「懐かしい、夕焼け。私たち三人で」
 

 
 朱色の逆光を背負いながら、朝倉は無邪気な子どものように笑いながら、室内を見回し、そう言った。
 鼻を突く、薬品の匂い。埃っぽい布団の乾いた匂い。大きな白いカーテンからは、古い洗剤の匂いがする。
 ……俺の背筋を、冷たい何かが一瞬過ぎる。
 靴箱の手紙で呼び出され、向かった先で、朝倉が待っていた、あの日と良く似た風景。
 エレベーターに乗っていたはずの俺たちは、今、夕焼けの差し込む、見知らぬ病室に、向かい合って立っていた。
 
 ……ここは?
 長い間詰まっていた喉に、ようやく気体が入り込む余地が出来た俺の喉から、ざらついた声が漏れ出す。
 
 「ここはどこなのか。それは、私にも分からないわ。誰も説明してくれないんだもの。
  だから、想像したの。ここはね。きっと、力を手にしたものの集う場所なのよ」
 「力?」
 「涼宮ハルヒの力。……もう、回りくどいから、神様の力って言っちゃおっか?
  世界を作り変える力、よ。思い当たること、あるでしょう?」
 
 朝倉の言葉が、俺のぼやけた脳の奥底から、あの灰色の文芸部室の光景を思い出させる。
 そう。俺はさっきまで居た、あの世界を、十二月の十八日まで巻き戻した。
 正確には、その日付までの、俺の記憶を元とした世界へと、作り変えたのだ。ヒューマノイドインターフェースの長門が用意し、朝倉涼子が作り変えた、緊急脱出用プログラムの力を使って。
 
 「きっとね。これは、神様の力を盗み出した、罰なんじゃないかって思うの。私たちは、まだずっとずっといいほう。
  ……彼女は、もっともっと思い罪を、今も償い続けてるわ。
  会いたかったんでしょ? あわせてあげるわよ」
 
 朝倉はそう言うと、傍らの閉ざされたカーテンに手を掛けた。
 かしゃっ。という乾いた音と共に、俺たちと同じ夕焼けの色に染まった、白いベッドが現れる。

  
 几帳面さを押し付けられたかのように清潔な、そのベッドの上に横たわっているのが、一体誰なのか、一瞬わからなくなる。ぶしつけな陽光によって茜色に塗りたくられた肌と髪が、俺の中に存在するその人物のイメージと重ならなかったのだ。
 
 そこには、長門が居た。
 肩までを清潔そうな布団に覆われ、首から上の僅かな部分だけを、炎のような光の中に晒している。
 瞼を錠前のように閉じ、まったくの無表情のまま、まるで氷の彫刻のように眠る、長門有希がいた。
 それはあまりにも静かな眠りで、呼吸すらもしていないかのようにも見えた。
 しかし、良く観察すると、白い布団の胸の辺りが僅かに上下していることから、それが単なる印象であることが分かる。
 
 「難しいことは、私には分からないわ。

  でも、きっと、一番初めの過ちを犯したのは、彼女だって…きっと、神様は、そう判断したのね」
 
 朝倉は微風の様に言った。
 
 「ねえ、キョン君。貴方が一体何度、あの夕暮れの教室で、私と向かい合って
  私にナイフを向けられたのか、その回数が分かる?
  ……たったの一度だけって、そう答えるんでしょうね。きっと。
  でも、違うのよ。それは、幾度も繰り返されていることなの。
  彼女の……長門さんの見ている夢の中で、幾度も幾度も、途方も無く繰り返されていること。
  それが一体、何度繰り返されたかなんて、誰にもわからない。きっと、神様にさえ」
 
 朝倉は、眠る長門を気遣うかのように、俺に聴こえる最低限の音量でそう囁きながら、長門の閉じた瞼を指でなぞり、左右に分かれた髪の毛に触れた。
 
 「……私のもくろみはね、失敗に終わったの。
  私は貴方に……長門さんが最も幸せになれる未来を選択してもらおうとした。
  あの世界、長門さんが望んだ世界を、あなたにとって、耐えられるものではない、凄惨なものへと作り変えて。
  ……私、貴方に頼ったのよ。自分の愚かさを棚に上げて、あなたに全部の責任を負わせようとした。
  それが、私の罪。私の過ち」
 「それが、ハルヒを殺した理由か」
 「ごめんなさい。私、いまだにわからないのよ。こんなふうに、長門さんにくるってしまった今でも。
  有機生命体の、死に対する概念が。
  でも、きっと涼宮ハルヒなら……彼女の死でならば、貴方を動かせないはずがないって、そう思ったの。

  だから、私は彼女を殺した。……それが正しいことだと思ったの。だって、私の元に、このナイフが届いたから」
 
 いつの間に、どこから取り出したのか。朝倉の右手には、俺にとっても見覚えのある、おぞましい代物が握られていた。
 あの日、俺を殺そうとした朝倉の手に握られていたものと良く似たナイフ。
 
 「だから、私が貴方よりも先に、あのプログラムを見つけたことも。
  みんなみんな、運命だと……長門さんが望んだことだと、本気で信じてた。
  あなたはきっと、世界を元に戻す。私のいない、長門さんが冷たいままの世界を選択すると思った。
  だから私は……貴方にそれをさせないために、長門さんと貴方の邪魔をし続けた。
  ……あんなふうに、友達面をしながら、そんなことを考えてたのよ、私。
  こういうのって、薄情ものって言うのよね。私、それは分かるわ」
 
 薄情ものか。悪い、朝倉。それについては、俺も何も文句は言えん。
 ……結果はどうあれ、俺もまた、お前を見捨てた、薄情ものなんだからな。
 
 「おかしな人。

  たった今、自分を騙し続けてたことを白状した相手に、見捨てる、見捨てないだなんて。

  やっぱりあなたって、わからないわ。
  ……続きを話すわね」
 
 朝倉は短く咳をして、さて、どこから話したものかとでも言わんばかりに数秒視線を泳がせた後で、再び話し始めた。
 
 「私のコピーした神様の力じゃあ、世界を本当に作りかえることなんて出来なかった。
  あなたはね、世界を作りかえることは出来なかったの。
  ただ、電脳の世界に、仮想次元を作り出しただけ」
 
 電脳世界?
 
 「そう。私は私なりに、神様の力を解析し、再生し、それをプログラム化したつもりだった。
  だけど……無理だったのよ。ニセモノは所詮ニセモノ。それは本当にただのプログラムでしかなかった。
  ……やっぱり、本当の力を再生できるのは、長門さんだけだったのね。
  貴方は世界を作り変えたつもりで、たった一人、プログラムによって作られた電脳世界へと迷い込んでしまった。
  ……世界は、続いていたのよ。貴方が緊急脱出用プログラムを実行して、十二月十八日へと還ったあとも。
  そして、欠陥プログラムによって造られた電脳世界は、その場でフリーズしてしまった。
  貴方の世界は、巻き戻した時間を使い果たし、その瞬間が訪れると同時に、バグを起こして、消え去ってしまう。
  そんなうたかたみたいな世界に、貴方は旅立って行ってしまった。貴方の記憶の中に住む人々と共に。
  そして……あの文芸部室に残された長門さんは、その事実に気づいてしまった。
  彼女が自分に掛けた魔法のすべてが解けてしまったの。
  自分が犯した罪……神の力へ妄りに干渉しての、身勝手な世界の改変。
  それが彼女の過ち」
 
 ……世界がバグを起こす瞬間。
 それが、あの土曜日の、十二時四十六分だったってのか?
 
 「その通り。
  ……すべてを思い出した長門さんは、貴方を助け出そうとした。
  彼女は私や貴方と違って、あのプログラムから、本当の神様の力を再生することが出来た。
  彼女はその力を使って、もう一度世界を作り変えるという方法で、あなたを救いだそうとした。
  貴方と涼宮ハルヒが出会った、一番初めから、もう一度。世界を作り直したの。
  そして、自分……長門有希という存在が、二度とエラーを起こさないように。
  自分の魂を、貴方の望むような、ヒューマノイドインターフェースの長門有希として、その世界へと宿したの。
  その代わりに、彼女と言う存在の実体は、魂を失い、眠りに着くことになってしまった。
  力を手にしたものの行き着く、世界の最果てで。
  それが、ここ。……彼女は、長門さんの源のようなものよ」

 
 朝倉は話を続けながら、長門の顔や髪の毛に触れ続けていた。
 俺は朝倉の指先によって僅かにかたちを変える長門の顔を見つめながら、エラーを起こしたヒューマノイドインターフェースとしての記憶を取り戻した眼鏡の長門のことを思った。
 
 笑い、脅え、悲しみ、怒る、あの眼鏡の長門。
 それは、ヒューマノイドインターフェースの長門が、そうありたいと望んだ果てにたどり着いた姿だったはずだ。
 しかし、長門は……自らの理想を捨ててまで……冷たいからくり人形のような長門有希で有り続けることを選んでまで、俺を救おうとした。
 
 「そうして、世界は繰り返されたの。初めから、もう一度。
  貴方が涼宮ハルヒと出会い、長門さんと出会い、私とも出会い……
  ……でもね。やっぱり、エラーは起きてしまったのよ。
  長門さんは同じように、感情に芽生え、更に大きなそれを求めて、禁忌を犯した。
  彼女は貴方を残して世界を作り変え、私は彼女の為に過ちを犯した。
  貴方は閉ざされた世界へ旅立ち、彼女はそれを救うために、すべてを巻き戻す……
  エラーの輪廻よ。ぐるぐるぐるぐる回り続ける、同じシナリオを辿り続ける壊れたフィルムのような。
  こんなに悲しいことって、ある? 長門さんはこの場所で、永遠に、同じ過ちの夢を見続けているのよ」
 「……だが、なら何故……俺は今、ここにいる?
  その話の通りなら、俺は永遠に、長門の創る世界の住人でありつづけるはずじゃあないのか」
 「エラーが起きたからよ」
 
 朝倉は言った。
 
 「終わらないエラーの歯車を狂わせたのは、新しいエラーだったの。
  長門さんが……あなたが消えた後。あの賞味期限ぎれのフロッピーから、神様の力を再生する能力を、失ってしまった。
  正確には……それを半分、持って行かれてしまったの。
  あなたによ、キョン君。……あなたが、長い長い繰り返しの、最後の最後に。
  本当に、長門さんと結ばれてしまったから。
  長門さんの力は、貴方と二分されてしまった。
  だから、貴方は今、ここにいるの。たったの半分だけだけれど、本当の神様の力に触れてしまったから」

 
 俺が、長門と結ばれた。
 ……その言葉に、身に覚えが無いわけではない。
 俺が奇妙な出来事たちにまぎれて、忘れてしまえばいいと、ひそかに思っていたあの出来事。
 ハルヒが死んだことを知らされた日の夜。
 ……確かに、俺は。長門と結ばれたと言っても良いのかも知れない。
 それによって、長門の持つ、神様の力……を、再生する力が、俺にも分け与えられてしまった。
 
 「もっとあけすけに言って欲しかったかしら?
  ……あなたが最後に作り出した世界は、0と1だけで創られた電脳世界なんかじゃなかった。
  多分、あなたにとっては、つい最近まで、当たり前に存在していた、その世界のことよ。
  長門さんと力を分け合った貴方は、世界を作り変えることは出来なかった。けれど、世界を創ることはできた。
  それはただ、今日の日の十二時四十六分より先の未来を持たないだけの、れっきとした平行世界だった。
  そして、あなたに力を奪われた長門さんは、世界を作り変え、貴方を呼び戻すことが出来なくなってしまった。
  彼女はついに、魂までもを、この世界の最果てへと迷い込ませてしまった。
  そして、世界の終わりにたどり着いてしまった、哀れで未熟な創造主である、あなたを……私が、この場所に呼んだの」
 
 ……長い長い螺旋のような朝倉の言葉が、俺の頭の中を縦横無尽に駆け巡った後に、脳髄に染み渡って行く。

 

 「何故お前が、俺をここに呼ぶ必要があった?」
 「あなたに、長門さんを目覚めさせないためよ」

 朝倉は言った。

 「長門さんは、待っているのよ。誰かがこの終わらない眠りに、終止符を打ってくれることを。
  だけど……私が何をしても、彼女は目を覚ましてはくれないのよ。本当に、何をしてもよ。
  長い、長い間、私はこの場所で、長門さんと二人きりで過ごしてきた。
  でも、その間に、一度だって、彼女は目を覚まして、私の名前を呼んではくれなかった。
  何故か分かる? 私には良く分かるわよ。
  ……あなたがいるからよ」

 
 朝倉のその言葉と同時に。俺は全身が粟立つ様な悪寒に襲われ、咄嗟にその場から飛びのいた。
 その結果、俺の背中は、閉ざされた入り口の扉へと打ち付けられ、危うく喉から横隔膜が飛び出しそうになる。
 しかし、その程度で済んだのだからまだマシなほうだろう。……この咄嗟の回避運動を行わなければ、俺の体は、朝倉の振り切ったナイフの刃によって切り裂かれていただろう。
 
 「世界がどうなろうと、運命がどうだろうと。長門さんは、永遠に、貴方にとらわれたままなのよ。
  私はただ、貴方と長門さんが、いつか、何の隔たりも無く結ばれる為の…そのためだけに踊らされ続ける、道化師なのよ。
  今、この場所に、貴方がいる事だって、そう。
  もしも、こうしてエラーの輪廻が途切れたとき、私は貴方をこの場所に導く、ただそれだけの為に……
  たったそれっぽっちの事の為だけに、私は夢を見続ける長門さんのそばに居させ続けられたのよ」
 
 穏やかで、歌うようだった朝倉の口調が、徐々に覇気を帯び、高潮してゆく。
 あの時、夕暮れの教室で感じた殺気の比ではない。
 朝倉涼子は、今、純粋な感情の元に、この俺を殺そうとしているのだ。
 
 「長門さんは、あなたに世界の選択を委ねた……
  私は貴方にそれを知らせるためだけに、あの世界に作り出されたの。
  私は、長門さんを、あなたから守るために呼び起こされたと……そう信じてたのに。
  なのに、そうじゃなかった。私はただ、あなたと、長門さんを引き寄せるための道具でしかなかった。
  長門さんにどれだけ感情に芽生えようと、彼女私のことを、バックアップとしてしか見てくれないのよ!」
 
 ドアを背にしりもちをついた俺に向けて、逆手に持ったナイフが振り下ろされる。
 朝倉の腕力と、俺の腕力とを比べた場合に、僅かに俺の腕力のほうが勝っていたらしい、それが救いだった。
 俺が朝倉の両の手首を掴み、全身全力を込めて押しとめたために、ナイフの刃先は俺の眉間を突き刺す寸前で停止していた。
 
 「貴方が居なければ……長門さんはもう、こんな終わりのない夢を見ずにすむのよ
  貴方が……あなたさえ、いなければ……」
 「……違う、朝倉。お前は―――」
 
 お前は、あの小説を――長門の書いた物語を、読まなかったのか?
 
 「読んだわよ。何度も、何度も……ここには、それ以外に何もないもの。
  紋白蝶と、蓑虫と、蜜蜂の物語。
  私は蓑虫の貴方を、魔法の場所に導く、ただそれだけのために―――」
 「違う! 違うんだ、朝倉、長門は……」
 
 俺があの、灰色の文芸部室で出会った、長門の姿をしたもの。
 あの灰色の長門の言葉が本当なら……魔法のカギはふたつあった。
 そして、そのうちの一つは――もう、お前の手に渡っているはずなんだよ。
 
 「……私が、カギを?」
 
 朝倉がそう呟いた瞬間、俺の両腕に掛かる朝倉の体重が、一瞬、僅かに弱まった。
 その瞬間をつき、俺はアトラスの巨人か何かになったつもりで、思いきり状態を起し、俺の体に圧し掛かる華奢な肉体をはじき返した。
 ううっ。と、短いうめき声が聞こえ、今度は反対に。朝倉がリノリウムの床にしりもちを着く体勢になる。
 俺は勢いのままに両足を地面に付け、ナイフを握る朝倉の両手に抱きつき、全体重をかけ、床へと押さえつけた。
 ダメージを与えるつもりはないが、こんな物騒なものを振り回す手を、自由になどさせてはおけない。
 
 「そんな……だって、私が手に入れたものなんて、あの本とプログラム以外に……」
 「……あるじゃねえか、ここに」
 
 不細工な腕ひしぎのような体勢のまま、俺は朝倉の手首を握る手をひときわ強く握り締め、その手の中の獲物を奪い取る。
 
 「あっ……!」
 
 朝倉は、一瞬、しまった。と、単純に獲物を奪われたことに困惑する表情を見せた。
 しかし、その直後から。油のしみこんだ布が端から燃えて行くように、その表情が青ざめて行く。
 腕の中で、朝倉の体から、見る見るうちに力が抜けて行くのが分かる。
 俺は朝倉への拘束を解くと、今、まさに朝倉の手から落ちた、物騒な刃物を拾い上げた。
 ……俺の脳裏に、あの灰色の長門有希の言葉が蘇る。
 
 ―長門有希は、一人分の修正プログラムを用意することしか出来なかった
  故に、あなたが世界を修正する場合には、この『緊急脱出プログラム』によって
  あなたに一度時空間移動を行わせ、過去の長門有希が構築したプログラムを
  入手させる手筈だった。
 
 ―……この時空の長門有希によって構築された修正プログラムは
  十二月十八日の午後に、彼女の手に渡されていた。
  彼女がそれを受け取った時に、全てを理解できるような形状で。
  そして、彼女が時空間移動をするための手段も確保されていた
 
 「……嘘、でしょう?」
 
 嘘じゃねえよ。
 朝倉。俺はあの一件で、自分がとんでもない大馬鹿者だったってことを痛感したもんだったよ。
 だけど……お前も、似たようなものかもしれないぜ。
 
 「俺よりもずっと容易い場所に……お前の為のカギは用意されていたんだよ。
  ……いわば、俺は予備みたいなもんだ。
  あいつも、お前と同じ……ハルヒが絡めば、俺はきっと黙ってないと、そう思ったんだろうよ。
  ……本当なら」
 
 長門が望んだ、一番の選択者は……お前だったかもしれないんだよ、朝倉。
 お前は俺なんかより、ずっと、ずっと、長門の近くにいたじゃないか。
 
 「うそ……だって、このナイフは……私が、あなたを……」
 「あれはお前じゃない……お前の意思を、情報統合なんとやらが操作してたんだろう」
 「……そんなわけ、ないわよ。私が、長門さんに……あの長門さんが、私を選んでくれてたなんて」
 「だったら!」
 
 だったら、どうしてお前がここにいる?
 神様の力とやらに直接触れちまったものが行き着く、この場所に。
 出来損ないのプログラムしか作れなかったはずのお前が
 
 「……え……?」
 「もしも、の話だがな。朝倉」
 
 俺と長門が……その、なんだ。心を通じ合わせたことで、その力が分け与えられていたってんなら。
 お前は……お前はこんな滅茶苦茶な堂々巡りが始まっちまう、とっくの昔から、長門と通じ合ってたんじゃないのかよ。
 あの世界でのお前には、ヒューマノイドインターフェースとしての力なんか無かったんだろ?
 だってのに、お前はその、神様の力とやらを、あのフロッピーから呼び起こせてたんじゃねえか。
 
 「じゃあ、じゃあ、長門さんは……長門さんが、私をあの世界に構築したのは」
 「俺が知るかよ、そんなこと! お前が……お前のことが、好きだったからとかじゃねえのか!?」
 
 俺のその自暴自棄の怒号を最後に、病室には、氷水のような静寂が訪れた。
 朝倉は、冷たい床に力なくへたり込み、荒く呼吸をつきながら、鏡を覗き込む魔女か何かのように、自分の両手を見つめている。
 俺は一連の格闘で上がった呼吸を整えながら……すこし考えた後に、手の中のナイフを朝倉のすぐ傍へと置いてやった。
 朝倉は、力なく光る刃をしばらく見つめた後、震える手で恐る恐る、その柄を手に取る。
 
 「私……私の、カギ……これで、私、何をしたら……何をするために、ここにいたの?」
 「……さっき、自分で言ってたじゃねえか」
 
 長門は、この永い眠りの終わりを望んでいるのだ……と。
 
 今、朝倉の手に握られているのは、正真正銘。長門が用意した、世界を再生させる為の修正プログラムだ。
 灰色長門の言葉の通りなら、そいつは俺か朝倉のどちらかが、時間移動をし、長門が世界を改変した瞬間に起動しなければならないものだったはずだ。
 しかし、時空転移どころか、どこの世界がどこに行っちまったのかの見当もつかない現状じゃ、処方通りに起動することはできない。
 だが……俺たちに出来る選択は、一つだけ。何もしないか、何かをするかの選択のみだ。
 駄目元で、やってみるしかねえじゃねえか。
 
 「だけど……私、これを使ったら……世界は、修正されてしまうの?
  それじゃあ……私は、また、消えてしまう……そうなの?」
 
 ……そういうことになるな。
 だけどな、朝倉。悪いが、俺にはどうしてやる事も出来ねえよ。
 世界を修正しないって選択肢をぶっ潰しちまったのは……お前なんだからよ。
 お前の『過ち』は、俺を選択から遠ざけたことなんかじゃなかったんだ。
 それがお前の選択だったんだよ。
 それだってのに、お前は……なんでこんなバカなことしちまったんだよ?
 
 「長門さんは……だって、長門さんは、貴方が好きだったじゃない!
  あなただって、長門さんのことが好きだった……違うの?」
 「ああ、そうさ。俺は長門のことが好きだったよ。
  メガネがあろうと無かろうと、笑おうと、無表情だろうと、泣こうと、冷たかろうと、暖かかろうと
  俺は長門有希が好きだったよ!
  だけど、俺がいつ、お前のことが嫌いなんて言ったんだよ!
  長門がいつ、お前のことが嫌いで、邪魔だなんて言ったんだよ!」
 
 腹からあふれ出す声と共に、体中の力が抜けていくようだった。
 俺は薬品棚のロッカーに背を預け、そのままずるずるとブレザーの背中を滑らせ、冷たい床の上に尻餅をついた。
 肩の辺りがひりひりと傷む。どうやらさっき、朝倉に噛み付かれていたらしい。
 
 
 

 

      ◆

 
 
 
 「私……消えたく、ないよ……怖いよ
  長門さんと、離れたく……ないよ…………」
 
 「じゃあ、このままずっと、こうしてるか?」
 
 「……でも、それじゃ長門さんは、ずっと」
 
 「眠ったままなんじゃ、ないか?」
 
 ……頼むからもう、俺に何も訊かないでくれ。
 
 「だって……私、私…………」
 
 助けてやれるなら、俺だって、助けてやりたいさ。
 
 だけど……もう、頼むから、今は。
 
 俺に何も訊かないでくれ……

  
 
 
      ◆
 
 
 
 延々と耳に障り続ける水音が、ゆるい粘土のようなまどろみの中から、ゆっくりと俺の意識を引き上げて行く。
 どうせならば、目を開けたその場所が、見慣れた自室のベッドの上であってくれたならば良かったのだが。
 どれくらいの間眠っていたのだろう。病室の中は、色濃い闇に包まれている。夜がやってきたのだろうか。
 薬臭い空気は、何しろ冷え切っている。制服に身を包んでいるのみの俺の体は、すっかり冷え切ってしまい、立ち上がろうとしても、はじめはうまく体が動かせないほどだった。
 長い時間をかけて、氷のような床から体を持ち上げる。
 ベッドの上では、はじめに見たときとなんら変わりない様子で、長門有希が寝息を立てている。
 その僅かな呼吸音を掻き消さんばかりに耳に障る音。それに導かれるように窓の外を見て、俺は初めて、夜の闇を、無数の雨粒が曇らせていることに気がついた。それも、ハンパな雨ではない。所謂、土砂降りと言うヤツだ。
 けたたましい雨音を背負い、俺は長門のベッドの傍らに有った丸椅子に腰を掛け、灯りのつけられていない室内を見回す。狭い室内に、朝倉の姿はない。となると、俺の目の前。この閉ざされたもう一つのカーテンの向こうにいるのだろうか?
 
 「……朝倉?」
 
 小声でその名前を呟いてみるも、返事はない。眠っているのだろうか。
 しかし。そう安易に考えた直後。病室の唯一の出入り口である引き戸が、僅かに開かれていることに気づく。
 朝倉が、どこかへ出て行った? 一体、どこへ?

 そもそも、その扉の向こうには、一体何があるのだろうか?
 

 「……」

 

 眠り続ける長門の顔をしばらく見つめた後。俺は冷たくなった体に鞭を打ち、僅かに開かれたその扉へ向かった。
 近づくと、古い引き戸には、俺の朝倉の格闘の痕跡と思われる、僅かな凹みが生じている。
 ……当たり前のことだが、すべては夢などではないのだ。
 もっとも、こんなところに置き去りにされたまま、すべては夢でした。などといわれても、困るのだが。

 

 

 引き戸の向こうには、あえて述べるべき特徴も見当たらない、平凡な病院の廊下が広がっていた。
 病室から一歩外に出れば、そこは病院内。考えてみれば、当たり前のことだった。
 歩き回るには少しばかり暗すぎたが、どこを探れば電灯のスイッチが有るのかもわからない。仕方なく、俺は暗闇に視界が慣れるのを待ち、手探りで壁を伝いながら、人気のない廊下を歩み進めた。
 人気のない深夜の病院、しかも外は雨となれば、考えてみれば末恐ろしいシチュエーションだったが不思議なことに、俺はその空間に恐怖を感じることは無かった。さすがにここまで非現実的な状況下にあると、物事の価値観などは容易く変わってしまうものだ。コンクリートの外壁を隔てた外界で、轟々と降り続ける雨音が、建物内に不気味にしみこんで来る。
 外界。

 そういえば、この病院の外にも、世界が広がっているようだった。そこには一体、何が有るのだろう。俺は窓の外にどんな光景が広がっていたか思い出そうとしてみたが、夕焼けの色と、雨に曇る夜の闇ばかりが思い出されて、その向こうに何が存在したかを思い浮かべることはできなかった。

 フロアには、長門が眠りに着いている病室のほかにも、いくつかの病室が存在したが、それらにはすべてドアロックが掛かっており、同様に、スタッフルームらしき部屋にもロックが掛かっていた。

 病室の廊下を抜けた先には、小さな待合室のような空間があり、そこからもう一方、どこかへ繋がる道があるようだったが、そこは鈍色のシャッターによって遮られており、先に進むことは出来なかった。エレベーターらしきものは無く、あるのは階段のみ。そのうち、下りの階段もまた、先ほどと同じシャッターによって閉ざされていた。
 となれば、進む道はただ一つ。上りの階段である。
 ここまでに、朝倉の姿は見つけられていない。朝倉は、この階段を上った先にいるのだろうか。
 徐々に目覚めてきた体で、緑色の塗装の成された階段を上って行く。ローファーの靴底が、クツクツと濡れたような音を立てた。
 階段を上りきると、底には左右に避けられた格子扉が門を構えており、その向こうには、片開きの鉄の扉が張り付いていた。先ほどと比べて、建物内に響き渡る雨音が大きくなっている。どうやらそれは、屋上へと続く扉のようだった。
 踊り場で軽く周囲を見渡し、朝倉の姿を探す。どこかの物陰にうずくまってでもいないかと、念入りに探してみるが、見つからない。あとは、この鉄の扉を開けた、その向こうしかない。おそらく、土砂降りの雨に晒されているであろう、この見知らぬ建物の屋上。
 朝倉は、そこで、何をしていると言うのだろうか?

 
 
 
     ◆
 

 
 
 扉は俺が予想していた以上に重く、冷たかった。
 ドアノブに両手をかけ、右肩を押し付けながら、そのサビの匂いのする扉を開ける。
 案の定、壁との間に僅かな隙間が生じた途端に、俺の体に、噴水のように水飛沫が襲い掛かってきた。冷たい水の球体が、俺の髪を濡らし、肌を冷やし、制服へ沁みこんで行く。全身がぶるりと奮え、一瞬心が怖気づきそうになる。しかし、なけなしの気合を込めて、俺はその扉を開け放った。ドウドウと音を立てて、コンクリートの地面の上に、大量の水滴が降り注ぎ、それが地表に触れると同時に水飛沫となり、霧の様に雨粒の間を埋め尽くしていた。
 空は濃い灰色。もちろん、月の光などが届くはずも無く、世界は徹底的に陰鬱な闇にくるまれている。いつぞやの孤島での嵐を髣髴とさせる。そして、その時と同じ連想が、俺の脳裏をよぎる。そこには、閉鎖空間に良く似た世界が広がっていた。
 靴などはすぐさま水で溢れ帰り、あっという間に、頭の先からつま先までがずぶ濡れになる。まるで嵐に立ち向かうかのように、俺はドアの向こうへと体を放り投げた。体に直接響き渡る轟音に混じって、背後で鉄の扉が閉まる音がする。そのあまりの雨量に、俺はすぐさま、その場にへたり込んでしまいそうになる。しかし、その弱気を寸でのところで押さえ込み、俺は両手で前髪をかき上げ、周囲を見渡した。

 

 
 朝倉。
 朝倉涼子は、どこにいる?
 残された場所は、ここしかないじゃないか。
 

 

 果てしなく続く灰色の空の下に、縦横無尽に視線を投げかける。
 やがて、俺の視線は。鉄の扉をあけた、すぐ左側で留まった。
 そこに、朝倉涼子の姿を見つけたのだ。
 彼女は雨のカーテンの向こうで、まるでダンスでもするかのように、ふわふわと、ふわふわと、長い髪と、藍色のスカートを翻しながら、回り、揺れ動いていた。

 
 
 「朝倉?」
 

 
 僅かな声では、雨音に掻き消されてしまう。俺は喉奥からひねり出すようにして、その名前を呼んだ。
 俺の声が、彼女の元に届いたのかどうかはわからない。しかし、少なくとも俺がその名前を呼ぶと同時に。朝倉の揺れ動いていた体が、ぴたりと止まった。朝倉は、俺に背を向ける形で立ち止まり、やがて、ゆっくりと俺を振り返った。
 彼女の長い髪が、ふわりと風に舞い、空中に綺麗な曲線を描く。
 水飛沫に霞む、振り向いた朝倉涼子の顔。
 朝倉は、一瞬、俺の顔を見つめた後に、糸が解けるような小さな笑みを浮かべ、何かを呟いた。
 しかし、それはあまりにも小声であり、俺の耳に、彼女の声は届かない。
 

 
 「朝倉!」
 

 
 もう一度、俺はその名前を呼ぶ。
 
 
 
 しかし、俺が一瞬、濡れた前髪に視界を遮られた、その僅かな瞬間の間に。
 朝倉涼子の姿は、忽然と消えてしまっていた。
 
 
 
 朝倉?

 
 喉の奥が僅かに揺れる程度の音量で、俺はその名前を呼ぶ。
 たった今まで、彼女がいたはずの場所まで、歩みを進めようとする。
 しかし。俺の歩みは、彼女が居たはずの場所には遠く及ばない場所で留まってしまう。ビニルコーティングされた鉄線のフェンスが、俺の体を押し戻したからだ。

 フェンスの奇妙な弾力が、俺の体をふわふわと揺るがせる。俺はその網目に両手をかけ――冷えた両手には、もはやまともな神経が及んではいなかった――頭上を見上げた。
 俺の身長よりも、頭一つくらいの高さのフェンス。上部に有刺鉄線などは見当たらない。
 続いて、俺は足元に視線を落とした。フェンスと地面との僅かな隙間に引っかかるようにして、つなげられた楕円形の何かがふたつ、引っかかっている。水溜りと為った床の上に膝をつき、それを手に取る。
 暗闇のため、色ははっきりとはわからない。しかし、そのフェイクレザーの手触りには覚えがある。
 それは、俺がたった今履いているものと同じ――それよりも、二周りほどサイズの小さな――ローファーだった。
 片方を拾い上げると、もう一方が縋りつくようにして持ち上がる。
 二つのローファーの側面を一度に貫き、繋ぎとめている、数十センチほどの刃物。
 

 
 朝倉。
 

 
 それは、朝倉涼子のカギだ。
 つい先刻、俺の胸と、眉間に襲い掛かろうとしていた、あのナイフだ。
 

 
 朝倉、そうじゃねえだろ。
 

 
 手の中から落ちた一塊が、水浸しのコンクリートの上に落ち、びしゃりと音を立てる。
 雨に濡れ、重たくなった全身を、目の前の鉄の網目へと叩き付ける。
 

 
 俺の脳の一番奥で、この空間の冷たさを覆すような熱の塊が膨れ上がって行く。
 それはやがて、俺の顔面中を張り詰めるほどに膨れ上がり……
 やがて、爆発した。
 
 
 

 
 「朝倉あああ!!!」
 
 

 
 
 
      ◆
 

 

 

      ◆

 

 

 

      ◆
 
 

 

 
 ……どれほどの時間、そうしていただろうか。
 雨に浸かることも構わず、体が冷えることも構わず、俺は腕の中に、朝倉涼子の穴の開いたローファーを、まるで雨から守るかのように抱きかかえ、温度のないコンクリートの上にうずくまっていた。
 数分間であったようにも、数時間であったかのようにも思える。
 しかし何にしろ、その時間が経過した後で、俺が顔を上げたときにも、豪雨はまだ続き、夜の闇が晴れる気配は無かった。
 俺はフェンスの足元に朝倉のローファーを捨て、濡れ光るナイフを拾い上げた。
 
 
 それからは、まるで、自分のからだが、何かに乗っ取られてしまったかのように思えた。
 俺は揺れ動く全身を幾度も壁に打ち据えながら、院内へと戻り、階段を這うように下りた。
 ナメクジのように、床に水の道を描きながら、先ほど歩いてきた道を逆さに辿る。
 開いたままになっていたドアから、病室へと戻る。
 先ほどと何も変わらない光景。窓の外の雨と、グレーに染まるベッドの中で、眠り続ける長門。
 俺は体にまとわりついてくる、水を吸って重たくなったジャケットを取り払い、丁度俺が座り込んで眠っていた、薬品棚の足元辺りに放り投げた。
 一気に身軽になると、心なしか、気分がいくらか落ち着いたような気がした。
 
 
 「長門」
 

 
 俺の喉から、うわごとのように、その名前が零れだす。
 

 
 「長門、長門、長門……」
 

 
 酩酊したかのように揺れ動く体で、俺は長門のベッドまでたどり着き、その上によじ登る。濡れた服から、淀んだ水分が、清潔そうな布団へと移り、染み渡る。
 俺は長門の上に四つんばいになるようにして、布団越しに覆いかぶさり、荒く息をついた。
 冷気と混乱で鈍った全身の神経が、布団の向こうに確かに存在している、華奢な肉体の感触を、僅かに感じる。
 雨音がいっそう激しくなっている。一体この量の液体が、この世界のどこに収納されていたというのだろう。
 

 
 「長門」
 

 
 目の前に、長門の顔が有る。はじめに見たときと何ら代わりはない、安らかな寝顔。
 俺の前髪から滴った雨水が、きめの細かい肌の上に落ち、球体となり、頬を滑り落ちて行く。
 まるで涙のように。
 
 
 「ああああ!!」
 
 
 全身に残された、あらゆる力、気合、魂、気力、もう、何だってかまわない。
 俺の中に存在する、何かしらのエネルギーのすべてを総動員して、その一瞬の動作を行った。
 長門の体に跨り、右手に持ったナイフを――たった今まで、それを持っていることすら忘れていた――逆手に握り込み、長門の顔から、いくらか下。白い布団に包まれたその部分に向けて。
 俺は、何もかもを叩き込んだ。
 

 

 

     ◆

 

 
 
 喉がいくら痛もうと、叫ぶことをやめなかった。
 不思議なことに、その動作を繰り返している間。俺の体は、それまでどこに隠れていたのかと言うほどの、莫大なエネルギーに満ち溢れていた。
 長門の表情は、少しも変わらない。ただ、俺が右手の刃をつきたてる度に、ベッドが軋みを上げ、それにあわせて、グレーの髪がはらはらと揺れ動いているだけだった。
 
 
 
 ……なあ、長門。やっぱり俺、わからねえよ。
 本当にコレが正しいことなのか?
 朝倉に、こんなことを求めてたのか?
 
 違うか。
 間違ってるのは、俺のほうか。
 それとも、本当にコレが正しいことなのか?
 何が間違ってて、何が正しいのか
 もう、わからねえよ。
 
 
 
 
 ずたずたになった布団から、まるで潰れた紙細工のようになってしまった、長門の体を引きずり出し
 俺はその胸の部分に顔を埋めた。
 長門の血液と、俺の涙と、雨水と、あらゆる液体がでたらめに混ざり合って、ベッドの上を汚し尽くしている。
 俺の涙が枯れ果ててしまうことは無かった。
 まるで冷たい雨のように、俺は泣き続けた。
 何が悲しくて泣いているのかさえ、俺には分からなかった。
 
 
 
      ◆
 
 
 
 雨の音と、俺のうめき声とに混ざり
 窓の外で、巨大な落雷のような音が聞こえた。
 その音に反応し、俺は長門の胸から顔を上げ、窓の外に視線を向ける。
 
 窓ガラスと、雨のカーテンを隔てた向こうで。
 いつしか見たのととてもよく似た
 無数の光の巨人たちが立ち上がる光景が見えた。
 
 
 
      ◆
 
 
 

 

 

 

  

 


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