もう一つの物語
UFOエンド『さ~て良い子みんな集まれ~。UFOエンディングが始まるよ~』

 


「きゃっ?」
 体が激流にのみこまれた小枝のようにクルクルと回るような感覚に陥った。どこかに堕ちて行くのかしら?ひょっとして地獄?ここのほうが地獄より酷いかもね。
 混乱する感覚。ここはどこ?あたしはどこに立っているの?
 キョン――。

 

 


「きゃあ?!」
 平衡感覚をゆっくりと取り戻しながら、少しずつ目を開けてみると……、
「…………………………………………は?」
 チープなコンピューターに、ドット絵で記されたモニター。
 窓から覗く風景は360度全面宇宙空間の大パノラマ。
「どうなってるの?」


『ハッピーバースデイチュユー~ハッピーバースデイチュユー~ハッピーバースデイディア涼宮さ~ん。ハッピーバースデイチュユー~』


 瞬間、波動砲を放ったような爆音が耳を突き刺した。
「誕生日おめでとうございます。涼宮閣下」
 オーバーヒートをおこしているあたしの頭を、さらに混乱させたのは、
「古泉君!?」
「ええ。あ、これは僕からの誕生日プレゼントです」
 柔和な微笑と一緒に花束をあたしに手渡した古泉君の服は、いつものおしゃれな私服ではなく、宇宙戦艦や地球防衛軍が着ていそうなSF丸出しなコスチュームだ。
「……早く着替えて」
「って!有希!?」
 いつも言ってるけど気配ぐらい出しときなさい!
「謝罪する」
 うん。ならいいわ……って!
「有希もどうしたの!?その格好!」
 有希の服もまた、下がミニスカ以外には、古泉君のSF丸出しコスチュームの亜種バージョンのようだ。
「……似合わない?」
 小首を傾げて濡れた仔犬みたいに言わないで!キュンとくるじゃない!めちゃくちゃ似合ってるわよ!
 落ち着け。落ち着け涼宮ハルヒ19歳。これは夢だ。ちょいとばかしヘビーな夢を見てるだけだ。まあ確かに今まで見ていた悪夢よりはライトだけど、これも充分ヘビーよ。ヘルプミーDrエメットブラウン!
「涼宮さあ~ん」
 は!この甘甘ロリロリ萌え萌えボイスは!
「みくるちゃ………………ん!?」
 そこにいたのは、明らかに地肌の面積の方が多い、水着のようなコスチュームを着たみくるちゃんだった。これはまずいわね。少年誌なら発禁、青年詩なら有害指定物だ。これなら『朝比奈ミクルの冒険』のエロエロウェイトレスの方がまだ健全よ。
「……っち。本編じゃ何の出番すら無かった分際で。あざといんだよ。この牛乳未来人が。てめーはすみっこでミクルビームでも撃ってろ」
 ゆ……有希?
「ふぇ~。万能すぎても、結局は涼宮さんの水先案内人しかできなかった器用貧乏貧乳宇宙人のくせに~」
 み、みくるちゃん!それは、もうちょっと宇宙人的な活躍をさせたかった作者の傷口もえぐってるから!
「ぶっ殺す!」
「やってみてくださ~い!」
「お、お二人とも、いくらカオスだからって、メタ的な話は読者も好みが」
「ガチホモは黙ってろ!」
「誰がガチホモだ!そして俺は古長派だ!」
 もっと言うと佐々キョン大好き!「月の微笑」よろしくね!
「情報連結解除!」
「ミクルビーム!」
「ふんもっふ!」

「斥力波!?」

 ああ!やっと来たわ普通人!
「キョン!大変なの!有希とみくるちゃんと古泉君がけんかを始めちゃったの!」
「そのようだな。おいおい、そろそろ本題に入ろうぜ」
 キョンの手の平で鳴る乾いた音が、三人の取っ組み合いを緊急中断させた。って、本題?
「ハルヒ忘れたのか?今日はお前の誕生日だろ?」

 

 

 


「………………ああ!そうだったわね」
 いや~、キョンが死んだり、朝倉と佐々木に殺されかけたりとかされたから、すっかり忘れてたわ♪
「そういうことだよ。涼宮さん」
「お誕生日おめでとう。ね?」
 朝倉と佐々木!?なんであんたらがここにいるの!?
 すると視界の片隅の断崖絶壁で、有希が黄色いヘルメットとプラカードを持ってVサインを作っているのを発見した。
「全部ドッキリだったの?!」
「そうだよ。涼宮さんの誕生日を祝いたいと、キョンから言われてね。私も久しぶりにみんなに会いたかったし、ノリノリに参加させてもらったよ」
 ……ひどい。本当に殺されると思ったじゃない。
「もういいじゃない。大団円大団円」
 ま、それもそうね。
「さーてハルヒ。いつまでも現代チックな格好じゃなく、この宇宙ステーションに合うドレスに着替えてくれ。ほらよ」
「これ!アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」射手座の日にあたしが着たコスチュームじゃない!」
 やった!一回ガチで着てみたかったのよね!

 


「どう?」
「大変お似合いかと」
「ふぇ~。凛々しいです~」
「……GJ」
「ハルヒ、似合ってるぞ」
 当たり前でしょ!なぜならあたしは、天下無敵宇宙最強のSOS団の団長様だからよ!
 人差し指を天高く突きつけ、思いっきりスカッと決まった瞬間だった。

 


『コンピ研に栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
『部長!それは死亡フラグです!』

 


 始まる前から終わってるわ!
 モニターを見ると、明らかに版権ギリギリ著作権の侵害にあたりそうな戦艦が、宇宙空間に浮かんでいた。
「長門!コンピ研の奴らが、ポンコツ宇宙戦艦で来やがったぞ!」
「ふぇ~、またですか~?」
「しつこい」
「こりない連中ですね」
「各員配置につきなさい!今度こそ奴らを宇宙の塵に還してやるわ!」
「ラジャー!」


「ミクルビーム!」
「情報連結の解除」
「ふんもっふ!」
「落ちろ蚊トンボ!」
「吹き飛びなさい!波動胞発ッ射ァ!」

 

 


 ダダンダンダン!
 ダダンダンダン!
 穏やかなる俺の日常は、ある圧倒的な存在によって激げ……ん?こんな時間に誰……ギャァ!


 THE END


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