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「これでチェックメイトだ」
 俺はナイトを動かして、相手の顔を見た。
 一瞬の静寂か、それとも長い沈黙か。それは時間を見てないから解らないが、
「――――参り…ました―――――――」
 と、九曜の声と共に音が戻ったのは確かだ。
「凄いです…まさか九曜さんに勝つとは」
「流石キョンだね」
「お兄さん、格好いい…」
 何をしていたかなんてもう説明も要らないだろう。
 まさかチェックメイト、という言葉で将棋なんて言う奴は居ないだろうしな。
 当然、俺と九曜がしていたのはチェスだ。チェス以外に何がある。
 まぁ、そりゃ他のゲームでも相手を追い込んだときに言う奴も居るだろうけどな。
 そう考えるとある意味ポピュラーな言葉かもしれない。チェス以上に。
 
 
 第七話「宿泊二日目@九曜の家 ~重い愛で、愛重く、珈琲店より流星ロケットかっとんでいく~」
 
 
「あ、そろそろ昼ごはんの時間ですね」
 橘が時計を見て言う。つられて見ればなるほど、確かにそろそろお腹も空いてくる時間帯だな。
 さて、俺はまだ九曜の家に居候させて貰っているわけだ。勿論、ミヨキチもな。
 何故かと言えば簡単な話で、俺のおじさんが病気で倒れて両親と妹が見舞いに行ったのが昨日の話。
 で、まだまだ帰らないという事になったらしく、そうなれば家に戻っても俺とミヨキチしか居ない訳だ。
 その話をしたところじゃあまだ宿泊すれば、という事になりもう一泊の延長が確定した。
 俺としてはまぁ、それでも良いんだが、ミヨキチと二人きりの時間が欲しいというのは当然の渇望としてある。
 彼女たるミヨキチは小学生。そう、これは禁断の恋だ。
 あぁ、何度も言うが俺は別にロリコンじゃないからな。ミヨキチを一人の女性として好きなんだ。
 言い訳がましいかもしれないがこれがトゥルーでありジャスティスだ。反論はさせない。
 大体、愛に国境が無いのならば、年齢の壁も無い筈だ。
 国々によって恋愛基準の年齢は違う訳だしな。国境があれば、その国の基準だけになって年齢の壁が生じるけどな。
 防御力としては五枚揃ったら攻撃力∞のカードにも対処できる防御力、っつか超えられない壁だな。
 今こうしてあるのは、国境を越える愛があるおかげだ。うん、非常に感謝するしかないだろう。
 今回台所に立つのは…。……。………。九曜か。
「―――頑張ります……―――いぇい」
 ピースサインは無視して、料理風景を観察しようか。
 まず九曜が取り出したのはどこから出した、本マグロ丸々一匹。
 しかも跳ねている。それを九曜は意外と細い腕で押さえながら包丁を構える。
 もうこの時点で物凄い不安を感じているが気にしない。
 ミヨキチも、佐々木も、橘も若干顔が引き攣っているが気にしない。
 物凄い包丁捌きでマグロを物凄い解体していく。うぁ…凄く…早い、です…。
 マグロはほとんど骨になってもまだ跳ねてやがるし。何の漫画だこれは。
 これが早さの限界を超越した技か。宇宙人ってのはどこまでインチキが利くんだ。
「マグロの刺身100kgと白ご飯――――――――」
「そんな昼飯あるかボケェ!」
 なんだ100kgって。おかずこれだけかよ。カップ麺よりひでぇよ。
 マジで飽きるぞ。っつか食いきれないだろ。
「まぁまぁ、お兄さん落ち着いて」
 ミヨキチに制されて俺は乗り出していた身を席に戻す。
「冗談。だから…―――大丈夫――――――――」
「すげぇマジな顔をしてた人に言われてもなぁ…」
 九曜は刺身のおよそ半分を物凄い速さで切り刻み始めた。
 残像が見える。残像が見えて、腕が何十本もあるように見える。
 これは仏様もびっくりの本数だ。
 ん…待てよ?
 まさか本当に腕が何本もあるわけじゃないだろうな?
 長門の対だし、情報操作だの何だのやると出来そうだから怖いんだ、こいつらは。
 さて、マグロの刺身だった物にネギを加える九曜。
「はい―――マグロの刺身50kgとネギトロ丼…………――――――――」
「………」
 もう良いや。ツッコミいれるだけ無駄なのはもはや明白だ。
 人生は諦めが肝心と昔からよく言うし諦めようぜ、これからの人生の為にな。
 切り身一枚あたりがステーキ並の大きさなのはちょっと我慢ならんが。
「みんな――――座って」
 しかし…昼間からこれだけ食べたら胃もたれ起こしそうだ。
 大丈夫か。胃腸薬でも買いに行こうか。んー、だがこれを食べ終わった頃には動けなくなってる気がする。
 マグロって脂肪分凄いんだよな…。あぁー、死亡するよ、脂肪で。
 酔っ払ったアホ面サラリーマンオヤジどもなら喜ぶオヤジギャグ的な展開だな。あー、サッパリサッパリー。
「あ―――そうだ――――――――」
 ふとここで九曜がまた動いた。
 ネギトロに使用していたすり身のおよそ半分と、刺身のおよそ半分を回収しキッチンへと入っていく。
 そして何処から取り出したのかフライパンを手に取っている。しかもハート型。
「マグロのステーキとハンバーグを作るつもりでしょうか」
 ミヨキチが推理し、仮説を立てる。
 どうやら正解のようだが、タマネギの入ってない、しかもマグロの肉。それってハンバーグ…なのか?
 あー、どこから取り出した、そのワイン。しかもロマネコンティですか。
 バカですね。うわぁー、物凄い火柱が上がっておられますが。
「―――あちち。あちち………あちちちちち――――――――――」
 はい、髪の毛に引火。
 そんなこんなでようやく揃った昼ごはん。
 マグロの刺身(一切れあたり多分100gぐらい)、ネギトロ丼、100%マグロのハンバーグ、マグロのステーキ。
 何これ。マグロしかねぇよ。油の量がヤバいよ。
「―――みんな――――遠慮せず食べてね……――――――――」
「…なぁ、九曜。お前、いつもこんなの食べてるのか?」
「―――うん――――――――――――てへっ」
 長門のカレー狂と言い、宇宙人という奴は何? 偏った食事大好きっ娘なの?
 眼鏡っ娘の次にマニアック精神くすぐる要素か? 無茶だろ。こんなの一部のマニアのマニアにしか受けねぇよ。
 ふと突如、隣に座っていたミヨキチがガタッと立ち上がった。
「ご、ご馳走様です…」
 もう油が胃にきたか。あちゃー、太田胃●買っておけば良かったか。
 いや、大正漢方胃腸●か。もうどっちでも良いや。さぁ、佐々木と橘はどこまでこれを食せる。
 俺は秘密兵器…黒烏龍茶でどこまで乗り切れるか試してみるか。
 さぁ、食うぞ! こんなにマグロを食えるのは贅沢なんだからな!!
 惨劇に挑め!!
 
 ………。
 
「………」
 死んだ。なんか、微妙に気持ち悪い…。
 くそ…何が”脂っこい食事にはクロだ”だ、この野郎…全然じゃねぇか……。
「うぷ…おえぇ…吐きそうだ………」
「……―――脂っこいものをあれだけ―――食べれば――当然………――――――――」
「お前が出したんだろうがぁぁあああッッッ!!」
「―――ニヤリ」
 佐々木と橘は口を開けたまま上を向いて動かない。たまにピクッと痙攣を起こしている。大丈夫か、こいつら。
 早めに切り上げたおかげかミヨキチはソファで横になっているが顔色は悪くない。
 しかし、あの様子だと寝てしまいそうだな。
 ミヨキチのような将来有望な娘には食べてすぐ寝るなんて事はして欲しくないが、今回は仕方ないとしよう。
「くっ…俺はちょっと寝るぞ」
 俺も限界だ。
「すぐ…寝ると―――太る――――――」
「うるへぇやい。俺は疲れたんだ」
 俺は適当な場所で横になるとそのまま目を閉じた。
 しばらくして、そっと掛けられる毛布の感触と、
「…――ごめんなさい………はりきったら―――あんな料理になっちゃって―――――――」
 という九曜の声が聞こえた。それを聞いて内心微笑ましくなってしまったね。
 そんな事は無い。美味かったぞ。味だけは、な?
 口には出さず、心でそう言い、やがて意識が一気に沈んでいった。
 食事だけでこんなに体力使うなんて珍しい話だな、まったくさ。
 
 ―――――――――――。
 
 目を開けると、そこら真っ暗だった。
 部屋のカーテンは閉まっているが、そのせいではない。単純に夜になっていた。
 隣に何かを感じるがそれが何か解らない。
 ただ、それは動いていて、甘い匂いがしている。そして、俺をじっと見ている。
 女の子のシャンプーか、リンスか、香水かは解らないが、あの匂い。
 ”それ”が抱きついてきた。
 途端に伝わる感触。温もり。細く華奢な腕だとよく解った。
 おかげで誰か解った。俺はこの腕に抱かれた事があるんでね、多々。
「ん…ミヨキチか」
「あ、お兄さん、起きてましたか」
 耳元から聞こえる声。俺のすぐ後ろで横になっているのだと解る。
 ミヨキチの体が離れていくのを感じて、ぶつからない距離に離れた後、上体を起こした。
 あれから幾ら時間が経ったのか解らないが、覚醒した頭でどう見たって夜だな。
「九曜達は?」
「私達をおいてどこかに出かけました。お兄さんは寝てしまいましたし、私もお兄さんと眠りたいと言ったら」
「そうか…」
 あんにゃろう…もし出かけている間にミヨキチに何かあったらどうするつもりだ。
 危機意識の薄さを感じざるをえないね。まったくもって愚考としか思えないな、あぁ。
 ミヨキチによって電気が点けられてようやく部屋が明るくなる。
 今まで電気が点いていなかったのは、きっと眠ってる俺への配慮だったのだろう。
「久しぶりってほどでもないですけど何だか久しぶりに思えてしまいます、二人きりでこうしていられるのは」
「あぁ…そうだな。考えてみれば昨日この家に逃げ込んだばかりだから一日ぶりなんだよな。長く感じるけど」
「二人きりで居られる時間をずっと待ってました。やっと二人きりですね、お兄さん」
 ふとミヨキチが俺に抱きついてくる。解っている。これは甘えているんだと。
 今まであいつらが居たから恥ずかしくて甘えられなかった分、今甘えているんだろう、こうして。
「お兄さんってモテるんですね…」
 ふとミヨキチが呟く。
「何言ってるんだ。俺を好きになるのはミヨキチぐらいだ」
 俺がそう言うときょとんとした顔で俺を見つめてくる。しばらくして破顔する。
「ふふっ……良かった。私は動いて正解でしたね」
「え?」
 ミヨキチは俺の反応を見て、反応に満足したように笑う。
「何でもありません」
 そう言って腕に力をちょっとだけ入れる。そうしてしばらく時間が過ぎる。
 聞こえるのは呼吸音。服を隔てて感じるのはミヨキチの温度。
 何でこんなに重いんだ、場の空気が。ミヨキチ自体は至って軽いというか軽すぎる。
 あぁ、本当に空気が重い。何でだろう~なんでだろう~って古いぞ、俺。
 ふとミヨキチがもぞっと動いた。俺がちらりと見ると、
 
 一面ミヨキチの顔しか見えなくなった。
 
 ミヨキチに襲われた…という言い方には語弊があるか。だって途中で何をする気か気付いてたし。
 それで避けなかったということは確信犯的にキスを受けたのだからな。
「どうした、いきなり」
「お兄さんの周りってとても魅力的な女性ばかりで、だから不安で不安で仕方くて…」
「そんな事心配しなくても良いんだぞ」
「解ってます…。でも、気になっちゃって…ごめんなさい。私、重いですよね…」
 重い? 物理的にか。
 …という一瞬真面目に浮かんだ言葉はすぐに抹消。愛が重いかと聞いているのだな。解ります。
「そんな事無い。ミヨキチが重いんだったら俺は超重量だぞ」
「…超重量?」
「そうだ。俺はミヨキチを鳥かごに入れて独り占めしたいぐらいだ」
 あ、俺何気なく危険な発言してる。
「私、そんなに思われてるなら幸せモノですね。お兄さんになら私、飼われてもいいですよ、本気で」
「……………」
 お兄さんになら私、飼われてもいいですよ。
 私、飼われてもいいですよ。
 飼われてもいいですよ。
 いいですよ。
 ですよ。
 よ。
 
 本気で。
 
 脳内に繰り返されるポリリズム。あの声が何回も繰り返される。
 ぐるぐるぐるぐる。テレビでどう見ても口パクだった某三人組、このリズムを止めて下さい。
「ううん、むしろお兄さん…私を、独り占めして。お兄さんから離れないようにして下さい」
「ミヨキチ…」
「この身を鎖で繋いでも良いです。何されても良いです。だから…離れないようにして下さい」
「…そんな事しなくとも離れやしない」
「ずっと一緒ですよね?」
「あぁ、勿論」
「…嬉しいです…」
 ここで俺達の現状を客観的に見てみる。決して俺はロリコンじゃないぞ。
 うむ。何て重い愛なんだ。病んでいるとも言える。片や幼女。ヤバいな。
 まぁ、自覚してる分まだマシだろう。
 
 それから一時間ぐらいして佐々木達は帰ってきた。
「夕飯は私です!」
 橘がきらきらとした顔で立ち上がった。…なんだろう。明らかにドジフラグの匂いがします。
 安西先生、安全な夕飯が食べたいです。諦めたらそこで終了か。
「で、何を作るつもりなんだ、お前は」
「アプリコットと抹茶のミルフィーユですよ」
 一瞬、場が凍りついた。佐々木も九曜も、え?、という顔をしている。
 想像した。アプリコットと抹茶のミルフィーユというお菓子を。
 それをおかずに食べるご飯を。うわぁぁぁあああぁああ! 偏食ばかりだー!!
「それデザートだろ?」
「あ、誤解させてごめんなさい。お夕飯は焼肉なので焼くだけなんです。それで、何を作るかと聞かれたので作るという意味ならその二つという事で」
 ほっとした。あれだ。ショートケーキをおかずにご飯を食えというようなものだからな。
 これはマジでびびった。
 …ちょっと残念そうな雰囲気が漂っているのは気のせいだと言ってくれ。まさか、な?
「作れるのか?」
「勿論です! でもその前にお肉焼きましょう。九曜さんお願いします」
「―――構成。炭火焼肉屋のテーブルとか云々―――――――」
 アバウトだー!!
「―――今回は焼肉でんモデル」
 ガンバ大阪応援してる焼肉屋である…っつうてもマイナーすぎるー!!
 長崎屋が潰れて、アイホップの店舗を買い取った会社が運営、っつうても解らないだろう。
「超高級備長炭で、超高級和牛焼きますよー」
 
 かっ飛んでいく流星ロケット窓から見える私は~♪
 
 ふと橘の携帯が鳴った。そして、シリアスな雰囲気の顔で携帯を眺める。
 …なんだ、その一連のキャラ作りみたいな無駄な時間の浪費は。
「こ、この着メロは…このメロディは涼宮さん達を監視している人から専用なのです」
「解りやすいな」
 
 ピッ♪
 
「もしもし…はい……はい…うん、はい………え!?…はい…解りました」
 簡単な会話しか見えない電話が終わり、橘は相当困ったような顔をしてこちらを向いた。
「どうした?」
「涼宮さんがキョンくんの家に住み込み始めたとの連絡が」
「それじゃ帰れないな…家に荷物色々置きっ放しなんだが…困ったな」
「―――その心配は皆無……――――――――」
 ふと九曜がタンを食べながら口を開いた。
 飲み込んでから口を開け、とは言っても無駄だろうから言わなかった。
「…貴方の最低限必要そうな―――荷物は………転送済み――――――――」
「それはありがたい…それはドコに?」
「私の部屋……―――の隣の部屋に―――――――」
「すまない。恩に着る」
「ん―――」
 俺は早速、その部屋に向かった。後ろから何故か九曜がついてくる。
 さて、ドアノブを開いて確認しよう。最低限必要そうな物で何を選んだのか、な………ん?
「………いや、待て」
 俺はそこにあったものを見て愕然とした。
 それは、俺が一人で…ね? アレをする際のオカズが揃っていたわけだが…。
「何故こんなものを転送した!?」
「――――必要でしょでしょ――――――――?」
 九曜がピースをして聞いてくる。
「他所様の家で禁則事項やるほど、俺は非常識じゃないわい!」
「喜ぶと思ったのに――――あ、もしかして――――――――?」
「何だよ」
 ポッ、と顔を染める九曜。
「わたし達を………――――おかずに――――――――?」
「誰がするかボケェーーーーーーッ!!」
 すぐさま本当に必要になりそうな物とそれらをチェンジさせた。
 マジで要らないかどうかと聞かれれば微妙だが、少なくとも他人の家でやるような人間性は兼ね備えていない。
 まったくもって不快であり、遺憾の意を俺は示すものであります!
 それに最近はそんな欲望も湧きやしないしな。ミヨキチと付き合いだした頃からだろうか。
 これと言って晴らしたいと駆られる程の欲望も無い。湧いたところでミヨキチでは晴らしちゃいけない。
 だからと言って一人でやるか否かと言われれば最初の戻って晴らしたいほどの欲望も無いので別にその必要も無い。
 無論、ミヨキチにそういう情が無いかと言われればそれは違う。ただ、心の奥底でリミッターを掛けているんだ。
「これでやっと必要な物が揃った、って言えるな」
「―――本当に要らなかったの………―――――――――?」
「くどいぞ」
 そんな俺と九曜のやりとりを、陰からじっと見つめている視線があった。
「………お兄さん」
 ミヨキチの視線である。何処となく寂しそうな。
 しかし、俺はそれに気付くことはなかった。
 
 そして、夜になる。
 
 最低限必要な物の一つにベッドを選び、おなごと別々の部屋で眠る事が出来る事となった。
 別になんとも思いやしないんだが、一応向こう側が気にしているかもしれないしな。
 残念そうな顔を浮かべているように見えたのは、気のせいだろう。
 何せ俺という冴えない男と一緒の部屋で寝ていたんだぞ? それが無くなったんだから喜べば良いのに。
 で、ミヨキチは自身が小学生という幼さを利用し、俺と眠りたいと言って一緒に眠る事に成功した。
 宣言した瞬間、佐々木団女子の面子の間で意味不明な空気が流れたが、一体何だったのだろうか。
 なんというか…そう。殺気のようなものだった気がする。ちょっと冷や汗が出た。
 何やかんやと色々思いながら今日一日を振り返る。まぁ、一日だけでかなりの出来事があった気がする。
 それはSOS団とはまた別物だがとても愉快で、同じぐらい有意義な無意義な一日。
 俺は思う悪くは無い、と。
「…お兄さん。まだ起きてますか?」
 ふと俺の背後、すぐそこから声が掛かる。
「ん? あぁ、どうした? 眠れないのか?」
 ミヨキチに背中を向けた形だったので、俺は反対側へ向き直した。即ち、ミヨキチの居る方へ。
 そんでもって、視線を交わしてすぐに気付いた。
 こちらを見つめてくる視線はいつか見たことのあるような瞳の色をしており、何となく嫌な予感がすると。
 あれはいつだったか。そう、ミヨキチとディズニーランドに行った日。
 俺の家に泊まりに来たミヨキチと同じベッドでぐっすりと眠った日。
 あの時の話題を切り出した時と、同じ目。
「やっぱり、我慢とかしてるんですか? その…先ほどの、オカズ、とか」
 ミヨキチが上半身を起こして俺を見下ろす。優しいようで何か怒ってるような…。そんな双眸で。
「い、いや、別に、うん、大丈夫だか―――!?」
 俺がしどろもどろになっている間に、ミヨキチがマウントポジションを取る。咄嗟の事で反応出来なかった。
「我慢しないで下さい。私なら、大丈夫ですから…」
 ミヨキチは背筋が凍る程、綺麗な笑顔を浮かべてそう言った。
 間違いなく、ミヨキチはキレていた。
 
 続く。

 

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