夏休みも終わって進学期が始まり、しばらくがたった。
俺は秋の訪れを感じさせる涼しげな風にあたりながら、学校へ向かっていた。
今日は偶然というべきだろうか?
俺は登校途中でハルヒと出会った。
ハルヒ「あらキョン。」
キョン「よお、ハルヒ。」
ハルヒ「ええ。」
お前の挨拶は二語だけか?
俺は黙ってハルヒの隣をついていった。
キョン「…。」
ハルヒ「…。」
俺とハルヒの間には季節はずれの蝉すら泣けないほどの沈黙が流れた。

それもそのはず、ハルヒがさっきからしきりに下を向いているからな。
キョン「ハルヒ、なんだか元気無いみたいじゃないか。」
ハルヒ「…。」
キョン「何だ、様子が変だぞ。何か悩みでもあるのか?」
ハルヒ「ゴメン。」
俺は言葉を失った。

なぜいきなり謝られないといけないんだ?
それってどういう意味だ?
ハルヒ「ゴメン。別に悪い意味でいったわけじゃないのよ。ただ、キョンがそんな心配性だなんて思わなかっただけ。」
キョン「おい、何が言いたいんだ!?」
キョン「・・・。」
ハルヒらしくない。
そう思ったが、口に出せなかった。
口に出したところでハルヒが混乱するだけだ。
ハルヒ「じゃあたし、先行くわ。キョンも後から来るのよ!」
ハルヒは俺にそう言い渡して、先行ってしまった。
俺はポカンと口を開けたまま、しばらくそこにたたずんでいた。
キョン「…。」

 


さて、場面は変わっていつもの2年5組の教室である。
まあ、別名俺のクラスと言ったところか。
今日はいつもよりも学校に来る時間が早かった。
俺は自分のすぐ後ろのハルヒの席を見たが、そこにハルヒはいなかった。
キョン「…珍しいな。」
俺がそう呟いた時だった。
「どうかしたの?」
ふと誰が後ろを向いている俺に対して正面から話しかけてきた。
キョン「…阪中。」
俺は振り向くと同時に不意に目に入ったその人物の名前を声に出してしまった。
阪中「涼宮さんのことが気になるのね?」
キョン「…別にハルヒの朝の様子がおかしかったから、それでちょっと心配してただけだ。」
俺は阪中が変な冷やかしをするような人じゃないと信じていたが、それでも人間の防衛本能のせいか阪中の妙な言葉にイライラした。
だが、それもどうやらしばしの間だけで、ストレスはすぐに解消されることとなった。
阪中「涼宮さんならきっと屋上よ。キョンくんが行ってあげるのが一番なのね。」
そうかい、どうやらハルヒは俺が知らなきゃいけないことを何故か隠しているようだ。
あくまで阪中から聞いた話による推測ではあるが…。
まあ、善は急げだ。
俺は早足で屋上へ向かった。
阪中「あ、キョンくん待って!」

 

 

 

俺と阪中はハルヒのいる屋上へと急いだ。
キョン「ハルヒ!」
ハルヒは俺の目の前にいた。
ハルヒはしばらくした後、ようやくこちらの存在に気付き、近寄ってきた。
ハルヒ「キョン・・・。それに・・・。」
阪中「涼宮さん、心配したのね。」
俺より先に阪中が喋り出した。
ハルヒ「ふーん。」
キョン「ハルヒ・・・。」
そこまで言ったところで俺は言葉に詰まった。
前と同じ聞き方をしたところで「しつこい」と追い返されるだけだろう。
だからと言って、他に何かハルヒが話してくれそうな問い方があるのか?
キョン「・・・。」
でも、このままじゃダメだ。
何か…何か言わなければ・・・!
キョン「ハルヒ、お前は俺のことがそんなに頼りないか?」
ハルヒ「…はあ?ばっかじゃないの?」
キョン「誰が馬鹿だと?」
ハルヒ「あんたよ。妙なところで心配性なのよね、ホント。」
すまん、どうやら早くもスイッチが入ってしまったようだ。
キョン「…そういう強がりが余計に心配かけているんだよ!馬鹿野郎!!」
俺がそう言ったとたん、ハルヒも阪中もビクッとした。
キョン「俺達はSOS団の仲間だろう!?お前が何やら様子がおかしいのはまる分かりなんだ。」
ハルヒ「そう…。じゃあ言わせてもらうわ。」
ハルヒはそれからとんでもないことを口走りやがったのである。
キョン「は?今、何と?」
ハルヒ「だから、SOS団をそろそろ解散にしようかと思うの。」
キョン「な、何でだ!?」
ハルヒ「飽きちゃったのよね…。ありもしない不思議を探そうだなんて。」
ハルヒ?
お前の言っていることが俺にはよく分からんぞ?
ハルヒ「毎日毎日同じ退屈した日々の繰り返し。正直飽きちゃった。」
キョン「おい、待てよ…。ハルヒ、お前は何を言ってるんだ?
お前SOS団の活動、いつも楽しそうにしてたじゃないか。
俺の胸がむしょうにそわそわしてきた。
これはそろそろまじでやばいなと俺の本能が知らせている合図だ。
ハルヒ「…とにかく、あたしは今日からSOS団には参加しないわ。今後のことは残ったメンバーで話し合って。」
そう言って、ハルヒは屋上を出ようとする。

畜生・・・このまま行かせてたまるか!

 

 

 

キョン「待ちやがれ!ハルヒ!!」

 

 

 

ハルヒは屋上の出口の前で止まってくれた。

やれやれ、間一髪だったな・・・。

キョン「お前の言ってることは嘘だな。」
ハルヒ「なっ…あんたに何が分かるっていうのよ!?」
キョン「ハルヒ…、お前が立ち上げたSOS団をこんな簡単に解散させようと思うはずないんだよ。もっとちゃんとした、SOS団に居づらくなった決定的な理由があるんだろう?」
俺は鋭い目でハルヒを睨んだ。
ハルヒ「うっ…。」
阪中「涼宮さん。何があったの?。」
ハルヒ「……。」
キョン「…俺達は仲間だろう?団長さんが仲間を頼れないなんて、情けない話だぜ?」
ハルヒ「……キョン。…あたし、怖かったのよ。SOS団のメンバーがあたしを嫌っているんじゃないかって。」
どうして今更そんなことを気にするんだ?
ハルヒ「分かんない。でも、何だかふと気になるようになって…。」
俺は正直この時驚いたね。
あのハルヒが他人の目を気にするなんてね・・・。
キョン「ハルヒ。お前には分かるか?『仲間に嫌われる』というのがどういうときか。」
ハルヒ「……。」
ハルヒが普段じゃ決して見ることの出来ない不安そうな表情で俺を見つめてくる。
キョン「ハルヒが本気で嫌われたくないとか考えているなら、もっと仲間を頼れ!俺達を信じろ!」
そうだ、俺はハルヒに今までどうりにいてほしいんだ。

キョン「俺は少なくともお前のことを嫌いになりたくねぇ!」
ほんの一瞬、辺りから何一つ音がしないのを感じだ。
静まり返る中、俺はハルヒに言ってやった。
キョン「世界をおおいに盛り上げる涼宮ハルヒの団…。団長がいないと始まらないぜ。なあ、ハルヒ。」
阪中「…キョンくん…。」
ハルヒ「…キョン。勝手な行動をとった団長を許すの?」
キョン「ああ。」

そうだ、もっと俺にSOS団の楽しさを教えてくれよ。

 

 

 

放課後、ハルヒはSOS団にいつもどおりにやってきた。

いつもと同じ放課後の何気ない元文芸室での活動だったが、なんだろう?

ひとつだけ違う点があった。

キョン「ハルヒ・・・。」

ハルヒ「な、何よ?」

キョン「今日はポニーテールなんだな。」

ハルヒ「・・・。」

ハルヒはしばらく間をおいて、言った。

ハルヒ「今日から再スタートだから、記念にってね。」

―END―

 

 

 

 

 


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