなさい!もういいのよ!」

「このインターフェイスを残しておくのは危険。私が始末する」

おい長門、もうやめよう。こんなの放っといてみんなで帰ろうぜ

「それはできない。このインターフェイスは暴走を始めている」

暴走?

「そう」

「・・・・・・私は今日、習いました。言葉の意味を・・・・・・これはお花です。とても美しい・・・・・・あなたが好きです・・・・・・お前は死ね」

長門、こんなの相手にして大丈夫なのか?

「勝算はある。早く退避を」

おい佐々木、ここは危険だ。お前も全員連れて帰れ
ハルヒ、俺たちも帰ろう

「でも有希が・・・」

長門が勝算があるって言うんだから信じようぜ

「有希・・・」

「・・・・・・私は、歩きます。遠くのお空に。明日は、お肉を、食べました」

見守っているうちに周防九曜の様子が明らかにおかしくなっていた
第1形態が指からの光線の矢、第2形態は髪の毛の槍
とするとこれが第3形態なのか、オレンジ色の球体に包まれたその体から次々と光の束が長門に向かってほとばしった

長門は素早く詠唱しながらその光を直前で跳ね返し、返す刀でオレンジ色の光に切り込んでいった

「キョン、私たちはこれで戻る事にするよ」

ああ佐々木、ここは危険だ

「君たちも無事帰ってきてくれよ」

もちろんだとも。気をつけてな

佐々木と橘京子、そして藤原の姿が消えた

おいハルヒ、俺たちも帰ろう

「でも・・・有希が・・・」

帰ろうとしないハルヒの気持ちは俺にもよく分かる
ようやくハルヒにも今までの俺たちの行動が読めてきたのだろう
自分の知らない場所で行われてきた壮絶な出来事に目を丸くし、また長門を1人残しておけないという気持ちは俺たちももちろん一緒だ
上空で繰り広げられるすさまじい戦闘に、俺たちは目を奪われていた

周防九曜は次々と攻撃を繰り出し、長門はそれを防ぎながら何やら光を出して攻撃もしていた
下から見ている俺たちには戦況はさっぱり理解できない
やがて飛び道具では埒が明かないと見たのか周防九曜は距離を詰め、再び黒髪の長い槍を四方八方から突き立ててきた
何本かずつまとめて払い落していた長門だったが、そのうち数本が無残に体を貫いた

「有希!」

「私は大丈夫。それより早く帰還すべき」

「あんたを置いて帰れるわけないでしょう!」

「置いて行っていい。必ず戻る」

「本当?」

「本当」

「絶対に帰って来なさいよ!有希!」

「約束する」

まだ名残惜しそうなハルヒをせきたて、俺たちは再び手をつないだ
するとまだあの新入生が残っているのに気がついた。おい、お前はこっちに来なくていいのか?

「ここが私の世界ですから」

こっちは今から危険な状態になるかもしれないんだぞ

「構いません。その時はそちらの世界に行きます」

絶対生きろよ、こっちでもあっちでもいいから

「はい!ありがとうございます先輩」

「さあみんな祈って!向こうに帰れますように。・・・・・・有希が無事に帰って来れますように」

足元が激しく揺れ、時間移動とも次元震ともまた違う感覚の後で、俺たちは再び固い地面に立った

「ほわーっ」

朝比奈さんの溜息とともに、ようやく地球に帰ってきた事を実感した
出発点と同じ、長門のマンションだった。そこにはまだ佐々木たちがいた

「無事帰ってきたね」

ああ

「どんな様子だったの?」

まだ長門と周防が戦ってるよ
どうやら異常動作を起こしたらしい

「本当に申し訳ない。我々の仲間なのに何もできなくて」

まあしょうがないだろ。何しろまともに会話もできないヤツだったからな

「古泉くん」

「はい?」

「みんなを連れて帰って」

「えっ?」

「みんなを家まで送ってあげて」

「しかし長門さんがまだ・・・」

「いいから!」

「はい、では後はよろしくお願いします」

古泉はまだ泣きじゃくっている朝比奈さんを抱き起こし、佐々木たちも連れてマンションを出ようとした

「ふん、結局規定事項の確認のみか、骨折り損とはまさにこの事だな」

藤原がつぶやいて立ち上がった

「俺はここで失礼するぜ。どうやらこれ以上の展開はなさそうだしな。ところであんた」

こいつは俺の朝比奈さんをあんた扱いするのか?許さん
朝比奈さんがビクッと体を震わせた

「は、はいっ?」

「つまらない任務だったけど、あんたと戦えてよかったよ」

「ふぇっ?」

「まさか7億年前に連れていかれるとは思わなかった」

「あっ、あっ、あれはその涼宮さんの・・・」

「途中で時間の流れについていけなくなった。気絶するとは時間移動員失格だな
 おかげさまですごいものを見せてもらった。さすがは歴史にその名を残している人物だけの事はある
 これは禁則だけどな」

「えっ?えっ?」

「あんたに出会えてよかったよ、朝比奈みくるさん。今度会う時は・・・その・・・禁則だ」

「へ?」

「ありがとう、大先輩」

藤原は意味不明な禁則事項を連発しながら朝比奈さんと握手を交わし、佐々木に軽く頭を下げ、俺たちを一瞥してその場から消えた

「何なのよあいつはいったい」

「わわわわたし・・・・・・」

どうやら藤原ってのは朝比奈さんよりもまだ未来の人間なのか
しかしちょっと聞こえたけど、朝比奈さんが歴史に名前を残すとか

「じゃあ、あとで必ず連絡を下さい。何時になっても待ってますから」

古泉はそう言って残りの全員をまとめ、マンションを出ていった
俺は別に帰れとも言われなかったのでそのまま残っていたが、誰もいなくなるとハルヒが口を開いた

「さあキョン、もう一度行くわよ!有希を助けに」

へっ
そう言うと思ってたよ団長さま
どこまででもついていってやるぜハルヒ
地獄の底まででもな

俺とハルヒは手をつないで、再び長門の部屋の額の前に立った

「行くわよキョン」

ああもちろんだとも

呼吸を合わせ、まさに飛び込もうとする寸前に

「・・・・・・行かなくていい」

背後から小さな声がかかった

「有希!」

長門!帰って来れたのか?

「帰ってきた」

長門は布団をすっぽり首までかぶっていた
黒い瞳は大きく見開かれたままだ

「有希!よかった!帰ってきてくれて」

「帰って来ると約束した」

長門・・・
無事だったか
周防はどうなったんだ?

「・・・・・・周防九曜は消滅した。暴走を止めることはできなかった」

あの新入生は?

「まだあそこにいる。でもまたこの世界に来たいと言っていた」

「本当に?有希?」

「そう。そのオーパーツを取り戻しに来る」

「これ?」

「そう。それは彼女にとってとても大事なもの」

「ふうん・・・・・・」

なあ長門

「何?」

ちょっと布団めくってもいいか?

「ちょっとキョン!こんな時に何エロ目線になってんのよっ!」

違うぞハルヒ
ちょっと心配だったから
長門が傷ついてるんじゃないかと思ってな

「・・・・・・見ない方がいい」

ん?
どうしてだ長門?

「通常の神経構造を持っている人間にはこの状態はかなりショックを受けるはず。だから見ない方がいい」

「有希!あなた怪我したの?どうなの?」

「肉体の損傷はすぐに再生できる。でも少し時間がかかる」

「有希・・・・・・」

ハルヒは構わずに布団をめくり上げようとする
俺は・・・すまん長門・・・
ちょっと耐えられそうになくて、思わず目を背けてしまう

「万が一にもこれを映像化しようなどという野望があるならここは自粛すべき」

長門は内側から布団を押さえ、ハルヒに抵抗していた

「医療技術者でもこの状態は正視に耐えないレベル・・・見ないで」

「有希、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫」

おいハルヒ、長門が嫌がってるんだ、もうやめておけ

「分かったわよ・・・」

「頼みがある」

「何?有希」

「・・・・・・もう帰ってほしい」

「ん?」

「・・・・・・肉体の回復がうまく進行しない。エラーが発生している」

何か問題があるのか長門?

「情報処理にエラーが頻発している・・・・・・原因は・・・・・・禁則」

長門?

それまでまっすぐ上を見つめたままの長門が首だけを横に曲げた
その寸前に、大粒の涙が頬を流れ落ちるのが見えた

「・・・・・・お願い・・・・・・帰って・・・」

長門・・・・・・
ごめんな
お前の気持ちに・・・・・・俺は応えてやれなかった
それが・・・お前の禁則なのか?

俺の目の奥が、なぜかじんわりと熱くなってきた
長門の禁則の理由が何となく理解できる
すまん長門

それでもまだ長門の布団を引っぺがそうとしているハルヒを引きずるようにして、俺は長門の寝室を出た

「有希!来週には絶対学校に来るのよ!」

「・・・・・・それは約束できる」

「じゃあね!絶対よ!」

長門

「・・・・・・・」

また部室でな

「・・・・・・・ありがとう」

俺とハルヒは長門の部屋を後にし、黙ったままでエレベーターに乗った
マンションの玄関を出ると、そこには佐々木が待っていた

「ごめんなさいね涼宮さん。いろいろ迷惑かけて」

「もういいってば」

「長門さんは帰ってきたの?」

「今帰って来たわよ」

「周防さんは?」

「・・・・・・戻らなかった」

「ふうん、やっぱりか。結局私は仲間を守れなかった
 あなたはちゃんと全員を無事に連れて帰ってきたのにね。やっぱり私はリーダー失格か」

「そんな事ないわよ、どうしようもない事もあるし」

ああそうだよ佐々木。周防は暴走していた
ああするしか方法はなかったみたいだからな
あの長門がそう言ってたんだから

「だけどキョン、僕がもっとうまくやれば、その暴走を食い止められたかもしれない」

それは結果論だろ
周防は帰って来れなかったけど、後は全員無事だったんだから
もうそれでいいんじゃないか?
あの新入生もまた帰って来るよ。オーパーツを受け取るためにな

「そうか・・・・・・君がそう言ってくれるのなら・・・納得するよ。ねえ涼宮さん?」

「ん?」

「周防さんはいなくなっちゃったし、藤原さんは元の世界に戻った
 だけど私と橘さんはまだこの街にいるわ
 もしかしたら、また私たちが出会う事もあるかもしれないんだけど、その時は・・・・・・」

「その時は?」

「友達として会ってくれるかな?」

ハルヒはまだ怒りを含んだ目で佐々木を見ていたが、しばらくしてその目が柔らかく光った

「もっちろんよっ!一緒に冒険した仲間なんだから!
 これからもまた、不思議探しの旅に出るのよ!」

おいハルヒ
これだけものすごい体験をしておいてまだ足りないのかよ
それに北口周辺なんかに不思議が落ちてるはずないって
これだけやってもまだ学習してくれないのかお前という女は

「当たり前じゃないのバカキョン
 これからは不思議を発見するだけじゃなくて作りだすのよ
 誰かが言ってたでしょう!
 『待ってるだけでは冒険は訪れてくれない』ってね!」

ほう
その誰かってのはもしかしたら頭に黄色いリボン巻いて
仲間を危険にさらすのが得意な北高の女子の事じゃないでしょうね?

「それは今までの話よ!これからはね、あたしがあんたたちを守ってあげるんだから!」

やれやれ
このバカの脳下垂体を解剖して、一度長門に学術調査でもしてもらいたいもんだ

「佐々木さん!あんたたちもこれからは準団員として認定してあげるから、たまには不思議探索に加わる許可を与えるわ」

「本当に?ありがとう」

「その時は新人として十分にこき使ってあげるから覚悟しときなさいねっ!」

「はい!団長!」

何だこの2人はいったい
完全に意気投合してるじゃないか
史上最悪の神様のツートップだ
1958年ワールドカップのブラジル代表チームでも勝ち目はないだろう

ハルヒと佐々木はしばらく盛り上がっていたが

「じゃあ帰るね涼宮さん」

「うん、またね」

「じゃあねキョン、涼宮さんをお願い」

これ以上何をお願いするんだよお前は?もう勘弁してくれ

マンションの前で佐々木と別れ、俺はハルヒと手をつないだ
7階の窓から誰かが見下ろしている気配も感じたのだが、残念ながら俺にはどうする事もできない
銀河系中の長門マニアに殺意を持たれてしまったのか
それとも喜んでもらえたのか
やれやれだよ全く


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その4に続く

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