夏休み直前、すでに夏は準備万端のようで、午前中から
気温はうなぎのぼり、午後になりおなじみSOS団の部室こと
この文芸部室にはSOS団のいつものメンバーがあつまり、
いつものようにバラバラにうだるような暑さのなか
活動とやらにいそしんでいた


さて、夏の風物詩である夕立の降るメカニズムをご存知だろうか、
夏の照りつけられる太陽の元、地上付近の空気中の水分は(以下略)


夕立と伴にそいつはSOS団へやってきた


【にわか雨の訪問者】


「おや、降り始めたようですね」
古泉のとぼけた声に反応して、ハルヒの背後にある窓からそとを
覗くまでのなく、バラバラという派手な音をたてて雨が降り出した
「通り雨でしょう、これで少しでも涼しくなればよいんですが」
古泉の台詞を聞き流しつつ、吹き込んでくる勢いの雨で室内が
濡れそうなので、窓を閉めに行こうとした
その時にそいつは室内に飛び込んできた


「なんだ」と のけぞったのは俺
「へっ」と いきなり頭を抱えてしゃがみこんだのは朝比奈さん
「おや」と 冷静に視線を上空へ向けたのは、古泉
「…」と あいかわらず無表情なのは 長門


ばさばさばさ その姿のわりに大きな音をたてながら、そいつ
は部室の上空を二・三度旋回したあと、一番見た目が人畜無害そうなのか
長門の肩にちょんと止まった


ひょっとしてそいつは、なんとか体の使い魔とかだったりしないよな、
俺の見当ちがいの心配をよそに、長門もさすがに気になるのか、
本のページをめくる手がとまっている、でも何も言い出さないところを
見ると、今回は宇宙人的な問題とは関係なさそうである


古泉はそいつが長門の肩でくつろぎ始めたのを見て部室から出て行った


長門の肩でセキセイインコは雨に当たったせいか、ブルーの羽をしきりに
気にしながら、彼女の耳をつっついたりしている
まあ、日本には野生種のセキセイインコはいないだろうから、どこかで
飼われていたのが逃げ出したのだろうが、やけに人なつっこい奴である


「うわぁ 小鳥さんいらっしゃいませ」
復活した朝比奈さん、なぜがお茶をいれようと席をたつ
あの、セキセイインコはお茶のまないと思うんですけど


「窮鳥も懐にはいれば多少の縁ですから」
朝比奈さん、それ意味わかんないです それより現国の成績大丈夫ですか


そういって、お客用の湯のみに水と鞄の中から見つけたらしい
ビスケットを砕いてテーブルの上において、おもてなしの準備らしい


長門の反応がないせいか、セキセイインコは今度は朝比奈さんの方へ移動して
いった。


そう、ここまでの描写で登場していない人物が一人いるのにお気づきだろうか
本来なら、先頭きって大騒ぎしてそうなその人物は、セキセイインコが部室に
飛び込んできていらい生き別れの兄弟か、死んだおばあちゃんが目の前に突然
現れたかのように、その大きな眼をみひらいて立ちすくんでいる


「ひぇ ふぁ あー小鳥さん頭で歩かないでくださーぃ
「いたいでぇすよー」


今回ばかりは、狼藉をうけてはいるが、妙にほほえましい朝比奈さんの
嬌声を聞こえる


「耳、耳は、やめてくださいよぉ くすぐったいですよぉ」
朝比奈さんの反応は気に入ったのか、さかんに、肩やら耳やらをつっついて
いた


メデューサによって石にされていたようなハルヒはゆっくり朝比奈さんの
方に、普段の百分の一ぐらいの動きで手を伸ばした刹那、セキセイインコは
雨上がりを待っていたかのように日差しの中へ羽ばたいていってしまった


気がつけば所詮夏のにわか雨である、一旦暗くなった空も、いくらもしないうちにまた明るさがもどってきていた


「あれ、もうお帰りになってしまいましたか」
「まにあわなったようですね」
いつのまに戻ったのか、古泉は残念そうに、小さな袋をもっていた
どこで探してきたのか、小鳥のえさにとなにかを調達してきたらしい
おい、古泉いったいどこから持ってきた、これも機関の仕込みか


「いいなぁ 小鳥さん かわいかったなぁ」
朝比奈さんは、部室の窓辺にほうにむかって、名残惜しいらしく視線を
向けていたし


長門もまんざらではなかったらしく、本に眼をおとすことなくこちらも
やっぱり窓の外に視線が向いている


ちょっとしたハプニングをメンバーはそれぞれ楽しんだようである
ある一人を除いては


目の前で3億円の宝くじを風で飛ばされたような風情で今度はたちつくして
いるハルヒ、これじゃ、まるで、雨の中ダンボールにいれられた子犬のよう
な風情である いったいどうしたとゆうのだ、おまえは


「帰る」
ハルヒはそうひと言だけ告げると静かに部室を出て行った


まだ時間は早かったが、ハルヒの表情に気が付いたのか 6つの瞳は
どうみても後はよろしくとうったていた
その表情に送られれ俺も続けてて部室を後にした


ほどなくして俺はハルヒに追いついたが、かける言葉は見当たらない


ハルヒとこうやって肩を並べて帰宅するのは、朝倉のマンションに
向かった時以来からもしれない、今日のあの時にくらべて遜色ない
気まずさである
学校からの坂道を、雨上がりの少し蒸し暑い風を受けながら下ってゆく


「ねえ、あんた、前に私に、青い鳥って知ってるかって話をしたでしょ」
ハルヒはゆっくりと語りだした
まるで、あの朝倉のマンションへ行った日と同じパターンではないか


「私、実は青い鳥を飼ってたんだ、小学校の頃、青い羽のセキセイインコ
丁度今日部室に迷い込んできたのと同じ奴、ピーちゃんってなづけてた、私
一人っ子だったでしょ、よくなついてくれてた、今日ちょうどみくるちゃん
とじゃれていたように」


ハルヒは話を続けた


「前にあんたには、話したよね、小学校6年のとき、私は自分が特別な存在
ではないことに気が付いた話、あの後 あんなにかわいがっていた、インコ
の世話も以前のように熱心ではなくなっていて、鳥かごの掃除をしている時
窓があけっぱなしになっていたのね、逃げていっちゃった、でもインコが
逃げてしまったことより、もう世話をしなくてもよいんだと思えたことが
ショックだった…」


俺は言葉もつげずにただハルヒの言葉を聴くのみであった
いったいなんで言葉をかければいいんだ、わかる奴がいたら教えてくれ


「今日、あのセキセイインコが迷い込んできた時、あの時の青い鳥がまた
戻ってきてくれたのかと思った、でも長門とみくるちゃんの傍にはよって
いったのに、私の手にはきてくれなかった」


ハルヒは急に立ち止まり


「なんで、私は許してもらえないんだろうか、高校にはいって、SOS団を
作って、少しは変れた最近はそんなふうに思えてきたのに」


この後の俺の台詞は冷静にみれば爆笑ものである


「ハルヒ、青い鳥は、長門と朝比奈さんからちゃんとお前こと聞いて帰った
んだと思うぞ、青い鳥は、お前自身が、自分で探し出さなきゃつまんないだろ
そんな突然窓から飛び込んでくるんじゃ、ものたりないんじゃないか
一生懸命探した結果として青い鳥がとかこの世の不思議とかは、お前の
隣にいるんじゃないのか」
「俺はこれからも お前の不思議探しを一緒にしていきたいと思っているん
だが」


俺はハルヒの肩に手をおいて、これだけをいった


ハルヒはさすがにこの台詞がはずかしかったのか、小さくうなずくと今度は
翻ってそのまま走って坂をおりていってしまった


小さく「ありがとう」という声を聞いたのは俺の空耳かもしれない


翌日のことを少し話そう
ハルヒは朝から逃げ出した小鳥が生き抜くのは大変なことを力説し、しいては
昨日迷い込んだセキセイインコも早急に保護する必要があることをとうとうと
語り、放課後どこかに飛び出していった


掃除当番を終えて俺が部室へはいると


「小鳥さんかわいかったなぁ」
律儀にメイド姿で窓辺にほうずえをついている朝比奈さん
「昨日はお疲れさまでした」
どうやら昨日もってきたらしい、ひまわりの種をつまみにお茶を飲んでる古泉
やっぱり本を読んでいる長門
(後で聞いたら、その本、小鳥と盲目の少女の物語で昨日の帰りに図書館で
借りてきたものらしい)


そして部室の片隅に、少し古ぼけた鳥かごと、ピーチャンのごはん と幼い
文字でかかれた小さい袋が置かれているのを見つけた


多分、もう少しすれば、小鳥捕獲用に網を人数分かかえて、威勢良く部室の
ドアをけやぶってくる一人の少女を待ちながら、俺は窓の外、炎天下の空を
ちょっとうらめしげに見つめるのであった。


おしまい


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