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     これでさえ第三回君誰大会の続きです。作ったことを反省しています。


     君誰大会  「夢も希望も何もかも」



「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」
「ぐ、それを言われると……」
「決断しなさい! さあ!」

 いつもの喫茶店で、いつもの面子+いろいろの、総勢二十名ほど。
 そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。
 そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。

 そう。本来なら、いや、間違っていても。
 俺はここで誰かを選ぶべきだろう。
 それが無理でも、何かしら進めるべきだ。
 …………ああ、分かってるさ。だが、しかし。
 …………俺は卑怯者だ。それしか分からない。
 だが、あえて卑怯を貫こう。それは、ただの傲慢だけど。

「すまん。」

 それは、謝罪でありながら否定。
 それは、自らを貶めながらも、決して受け入れられないという意思表明。
 この世界に住むほとんどの人間が理解できないであろう展開。
 何故、ここで謝罪の言葉が出てくる?
 奇抜な言い方がしたいだけか?
 しかし、それもまた違う。
 これは、ただの拒絶。

「俺には誰も選べない。」

 その言葉が嘘であると誰もが分かった。
 彼は、決して人を傷付けたがる人間ではない。
 つまり、何か理由があるが、それを隠しておかなければならない。
 そこまで理解してなお、少女たちは叫ぶ。

「何考えてんのよ! ここまでお膳立てされといてまだ逃げる気!」
「……見損なった。」
「酷いです。」
「くくく、いい加減怒るよ?」
「どれだけ馬鹿なんですか。」
「はあ、刺していいかしら?」
「………まさか。」

「何を隠してるんでしょうかねえ、彼。」
「まあ機関の権力やら何やら総動員させればきっと調べられるでしょうけど、そこまではやらないわよね?」
「ええ。それをすると彼からの信頼と呼べるものが一切合財無くなってしまうでしょう。」
「でしょうね。誰だってプライバシーは侵害されたくないものね。」
「やあ古泉君、ちょっといいかな?」
「気付いたことがあってね。」
「何でしょうか?」
「……僕はね、妹さんが怪しいと思ったんだ。」
「それを言われて見るとね、どうも妹ちゃんの反応が変なのさ。」
「どんな風に?」
「キョン君が『すまん』って言ったときも『誰も選べない』って言ったときも妹ちゃんはかなーり喜んでたんだよねぇ。」
「まあそれだけなら美しきかな兄妹愛みたいなこと言えるんだけどさ、あの顔は何か企んでるよね。」
「暗ぁーい微笑みっさね。十一歳であれは怖いにょろ。」
「まあ、とりあえずそれだけ言いたかったわけ。」
「じゃあ、私らはデートの続きいって来るっさ。」
「本音言うとこの空間から早く離れたい。」
「なーんか巻き込まれそうな予感がするからねっ! アディオス!」

「………なんか僕たちだけ貧乏くじですよね。」
「うふふ、一樹、私機関の事務作業終わってなかったのよね。」
「逃げるつもりですか!」
「うふふ、新川たちにも手伝わせるから、早く終わるわよ。」
「新川さんたちまで逃げますか!」
「じゃーねー!」
「後は頼んだよー。」

「そもそもあんたは優柔不断なのよ!」
「甲斐性無し。」
「ふにゃちん。」
「ちょ……今の誰! そこだけは聞かせて! 今の誰!」
「そんなの誰だって思ってることだよ、キョン。」
「私はインp……」
「アーウート! それアウト!」
「とりあえず、死ねばいいと思います。」
「何でだよ! 何でとりあえずそれなんだよ!」
「灰になればいいと思う。」
「どのようにして! そこが一番気になる!」
「星になってくれませんか?」
「もはや依頼しちゃった!」
「屍にしてあげる。」
「それもうただの殺人予告だよ!」
「ああ、ダム現場の監督みたいにばらばらにされたかったのかな? かな?」
「違う世界!」
「おじさんはおなかを掻っ捌いて神社に放置されたかったんだと思うよ。」
「なに人の気持ちを勝手に偽ってんだ!」
「魔方陣の材料にされたかったのですね。分かりました。僭越ながら私が……」
「なんでお前らそこまで竜騎士が好きなんだ!」
「何のことを言ってるのかわかんないわよ?」
「僕らはただ君を虐げたいだけで。」
「なお性質悪いわ!」
「じゃああなたのした行為は性質の悪いことではないと言い張るおつもりで?」
「誰キャラ? それ誰キャラ?」
「そんなことはどうでもよろしい。」
「だから誰なんだよ!」
「「「「「「「あえて言わせてもらうのならば、私たち全員の意思かと。」」」」」」」
「怖ッ! 果てしなく怖ッ!」
「やっだな、ちょっとしたお茶目ですよ。」
「ちょっとしたお茶目でなんで七人全員揃うんだよ!」
「そこはまあ、なんと言うか、その、恋する乙女は何とやら、だよ。」
「本当に何とやらだな。」
「まあいいじゃないか。そう気にするようなものでもなし。」
「気にしてるから突っ込むんだが。」
「棒をかい?」
「おまえら本当にそのネタ好きだな。」
「まあ、女性だしね。」
「全国の純真な女性達に謝れ。」
「ごめんなさい。」
「素直だな!」
「それなりにね。」
「ねえ。思ったのだけれどさ、私たちここで何してるのかな。」
「しっ。それを言ったら御仕舞いよ。」
「お前らが終わらせねえんだろうが!」
「きゃー怖ーい。」
「棒読みで言っても何も伝わらないぞ長門。」
「蔦割らない?」
「コミュニケイトできないってことだ。」
「コミュに毛糸で着ない?」
「……もういい。」
「諦めるのはまだ早ーいの、綺麗になるーb……」
「何の歌だよ!」
「こうだk…」
「何でそこで出てくるんだ!」
「なんとなく。」
「………………ああ………そうかい…。」
「元気がなくなったようですね。ここらでわたしの出番です。ほら、お茶どうぞ。」
「ありがとうございます、エアーさ比奈さん。」
「何ですか『エアーさ比奈さん』って!」
「………………しまった。」
「空気ですか! どうせ空気ですか!」
「ハハハ、ナニヲイってイルノヤラ。」
「なんでカタコトなんですかぁ!」
「え、ノリ?」
「ノリで突っ込ませないで……って突っ込みやボケにノリは大事ですね。どうしましょう。」
「ノリで突きこんでもらえばいいんじゃないかな?」
「なにをですか?」
「ナニをだy…」
「またそれか!」
「天丼だよ、天丼。こういうことは繰り返したらより大きな笑いが取れるのさ。関西に行って吉本新喜劇を見てみるがいい。」
「池野めだかの身長ネタとかか?」
「そうそう。最近では陣内の離婚ネタとかね。」
「ああ、あれは面白いな。『最初は遊びのつもりだったんです……ってなに言わせとんねん!』的なあれだろ。」
「くくっく、悪趣味なのかもしれないが面白いものは面白いからね。」
「はあ、浮気して離婚なんて愛が足りませんよ愛が。浮気しても余裕で愛せますよあたし。」
「安っぽい女だわね。」
「何をいうのですか! 度量が深いのですよ!」
「もし相手を許してもう一度やり直すにしてもケジメはキッチリつけさせないとね。」
「……お前だったら、何をするんだ?」
「そうね……(あまりに残虐かつR18なので検閲にて削除したにょろ!)とかかな。」
「本当にごめんなさい。私が悪かったんです。」
「あらら、何を謝っているの? あなたは何もしてないじゃない。」
「ち、ちなみに浮気相手には何を……?」
「もちろん(言葉とは、時に暴力よりも人を傷付けることがあります。故に削除させていただきました。……っていうか喫茶店で何言ってんですか!)よ。」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」


    ◆ ◆ ◆


 はぁ、大変だな、キョン君。でも、このままだと、何時まで経っても二人っきりになれやしない。うん、ここは意地を貫いてみよう。


    ◆ ◆ ◆


「キョン君、そろそろ帰らないー?」
「おお妹よ。お前は俺の救世主か?」
「へへー、いまさら気付いたのー?」

 これはチャンスだ。
 妹を小脇に抱え、喫茶店を後にする。

「というわけで、さよならだ!」
「あっ、ちょっと、待ちなさい! この食い逃げ!」
「古泉、後で払うから立て替えといてくれ!」
「待てー!」

「はあ………なんでしょうかね、風とともに去りぬ、でしょうか。」
「それを手塚治虫がパロディにしたことがあるの知ってた?」
「あの蟋蟀かなんかが他の惑星で進化して人以上の知能を持って昭和の日本に下りたつってやつでしょう?」
「そうそう、それよ。最終的に芋虫の胃液で宇宙船の壁壊してお姫様奪還的な。」
「まあ、そのお姫様のせいで二人の男が振り回される話ですしね。」
「振り回されるのは好きかしら?」
「ご遠慮願います。既に十分振り回されている気がしますし。」


    ◆ ◆ ◆


 狭い部屋に水音が響く。
 部屋の中には、二人。兄と、妹。
 その関係にはふさわしくない、恍惚とした表情で相手を見つめる妹と、悦楽を感じながらも罪悪感を感じていそうな兄。

 彼は思い出す。
 ただの兄妹が、こんな関係になった原因を。


    ◆ ◆ ◆


 彼がまだ中学の二年生くらいで、彼女にも出会わず、今も続く関係といえば国木田くらいなときのこと。
 中学では特に部活にも所属せず、学課が終わったら家に帰り時々友人と遊ぶ生活を繰り返していたときのこと。

 彼の妹はまだ小学校の三年生で、五時間目までやったらもう帰れて、しかも中学校より小学校の方が近いから彼が帰ると妹が出迎えてくれるはずだった。
 しかし、その日は家に誰も居らず、仕方がないので自分の部屋の窓の鍵を開けっ放しだったことを思い出して、そこから進入しようと努めた。
 家に入ると、メモが置いてあった。どうやら母親は買い物に出たらしい。そんなものを家の中に置かれても普通は見れねえよ。
 中から鍵を開け、夕刊を取った辺りで妹がタックルしてきた。

「げはあぁっっ!」

 いくら相手が小学校三年生だとはいえ、そしてその中でも体が小さい方だとはいえ、二十キロ超の塊が下腹部に突撃してきたらそりゃあ痛い。
 いきなりなにすんだ! と怒ろうとしたものの、まだ俺の体を抱きしめているその手が震えていて。
 それを振り払えるほど、俺は怒ってはいなかった。

「どうしたんだ。」

 聞いてみるも、返事がない。
 仕方ないのでだっこして、妹の部屋まで運んだ。
 落ち着くまでなでてやる。まあこれも、兄に生まれてきたものの責務だろう。
 改めて聞いてみた。

「で、どうしたんだ。喧嘩でもしたのか?」

 んーん、と首を横に振る。

「じゃあ、人に迷惑掛けて謝るに謝れない。」

 なんという細かい設定。別に実体験からなんかじゃないぞ。
 しかし、それにも水平方向への首振り。

「じゃあ……」
「なんか、なんかね、へんな……へんなこと、されたの。」

 一瞬で冷めた。思考が空回りしかけるのをとどめて、できるだけ落ち着いた様子を装って聞く。変なこと、と言われて思わずR指定のつく方を思い浮かべたのは中学生だからだと思ってくれ。ついでに言うなら、一週間ほど前のニュースでそういう事件が報道されていたってのもある。何時の時代も模倣犯というやからが絶えることはない。

「どんな感じだ。いや、思い出したくないなら言わんでいいが。」
「押さえつけられて……それからパンツの中に……」
「脱がされたか?」
「ううん。」

 とりあえずはセーフ。いや、こいつの心情を鑑みるとセーフどころか一発で攻守交替くらいなもんだが。

「風呂でも入るか?」
「うん。………一緒に入って?」
「わかったよ。」


 その後、どうにか妹がおさまってから、勝手に探偵まがいに妹の後をつけて、同じようなことをしている輩を発見した。学校を休む羽目になった怒りと、うちの妹に何してくれとんねん的殺害衝動を右手の拳に乗せて不意打ち気味に渾身の右ストレート。
 縛って色々脅して(なあ、分かるよな? 今後一切あいつには手を出さないと誓え。もし手を出したり、他の子相手でもああいうことをしたら、警察に突き出すぞ。)釈放。
 警察にそのまま突き出しても良かったんだが妹が変に注目されても嫌なので脅すだけに留めておいた。


    ◆ ◆ ◆


 と、まあ。
 ここで終われたら美しきかな兄妹愛ということで済むのだが、終わらなかった。
 それ以来、妹がことあるごとにえろい事を要求してきたのだ。
 初めは当たり前のように断っていった俺だが、朝起こしに来たついでに一発ヌかれて(どこで知識を得たのかは未だに分からない)そこから坂を転がり落ちるように関係を結んでいった。
 そうして今や爛れた関係である。
 なにが悪かったのかは分からない。ただ、今はこいつは俺を愛してると言い、そして俺に依存しきっている。それが無くなるまでの間は、こいつの相手をしてやろうと、そう思っちまった。
 馬鹿なやつだと笑いたきゃ笑え。自分でも分かってる。
 あんな良い奴らの告白を軒並み断っちまうなんてただの馬鹿だ。
 だけど、俺はこいつを手放せなかった。
 結局、俺もこいつに依存しているのだろう。

 世界最悪の罪人かもしれない俺だが、こいつには何も罰を与えないでやってくれ、神様。
 俺なら覚悟は出来ている。
 世間からどんな風に言われるのかも。
 だが、きっとこいつは何も分かっちゃいない。分からないでいい。
 だから、お願いだ。
 こいつだけは、幸せにしてやってくれ。


















































    ◆ ◆ ◆


「という夢を見たんだが。」
【〔[{(〈《『「死ね♪」』》〉)}]〕】





「本当にどうしようもない人ですね。」
「まあ、分かってましたけどね。」

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