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「バカヤロウ!無闇に出すなって言ったばかりだろうが。」

昼食に寄ったレストランで気がつけば俺は叫んでいた。SOS団の面々
と周りの客の視線が俺に集中する。

「な、なによ。いきなり大声出して。あんたには見えないんでしょう。
だったら黙っときなさいよ。」

俺の語気に押され気味にハルヒが答える。実は今ハルヒは超能力を得て
それを俺達に見せたくてしょうがないのだ。
長門によると炎を操る情報生命体とやらと融合したらしい。


だが問題はそいつがそれ以外に宿主を乗っ取る能力を備えてるって事だ。
ハルヒが炎の力を使えば使うほど精神を乗っ取られていく………。


しかも長門の親玉が静観を決め込んだ為、長門は動けない。古泉も
通常空間では役立たず。宇宙的事件は朝比奈さんの専門外だ。

結局俺達はハルヒに能力を使わないようにさせ、かつそれが錯覚か
何かだったと思い込ませてハルヒの力で情報生命体とやらを消し去るよう
誘導しないといけない羽目になったのだ。

なのに人が必死に思案しているところに来てハルヒの奴がデザートの
アイスを溶かしてみせるなんていうからつい冒頭のように叫んじまった
訳だ。ここは俺の奢りなんだぞ。机やら食器を焦がして弁償させられたら
たまらんからな。他意はない。本当さ。

「まあまあ、落ち着いて。先ほど話しましたようにこの手のものは掴みが
肝心です。もし最初に失敗したらもう世間は見向きもしません。
涼宮さんには見えて、僕と朝比奈さんもおぼろげに見えます。でも」

そうだ、俺と長門は全然見えん。
古泉の言葉を継いで俺が言う。勿論それは嘘っぱちでさっきもハルヒが
掌の上に出たコンロの火くらいの炎がみんなにも見えた事だろう。
だが一番最初にハルヒが炎を見せた時長門が平気でそれに手をかざし
全然何ともなかった為、ハルヒも自信を無くしているのだ。
流石長門、行動を制限されていても頼りになるぜ。

「じゃあ、どうするのよ。多くの人に見せて確かめるしか無いじゃない」

ジト目で口を尖らせたハルヒが言い、古泉が答えた。

「実は僕の知り合いに超能力研究の専門家がいましてね、そこで
確認してもらうのが一番だと思うのです。」

相変わらずなんでもアリなんだなお前の知り合いは。まあ今回は本当に
専門分野なんだろうが。結局古泉の提案にハルヒがしぶしぶ頷いて
その日はお開きになった。

そして次の日、俺達は古泉の知り合いの研究所に来ていた。
さっきからハルヒは色々な検査を受けている。勿論古泉の息が
かかっているのだから否定的な結果ばかり伝えられているのだろう。
だが何度否定されても、絶望が瞳の大部分を覆ってもハルヒは眉を吊り上げ
声を張り上げて検査を続行していた。傍目に見ても虚勢を張っているのは
明らかだった。

その姿を見ていると不意に苛立ちとも怒りともつかないものが
込みあげて、ある場面が蘇る。
ハルヒがはじめて俺に炎を見せた場面だ。満面の笑みを浮かべ力を披露する
ハルヒに対し俺はオロオロするばかりだった。
SOS団として数々の難問を突破してきたが俺はほとんど愚痴を言うくらいしか
できなかった。口では偉そうなことを言って結局のところは長門や
朝比奈さん、あと不本意ながら古泉に助けられてばかりだ。
あの時俺がお前の力を否定できていればお前は要らぬ期待をせずに
済んだのか、ハルヒ?

そう思った瞬間、俺は部屋を飛び出していた。古泉が何か言った気がするが
知ったこっちゃないね。検査室に飛び込むとハルヒが俺を睨みつけてきた。
もう諦めろ、お前の気のせいだったんだよ。俺の呼びかけにハルヒが答える。

「まだ検査は終わってないわ!それにあんただって私の炎にさわれなかった
じゃない。完璧に否定できたのは有希だけよ!」

なら俺も否定してやる。炎を出してみろ。
そうさ、今度こそきっぱり諦めさせてやる。だがな、ハルヒ。
もし次にお前が何か不思議に出会えたら今度こそ俺はお前を応援してやるよ。
世界の常識だとか知ったことか。だから今回だけは諦めろ。
痛みは俺が分かち合ってやるさ。

「で、できもしないくせに虚勢なんてあんたらしくないわよ。」

ハルヒの瞳と言葉に動揺が混じる。畳み掛けるように俺が答える。
虚勢を張ってるのはそっちだろ。もうハッタリをかます元気もないのか?

「な、バ、バカキョンの癖に。後悔してもしらないんだから!」

そう言うとハルヒは掌を上に向けそこに炎を出現させる。
俺はゆっくりとハルヒに近づいていく。俺がハルヒの手に手を
重ねようとするとハルヒは慌てて手を引っ込めた。俺は強引にその手を掴む。

「あっ!」

ハルヒが驚きの声を上げる。同時に俺の掌に刺すような痛みが走る。
何かが焦げる嫌な臭いがする。ハルヒは狼狽しながら俺の手を
振りほどこうとする。

「バカ!離しなさいよ脂汗かいてるじゃない!」

俺は振り解かれないよう手に力を込めて精一杯の強がりを言う。
走ってきたから汗が引かないだけさ。
なあ、ハルヒ。特別な力なんて無くてもいいじゃないか。
この1年SOS団として活動してきてお前は楽しくなかったのか?
特別不思議な事に出会わなかったかもしれないが俺はまんざらでもなかったぜ。
話し終わる頃には俺の胸に顔を埋めてハルヒは泣いていた。

それにな、そんなに不思議な力が欲しいならみんなで探せばいいじゃないか。
今度は誰が見たってはっきりわかるやつが見つかるさ。

泣いているのがバレないよう言葉を細切れにしながらハルヒは言った。

「…、…見つけないと…死刑…なんだ…からね…」

わかってるさ。
ハルヒの手を握り締めていた手を放し両手でハルヒを抱きしめる。
手はジンジン痛むし、この後来るであろう古泉のニヤケ面を思うとうんざりするが
当分この手はほどきたくないね。


 (完)
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