…これで…私の任務は終わりなのかな?
「…未来人ってそんなにおっかない記憶の消し方をするのかしら?」
「ひっ!?」
「もっと道具か何かを使うのかと思ったけど…ビンタかぁ…痛そうね」
だ、誰ですか!?
「…私よ」
誰かが壁にもたれかかってる…?
「一応、あなたとは初めまして、になるのかしら?朝比奈みくるさん」
「…なんで私の名前を?」
「今回のあなたの護衛対象を狙ってた者って言った方がわかりやすいかしら」
え!?
「ふふっ、身構え無くても大丈夫よ。長門さんのせいで私の力はもう無いに等しいわ」
長門さん…さっきキョンくんも言っていた…
…あれ!?そういえばキョンくんは!?
「…さっき長門さんが送り返したみたいね」
…そうですか。
「長門さんは…北高校を卒業したと同時に…その…消えてしまったんじゃ?」
「肉体だけね。精神は残ってたわ。思念対の元に返されていたのよ。任務を終えたら長居する必要もないから」
…じゃあ精神だけこの時代に来たと?
「そうよ。あなたの体に憑依してね」
「ひぇ!?そんなことしてたんですか!?」
…そういえば任務開始からの記憶が無いです…
「何か有機物質に縋ってないと存在出来なかったみたいね」
有無を聞かずに実行。
長門さんらしいといえばらしいですが…
…長門さん…やっぱり少し苦手です…
「…でも長門さんのおかげでキョンくんも助かって良かったです。あなた達にはあなた達なりの主張があるのかもしれないけど、私は…キョンくんは楽しく過ごして欲しいと思います」
「そうね…戻ったら上の組織にそう伝えておくわ。それと…助かったのは彼だけだと思う?」
…どういうことですか?
「…あなた、私と戦ったとして勝ち目があるとでも?」
勿論ですよ!
未来人を何だと思ってるんですか!
ほら、ちゃんと対宇宙人用の秘密兵器が…
「あれ?…ポケットに入れた筈なのに…」
「はぁ…長門さんがいなかったらどうなってたことやら」
え?じゃあ長門さんは私も助けたと?
「私はそうじゃないかと思うわ。あの子、なかなか不器用だから」
「そっか…」
『…お礼を忘れないで』
…こういうことだったのね。
「さて、お別れね…そろそろ私も戻らなきゃ…あ、そうだ。長門さんから伝言」
…え?
「また、どこかで出会うことがあったら、またみんなで集まりたい。またあなたのお茶が飲んでみたい」
………
「いつも美味しいお茶をありがとう。だって」
そう言うと朝倉さんは消えてしまった。
いつか私がいた部室に、ゆっくりと朝日が差し込んでくる。
そこには頬に涙が伝わり、肩を震わせている自分がいた。
「…何を当たり前のことを言ってるんですか…SOS団はずっと一緒ですよ…一人でも欠けるなんて…涼宮さんが許しませんよ」
私の周りの空間がゆっくりと歪んでいく。
「ありがとう。長門さん」
私は任務前日の夜へと、次こそ長門さんに気づけるように。
私にそのことを促すために時間移動する。
…どこかで置いていかれたままだと思ってた。
一足先に高校を卒業して、未来に帰ってしまって。
きっとみんなで笑いあえることはないんだろうなって。
…馬鹿馬鹿しい考えだったなぁ。
次にこの時代に来たときに、SOS団の誰かと会えたら。
今度はきちんと言おう。
「久しぶり」
って。
最終更新:2008年11月19日 12:27