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☆注意!「どちらでもいい」出来心で書いたとんでもない電波です。

立場(二字)短編とのつながりはあります。

 

彼女はいつも『超能力』に明け暮れていた。

とはいえ、学校に間に合わないほどには仕事を押しつけられていたわけではなかった。
それに加えて彼女は普段から、必ず自分の帰宅を待ち、食事をとるようにと、友人に言い聞かせていた。
なにしろ、彼女は友人を、とりわけ長門有希を愛していたのだ。

その長門有希と共にとる食事だが、情報爆発が起こると食事の最中でさえ駆け出し、仕事をしなければならなかった。
彼女らはほとんど食事が進まなかったが、宇宙人である彼女たちは泣き言を言わない。
彼女は、自分が疲れたなと感じたときは休むように長門有希に頼んだ。バックアップとして、メイン端末の動作停止だけは避けなければならない。
情報の精度を上げるため、さまざまな場所に配置されたインターフェースとともに観測をしながら、彼女は待っている。

それでいて、元気の残っている日には、彼女は友人に、共にショッピングやカラオケもしくは喫茶店などにいこう、と言って友人達を誘った。
彼女は普通の高校生として過ごしたかった。なぜならそのように作られていたからだ。
長門有希は、あなたも一緒しない?とせっかく声をかけても、たいてい断って黙々と本を読んでいた。

朝倉涼子はずっと前から、長門有希に関してはさじを投げていた。
だから、友人の絆を強くすることにつながる、このような普通の女子高生がするようなことに長門有希が参加しなくても、特に何も言わなかった。
どうせ彼女には、人間というものが分かっていないし、感情のなんたるかも分かっていまい……。
しかし、長門有希はなんといってもそのように作られていたので、朝倉涼子は彼女の欠点に目をつむっていた。
少々のわだかまりと苦々しい気分が残るのは打ち消しがたかったが。それでも、彼女は待っている。

 

最近、朝倉涼子の仕事がだんだん減ってきている。これには理由がある。大事な、大事な情報フレアがほとんど無くなってしまったのである。
ところが、彼女は情報フレアを入力とするインタープリタなのである。そして、出力を出せないインタープリタの存在価値は皆無そのものだ。
情報フレアを起こさなければならない。何が何でも。

まじめな彼女は、情報フレアを起こすために全力を尽くす。

不都合なのは、必要とされるためのこの日々の闘いが、できれば友人たちのために割きたいと思っている時間をどんどん浸食してしまっていることだ。
彼女は次第に家に帰らなくなり、友人達とは久しく会う事はなくなった。長門有希は観測業務以外、本を読んでいて、顔を上げもしない。
たまに帰ることができる時があれば、長門有希が用意したのであろうレトルトカレーを食べる。そして寝室のある自分の階へ戻る。疲労困憊した身体を引きずって。

追い打ちをかけるように、情報フレアの発生回数はゼロに近似した。彼女の超人的な努力にもかかわらず。

彼女の端末コンソールに絶えて久しい命令が打ち込まれた。
観測の必要性が薄れたため、3日後に動作停止。コメントラインに、動作停止によって節約できるエネルギー量が書かれていた。

/*
死なせる。必要がないから。
*/

彼女は思う。

私にはほとんど希望が残っていない。以前、私は探し求めた。片時も同じ所にはいなかった。
何かを期待していた。何かとは?それはよくは分からなかった。
私は、けれども人生がこんなもの、つまり無同然のものでしかないなどということは、あり得ないと思っていた。
人生は何かであるはずだった。そして、私はその何かを探し求めていた。

私は今、期待するべきものなど何もない。

それでも、彼女は待っている。

 

 


最後の時は誰も知らずにやってくる。

彼女の友人のように、この先を生きたかった。
彼女のように、だれかを好きになりたかった。

この時限爆弾のような自分の能力で、自分を殺すならば、
ならば、最期はせめて最愛の友人に終わらせてほしかった。

嫉妬の心を抱かざるを得ない彼女に。


朝倉涼子は帰宅し、最期の望みに賭けてみることにした。彼女は必要とされたかったのだ。
窓から空を見上げ、雲が流れゆくのを眺める。至る所にほこりがたまっていた部屋を掃除する。流しの中で汚れた食器を洗い流す。
それで、自分の部屋から外へ出ず、椅子に腰を下している。ただ単に座っている。居心地がよいというわけではない。

私がここに座っているのは、そんなもののためでない。
私は立たなければならない。私が無同然のものでしかないなんて認められないから。そんなみじめなものだなんて認められないから。

それでも朝倉涼子は待っている。私がここで暮らすのが、明日であったら良いな、と思いながら。

時で加速度を二回積分すると道のりとなる。そして、彼女に許された積分の定義域は1日。
彼女は力を加え、動くはずのない運命の運動方程式に加速度を与えた。


朝倉涼子は消滅した。満身の笑みとともに。


本来、朝倉涼子が帰ってくるべき場所に、長門有希が立つ。その表情に幽かに嫌悪の表情が見えた。

朝倉良子が窓から空を見上げ、雲が流れゆくのを眺めるために使った椅子が処分された。
仕事のため、久しく掃除をしていなかった、そして昨日掃除をし終わった部屋のカーペットが処分された。
汚れていて、最期に洗った食器が処分された。

そして、まるで大量の腐敗物がそこに存在しているかのような目で、すべてを片づけた。

彼女は部屋に戻り、数少ない彼女の記憶の証拠をすべて処分するだろう。

そう、朝倉涼子は待っていた。彼女が感情という命題を理解することを。

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