まさかあたしまで『浄化』するなんて、甘く見てたわ。
 よく考えたら、あの子の闇をほぼ全て消したんだから当然かも。

 あたしは屋上に立ち、荒れ果てた世界を見下ろしながらあの会話を思い出していた。

『統合?』


『あたし達はもともとは一人。あたしも白も、一人の涼宮ハルヒの人格の一つみたいなものよ』


『白は分離後の状況を見てとても悲しかった、だから『涼宮ハルヒ』にもどったのよ。暴走した後に後悔してたのがその証拠』


『白が統合したのなら、お前はしないのか?』


『それはないわ。あたしはあたしだもの、吸収されちゃうなんて御免よ』


 何であんなこと言ったのかしら。カッコつけたかったのかな。

 今、闇の力を所有しているのはあの子だから、あたしが統合したらあたしの闇もみんなあの子が持つことになっちゃう。
 そんなことしたら、毎日毎日溢れる闇を抑えるこの『仕事』をずっと続けなきゃいけない。
 可能か不可能かは別にして、あの子は優しいから、そんなことはさせたくない。だからあたしがなんとかやっている。
 一昨日のは不覚だった。止めきれなかったお陰でちょっとした騒ぎになっちゃった。もうあんな失敗は繰り返さないようにしないとね。

 これがいつまで続くかは分からない。
 あの子がこの力を放棄するまでか、命の続く限りか、もしかすると……。
 エンドレス……ジェノサイド? 別にタイトルなんて何でもいいわ。とにかく、現実世界を守るためには仕事をもっと愉しまないとね。

「はぁ……」

 落ち込むなんてあたしらしくない。
 キョンに会うのはあれが最後だったかも。もうちょっと色々話したかったけども、あたしはあくまでも偽物だから、仕方ない。


『勘違いしないで頂戴。あたしにだってそれなりの役割があるのよ、ただ閉じ込められてる訳じゃあないんだからね』


 今、あたしは大きな剣を持っている。別にこんな武器なんて必要ないけど、やっぱりこういうのが無いと面白みに欠けるもの。

 ヘッドホンを付けて、音漏れなんか気にせずに大音量で音楽を聴いていた。
 その音を聞きつけたのか、後ろから異形が近付いてきている。背後をとって勝ったつもりかしら?
 振り返ると、異形達が血に飢えた表情でこちらを見ていた。
 でもそれは一瞬で恐怖に染まっていった。
 あたしの方が、もっと飢えた表情をしていたのかもね。


「愉しませてくれる?」


 覚悟しなさい、これがホントの『黒』ってものよ?





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