あとがき


この作品は、『涼宮ハルヒの憂鬱』の舞台が兵庫県西宮市であることを知った時に着想を得ました。
舞台が西宮ということで、キャラクターの台詞をいわゆる「関西弁」にしたSSはないかと思い、色々とSSを読んでいましたが、単発の雑談ネタで原作の一場面を「関西弁」に訳した例があるくらい。二次創作で「関西弁」を使ったものはありませんでした。
「ないんだったら作ればいいのよ!」とは原作のハルヒの弁ですが、ちょうど担当者は大阪府出身で、兵庫県下にある西宮の近くの街に住んでいた時期もあるし、北口駅のモデルとなった阪急西宮北口駅も行ったことはある。加えて、身近には西宮市出身の友人もいる。条件は揃っていました。
もっとも、後に「関西弁」を使ったSSが皆無な理由を痛感することになりますが。
また、当時職場で大量の文書を校正する必要に迫られていて、校正の練習にもなって趣味と実益を兼ねられるかもと、軽い気持ちで書き始めました。ちなみに、こちらの目論見は成功したと思います。

 

Report.01


記念すべき第一作目。当時は読み切りのつもりでした。「関西弁」という表記があまり好きではないので、この時から「現地語」と呼称しています。
単に台詞を「現地語」に置き換えただけでは、単発の雑談ネタとあまり変わらないような気がするし、わざわざ「現地語」で書く理由をもっともらしく捏造した方が面白いかと思って、ネタを探していました。
そんな時目に留まったのが、当時繁忙期に入っていた職場で大量に目にしていた報告書。
ちょうど長門をメインにしようと思っていたので、報告書の文章の書き方が長門の語り口によく似ていると思い、『長門有希の報告』という題名が決まりました。報告書はどれも似たような書き出しだったので、それらを分析して導入部分を書きました。内容からではなくて、本当に題名、最初の部分、と順番に思い付きました。
作中でキョンが「(ハルヒは)新たな属性に目覚めたんじゃないか」と言っていますが、後に担当者自身が、この作品で新たな属性に目覚めることになるとは、当時は知る由もありません。

 

Report.02


読み切りのつもりで投稿した一作目が、意外に反響があったので、調子に乗って急遽書いた二作目。ネタを探していたところ、職場に新聞記者が来て、何やら金切り声を上げているのを聞いたのがきっかけです。
直接取材を受けていなくても、使えるコメントが取れなかったからといって恫喝したり、執拗に怒鳴り声を上げられたりすると、本当に仕事の邪魔になります。そこで、週刊誌の取材による被害などを思い出し、そこに『涼宮ハルヒの溜息』の映画撮影の話を合わせて、こんな内容になりました。
思いがけず話が続いたので、話数を付ける必要が生じましたが、メインタイトルは変えずに連作短編にするつもりだったので、『GS美神 極楽大作戦!!』から採りました。何の因果か、ネタ元と同様に、長く続く話がほとんどになりましたが。

 

Report.03、04


本当は前後編で終わらせ、現地語表記も終了する予定でした。しかし、まず話が長くなって中編と後編になりました。
そして、まとめの方にも掲載されたのですが、そこの注意書きに、台詞が一部現地語で書かれていることが記載されていました。それで引っ込みがつかなくなった……もとい、わざわざ注意書きまでしてもらったのに、今更やめるのもどうかということと、ここでやめたら他に例を見ないユニークさが失われてしまうということに気が付き、今後も現地語で通すことを決めました。
また、この頃になると、書いた作品に誘導されるように、話のネタが沸いてくるようになり、もうしばらくこの作品に付き合おうと決めました。

 

Report.05


この作品での長門のキャラが固まった、また、言い換えれば、長門のキャラが壊れたのが、この話。
SS読みの立場としては、担当者はどちらかと言うと原作重視派に属するのですが、実際に書くとなると大変で、また生来のお笑い好きも影響して、話としての面白さを優先するようになり、こんな長門になってしまいました。長門、ごめん。
長門とハルヒが精神的に急接近するなど、その後の話の方向性を決定付けた、この作品の転換点となった話です。
また、この頃はまだ抵抗していますが、担当者自身、何かに覚醒し始めています。

 

Report.06


……やらかしてしまいました。当初は前の話を受けて「エロス×ワロス」を目指していましたが、筆が滑ってどうにもエロスが強くなり過ぎました(現在はエロスの部分はかなり省略して改稿しています)。プリンスレのコンセプトである「甘い」作品に仕上げたつもりでした。そして頂いた感想は、
『甘いってかエロいww』『長門暴走しすぎだろwwwwww』『素晴らしいエロww』
長門が完全にぶっ壊れました。そして担当者も何かが吹っ切れました。

 

Report.07


路線を明確に自覚した話。担当者は完全にユキハル及び百合に目覚めました。長門の現地語会話、解禁。頂いた感想を総合すると、『和みながら勃つ百合布教作品』だそうです。
途中の「流布された情報に付加情報を付ける」のくだりは、学術論文を想定しています。様々な事象について研究が進んだ現代社会においては、全く独自の理論や研究というものは、そうそうありません。何かしら、先行する研究が存在するものです。
論文を書くに当たっては、そういった先行研究や類似研究の調査はとても重要です。やろうとしていることが既に研究されてしまっていれば、内容の修正を迫られますし、少しでも違っていれば、先行研究を踏まえた上で、自分の独自の考察を追加することになります。
そういった人間の営みを、長門に語らせてみました。

 

Report.08


基本的にこの作品は『現地語』、担当者は『現地語の人』として認識されていますが、とうとうこの話で『百合作者』とも呼ばれるようになりました。筆のおもむくままに書いていたらこうなった。今は反省も後悔もしていない。

 

Report.09


仕事の繁忙期も終わり、ハルヒと有希のデートを書きました。そして第2話から続いていた話もようやく完結。ハルヒがSOS団団長職に復帰しました。最後のキョンの台詞には、ようやくSS書きに復帰できたという担当者の喜びも表れています。シリーズを終わらせるつもりもなくなっていました。
ちなみに、駅前のショッピングモールの様子は、西宮北口駅前に実在する店舗のフロアガイドと、実在する店舗のメニューに従っています。

 

Report.10


インターミッションとなる実験作。
エロパロスレのハイテンションユッキーと、まとめにあるリスペクト・ザ・ハイテンションユッキーに触発された話。
とにかく色々やってみたくて、原作でも出てきたSQLと、コマンドプロンプトのメッセージを組み合わせています。声については、アニメ版の中の人の地声を想定。
この時の長門の台詞「人形にも人間にもなれない半端者」は、思わぬ伏線となって、後に第20話の朝倉の台詞と、第25話の長門の台詞で回収されました。
この頃から、「誰か(女)×長門」という構図が定着しました。

 

Report.11


第二部導入。後になってみれば、ですけど。当時はそこまで考えていませんでした。
話を考えている時期と前後して、プリンスレではちょうど朝倉のターンが来ていました。その時流に乗って、というわけではありませんが、何となく朝倉を出したいと考えていました。しかし、朝倉が復活する理由が弱くて考え込んでいたところ、その前段として、この話を思い付きました。
第2話でもそうでしたが、話の基点がオリジナルキャラになる傾向があるのかもしれません。

 

Report.12


ある意味TFEI端末編、の第二部開始。第一部で一気に距離が縮まったハルヒと長門が、今度はぶつかり合うような話。ハルヒの浮気現場を目撃してジェラシーな長門とか、ハルヒと長門の痴話喧嘩とか、痴情のもつれとか。そんな雰囲気が出せればと。
初めて全体の構成を考えて書き始めた話。この時点で既に、最終話の骨格は出来上がっていました。
また、この辺りで『長門有希の報告』シリーズ全体の長さを2クール分(全26話)にできたら面白いかな、と意識し始めています。

 

Report.13


議事録形式がやりたかった話。ただ話を書くだけでは物足りなくて、何かしら変わった要素を入れようとしています。特に文書構造での遊びが顕著ですね。

 

Report.14


じわじわと盛り上げていく回。三人称だからできる、ハルヒの様子の描写とハルヒ以外の人物たちの会話との対比や、複数場面の多元中継に焦点を置いています。それから、投稿時には外しましたが、思わせぶりな繋ぎが入っています。一度やってみたかった。

 

Report.15


やはり戦闘ものが好きなのでしょう。書かずにはいられませんでした。消失した長門が復活するお膳立てにも使っています。
朝倉の頭脳戦が好評でした。本当に書いていて楽しかった。

 

Report.16


できる限り全員の視点で書きたいと思って書いた、朝倉視点。原作での登場期間が短かったせいか、キャラクターに色が付いていなくて書きやすかったです。思えば、朝倉は本当に物語を引っ張ってくれました。
また、当時はプロバイダ規制が頻繁かつ長期で、投稿したくてもできない状態が続きましたが、続きを待っていると言ってくれる人がいて、プロバイダ規制に耐える力をもらいました。

 

Report.17、18


みんなの視点で書こうシリーズ。長門がいなかった喜緑隊の話をみくるに報告してもらいました。もう本編とは思えないほど、ネタ盛りだくさんです。鶴屋さんまで登場して、もう。

 

Report.19


ちょうど『涼宮ハルヒの分裂』が書店に並び始めた頃で、その内容に戦々恐々としていた頃に書いた話。第二部を書き始めた時には既に構想にあった展開ですが、実際の肉付けは困難を極めました。
ついにハルヒが長門に告白しますが、長門は立場上、ハルヒの告白を受け入れられません。でも長門の個人的な意思としては、ハルヒの告白を受け入れたい。そんな「許されざる恋」を書きたいと思ったのでした。

 

Report.20


この作品で一番苦労した話。本当に、寝ても醒めてもこの話のことを考えていましたから。
物語をぐいぐい引っ張ってくれて、本当に大活躍してくれた朝倉の、花道を作ろうと頑張りました。
終わり3分の1で雰囲気がガラッと変わります。読者の感想が、『やっぱりエロい』に始まり、『これは泣ける……』、そして『非常にエロ哀しいお話だった……』と変化していく様に、「計画通り」と担当者がほくそ笑んだかどうかは、定かではありません。

 

Report.21


長門とみくるが急接近。というのは本筋ではありませんが、この二人ももっと仲良くなってほしいなと思い、第10話以来の描写です。第19話の締めに当たり、相当早い段階で話は出来上がっていました。しかし、第20話が難航したため、なかなか投稿できなかった話。
『笹の葉ラプソディ』でハルヒが短冊に書き、原作で重要な場面に登場する言葉、「私は、ここにいる」に呼応して、長門に「あなたがここにいる。だからわたしもここにいる」と言わせることは、ずっと前から決めていました。
結局、第20話の難航のおかげで担当者は生みの苦しみを味わい、熟成の進んだ第21話にも良い影響を与えたと思っています。

 

Report.22、23


みんなの視点で書こうシリーズ、いよいよ観測対象本人の視点による報告です。全員の視点で書こうと思った時から、ハルヒ視点はこの形式しかないかなと思っていました。
しかし、そういった文書構造いじりだけではなく、書きたかった話も詰め込んでいます。それが、『涼宮ハルヒの手紙』と、第21話を受けた『追伸』。ハルヒの告白と、ハルヒ版の「長門は俺の嫁」宣言です。

 

Report.24


「最終話まで、あと2回!」な話。最終話までの投稿予告を打っての投稿でした。ここからの話は特に、『機械知性体たちの輪舞曲』の影響がとても強いと思います。
最終3話は、TFEI端末たちの「独立宣言」になっています。

 

Report.25


第二部『長門有希の憂鬱』完結編。喜緑江美里の心に革命が起きました。
担当者は、朝倉は原作で復活すると思っています。たとえそれが、ただの夢であっても。

 

Report.26


『長門有希の報告』最終話。
挿話自体はずっと前に書き上げていて、後はどこに入れるか、という段階でしたが、入れる場所がなくて最終話まで持ち越しました。おかげで所見に入りやすくなりましたが。
すべての始まりである第1話が、完全に「報告書」の形で始まっているので、すべての終わりである最終話は、やはりそれを受けた形にして、「報告書」として完成させたいと思っていました。報告書の締めは「所見」です。
この話を書いている時に、『情報統合思念体は、この報告を読んでどう思ってるんだろう』という感想があって、びっくりしました。やばい、展開を読まれてる、と。

 

Extra.01


『古泉の関西弁がおかしいw』とか『西宮はこんな言葉じゃねえw』とさんざん言われていたので、釈明というかボヤきをノリで書きました。まさかこの番外編もシリーズ化するとは思いませんでしたが。

 

Extra.02


最終回予想その1。原作の「宇宙人と未来人が仲良くお茶を点てている光景」というくだりを読んで思い浮かんだ話を、形にしてみました。
現地語訳は、いくらネイティブの人間でも、実際には相当疲れます。その理由は、第1話の冒頭に書いた通り、書き言葉が方言の表記に適していないからです。
そういった鬱憤を晴らすかのごとく、全編共通語で書いていました。本当に楽です。
とはいえ、この作品の肝はやはり「現地語」。夢オチということで現地語世界に帰ってきます。その結果、「夢の中は共通語」という裏設定が生まれ、番外編第3話にも採用されました。

 

Extra.03


最終回予想その2。これを念頭に、本編第7話が出来上がりました。
番外編第2話と同様、夢の中の話なので全編共通語です。

 

Extra.04


みんなの視点で書いてみようシリーズの端緒。
ハルヒとみくるの熱い女の友情を書こうとしたら、なぜか肉弾戦になってしまいました。なんでやねん。
『HERO‘Sを見ながらこれを読む。リアルだwww』『カカオ99%だなw』『これ、何てHERO‘S?』との感想を頂きました。

 

Extra.05


番外編第4話の長門視点と、その後の話。何か鼻血ネタが多いですね。

 

Extra.06


『方言表記は読む気がしない』という意見や、担当者自身も他の方言圏の人には意味が通じない箇所が多々あるだろうと思っていて、いつかは出そうと思っていた共通語版です。
『まるで吹き替え版を見ているような』という意見や、その他に色々頂いた意見やアイディアを元に、現在の「現地語・字幕併記」の形が生まれました。

 

Extra.07


みんなの視点で書いてみようシリーズ。
ある日ふと思った、『なぜ古泉一樹ら「機関」の人間は、何の見返りもなく閉鎖空間に向かうのか』という疑問を掘り下げてみました。
世界を守らなければならないという義務感とか、そういった辛いものではなくて、「機関」や超能力者も、ちょっとした『いいもの』をハルヒから受け取っている、という関係ならいいなと思います。
『ますます古泉が好きになった』という感想を頂きました。担当者は基本、登場人物は全員好きです。カップリング話などではしょっちゅう他のキャラを貶す発言が出ますが、そのような発言を見ると、とても悲しくなります。この作品を通じて、キャラクターの魅力が再発見されて好きになる人がいたなら、幸いです。

 

Appendix


感想で既に先を読まれてしまっていた、情報統合思念体視点の話。
「情報統合思念体=父」というネタは特に長門スレでよく見掛けますが、「情報統合思念体=母」というネタは見たことがなかったので、天邪鬼な担当者としては、当然母バージョンなわけで。独白であれだけ硬いことを言っておきながら、端末に入ると極めてファンキーなのは、仕様です。
この作品の、特に後半が思いっきり影響を受けた『機械知性体たちの輪舞曲』では、情報統合思念体と長門有希との関係が「父と娘の和解」として描かれていますが、この作品では、「母と娘」になっています。しかも母親の方は最初から分かっててやってるということで、ある意味「娘」を手玉にとっています。朝倉の「家出」さえも織り込み済みです。母は強し。


ほんの思い付きで始めた「現地語」による記述。それがあれよあれよと回を重ね、終わってみれば本編26話、番外編7話、後日談1話、連載期間10ヶ月という、長い旅になりました。担当者の筆の遅さと、珍しい「現地語」表記による読みづらさ。それにもかかわらず読んでくれ、また応援もしてくれて、いろいろとネタを提供してくれた読者さんたち。刺激を与えてくれた職人さんたち。本当に、ありがとうございました。
そして、そのような情熱を人々に与える作品を生み出した谷川流先生に、万歳。
 



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