そんなこんなで秋である。

高校生活も半分を過ぎ、まったりムードが学校を包み込んでる今日この頃。

「…夏休みが終わってしまいました」

…この屍状態の谷口をなんとかしてくれ国木田よ。
夏休みが終わったのなんざいつの情報だ。

「僕に振らないでよ…何でも、特に遊ぶことなく夏休みを終えたんだってさ」
「何やってたんだお前は…」
「あぁ、二輪の免許とってた」

免許?何でまた。

「あー…ほら、ナンパの遠征に便利かと…」
「それで、免許取ったのは良いけど肝心の夏休みは終わっちゃってたって、そういうオチなんでしょ?」
「痛いところを突くな国木田は…」

何というか…自業自得だな。

「しかも北高って免許とるのは良くてもバイク通学は禁止だろ?何のために免許取ったのかわかんねぇよ…」
「まぁドンマイとしか言いようが無いな、そういや国木田はどうだった?夏休みは」
「うーん…僕は親戚の家に行ったくらいかなぁ…」
「どこか行けるだけいいじゃねぇか…俺なんかずっと教習所通いだぜ?」
…教習所で新しい出会いを探すとか無かったのかよ。

「………」
「…その手があったかとでも言いたそうな顔だな。まぁ来年の夏休みを楽しみにしてろ」
「…何か全てが嫌になってきた。絶対お前ら乗せてやらねぇ。女性限定だからな!」

…別に乗りたくねぇよ。

「そういえばキョンはどこか行ったの?」

いや、俺もどっちかというと…

「あ、キョン!明日の放課後暇?」
「あぁ、暇だが…どうした?」
「お母さんがスイカ余った分いらないか?だって」
「あー…妹がスイカ好きだからもらいに行こうかな」
「じゃあ明日あたしの家までとりにきなさい!」
「りょーかい…で、何の話をしてたんだっけ?」
「キョンの夏休みについてだよ」
「あぁ、国木田と同じだよ。お袋の実家に行ったくらいだ」

…もう少し楽しみのある夏休みだとよかったんだがな。
…ん?どうした?谷口。

「どうした?…じゃねぇよ!」
「何なんだいきなり…でかい声出して」
「お前いつの間に涼宮とあんなに仲良くなったんだ!しかも親公認だと?白状しろ!本当は夏休みに何があったんだぁ!!」
「ちょっと谷口…落ち着きなって」

というか俺とハルヒなんか前からあんな感じだっただろう?

「いや、何かが違う、少なくともキョンの方に吹っ切れた感があるぞ?」
「…僕もなんとなくそう思うけどなぁ」

…国木田まで。

「私も気になるな、キョンくんと涼宮さんの関係のこと」
「のわっ!朝倉!…だから何も無いっての。ただの友達だ」
「だって涼宮さん、いっつもキョンくんの話ばっかりするんだもん」

…幼なじみって言っていいのかこれは?
気がつけば国木田はまだしも谷口と朝倉がもう逃がさんぞという目つきで俺を見ている。

「えー…っとだな…」
「おーい、お前ら、席に着けー。授業始めるぞー!」

ナイスタイミングだ担任岡部!

「ちぇー。絶対あとで聞かせてもらうからな!」「私は涼宮さんに直接聞いてみるわ」

…何とでもしやがれ。

結局その日は適当に谷口を煙に巻いて帰ることにした。

「お前だけ良い思いしやがって!怨んでやるからな!」

知るか。

























翌日。

中途半端な外の気温が仇となしたのかはたまた谷口の呪いなのかはしらんが…

「…風邪引いた」

…頭痛いなぁ。
今現在AM10:36、特に問題がなければ2限か3限の授業を受けているところか。

まぁ別に無理して体を動かすでもない。
これを気にゆっくり…

『あ、キョン!明日の放課後暇?』

…できねぇな。
ハルヒの家まで行く予定があったんだ。

体温計を取って熱を計ってみる。
そこまで酷くなきゃスイカを取りに行くくらい…

38.8度。

うん、無理。

「39度近いじゃねぇかよ…熱とかそういうのに鈍いのか俺は?」

仕方が無いのでハルヒに今日は行けそうに無いとメールを送る。
即座に返信が来た。
…あれ谷口?何で?

『俺様の呪いが効いたようだな!』

…抜かせ。というかハルヒじゃなくて谷口にメール送ってやがる…
案外頭ボーっとしてるのな。

ヤバい…どんどん眠く…あれ?ハルヒに連絡は…

…………………




「ただいまー!!!」

妹の元気な声と共に俺は目を覚ました。
…あれからずっと寝てたのか俺は。

ハルヒからメールは…無い。
…まぁ…同じクラスだし俺が元気になれば学校で会えるわけだし…

…いちいち見舞いのメールなんかしないよな。

「…はぁ」

何で落ち込んでるんだろ、俺。
別にハルヒとはただの友達で…昨日谷口にも言ったじゃないか。
幼なじみだというのが発覚しようが、俺とハルヒは何の関係も無いわけで。
…所詮その程度の仲でしかなかったわけで。

「…はぁ」

本日二度目のため息。

窓の外を見ると紅くなりかけた木々が風に揺られている。

…着替えるか。
熱が下がったのか知らんが沢山汗をかいたので気持ちが悪い。
寝巻きの上を脱いで…うわ、パンツも汗でぐちゃぐちゃだ…
仕方ないのでズボンにも手をかけた…

…その時。


「ストップ!」
「へ?」

聞き覚えのある女性の声。
…まてまて、俺の部屋に誰かいる?

「…朝倉!?お前いつからいたんだ!?」
「キョンくんが起きたところから」
「そこからいたのかよ!何しに来たんだ!」
「失礼ね、あなたが休んだから連絡事項やプリント、宿題等を届けにきたのよ?」

…何でお前が?

「クラス委員長だから岡部先生に頼まれたの。何?涼宮さんが良かったのかしら?」
「…俺がいつそんなこと言ったんだよ」

朝倉は俺の机の前に行き、ニヤニヤしている。

「だって涼宮さんとのツーショットを大切に飾ってるくらいだもんね」

…夏休みの花火の時のか。

「涼宮さんと一緒にどこか行ったの?」
「いや…行ったというか…お袋の実家の近くにハルヒの母親の実家があってだな…」
あぁ、面倒くさい。

「…幼なじみなんだそうだ」
「誰が?」
「だから俺とハルヒが」
「ふーん」

…驚かないんだな。

「まぁただ事のような仲では無いとは思ってたからね」
「あぁ、そう…でも本当にそれだけなんだ」
「そうかなぁ…私が見る限り涼宮さんはキョンくんに気があるものだとばかり…」
「だから何でそういう話になる…というかハルヒに尋ねるとか言ってなかったか?」
「んー…涼宮さん、案外すぐに教えてくれそうでそれだと面白くないからさ」

相変わらず頭痛い…熱もあるがこの会話が少し原因にもなっているだろう。

「熱は下がったの?」
「ん…37.3度。汗かいたらだいぶ下がったよ。というか着替えたいしもう用はすんだなら帰ったらどうだ?」
「もう、私に何か言うことは無いのかしら?」
「あー…ありがと」
「うん、どういたしまして。じゃ、私は失礼するわ。キョンくんと2人っきりでいるところを涼宮さんに見られたら何て言われるかわからないしね」

そう言うと朝倉は悪戯っぽく笑った。 あぁ、谷口がAランクと言ったわけが何となくわかる。
ハルヒの太陽のような明るい笑顔ではなく月のような大人な微笑み。
ただ…やっぱり眉毛がなぁ…

「ひっぱたくわよ?」
「…ごめんなさい。というかハルヒは俺のこと何とも思ってねぇって」
「あら?そうでも無いみたいよ?ほら」

と、朝倉が指先した先には…

「………」

スイカを持ったままポカンと口を開けたままのハルヒがいた。
…いや、だからお前もいつからいたんだよ。

「え?キョンと朝倉さんってそういう仲だったの?」

…いやいや何言ってんだお前は。

「あぁ、そっか、あたしなんかより朝倉さんの方が良いのよね、キョンは」

…あー、落ち着け?な?

「あたしは落ち着いてるわよ!この馬鹿キョン!もう知らない!!」

おい!病人にスイカ投げつけるな!「…勝手に勘違いして勝手に納得して勝手にボロクソ言って帰って行きやがった…というか何で怒ってたんだあいつは」
「………」

何でそんな目で俺を見るんだ。

「…呆れた」
「え?」
「まさかここまで鈍いとはね…」

だから何の話だ。

「涼宮さんがいたことを教えなかったのは私が悪いわ。誤解も解いておくけど、あとはキョンくん次第だからね?」

そう言うと朝倉は帰って行った。

仕方がないので腹の上に乗っかったスイカをどかす。
…でかくて食い切れねぇよこんなの。

「…何だってんだ一体」




次の日。

なんとか熱がさがった俺は、昨日のわけのわからん一連の事件のことをほんのり引きずりながら教室に入った。…ハルヒは、いた。

窓際で朝倉と楽しそうに話している。
あぁ、朝倉がわけのわからない誤解をといてくれたのかな?感謝。

「よぉ、キョン!風邪治ったか?」
「あぁ、お前の呪いも大したこと無かったな」

そんな馬鹿なやりとりをしながら自分の席に座る。
ハルヒもこっちに気がついたようだ。

「あ、おはよー谷口!」

…あれ?

「涼宮が俺に挨拶するなんて珍しいな、何かあったのか?」
「…知らん」

心当たりは無いことも無いが…

「あー…ハルヒ…?」
「でね、その時食べたご飯が美味しかったのよ!」

無視かよ…
…朝倉も気がついてるなら助けてくれ。


「あー…涼宮さん?ほら、キョンくんが呼んでるわよ?」
「………」

…やっとこっち向いてくれたか。

「…ベー!だ!」

…今時アカンベーかよ。

「行きましょ、朝倉さん」

朝倉が申し訳なさそうに頭を下げる。
…後は俺次第ったってなぁ。

「何だ?お前ら喧嘩でもしたのか?」
「だから知らん」
「…何イライラしてんだよ」
「イライラなんかしてねぇっての。国木田も何ヘラヘラしてんだよ」
「いや、楽しそうだなぁってさ」
…楽しそう、ね。




















んでもって放課後。

結局ハルヒと一度もコミュニケーションをとることがないまま…いや、弁当の玉子焼きを勝手に食われたな。まぁいい。
やることもないので溜まり場として使われているSOS団部室に足を運ぶ。

しかし

『本日は活動無し!』

恐らくこの団室に導入されて以来初めて使われたであろうホワイトボードにはハルヒらしいでかでかどした字でそう書いてあった。

「…だから俺はどうすれば良いんだよ…」

椅子に座ってぼーっとしてみる。
…家に帰ってもすることないしな…

そういや中間テストが近かったな。
勉強でもしてみるか…

「えっと…英語の教科書は…あった」

少し成績が落ちてきたからな、これを機に頑張ってみるか…
…ハルヒに教えてもらったらきっと楽なんだろうけどなぁ…


















「…馬鹿」

…ん?
あれ、寝てた?

…というか今、ハルヒの声が聞こえた気がしたんだが…

「この寒い部室で寝てたりなんかしたらまた風邪引くに決まってるじゃない」
「…ハルヒ」

窓際の椅子に心底呆れたとでも言いたそげな顔でハルヒが座っていた。

「今日の活動は休みじゃなかったのか?」
「忘れ物を取りに来たのよ…ってかあんたはあたしに何か言うことは無いの?」

言うことって…

「あれか?昨日のことか?」
「素直に朝来たときに説明すれば良いものを、無かったかのように振る舞って…何でもかんでも人任せにしないの!朝倉さんも人が良すぎよ」

…というか元凶は朝倉な気もするんだが…

「返事は!?」
「…了解」

というか…その…


「…すまなかった」
「ま、今回は私の勘違いもあったしね、ほら、起きたんならあたしのカーディガン返しなさい」
「…あ、かけてくれたのか」
「また風邪引くのも馬鹿らしいじゃない」

サンキュ、とハルヒにカーディガンを渡す。

「さて、じゃあ罰ゲームは何にしましょうか」
「…ちょっと待て、さっきハルヒ自身で自分の勘違いもあったって言ってたじゃないか」
「それとこれとは話が別、そうねぇ…テストが近いからそれが終わってからにしようかしら」

…無茶苦茶な。
というか俺の財布は大丈夫なのか?
ハルヒの要望に応えられるのか?

「決めた!」

満面の笑みでハルヒが叫ぶ。
頼む、なるべく優しい内容にしてくれ。

「テストが終わったらデート1回ね!」

つづく

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