揺れる街
涼宮せ…ハルヒと朝比奈さん…みくる、とはちょっと呼べない…は先に帰ってしまい、同じ街に住んでいる三人…長門、古泉、俺は合宿の余韻を残しつつ帰路につこうとしている。
駅を降りると、ストリートミュージシャンが、ブルースを弾いていた。固定されたコードが、かえって自由に響く。
ギターが弾く、もの悲しく、まるでこの世を悲しむような旋律。
ドラムが叩く、怒りと、この世に挑戦しようとする旋律。
長門の足が止まる。続いて、俺たちの足も止まる。
古泉のバイオリンは華麗(かれい)に、きれいに、人の声のように響いていく。
ええと、これは…よく知っているアニソンだ。ただ、いろんな曲が混じっている。
『俺たちは弾きまくるんだ』
弦が振動する。その振動は音となり、街に響いていく。響いて街に伝わっていく。
『そうやって、俺たちは伝えるんだ』
ベースが終わりの際の定番らしいコードを弾き、それを合図に古泉は演奏をやめる。
そして、いつの間にか集まっていた群衆に頭を下げる。
長門もフルートを両手で持ち、同じように頭を下げた。
たたえるように、大きな拍手が沸き起こる。
泣いていた人もいた。笑っている人もいた。
そんな人達もまた、泣きながら、笑いながら、拍手をしていた。
そんな群衆に交じって、俺は、足を鳴らしていた(管弦楽流の拍手)…否、足踏みを、していた。
揺れる道
続いて、ベース・ギター・ドラムが礼をする。
演奏者全員に惜しみない、大きな拍手が鳴り響く。
長門は照れたように眼鏡の縁をつまみ、古泉は極上のスマイルを放出する。
拍手は、道を揺らす。