その2

俺とハルヒの前に姿を現したのは佐々木だった
ニッコリ微笑みながら、静かに歩いてきた

おい佐々木
お前がこの閉鎖空間を作り出したのか?

「僕は閉鎖空間とは呼ばないがね。君がそう呼びたいのなら否定するつもりはない」

お前が作った閉鎖空間の中にどうやって自分が入れるんだ?

「はっはっはっ
 キョン、君は何でも自分を中心に考えてはだめだよ
 僕もあれからいろいろ話を聞いて、それなりに勉強したんだ
 君たちの事も、僕の事も、そして橘さんや藤原さん、周防さんの事もな
 僕と涼宮さんがあそこから飛ばされたのにもきっと理由があると思う
 涼宮さんをあの中に入れない方がいいのなら、それができるのはおそらく僕だけだろうからね」

俺は無意識にハルヒをかばうように立っていたが、俺の腕のすり抜けてハルヒがわめいた

「ちょっとあんた、これはいったい何よ?
 あんたの仕業だって言うの?」

「涼宮さん、私はあなたに何も恨みはないの
 でもね、あなたのただ一つの欠点は自分が何も分かってないという事なのよ
 キョンや他の人たちに守られているだけでは何も生み出せない
 何も作り出せない
 ただ破壊するだけの空間なんて私には理解できない」

「何を言ってんのよあんた
 いいからあたしとキョンを有希の所に連れていきなさい、今すぐに!」

「そう願うならご自分で行けば?できるものならね」

「ちょっとキョン!説明しなさい!」

だから俺に話を振るなよハルヒ
えーっとこんな時、古泉ならどう説明するだろう
いや長門でもいいか
ダメだ長門の話は電波話にしか聞こえないし朝比奈さんなら・・・禁則事項か

「じゃあ僕から説明しようか?キョン
 涼宮さん、あなたは自分の力について何も理解していない
 自覚していない所でさまざまな現象を発生させる」

「はぁ???」

「あなたはとても面白い人。才能もあるし、きれいだし
 でもね、あなたにその力は荷が重すぎる。だから私に白羽の矢が立った」

おい佐々木
それ以上言うな

「だってキョン
 その通りじゃないか
 だから君や仲間たちがひどい目に会ってきたんだろ
 君だってそう思っているはずだ
 涼宮さんが普通の女の子に戻ってくれたらって
 それで僕が選ばれたんだ
 僕も正直迷惑を隠せない気持ちだけど、涼宮さんを見ているとやっぱりそう思うね」

佐々木、もう黙れ
ハルヒにそれ以上わけの分からん事を吹き込むんじゃねえ

「涼宮さんには荷が重すぎるから
 その重い荷物を全て僕たちが引き受けようとしてるんだ
 君にとっても悪い取引じゃないと思うのだが」

荷が重い?迷惑だ?
いったい誰がそんな事を言ってるんだよ
誰もそんな事は一言も言ってねえぞ
いい加減な事を言うんじゃねえよ

ハルヒは俺たちのリーダーだ
SOS団の団長だ
そして俺たちは仲間なんだよ
かけがえのない仲間なんだ
俺たちの仲間に傷一つつけてみろ
俺はお前を絶対に許さないぞ

「ほう、キョンがかい
 君も変わったものだな
 ずっと平凡に人生を送りたいって
 中学の頃からそうぼやいていたのに
 ただの思いつきで君たちを引っ張り回す変人が
 君にとっての大事な仲間なのかい?」

佐々木
お前は何も知らない
高校に入ってからの俺を知らない
SOS団で楽しく遊んでいる俺を知らない

そしてお前は
ハルヒの事を何も知っていない
もうそれ以上言うな
俺がお前をブン殴らないうちに
さっさと俺とハルヒを長門の部屋に送り込め

「それは僕にはできない相談だね
 マンションをシールドしているのは僕の力じゃない
 行きたかったら自力で行く事だね
 そこまでは僕も止めはしないよ」

「キョン、何なのよこの女は
 全然意味分からないわ
 さっきからいったい何言ってんのよあんたたち
 私がバカだって言いたいの?」

ハルヒよく聞け
お前の力で長門を助けに行こう
お前ならそれができる
俺とお前を長門の所まで連れて行ってくれ
頼むハルヒ

「?????」

「ふふふ
 はたしてあなたにそれができるかしらね
 破壊しかできないあなたに
 人を助ける事ができるのかしら」

黙れ佐々木、あと5分だけ黙ってろ
おいハルヒ
この1年で何かに気付いたことはないのか?

「1年で?」

ああ
SOS団を作ってからいろんな事があっただろ
お前の知らない所で起こったことが多かったけどな
お前にも薄々気付いた事ぐらいあるだろ

「え・・・?」

お前は長門が普通の女子だと思っているのか?
古泉はただの転校生だと思ってるのか?
朝比奈さんは・・・ちょっと分かりづらいけど、お前にだって何か気付いたことがあるだろ?

「キョン・・・」

思い出せハルヒ
俺たちの事だ
SOS団全員で作ってきた歴史だ
楽しい事や、不思議な事がいっぱいあっただろ
それは偶然起こった事だと思うのか?
宇宙人や未来人、超能力者が本当はいないと思ってるのか?

「・・・・・・」

ハルヒの瞳が不思議な輝きを放ってくる
ここか?
ここでいいのか古泉?
今ここで使ってもいいのか?

「キョン」

何だハルヒ?

「1つだけ教えて」

ああいいとも

「あんたの本当の名前は何?」

名前?

「そう、キョンの他にもあるでしょう?
 あんたの名前が」

あああるともハルヒ
俺の名前がもう一つな
お前が中学生の時に聞いたはずの名前がな

「ある・・・のね・・・やっぱり」

ああそうだよ
あの時に名乗った名前だ

「キョン・・・」

もうどうにでもなれと思った
このくそったれな状況を脱するために
今ここで使うしかないと思った

言うぞ
ついに
ハルヒ
俺の名前は・・・・・・

ついにその時が来たのか
俺の持っている切り札
世界がとんでもなくややこしい事態になってしまった時のために
俺がずっと隠してきた切り札をついに使う時が来たのか
分断されているSOS団を救うために
今ここで使ってもいいよな古泉よ

ハルヒ
俺の名前はな

「あんたの名前は」

一緒に言うぞ

「いいわよ」

グオオオオオオオオオオと激しい地鳴りが響いた
巻き起こった突風に俺とハルヒは吹き飛ばされそうになるが
必死で足を踏ん張って立った

ハルヒの目を見つめたまま、ハルヒも俺を見つめたままで
俺は禁断の6文字を言おうとした

「・・・・・・」

「・・・・・・」

あれ?
何だ?
声が・・・
出ない・・・・・・

振り向くと佐々木はまだ立っていた
俺とハルヒのパントマイムを楽しそうに眺めていた
すさまじい旋風は収まろうとしない
あああとしか声が出ない俺もハルヒも、その風のうなりに飲み込まれそうになっていた

佐々木
声を出なくしちまいやがったのか?

「それは分からない
 さっき言った通りだよ
 もう少し時間を稼ぎたい
 だからこうやっている」

ハルヒ
何とかしてくれ
もう分かってるだろ
声に出さなくても
俺の正体を
中学1年の時に東中の校庭にあの奇妙キテレツな地上絵を描いた時の事を
あの時にお前を手伝った哀れな高校生を

「・・・・・・」

ハルヒも懸命に口をパクパクさせているが
もちろん声は出ていない

俺の顔に恐怖が走る
今まで一度も見た事がなかったハルヒの表情
自己中心で傍若無人な爆弾女
このいつ発火するかも分からないとんでもない時限爆弾が
なぜか自己消火しようとしていた

ハルヒは今
明らかにおびえた表情をしている
今にも泣き出しそうになり
俺のシャツの袖を掴んでいる

こんなハルヒは初めてだ
あまりの急速な展開と自分の無力さにおびえているのか
鶴屋さんと森さんにかけられた言葉が再び蘇る

ハルヒはこう見えても神経の細い女なんだ
ハルヒはいつもみんなに気を使っているんだ
この女を知る人間が聞いたら腹を抱えて笑うようなセリフだが
今目の前にいるハルヒは明らかにその通りだった

どうするんだよ俺
考えろ、考えろ
どうすればハルヒに思い出させることができるのか
いやもうとっくに思い出してるはずだ
後は何をすればいい?
何をすればハルヒが怒れる獅子に変身できるんだ?

ええい
もうこうなればあれしかないのか?
1年前にハルヒに巻き込まれた閉鎖空間を思い出した
大人の朝比奈さんに言われた言葉
パソコンのか細い糸で長門に教わった言葉
もう一度あれをやればいいのか?

「キョン
 君はそれでいいのか?」

後ろから佐々木の声が聞こえる

「君はそれで満足するのか?
 そんな目的のためだけに
 自分を犠牲にするつもりなのか?」

犠牲?
犠牲だって?

俺は佐々木を振り返った
面白そうに眺める佐々木の目を
穴が開けとばかりに睨みつけた
佐々木は動じる事もなく話し続けた

「彼女のお守りをして
 これからもずっと振り回されて
 危険が迫るたびにそうするのか?
 それじゃ君の気持はどうなるんだ?
 一生そんな事を続けるつもりなのか?」

佐々木
やっぱりお前は何も分かっちゃいない
俺の事を何も理解していない
自分を犠牲にしてハルヒの面倒をみるって?
バカ言ってんじゃねーよ

お前は確かに頭のいいヤツだよ
よく考えてると思うよ
ハルヒの行動パターンも俺の事も
よく研究したもんだよ

けどな佐々木
お前が1つだけ見落とした事があるぞ
俺も成長してるって事だよ
この1年で大きく変わったよ俺は

俺が変わったことはたくさんあるけどな
その1つがこれだ

俺はいやいややってるんじゃない
自分がしたいからするんだよ
俺はハルヒと
キスしたいからするんだ

口をパクパクさせてもがくハルヒにそっと顔を近づけた
ギョッとした目で俺を見上げていたハルヒは
俺の行動を理解したのか
そっと目を閉じた

俺は
自分の意志で
ハルヒにキスをした

時間が止まった
吹きすさぶ風の音も聞こえなくなった
佐々木が何かを叫んでいたが
その声すら耳に入らなくなった
ハルヒの体から力が抜け
そして・・・・・・



(同じ時間に、別の次元で)

新しい登場人物を見て
古泉と朝比奈さんは腰を抜かしそうに驚いていた

「ごめんなさーい
 こんなに早く来るつもりはなかったんですけどー
 あちらの皆さんがちょっとお急ぎだったみたいなんで
 そろそろ始めさせていただきまーす」

「あなたは・・・・・・?」

「はい先輩、その節はどうも」

「あわわわわ・・・」

「先輩にもお茶をご馳走になって、ありがとうございます
 本当はちゃんとSOS団に入って
 たくさん冒険したかったんですけど・・・」

「ちょっとあんた、こないだの新入生じゃないの」

「はい!涼宮先輩!
 だけどちょっと待ってて下さいね、場所を変えますから」

その北高の新入生はニッコリ笑って
手にした小さな金属の棒を振った
幾何学模様の入った細い棒がキラリと輝き
ハルヒと佐々木の姿がポンと消えた

「何をしたんですか?」

「ご心配なく、後でまた来られると思います
 でもまだ主役の登場には早いので
 先にみんなで行くことにします」

「あなたはいったい?」

古泉の質問には答えず、新入生は再びオーパーツを振った
今度は空間がグニャリとねじれ、全員の姿が消えた

「く・・・・・・・」

ズキズキするこめかみをさすりながら古泉が起き上がった
そして周囲の景色を見てギョッとした

周りは一面の宇宙空間で、真っ黒な地面がはるか先まで広がっていた
星空以外に何のディテールも見分けられない
ただの真っ黒な平面だった

そこには全員がいるようだった
ピクリとも動かない長門の側には朝比奈さんが横たわり
少し距離を置いて橘京子、藤原、そして周防九曜がいた
全員が気を失っているのか、黒い地面に突っ伏していた
立っているのはただ1人、まだ名前も覚えていない新入生1人だった
素早く意識を取り戻した古泉が詰問した

「まずはあなたの事を聞かせてもらいましょうか」

「ふふふ先輩、さすがですね
 こんな時にも理性的です」

「質問に答えて下さい」

「ここは皆さんの地球とは別の世界です
 そしてご覧の通り、何もありません」

「別の惑星という事ですか?」

「別という表現がふさわしいのかは分かりません
 でも地球から宇宙船に乗ってもたどり着けない場所です」

古泉は長門をチラリと見た
長門ならもう少し詳しく解析してくれるかもしれないが
長門はまだ気を失ったままだった

「銀河系の1惑星ではないと?」

「たぶんそうです。どう説明したらいいのか分かりませんけど」

「まさか、異世界だとか」

「言葉の意味ではそれが一番近いですね
 とにかく、普通の手段では行き来する事はできません」

「僕たちをここに引き込んだ理由は?」

「それは皆さんが目を覚まされてからご説明します」

「長門さんと朝比奈さんの様子を見ても構いませんか?」

「もちろんです、早く起こしてあげて下さい」

古泉は素早く移動して朝比奈さんを揺り起こした
朝比奈さんはすぐに目を覚まし、置かれている状況を見て予想通りの悲鳴を上げた

「ひゃぁぁぁこっこここここどこなんですかぁーっ?」

「落ち着いて下さい朝比奈さん、僕にもまだ分かりません
 とにかく落ち着きましょう」

「ふわぁぁぁ」

「長門さんはどうですか?」

長門はずっと変わらない姿勢で眠っている
布団はもうなかったが、几帳面に制服姿だった
その格好のままで寝ていたのか
さすがに靴は履いていないが、靴下はちゃんと履いていた

古泉が揺り動かしても全く動かない
その体はまだ熱く、呼吸も浅く小さかった

「長門さん・・・さっきと変わりませんね」

ようやく落ち着き始めた朝比奈さんがつぶやく

「涼宮さんもいなくなってしまいましたし、これは厄介です」

その頃には敵の集団も目を覚ましており、頭を振りながら起き上ってきた
周防九曜は起き上がるなり長門にひたと視線を向けている
何か呪詛でもしているように、人差し指を小さく振っている
古泉がさりげなく長門をかばうように立ち、新入生に目を向けた

「1人を除いて全員目を覚ましました」

「はい、それでは説明させていただきます
 ここは地球がある銀河系とはまた別の空間にある世界です
 詳しい事は分かりません
 異次元とか異世界とか、たぶんそういう世界だと思います
 そしてここは私の生まれた世界です」

「あなたの世界?」

「はいそうです
 ここには私1人しかいません
 そしてご覧の通り、ここは死に絶えた世界です
 原因は分かりませんが、植物も生えず、何の生命もない世界です
 生命どころか、それを誕生させるエネルギーすらない世界なのです
 私はここで1人で生まれ、1人で暮らしてきました」

「ちょっと待って下さい
 生命のない世界でどうしてあなたが生まれたんですか?」

「それは私にも分かりません
 ただ、生命をはぐくむエネルギーが枯渇したのは
 たぶんそんなに昔ではないと思うんです
 私は最後の生き残りなんじゃないのかなって」

「それと僕たちが集められた事との関係は?」

「もう少し聞いて下さいね
 私が生まれた時に、側にこの棒が転がっていたんです」

「そのオーパーツですか?」

「オーパーツって言うんですかこれ?
 名前なんかつけたことなかったんですけど
 一人ぼっちで生まれた私にこの棒がいろいろ教えてくれました
 成長するのに必要なエネルギーも与えてくれました
 そして、別の世界には豊富なエネルギーがあるという事も教わりました
 皆さんに集まってもらったのは、そのエネルギーを分けてもらいたいからなのです」

「分かりませんね」

「でしょうね先輩
 だって私にも何も分かってないんですから
 この棒に指示されて
 私は別世界への旅に出かけました
 そうするより他に方法はなかったのです
 ここにいつまでいても一人ぼっちだし
 そして長い旅の後に、あの地球に到達したんです」

「どうして地球に?」

「それも分かりません
 この棒の指示通りに進んでいくと地球に着いたのです
 ただ・・・地球に着くとこの棒は消えていて
 私は何も覚えていませんでした
 何の記憶もないままに、私はただこの棒を探しました
 この棒を探す事だけが記憶に残っていたのです」

「北高に入ったのはそれを見つけてから?それとも記憶が戻ったから?」

「棒を見つけたのはつい最近です
 北高の近くにあることが分かったので、私は北高に入学しました
 いろいろ情報を操作するのは大変でしたけど、何とか合格して、腰を据えて探そうと思ったのです
 そしてSOS団の事を知りました
 とっても面白いグループだって聞いて、しかも部員を募集するって言うから
 さっそく入部希望しました
 今さらこんなこと言うのも変ですけど、本当に入部したかったんです
 だけど・・・そちらの皆さんが動くのが早すぎて、遊んでられる状況じゃなくなってきたんで、それで申し訳ないんですけど、大きなお屋敷に忍び込んでこの棒を取り戻し、あのマンションに行ったってわけです」

「あっ・・・あのっ・・・キョンくんと離れちゃったのもあなたの操作ですか?」

「キョン先輩って、あの面白い方ですよね
 うふふふ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなくって
 キョン先輩の事は私は知りません
 ここにおられないんであれって思ったんですけど」

「そろそろいいでしょう、ここに連れてきた目的を教えて下さい」

「それはそこの先輩次第です」

新入生が声をかけた瞬間、周防九曜がビクリと動いた

「・・・・・・ここは・・・楽しい空間・・・・・・心が・・・躍る・・・」

周防九曜はそうつぶやいて、長門に歩み寄った

「待って下さい、長門さんは意識不明です
 彼女を回復する方法はありませんか?」

「・・・・・・あなたの・・・瞳も・・・きれいね・・・・・・」

周防九曜の指先がぼんやり光り、1本の光の矢が長門に向かって走った
古泉が素早く回り込んでその矢を叩き落とした

「ん・・・これは?」

古泉の体が赤く輝き始め、閉鎖空間にいるような球体に変化した

「ふえぇぇぇー、古泉くぅーん」

「ここでは僕の力が有効に使えるようですね」

赤い光球と化した古泉は、地面からフワリと浮かび上がった

「それでは説明になっていませんね周防さん
 挨拶もなしでいきなり攻撃ですか?」

「・・・・・・ここで戦えば・・・この世界は生まれ変わる」

「それはどういう意味なのでしょうか?」

「ごめんなさい古泉先輩
 つまり皆さんにここで戦ってもらい、そこで生じる膨大な生命エネルギーを少し分けていただきたいのです
 もちろんそれによって皆さんの戦いに影響はないと思います
 私は余剰エネルギーをいただくだけですから」

「つまり、ここで僕たちを意味なく戦わせて生体エネルギーを放射させ、それをそのオーパーツが吸収してこの世界を再生するとでも?」

「ごめんなさい、私にちゃんと説明できる知識はないんです
 ただ、佐々木さんのチームが皆さんと戦うという話を聞いたので、それならぜひここを使って下さいと申し上げただけなんです」

「それでははっきり申し上げましょう
 我々SOS団は戦いなど望みません
 こんな事をしても無駄です」

一瞬殺意を盛り上げた古泉だったが、すぐに冷静になり元の姿に戻った

「ケンカはダメですぅ!危ないですぅ
 それに・・・それに・・・涼宮さんもキョンくんもいないし
 長門さんがこんな状況では戦えません」

「朝比奈さんのおっしゃる通りです
 我々には戦う意志も戦力もありません
 あなたには申し訳ないのですが、こんな事を受けるわけにはいきませんね」

「・・・・・・うるさい・・・・・・口が多すぎる・・・」

周防九曜が再び攻撃を仕掛けた
人差し指から数本の小さな矢が飛び出し、長門に命中する寸前に古泉が叩き落とした

「待って下さい、戦うつもりはありません」

「こここ古泉くん、もはや話しても無駄、かもしれませんね」

「朝比奈さん?」

「古泉くんは長門さんを守って下さい
 私も・・・・・・戦いますっ」

朝比奈さんの声に反応して、今まで黙っていた2人も前に出てきた

「ふっ、やっと俺の出番か」

そう言ったのは藤原だった

「わ、わ、わ、あんまり近づかないでくださぁい!」

「あんたにどれほどの事ができるのか、見せてもらうとするか」

「朝比奈さん!」

「おっと、あなたの相手はここにもいるのよ」

「橘京子・・・」

「キョンくんだけを別行動させたのは私たちの作戦よ
 今ごろ彼は私たちの組織に捕らえられてるわ」

「何ですって?」

「涼宮さんは佐々木さんが抑えているはず
 まあ抑えるほどの事もないでしょうけどね
 長門さんは周防さんが封印しているし、さあどう戦うつもりかしら?」

「ですから僕は戦いませ・・・」

橘京子の全身がぼんやり青く輝き始め、いくつかの光点に分かれて宙に浮いた
古泉も赤い光球に変わり、橘京子とにらみ合った

「ほら、早く攻撃してみろ」

「うわっ、こ、こ、こ、来ないで下さーい!」

「朝比奈さん!」

「・・・・・・・べらべらしゃべる男は・・・美しくない」

周防九曜の攻撃が古泉に集中し、危うくかわしたその横から小さく分裂した橘京子の光球が襲いかかる
藤原はめんどくさそうに朝比奈さんの目の前に立ちはだかっている
おびえる朝比奈さんの姿がチカチカと点滅し、やがて空間から消滅した

「朝比奈さん!」

朝比奈さんはしばらく消えていたが、すぐにまた姿を現した

「あれ?」

「どうしましたか?」

「禁則が・・・・・・消えました」

「と言うと?」

「TPDDの使用制限が消えちゃいましたぁ・・・」

「それは、ここが異世界だからでしょう
 未来からの干渉がなくなったのではないですか?それと、TPDDはまだ使えますか?」

「はい・・・ちゃんとスイッチは入っています」

「それはよかった。朝比奈さん、あなたのその力で僕たちを守って下さい」

「わ、わ、わ、分かりましたぁっ!」

朝比奈さんはこめかみに指を当てて、小声でボソボソとつぶやいた
周防九曜の攻撃が動かない長門を襲ってくる
古泉が急いで防御するが間に合わない
小さな数本の光の矢が長門に命中する寸前、長門の姿がパッと消え、数秒後にまた姿を現した
光の矢はその間に空間を空しく貫いただけだ

「こここ、これでいいんですか?」

「さすがは朝比奈さんです、素晴らしい作戦です」

「・・・・・・それは何?・・・・・・認められない・・・・・・」

周防九曜は今度は朝比奈さんに向けて矢を放つ
朝比奈さんの姿がパッと消えて、少し離れた場所にまた姿を現した

「すごい・・・TPDDにこんな使い方ができるなんて・・・」

「・・・・・・・気に入らない・・・・・・それは・・・美しくない・・・・・・」

周防九曜は狂ったように矢を発射させ続けた
そのたびに古泉が防御に飛び回り、朝比奈さんは姿を消し続けた

「ふっ、面白くなってきたな」

藤原がやおら腰を上げると、手のひらを朝比奈さんに向けた
姿を消そうとしていた朝比奈さんがグラリとバランスを崩し、その胸に数本の矢が突き刺さろうとする
その寸前に危うく古泉が飛び込んできた

「大丈夫ですか朝比奈さん?」

「ふえぇぇぇ、大丈夫ですぅ
 でもこれをずっと続けるんですか?」

「続けるしかないでしょう
 長門さんが目覚めるまで、そして・・・・・・」



(またキョンの世界)

硬直するハルヒの唇に俺はキスをした
ハルヒの体がぐったりと弛緩し、そしてガタガタと震え出した

おいハルヒ
大丈夫か?どうしたんだ?

「ョン・・・・・・」

えっ?

「ジョン・・・・・・」

ああ

「ジョン・スミス」

ああ
あれ?
声が出るぞ
おいハルヒ!しっかりしろ!

「ジョン・・・・・・あんただったのね」

ああそうだ
俺がジョン・スミスだ

「やっと会えたんだ・・・
 やっぱりあんただったのね」

気付いてたのか?

「ううん、何となくそんな気がしてただけ
 そうだったらいいのになって」

悪かったな
こんなに報告が遅くなっちまって

「いいの・・・嬉しいから」

いいかハルヒ、よく聞け
俺は確かにジョン・スミスだ
あの時東中に行って校庭にあの絵を描くのを手伝った
それから背負ってたのは朝比奈さんだ
朝比奈さんが俺を3、いや4年前に連れてってくれたんだ

「みくるちゃんが?」

そうだ
朝比奈さんは未来から来た
TPDDっていう装置を使って時間を自由に行き来できる
ついでに言うとあの後『世界を救うためのどうたらこうたら』と言ったのも俺だ

「マジで?」

ああ
まだあるぞ
実はあの時ちょっとした手違いがあって未来に帰れなくなった
その時に俺たちを助けてくれたのが長門だ

「有希が?」

そうだ
長門の魔法みたいな力で3年間時間を止めてもらって
俺と朝比奈さんは現代に帰って来れたんだ
長門の不思議な力はお前も覚えがあるんじゃないか?
あいつは宇宙人が作った俺たちとのコンタクト用インターフェイスだ

「コンタクト用?」

ああ
ちょっと説明すると長くなるけどな
この銀河系の真ん中で俺たちの事をずっと見ているような存在だ

それから去年、お前と一緒に不思議な空間に閉じ込められた事があっただろ
あの時に出てきた青い怪人だけどな
あれが暴れ出すとこの世界がとんでもない事になっちまうから、退治するって言うか、あれを消すための組織がある
超能力者集団って言うのか、そのメンバーが古泉だ

「・・・・・・」

つまりだ
宇宙人も未来人も超能力者もみんなお前の側にいるってことだよ
いつでもお前の側にいて、いつでも一緒に遊んでたじゃないか

呆然としていたハルヒの目がギラギラと輝いて来る
もう少しだ
頑張れ俺!

俺はまたあいつらと一緒に遊びたいぞ
全員俺たちの大事な仲間だ
だけどなハルヒ、俺が一番心配なのは
お前の事だ
お前がみんなの事を心配し過ぎてフラフラになってる所なんか見たくないんだよ

お前はSOS団の団長だ
いつも何でも好きな事をやればいい
後は俺たちがいくらでも後始末してやるから

「キョン・・・」

長門の事も古泉も朝比奈さんももちろん心配だけどな
今俺が見たいのは、お前の元気な姿なんだよ
俺が大好きな
涼宮ハルヒの突拍子もない姿なんだよ

頼む!ハルヒ!
長門を助けてくれ
朝比奈さんも古泉も
今ごろお前がいなくて不安なんだぞ
さあ、早く行ってみんなを助けてやろうぜ

「キョン・・・」

目をらんらんと輝かせたハルヒの全身から不思議なオーラが広がりだし
たちまちのうちに佐々木が作ったベージュの空間を吹き払った

「行くわよキョン」

ああいつでもいいぞハルヒ

「有希を助けにね!」


(同じ時間、別の世界で)

「古泉くぅーん・・・ちょっと厳しいですぅ」

「朝比奈さん、もう少し頑張りましょう!
 きっと涼宮さんが助けに来てくれるはずです」

「うぇーん、涼宮さーん・・・」

朝比奈さんは藤原の妨害を乗り越えながら古泉と長門を次々に時間移動で防御し、古泉は襲い来る周防九曜の矢から長門をガードしている
そのすきをついて橘京子はひたすらゲリラ攻撃を続け、古泉一人では防げなくなってきていた
朝比奈さんが泣きながらハルヒの名を呼んだ瞬間に、長門の前にまばゆく白い光が輝いた

「あいやーっ!」

朝比奈さんが叫んで長門のもとに駆け寄ろうとしてつまずいて転んでしまうが
その白い光の中から現れた人影を見て、朝比奈さんも古泉も驚きに目を丸くした

「うふっ、お久しぶり」

その人物は登場するが早いか、襲ってきた周防九曜の矢を握りつぶし、逆に周防めがけて撃ち返した

「あなたは・・・・・・」

「長門さんが危険だって聞いたから助けに来たの
 ごめんね遅くなっちゃって」

「朝倉さん・・・・・・」

「覚えててくれたのね、嬉しい!」

「・・・・・・お前は・・・・・・美しくない・・・・・・」

「あら、ご挨拶ね。せっかく1年ぶりに登場したっていうのに」

光の中から現れた朝倉涼子は、次々と襲い来る光の矢を素手で握りつぶしながら
分裂して攻撃してくる橘京子の赤い光をまるでハエでも叩いているかのように楽々と落としている

「朝倉さん、情報統合思念体に戻ったのではなかったのですか?」

「そうよ、向こうにいるのよ
 でも今のこの私はまたそれとは別の存在
 私をここに呼んでくれたのはね、涼宮さんよ」

「涼宮さん?」

「そう、彼女ももうすぐここに来るわ
 もちろんキョンくんも一緒にね」

「本当ですか?」

「もう少しよ、今ごろはここへの抜け道を探しているはず。だからそれまで頑張るのよ」

「はい!」

古泉は久しぶりの笑顔を見せた
かなりやつれた表情だが
朝倉涼子の登場と、ハルヒがもうそこまで来ているという情報に新たな力を得たように
朝比奈さんを助けて明るく輝き出した

その光景を少し離れた所から見ている女子高生がいた
北高の制服を着た新入部員は、手に持ったオーパーツが輝きを増すのを嬉々として見つめていた

「うふふふふ
 やっぱりすごいエネルギーですね
 地球を選んで正解だったかな?
 こんなにたくさんの異人種の戦いが見られるなんて」


(またもやキョンの世界)

ついに覚醒した涼宮ハルヒ
そのハルヒの目にもう涙はない
キッとまっすぐ佐々木を睨みつけて

「もういいでしょうこれで
 私は有希の所に行くから
 あんたも来るんでしょ?
 それとも何よ
 部下を放っとくのがそっちのやり方なの?」

「いいえ。そうじゃないわ。私はあくまで時間稼ぎだから
 あなたがついに目覚めた以上は私もあちらに合流します
 では後ほど」

おい佐々木!
向こうでいったい何が起こってるんだよ

「それは自分の目で確かめてね」

チッ
佐々木のやつ、どうなっちまってるんだ
まさかあいつらに言いくるめられて
本気で神様になろうなんて思ってるんじゃないだろうな
ん?という事は
本気で戦うつもりなのか?

「ちょっとキョン」

あ?何だ

「これからどうやったらいいのよ?」

へ?

「あんたがジョン・スミスであたしに何かの力があるんでしょ?
 じゃあそれをどう使ったらいいのよ?」

ああそれか
何でもいいんだよ
お前が心で思うだけでたいがいの事はかなうからな

映画撮った時の事を思い出せ
朝比奈さんの目からビームが飛び出したり、秋に桜が咲いたり
あんまり思い出したくない過去だけどな、全部お前の力でやった事だ

「本当なの?」

ああそうですよ
それがお前の力だ

「くっ・・・
 何でそれをもっと早く教えてくれなかったのよ!バカキョン!
 そんな楽しい事があるのなら、もっとやりたい事がいっぱいあったのに!」

だからお前には教えなかったんだよ
お前が自覚して何か始めてしまったら、お釈迦様でもびっくりってもんだからな

「しないわよそんな事!ちゃんと地球の平和を祈ってるわよ!」

まあとにかく終わってから好きなだけ祈ってくれ
まずは長門を助けるのが先だ
とにかく長門の部屋に入るぞ

「だって、有希のマンションは消えてるじゃないの」

だからそれをお前が何とかするんだよ

「どうするって言うのよバカキョン!」

知らん。お前が考えろ
そのバリヤーの向こうに長門の部屋があると思って押してみろ
もしかしたらバリヤーがビリッと破れて
そこには長門の寝室が

「あったわよキョン!早く入んなさい!」

って本当に押したんかい!マジかよこいつ
ハルヒが両手をバリヤーにかけてメリメリと引き裂いたら
そこに開いた空間から見慣れた長門の部屋につながっていた

おいハルヒ
長門の部屋は7階のはずだぞ
なんでこの1階から行けるんだよ

「あんたがそうしろって言ったからじゃないの!」

目を逆三角形に釣り上げるハルヒに引っ張られ、俺は開いた隙間から長門の部屋に侵入した
ハルヒはズカズカと居間を通り抜け、和室の扉を開いた

「いないわよキョン!」

部屋の中央に布団が一組敷かれていたが長門の姿はない
もちろん古泉と朝比奈さんもいない
そして侵入してきた佐々木の仲間たちもいなかった

「どこに行ったのかしらね?」

さあどこだろう
次にハルヒに何をさせればいいのか

俺はもう一度居間に戻ってみた
北高の通学カバンがいくつか置かれていた
おそらくハルヒ達のだろう
あれ?そう言えば俺のカバンはどこに置いたっけか?
きっと鶴屋さんの家に忘れてきたに違いない

「ちょっとキョン!」

ハルヒに呼ばれて部屋に入ると、ハルヒは1枚の大きな額の前に立っていた

「あんたこんなの見覚えある?」

その額には奇妙な絵が飾られていた
黒い画用紙の真ん中に、グラデーション模様のアメーバのような絵が1枚入っている
長門にこんな趣味があったのか?

「おっかしいわねー、さっき来た時はこんなのなかったような気がする」

おい
本当かハルヒ?

「はっきり覚えてないんだけど
 こんな気持ち悪い絵があったら絶対記憶してるはずよ」

という事はおいハルヒ

「何よ?」

いつぞやの事件を思い出せ

「事件?」

そうだ
去年の暮れの事件だ
雪山で遭難した時のあのお屋敷だ

「あっ!」

あれと同じだ
もしかしたらこれは、長門が作ってくれた入口かもしれない
あいつらがいるどこかにつながってるのかもしれないぞ

「そうね!思い出したわ!あのクイズみたいなのね」

そうだ
どっかに方程式か何かのヒントが書いてないか?

2人でその額の周りを調べてみたが
メッセージのようなものはなかった
長門の布団もひっくり返してみて、何か手紙でも出て来ないかと思ったのだが
やはり何も出て来ない
和室を探索しているハルヒを置いて、俺は居間に戻った
何冊か置いてある本をパラパラとめくってみて栞などを探しているうちに
ハルヒが大声を上げた

「キョン!キョン!あったわよ!」

急いで和室に戻ると、ハルヒは額の周囲を指差していた

「これよこれ!」

何だこれ?

黒い画用紙のような額の周囲の金属の縁には、小さな数字が無数に並んでいた
0から9までの数字がデタラメに書いてある
虫眼鏡が欲しくなるぐらいの細かい文字だった

この数字の羅列に何か意味があるのか長門?
しかしお前のヒントはいつもこんなのばっかりだよな
オイラーの定理だとか何だとか
俺が数学苦手なのを分かってての事なのか?

それとももしかするとこれもまた長門流のジョークなのか
細かい数字を読んでるだけで頭が痛くなってくる

「これはキョン用の問題ね」

何だよハルヒ
お前まで俺をいじめるのかよ

「有希に感謝しなさいキョン!簡単な問題にしてくれてありがとうってね」

どこが簡単なんだよお前
俺にはまだ問題の意味すら理解できてないのに

「アホキョン!小学校で習ったでしょ!
 ゆとり教育でもこれぐらいは習ってるはずよ!」

俺はハルヒに首根っこを捕まえられて額の数字を口に出して読んだ
額には小さな菱形の模様が付けてあり、その一つ一つに数字が書いてある

286208998628034825342117067931415926535897932384626
43383279502884197169399375105820974944592307816406
数字はどんどん続いている

何だこれは
ハルヒはニッコリ笑って俺を見ている

「この数字に見覚えあるでしょ?」

何かの乱数表か?
2つか3つ置きに飛ばして読んだらメッセージが浮かび上がるとか

「違うわよ!もっとちゃんと読みなさい!」

ハルヒ、もうダメだ
こんな細かい数字をじっと見ていると眠くなってくる
お前と算数クイズやってる場合じゃないんだから

「もう!バカねまったくあんたは
 あと10秒だけ時間をあげるから考えなさい」

うるさいハルヒ
こんな数字で人間の一生が決まるわけないんだから

「有希の命がかかってるでしょう!」

それでも分からんものは分からん
俺は何とかの定理などはさっぱり理解できん
それともこんなにたくさん数字が並んでいるのは円周率か何かか?

「ピンポーン!大正解っ!」

えっ
本当に正解なのか?

「そうよ、こんなの5秒で気付きなさいよキョンのくせに」

くせには余計だ
それでこの円周率がどうしたっていうんだよ

「円周率の最初の数字は?」

3.14だから3だろ

「そう!普通数字はどっちから書く?」

どっからって左上からか?

「そういう事!
 この額の数字はバラバラだけど
 この314の所を左上に置き直すと・・・・・・」

ハルヒが額を回転させ、円周率の最初の314が左上に来るようにセットすると
ブルンと音がして黒い画用紙が震えた

「ほらねキョン
 頭は生きてるうちに使わないと毛が抜けちゃうのよ」

画用紙と思っていた黒い絵は、向きを変えた途端にプルプルと震え出し、まるで羊羹かコーヒーゼリーのような表面に変わっていた

「さあ行くわよキョン!」

ちょい待ちハルヒ!
行くってどこに行くんだ?

「決まってるじゃないの、ここに飛び込むのよ」

ちょ、ちょっと待て
確かにこの感じじゃ向こうに何かがありそうだけど
一応調べてみてからの方がいいんじゃないのか?

「そんな暇があるわけないでしょう!
 あんたがモタモタしてる間に有希に何かあったらどうすんのよっ!
 あたしは行くからね
 あんたは動物実験でも人体実験でも何でもやってから来なさい」

ハルヒは少し後ろに下がり、距離を計って助走しようとしている
待てハルヒさん
分かったよ俺も行きますから

プルプルと震える額はかなり大きく、二人同時でも入れそうだった
俺とハルヒは部屋の反対側まで移動し、呼吸を合わせて助走した
そして頭から飛び込んだ

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

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その3に続く

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