特別前日に何かをしたというわけではないのに朝が辛いというのは冬場ではデフォであり、
高校生になった息子もそれは例外ではないようだ。
「あんた達、さっさとご飯食べないと遅刻するわよ!」
…前言撤回だ。
我が妻、ハルヒにとっては今が冬場の辛い朝だろが何だろうが関係ないようだ。
「なんで母さんは朝からそんなに元気なんだよ…」
息子よ、それは俺も同棲を始めた頃から思っていたが、今そうやってハルヒに絡むと…
「何言ってんの! あんた達が弱すぎるのよ。それにそんなこと言ってる暇があるなら
とっととご飯を胃袋に詰め込みなさい」
ご愁傷様だな。
後、あんた達って俺も入ってるんだな。
「ちょっとキョン、あんたもボーっとしてないでさっさとしなさい!
親が息子に負けてどうすんの」
へいへい分かりましたよ。
「じゃあ、言ってきま~す」
「あ、コラ待ちなさい!」
残念だな息子よ。
本日の脱出ミッションも失敗したようだな。
「や、止めてくれ。何時も言ってるだろ母さん。俺はもう高校生だ。だから、それはもう駄目だって」
「何言ってんのよ。高校生になろうが大学生になろうとあんたはあたしの子供なの。
だからこれはあんたの義務でもあるのよ!」
世界の何処にそんな義務があるのかね?
「やれやれ、とっととしてくれ…」
おい、それは俺の口癖だ。
俺のアイデンティティーだ。
勝手に使うのはゆるさんぞ。
「誰かさんと違って素直でよろしい… チュッ。はいっ、じゃあしっかり勉強してくるのよ!」
一言多かったですよハルヒさん。
「へいへい」
お、そろそろ俺も行かんとな。
リアルに遅刻しそうだ。
「じゃあハルヒ、俺も行ってくるよ」
「…………」
勘違いしないでいただきたい。
この三点リーダは万能宇宙人のものではない。
傍若無人ハイスペック奥様涼宮ハルヒのものである。
もとい、涼宮ではなかったな。
では何故そのハルヒがこんなに大量の三点リーダを発してるのかと言うと、
毎朝俺に課せられた義務が施行されるのを待っているからだ。
いや、義務でもあるが世界中で唯一俺に与えられた権利と言ったほうがいいな。
…しかし、何時ものことながら、こうして黙って俺を待っている時のハルヒは可愛いな。
もう、そこそこいい歳になるはずなんだがな… って早くしないと遅刻するっての!
「ハルヒ… チュッ。…そんじゃ行ってくるよ」
「…素直でよろしい。じゃあ、しっかり働いてらっしゃい!」