高校二年生になってからも、俺は散々な目に遭わされた。

四月早々長門の属する情報統合思念体と、周防の属する天蓋領域とやらの派閥戦争に俺と長門が見事なまでにピリオド

を打ったと思ったら、佐々木がどーのこーのになっちまってフォローしたり、古泉のいう機関がなにやら異常な事態を起こしたり、朝比奈さんとまた時間移動したりと、俺の気は今日一学期の終業式までなかなか休まってくれなかった。

あれと平行して俺はハルヒの暴走のフォロー役までしなくちゃならんかったからな。

思えば去年の終業式、ハルヒは部室で合宿を明日からすることを高らかに宣言、古泉が別荘を手配して滑稽な殺人事件を起こしててんやわんやになった。今思ってみれば、それでも楽しかったかと言ってつまらんかったと言えば、嘘になると思う。

いや、嘘になるね。しかし、あの団長様のことだ。また言い出すに違いない。確かに楽しかったさ。でも、もう何かが起こるのはごめん被りたいね。古泉には拷問同然に念を押しておかなければならない。

はい、というわけで、SOS団一学期最後のミーティングが始まる。

 

「またまた合宿に行くわよ!古泉くん、また宿の手配よろしく!」

「了解しました。前回は孤島だったので、今回は比較的人がいる島がいいですね。ここをちょっとばかり南に行ったところに、ここらの海で一番大きい島がありますよね。地図帳で言えばこのあたりです。ここの一等地を先月、多丸兄弟が買い上げて、また別荘を建てました。そこにしますか?」

「それもいいわねー。確かに孤島ばかりじゃつまんないわ。」

ハルヒも去年と比べて成長したようで、だだをこねるような真似はしていない。

「んじゃ、明日、去年と同じ港に集合!」

帰り道で、俺は古泉にまた何かたくらんでいないか確認を行った。

「今回こそ、機関は無関係です。ただし、多丸兄弟、荒川執事、森メイドはいますけどね。」

こいつは前科があるので信用できない。なので俺は古泉に宣言書を書かせてもしやった罰として喫茶代一生支払いの刑を

約束させ、サインまで書かせた。そこまでしないと俺の腹の虫は収まらなかったからな。

そして明日になった。

俺は妹にバレないよう夜中に家を出て、公園で寝た後港に行った。妹がいないせいで大寝坊をしたのは言うまでもない。

「こらキョン、あんた今何時と思ってんの!?罰金じゃすまないわよ!後で、死刑の上に私刑だから!」

順番逆だぞハルヒ。殺した後何しても一緒だぞ。

「やあ、やはり案の定でしたね。予定より二つ遅い便を取っておいて、正解でした。」

古泉は、ガイド役のような、クールビズで決めていた。

「どんまいです。キョンくん。こんな日もありますよ。あ、まだ寝癖出来てますよ。」

そういってブラシを差し出したのは、言うまでもなく朝比奈さんだ。白いワンピースで糸のように細い肩紐が少しズレ気味なのがとてもかわいらしい。この人の愛用ブラシを俺のフケで汚したりしたくない。

長門は

「・・・・・・・遅い。」

ぬおっ。こいつに遅いなんて言われるとは、俺はなんてことをしでかしてしまったのだろうか。長門は(無表情ではあるが)ちょっと照れくさそうに少し右下を向き、首の後ろのストラップをつまんで上に上げる仕草をした。ちなみに長門の服装は白のホルターネックのロング丈で、白い背中が異常なくらい空いて、肩胛骨と背骨のラインが綺麗に整っている。首の後ろで蝶結びしてある蝶が今にも飛び立ちそうなくらい様になっている。白い背中と白いロング丈がマッチして、数少ない長門の私服の中では一番似合っていると思う。長門は4月に起きた事件のおかげでより一層人間らしくなり、私服に制服を選ばなくなったり、冗談をちらっと言ったりと普通の女子高生にまた一歩近づいたようだ。

 

船の出航時間になった。SOS団御一行が乗った船は港を離れた。14年くらい前、かすかな記憶だったがここら辺は瓦礫の山と化したことがあった。あの時の面影はもうなくなっちまったな。

俺はさっそく団員全員にジュースおごりの刑を科せられた。まあ仕方ないさ。妹に来られるよりは幾分マシだ。

朝比奈さんはハルヒとたわむれ、長門は読書しながら、古泉は微笑を崩さず、俺たちは多丸兄弟の別荘のあるA島に着いた。

早速森メイドと新川執事が出迎えてくれていた。

俺たちは新川さんの運転する黒塗りの、霊柩車とも見えなくもない車に乗り、別荘についた。

その別荘は、去年孤島に行ったときに泊まった別荘と、全く同じだった。

そしてその後は去年とおなじように、すさまじい速度で三角食べをする長門を見ながら、ぶどうジュース(ワインかと思ったが

森さんが気を利かせてすり替えたらしい)を飲んだり、新川料理長調理のシーフード料理の数々で腹をふくらました俺らは

部屋に戻って持ってきた携帯ゲームをするなり、いろいろして時間を過ごした。

思えば俺は油断をしていた。

これから、あんな事件が起こるなど、始めのはの字も思わなかった。

第一章

 


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