「キョン、あんた『バタフライ効果』って知ってる?」
「ん? 水泳か?」
「違うわよ。『北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる』ってな感じで小さな事が大きな事に、
 些細な事から予想外の事が起こるって事よ。『風が吹けば桶屋がもうかる』とも言うわね」
「ふむ」
「で、あたし思うわけよ。例えばこんなふうにうちわで風を送ると未来が変わるんじゃないかって」
「俺が涼しくなるのか」
「違うって」

「えーと窓に向って全力で100回扇ぐんですね」
「キョンくんすいません。この時間平面上の人間でないと効果がないんです」
「いえ、全然かまわないですよ。しかしハルヒの思いつきがどんなふうに未来に影響するんですか?」
「詳しくは禁則ですがとんでもないことに」
「長門、お前ならわかるか?」
「涼宮ハルヒが起こした風が偶然の積み重ねで少しずつ大きくなっていく。
 考えられる最悪の結果は室戸級の台風が発生した後収束していく。その過程で何かが未来に影響すると思われる。
 あなたがうちわを扇ぐことによって涼宮ハルヒの起こした風を打ち消すことができる」
「ごめんなさい」
「なるほど。では扇ぎますよ」

「小さな事が大きくなるなら、最初にある程度大きめに事を起こすともっと大きいくなるんじゃないかな?
 明日は扇風機でやってみよっと♪」


「おいハルヒ、そんな無駄なことやってどうする? 扇風機は人が涼むためにあるのであって
 窓の外に向けるものじゃない」
「いいのよ! 手っ取り早くニューヨークに嵐を起こすのにこれくらいが丁度いいのよ!」
「ニューヨークに嵐を起こしたいのか?」
「んー結局何でもいいから何か起こればいいの! ついでに換気になっていいじゃない」


「さすが機関だな。車よりでかい扇風機なんて見たことないぞ」
「古泉くんごめんなさい」
「任せてください。我々の目的は世界平和です」
「ハルヒの尻拭いでなくてか?」
「結果世界平和につながります。さて回しますよ。扇風機から離れてください」


「ジェットエンジンならとんでもない風を起こせるんじゃないかしら!?」


「ねえ古泉くん、多丸さんってプライベートジェット持ってないかしら? ジャンボジェットでもいいわ!」
「持ってるかも知れませんね。ジャンボの方もチャーター出来るかもしれませんが。旅行ですか?」
「違うわ。大きな風を起こすのよ!ジェットエンジンで!」
「あの、風が起きる前に離陸すると思いますよ。あと空港に行けば風が起こりまくっていますが」
「あ。でもさすが古泉くん! 空港とはナイスアイディア!!」


「申し訳ないです。墓穴でしたね」
「朝比奈さん、具体的に何をしたらいいんですか?」
「下駄箱にあった手紙では飛行機の離着陸の方向を交互に入れ替えろと……」
「なんて無茶を……」
「お任せください」
「なに!? できるのか!?」


「あれ? いままで飛行機ってずっと風起こしてきたのに何にもないわね?」



「やっぱ日本人には日本のことわざね。『風が吹けば桶屋がもうかる』。キョン、桶屋始めなさい」
「はい?」
「もうけてSOS団の活動資金にするわよ! さあ、準備なさい!」
「断る! こういうのは古泉が得意だ。古泉、お前の知り合いに桶屋がいるだろ?」
「えーとさすがにいないですね」
「えぇ~古泉くんの人脈ならなんとかなると思ったんだけどー。んでキョンに伝授させようと思ったのに」
「さ、探してみます」
「探さんでいい!!」


「『桶ブーム』ですか」
「下駄箱の手紙によるとそれによってヒノキ花粉アレルギーが激増するらしいんです」
「……結果までの説明をはしょってますね。で、これですか」
「こっちの方は流行っても問題ないみたいです」


「『ケロヨン桶』じゃない!! キョン、センスあるわね!」
「涼宮さん、桶職人のつてがありましたよ!」



「よく考えると『風が吹けば桶屋がもうかる』って
  風が吹く→土ぼこりが舞う→土ぼこりが目に入って目が見えなく人が増える→その人が三味線弾きになる
  →三味線の原料のネコが減る→ネズミが増えて桶をかじる→桶屋がもうかる
 ってどれか一つでも狂ったらアウトよね」
「まず土ぼこりから失明へのコンボが飛躍し過ぎてるからな」
「土の部分って学校のグランドくらいよねぇ。砂なら砂場か。砂浜もあるわね」
「その近所の土や砂さえ滅多に飛んで来ないだろ」

「はぁ、リサイクル活動ですか」
「このままでは中国の砂漠化が広まって黄砂がすごく飛んでくるそうです」
「リアルすぎますよ朝比奈さん……」




「なぁハルヒ、ところで風を送って具体的に何か起きたのか?」
「……なんにも起きてないわよ」
「それと何かが起きてそれがお前が起こした風がきっかけだったって事をどうやって証明するんだ」
「……グゥの音も出ない正論ね」
「だいたいうちわでパタパターって風をおくっても、ほら、お前が涼しくっ、おわ! す、すま」
「こらエロキョン!!!!! さいてー!! ボケー!!!!」



「まさか顔に向けて扇いだのにスカートまでめくれるとは思わなかったんですよ……」
「取りあえず下駄箱の手紙によるとこれで終了らしいです。ありがとう、キョンくん」
「いえ、朝比奈さんさえ分かっていただけるならかまいませんよ」
「あなたの行動が我々にどんな影響を与えているかを少しは考えてほしいのですが。
 昨日の閉鎖空間は久々に特大でしたよ」
「………………」
「すまん古泉。いや、お前らにも分かって欲しいなぁ。それとなんかしゃべってくれ長門……」

明日に向かう方程式実践編  完 

|