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 ある所に、貧乏な木こりが、奥さんと二人の子供と一緒に暮らしておりました。
 子供二人のうち兄の名前はキョン。妹の名前はキョンの妹といいました。
 木こりはとても貧乏で苦しい生活をしておりましたが、ずっと流行している飢饉のせいで日々のパンすら手に入らなくなりました。
 このままでは一家四人が全員飢え死にしてしまうと考えました。
「古泉一樹。このままでは死んでしまう」
「解ってます…」
「やっぱり二人を捨てなくてはいけない」
「…むぅ…」
 そう、口減らしです。
 二人はそうやって話し合い、森の奥に連れて行って子供達を置いて帰ることにしました。
 しかし、この話はお腹が減ってしまい眠れずにいた二人の子供達の耳にしっかりと聞こえていたのです。
「わたしたち捨てられちゃう。そして森の獣に食べられちゃうんだ」
 と、心配そうにグスグスと泣く妹にキョンは、
「心配するなよ。兄ちゃんがきっと何とかするから安心しろ」
 と頭を撫でながら慰めて、その夜はお互いに抱き合って眠りました。そうすると安心出来たからです。
 妹が寝入ったのを確認するとキョンはそっと起きて親に見つからぬように外へと出ました。
「ったく…親に殺されたらたまらんね、まったくよ」
 そう呟きながら月明かりに光る白い小石を超高速で拾い集めだしました。
 そしてある程度の数を集めるとそれを持って家へと帰りました。
 翌朝。
 二人はまだ日の昇りきってもいない内にお母さんに起こされて目が覚めました。
「いい加減に起きて。これから森へ焚き木を拾いに行く。ついて来て」
 と、言ってそれぞれにパンを渡しました。
「これはお昼ご飯。お昼にならないうちに食べたら駄目。これ以上は無いから」
 と言いました。
 両親は子供たちの手を引いて森の奥へ奥へ進みます。
 キョンはポケットの中から昨晩拾った小石を落としながら進みます。
 両親と共に森の奥へと到着するとそこで立ち止まり、
「わたしと古泉一樹は焚き木を集めてくる。ここで待って」
 と言って更に奥へと入って行ったまま、そして帰ってくることはありませんでした。
 それっきり。あとは二人きり。
「待ってろよ。月が出てくれればあとはもう完璧なんだ」
 そして、月が地面を照らすと落とした石が目印となって、帰路を示しました。
「帰るぞ、妹よ」
「うん、キョンくん!」
 そして二人は超高速で石を辿って帰りました。帰ってきた二人を見て両親は困惑しました。
「良かった…二人とも無事で」
 父親の古泉一樹は本当に嬉しそうでしたが、
「そうね。…くっ…古泉一樹との二人っきりのラブラブタイムが…」
「え?」
 母親は憤怒の色を隠しきれません。
 すぐにまた二人を森の奥へ連れていく計画を立てました。
 今度もキョンは石を拾いに行こうと思いましたが母親が寝ずに監視しているせいで外へ出る事は出来ませんでした。
 翌朝。
 二人はまだ日の昇りきってもいない内にお母さんに起こされて目が覚めました。
「起きて。今日もこれから森へ焚き木を拾いに行く。ついて来て」
 と、言ってそれぞれにパンを渡しました。
「これは言わずもがなお昼ご飯。お昼にならないうちに食べたら駄目。これ以上は本当に無い。あと空気読め」
 と言いました。
 両親は子供たちの手を引いて森の奥へ奥へ進みます。
 
 キョンは思いついた、と言わんばかりにパンを細かくして落としていきます。
 両親と共に森の奥へと到着するとそこで立ち止まり、
「わたしと古泉一樹は焚き木を集めてくる。ここで待って」
 と、昨日と同じ事をほざきやがると更に奥へと入って行ったまま、そしてまた帰ってくることはありませんでした。
 やっぱりそれっきりであとはまた二人きり。
「待ってろよ。月が出てくれればあとはもう完璧なんだ」
 と言いましたが、月が地面を照らしたところでパンの屑は全く見つかる事はありませんでいた。
 それもその筈、森や空の鳥達や虫達がこれは良い餌と残らずついばんでしまっていたのです。
「やっちまったーい!!」
 キョンはそれに気付いて叫びました。何というアホでしょうか。
「まぁ、あれだ。必ず家へ帰れるさ」
「グスッ…ヒグッ…」
 誰かのせいで泣いた妹を慰めながら歩き続けますが、見たことのある光景は全く見つかりません。
 言わずもがな迷子です。本当は昨日落とした石の道があったのですが、すっかり忘れているので仕方ありません。
 夜通し歩いて周ると、やがて誰かのお家を見つけました。
 その家は壁は明治のチョコレートで、屋根は森永のチョコレート。
 窓はねるねるねるねで出来ていて、その近くには生チョコレートが無意味に満ちた池がありました。
「これは食わざるを得ない。俺は屋根を食べたいから、お前はそれ以外を食べると良いぞ」
 と二人同時に思いっきり凄まじい高速で。そうすると中から、
「ちょ、ちょっと? わたしの家を食べてるのは誰ですか~!?」
 と言う声がしました。それに対して子供達は
「んなこと気にする事は無いぞ」
 
 と意味不明な返答をして、構わず食べ続けました。
 そのうち中から朝比奈みくるという少女が出てきて、子供たちを中に誘いました。
 見た目は良いのでキョンは特にほいほい付いてきてしまいます。妹、殺意丸出しです。
 朝比奈みくるは二人に絞りたての牛乳、銀座のマダムから大人気のお菓子や青森県産の林檎等を食べさせてあげました。
 尋常じゃないほどのご馳走を沢山食べて、二人は朝比奈みくるの用意したベッドにダイブしてそのまま寝ました。
 この親切そうな朝比奈みくるは見た目通り良い魔女で、このお菓子の家で口減らしにあった子供達を助けようと考えていました。
 キョンとその妹は初のお客さんです。朝比奈みくるはとても緊張していました。
 朝起きるとキョンとキョンの妹は朝比奈みくるの仕事を手伝いました。主にキョンがノリノリです。
「キョンくんはこれに水汲んで下さい。妹さんは…じゃあ、一緒に裁縫しましょう?」
 キョンの妹は内心イライラしっぱなしです。
 わたしのお兄ちゃん、わたしのお兄ちゃん、わたしのお兄ちゃん―――。
 
 ですが反抗したところでキョンに怒られるのは目に見えているのでどうしようもありません。
 ふと何やら難しい顔をして止まっているキョンの妹に朝比奈みくるは心配そうな顔をしました。
「どうしたの?」
「ううん、何でもないよ、みくるちゃん」
 と言い捨て、尋常じゃないほどひくついた笑顔で笑います。いまいち笑えていません。
 作業をしながら心の中では歪んだ思いが浮かびます。
 
 こいつは魔女だ…こいつは魔女なんだ。
 きっとわたし達を殺そうとしているんだ。
 わたしはキョンくんが人質に取られているから逆らえない。 それと同様にキョンくんもわたしが人質に取られているから逆らえないんだ。
 
 キョンの妹は男性として兄が大好きでした。ずっとずっと。
 言動こそは幼いけれど、その思いが芽生えたのは幼稚園生の頃と結構早熟でした。
 そして日に日に強くなっていく思いはちょっとした事にも殺意を生じさせる程になったのです。
「じゃあ、寝ようか」
「うん、キョンくん」
 夜なって二人は一緒に抱き合ってベッドに入りました。
 朝比奈みくるはそれをドアの隙間から見て、暖かい笑顔を浮かべています。
 キョンはそれには気付きませんでしたが、妹は気付いていました。
 そして兄のぬくもりを感じながらその方向へギロリを目を光らせたのです。
 
 このままじゃキョンくんはきっと食べられてしまう…わたしは、どうしたら良いの?
 …決まってるよ。あの魔女を懲らしめれば良いんだよね。
 うふふ。簡単だ。そうだ、あの魔女を殺してしまおう。
 そうしたらわたし達はこの家で幸せに暮らせるんだから。
 
 それからずっと妹は朝比奈みくるをじっと観察しました。
 家の構造を覚えました。
 どこに何があるかを暗記しました。
 
 残念な事に、朝比奈みくるはかなり鈍くて大らかな人間なのでその鋭い視線に気付く事はありません。
 ある日、妹は計画を立てました。
「ねぇ、みくるちゃん」
「何、妹さん?」
「ねぇ、キョンくんを驚かそうと思うんだけどね…」
「うんうん」
 優しい朝比奈みくるは少女の計画をしっかりと聞きました。
 まさか、それが自分を消そうとする計画だとも知らずに。
「まず、キョンくんが寝ている間にあの檻に入れるの」
「可哀相です…」
「良いの良いの。それでみくるちゃんは魔女のフリをして『そろそろ食べ時だね~』ってキョンくんに言って」
「わたしに勤まるといいんですけど…」
「大丈夫! それで、わたしに竈の火を付けろって命令したらこっちに来て?」
「うん、それで?」
「で、あとはわたしで考えてるからそれに合わせてくれれば大丈夫だよ」
「うん、解りました」
「今晩、寝ている間に移すからね?」
「はいはい」
 キョンの妹は笑顔を浮かべながら部屋を出ます。
 それを身ながら朝比奈みくるは家族って良いな、としみじみ思いました。
 部屋から出るや否や純粋無垢だった笑顔が一瞬にして鋭くなったのを知りません。
 そして、翌日キョンが起きると自分が檻に閉じ込められている事に驚きました。
「ぬわ!? なんだこれ!?」
「そ、そろそろ食べ時です~」
 大根役者この上ない下手な演技でしたが、パニック状態のキョンには冷静な判断が出来ません。
「まさか…あなた…!!」
「えっと…妹さん! 竈の火をつけて下さい!!」
「!! 朝比奈さん!?」
 朝比奈みくるは妹の傍に寄ります。
 そうすると誰にも聞こえないほど小さな声で
「…えっと、みくるちゃん。この竈ってどうやって火をおこすの?」
 と、尋ねてきます。
「これはね、えっと…はい、こうやるんですよ?」
 竈に炎が灯りました。
 それを見た後のキョンの妹の行動は刹那的でした。
 一瞬にして竈の中へと押し入れたのです。ドンと押され、なす術無く竈の中に落ちてしまってすっかりパニックになりました。
「ふぇ~? なんですかこれぇ?」
 竈の中から声を掛けます。もう火がついた竈はとても熱くなっていました。
「…みくるちゃんがいけないんだよ。キョンくんを誘惑するから」
 竈の扉、その向こう側に立っている幼い少女の顔は、見るものを威圧する表情をしていました。
 ぞくりとしました。しかし、朝比奈みくるは気付くには遅かったのです。
 完全に閉まった竈の中から何を叫ぼうと外には聞こえません。
「ふふっ…さようなら、みくるちゃん」
 妹は竈から離れると愛する兄の元へと向かいます。
「おい、ここを開けてくれ!!」
 キョンは叫びました。すると、にこっと妹は笑いました。
「キョンくん…大好きだよ?」
「あ、あぁ…俺も大好きだぞ、妹よ」
「ふふっ。わたし達、ずっと一緒だよね?」
 何となく、様子がおかしいのには気付きました。
 しかしやっぱりいつも通りの妹なので、
「当然だろ。俺たちは兄妹なんだから」
 そう答えると、妹は幸せそうに照れ笑いを浮かべました。凄く幸せそうな笑顔です。
 しかし、キョンは寒気を覚えました。
「キョンくん、ずっと一緒だよ」
 そう言って手の中にあった鍵を外へと放り投げました。
「何を………!!」
「ずっとずっと一緒…あんな魔女にはあげないんだから。キョンくん大好き…ずっと大好きだよ…これでわたしだけのもの! うふふ、あははははははは!!」
 
 そして、森の奥にあるお菓子の家で幸せに過ごしましたとさ。
 
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