<Yuki.N>
髪が風で乱れる。
窓辺からは少し暖かい風。
季節は夏。
わたし-ヒューマノイド・インターフェースにとっては五度目の夏。
でもこの夏は今までわたしが経験してきたものとは違う。
ある大きな存在が、わたしを変えたのだ。有機生命体の“心”というものが、芽生えてきたのかもしれない。
でもそれは、単なる予測だから。
たとえそれがわたしの願いだったとしても。
<Kyon>
暑い。
ただただ、暑い。
SOS団なる非公認組織のアジト、文芸部室に行く足取りも重い。
期末テストも間近に控え、俺はもう気分的に終わっていた。同じクラスのハルヒ、古泉、長門は全然余裕だろうし、国木田も大丈夫だろう。
コンコン
一応ノックする。
なぜなら、この文芸部室いや、SOS団の専属メイド・朝比奈さんの生着替えをなんと二回も目撃してしまった経験上からだ。
「はぁ~い」
どうやらはいってもよさそうだ。
「ちっす」
「あっ、キョン君!いまお茶淹れますね」
「いつもありがとうございます」
いそいそとお茶を用意し始める朝比奈さん。
………平和だ。
「よう、長門」
「…………」
「元気か」
「元気」
「そうか」
「そう」
こいつもいつもどおりの反応だし、世界は平和だってコトだ。