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みくる「キョン君、私こういうの苦手で」
キョン「ゲームだから適当に遊んどけばいいんですよ」
ハルヒ「適当なんてとんでもないわ敗北主義者は角刈りの刑よ」
古泉「ゲームが始まりますよ」
キョン「ハルヒの元気を少し分けてほしいよ」
ハルヒ「ジー…」
キョン「何やってんの?」
ハルヒ「パワーを送ってんのよ、この勝負に勝つためにね」
キョン・ハルヒ「…」
キョン「Chu」
ハルヒ「!?」

その瞬間、ハルヒの激烈な平手打ちが、俺の左頬にクリーンヒットした。
正直、意識が飛ぶかと思ったねあれは。

ハルヒ「ちょっと!あんたいきなり何すんのよ!?」

キョン「いきなりおかしなことしてきたのはお前のほうだろ?それに今のは体勢が崩れたからなっただけだ。不可抗力だよ」

言うまでもなく嘘っぱちである。正直俺は、自分のとった行動に驚いていた。以前閉鎖空間で経験したせいなのかもしれない…俺は何も考えずハルヒにキスをしていた。

ハルヒ「不可抗力って、あんたねぇ!!乙女心ってもんを何だと思っ…!」

話が長くなりそうだったので

キョン「おい、今はコンピ研との真剣勝負の最中なんだぞ?いいのか?団長がそんなんで」

ハルヒ「うーー…。ふんっ!今回は大目に見てあげるわ!でも今度やったら殺すわよ!!」

と、言いたい放題言ってハルヒは自分の席に戻った。自分で撒いた種とは言え、団長には困ったものだ。

ちなみに勝負の結果は、長門の活躍によりSOS団の圧勝であった。

コンピ研との勝負も終わり、俺たちは解散することにした。

キョン「じゃあなハルヒ、また明日な」
ハルヒ「……」

聞こえていないのかと思い、もう一度言ってみようしたのだが…

キョン「ハルヒ、じゃあ…」

ハルヒ「うるさい!!さっさと帰れアホキョン!!!」

怒鳴り声をあげて、ハルヒは俺を押し退けさっさと帰ってしまった。たしかに、悪いことしたとは思ったけどさ…。
まぁ、明日になれば元に戻ってるだろ。


さて、俺も家に帰ってだらだらするか

次の日教室に着くと、ハルヒは机に顔を伏せたまま微動だにしなかった。俺も何度か話し掛けたんだが、全てシカト。こんな反応もずいぶん久しぶりである。こういうときは何を言っても無駄だと悟っていたので、放っておくことにした。

問題は放課後である。俺はいつものように古泉とオセロをし、いつものように朝比奈さんの入れるお茶をおいしく頂いていた。

そろそろオセロも飽きてきたなと思っていると、勢いよくドアを開け、見るからに不機嫌そうな顔をしているハルヒがいた。

キョン「よお」

スタスタと定位置に座るハルヒ、またしても無視である。

いつもなら既に朝比奈さんか俺に絡むか、わけのわからない企画を立ち上げている頃だったのだが…今日のハルヒはパソコンをいじくってるだけで、長門に勝るとも劣らない静けさだった。

ただ今日は、それ以外にもいつもと違う仕草があった

ハルヒがじーーっと俺を見つめている。最初は俺も気付かないふりをしていたのだが、あまりにもそれが続くので、俺もチラッとハルヒのほうをみた。

するとハルヒはすぐに目をそらし、パソコン画面のほうに顔を向けてしまった。

目が合った瞬間、顔を赤くさせていたのは気のせいではないだろう。それからもハルヒは度々俺をじーーっと見つめ、目が合うとそらすといった行動を終始とっていた。

なんなんだよ……

キョン「ハルヒ」
ハルヒ「な、なななによ!?」
体をビクッとさせ、まるで朝比奈さんの物真似かと思わせるほどの反応だった。

キョン「今日のおまえ、何か変だぞ。」
ハルヒ「変じゃないわよ!あたしはいつも通りよ!」
キョン「そうには見えないがな…」
ハルヒ「何よ!?キョンの分際であたしに意見する気!?あーーっ、もう!!今日は終わり!解散!!」

ハルヒは強制解散宣言により、その日は随分早い解散となった。

ハルヒは怒った様子で部室を出ていき、俺と朝比奈さんは呆気にとられ、古泉はいつも通りのスマイル、長門は無表情だった。

キョン「何なんだ、今日のあいつは…わけがわからん」
みくる「昨日キョン君がした…その…キ、キスが原因…なんじゃないでしょうか…?」
古泉「そうですね、涼宮さんも女の子ですからね。今も少なからずあなたに腹を立てているのでしょう。
まぁ、それだけではなさそうですが…」
キョン「どういう意味だ?」
古泉「おやおや、やはり気付いていないんですね」
みくる「キョンくん…」

古泉だけでなく、朝比奈さんまで少し呆れ気味だったのには驚いた。
長門が本ではなく俺を見つめ…いや、睨んでいるのにはもっと驚いたが。

家に帰った俺は、今日の部活(?)を振り返っていた。やはりきちんと謝っておくべきだろうか。古泉の言う通り、ハルヒも一応女の子なんだしな。
一番気掛かりなのは、古泉が最後に言った言葉と、朝比奈さんや長門の、あの態度の理由だった。
こればっかりは全くわからん…とりあえず明日、ハルヒに謝っておくか。

次の日のハルヒはというと、頬杖をついてぼーっとどこかを見つめているようだった。

キョン「よお」
ハルヒ「……ええ」
キョン「一昨日は悪かった。すまん、この通りだ、許してくれ」
ハルヒ「一昨日のこと?なにそれ?」
キョン「それはお前…俺がお前にした…あの…」

改めて聞かれると、ものすご~く答えにくい質問である。

ハルヒ「ああ、あれね。別に、あんなの一日経ったらすっかり忘れてたわよ。不可抗力だったんでしょ?なら仕方ないじゃない」

キョン「じゃあ昨日は何で機嫌悪かったんだ?」
するとハルヒは再び顔を赤らめ…

ハルヒ「えっ?それは…その…何でも…ないわよ…」

だんだん声が小さくなり、自信がなさそうに下を向くハルヒは、ますます朝比奈さんのようだった。

キョン「何だそりゃ、昨日といい今日といい、やっぱりお前変だぞ」
ハルヒ「変じゃないって言ってんでしょ!ほらほら授業始まるわよ、さっさと前を向きなさい!」

無理矢理前を向かされたわけだが、やはり引っ掛かる。まぁ、ハルヒの機嫌も直ったようだし、それだけでもよしとするか。

4時間目終了のチャイムが鳴った。俺は途中からぐっすりと眠っていた。今もまだ眠い、このまま昼休みも寝ていようとしたのだが…

ハルヒ「キョン!いつまでぐーすか寝てんのよ!ほら、さっさと起きなさい!昼御飯食べに行くわよ!!」

ハルヒに叩き起こされてしまった、おかげで眠気はすっとんだものの、どこか損した気分であった。

キョン「食べに行くって食堂にか?あんなとこわざわざ行かなくても、教室で食べればいいじゃねぇか」
ハルヒ「食堂なんて暑苦しいとこに行くわけないでしょ?いーからあんたは黙ってついてきなさい!」

ハルヒが連れてきたのは中庭だった。ここに来るのは大抵女子の仲良しグループか、あるいはカップルくらいのものである。

ハルヒ「あっ、あそこがいいわね。ちょうど陰になってるし、いい感じだわ」

ハルヒがチョイスしたのは、木陰のある芝生で、いつもなら女子のグループが占領している場所だった。

ハルヒ「さっ、食べましょ」

そういえばハルヒの弁当をみるのはこのときが初めてだったな。意外にも女の子らしいものだったんで、俺はつい「ウマそうだな」と口にした。

するとハルヒは

ハルヒ「と~ぜんよ~、なんたってこのあたしが作ったんだからね。おいしくないわけがないわ!」
キョン「お前が自分で作ったのか!?」
ハルヒ「何よ……その顔は…あたしだって弁当くらい作れるわよ!」
キョン「俺はてっきりお前の親が作ったもんだと思ってだな…」
ハルヒ「しっつれいね!あたしだって弁当の一つや二つ作れるわよ!」

しかしこいつが自分で弁当を作っていたとはな…なんというか、人は見かけによらないな。

ハルヒ「さっきからじ~っと見て、もしかして食べたいの?『食べさせて下さい』って言ったら、考えてあげてもいいわよ」

正直、ちょっと食べてみたかったがこんな言われ方をすると、意地でも食わねぇって気分になるもんだ。

キョン「別に食いたかねぇよ、何が入ってるかわかんねぇしな」
ハルヒ「そんな言い方されると妙にムカツくわね。」

そう言うとハルヒは、おかずの一つを箸でつまんで、俺の口元へ差し出した。

ハルヒ「ほら、食べてみなさいよ!あまりの味付けに卒倒してもしらないわよ?」
キョン「それはつまり、自分の味付けは卒倒するくらい酷いって言いたいのか?」
ハルヒ「つべこべ言わずに食べなさい!ほらっ!」

仕方ないから食べてみた。普通ならここで「おいしい」と社交辞令を言うべきだが、そんなことを言うとハルヒがつけ上がるのわかっているので、正直に感想を言ってやろうと思った。

キョン「……うまい…」さっきと矛盾してるって?いやいやそんなことはない、本当にウマかったのだ。

するとハルヒは満面の笑みで

ハルヒ「でしょ!我ながらいい出来だと思ってたのよ~。それに、料理って結構面白いわよね。今度から自分で作ってみようかしら」
キョン「いつも自分で作ってたんじゃなかったのか?」
ハルヒ「そんなわけないじゃない、いつもはコンビニで買ったやつを食べてるわ」
キョン「どうして今日に限って作ってきたんだ?」
ハルヒ「それは……気分よ、気分。朝起きたらそんな気分だったのよ」

それから俺は昼飯を食い終わり、再び教室に向かった。ハルヒはもう少し中庭でダラけていたいらしい。
一人になりたかったようで、「あんたは先に行け!」と追い出されてしまった。

ハルヒ「うまい…か…。ふふっ、よかった…ちゃんとおいしく出来て。味見する暇なかったから自信なかったのよね。明日からは早起きしよっかな…」

それにしてもハルヒの弁当、ウマかったな。あれで性格さえ良ければ、完全無欠の美少女女子高生が出来上がるというのに…おしい。
5時間目開始のチャイムが鳴る寸前にハルヒは帰ってきて、あわてた様子で弁当を直していた。こんなギリギリまで一人で何してたんだ、おい。

放課後、部活の時間がやってきた。いつもなら俺とハルヒは、別々のタイミングで部室に行くのだが、俺はハルヒに引っ張られて一緒に行く羽目になった。
ハルヒ「やっほーー!さぁ、今日も気合い入れていくわよー!ね~、みくるちゃ~ん」
みくる「あっ、は、はいぃ…」

昨日のダウナーモードが嘘のように、今日のハルヒはやたらハイテンションで、いつも以上に朝比奈さんに絡んでいた。

古泉「どうやら元に戻ったようですね。」
キョン「ん?ああ」
古泉「僕の言ったことにもちゃんと気付いてくれたようで」
キョン「それだけが未だにわからないんだがな。ハルヒの機嫌も直ったんだし、教えてくれないか?」

古泉はしばらく沈黙し、長門も読書を中断してこちらを見ている。

古泉「この場合、本当に困った人は涼宮さんではなく、あなたなのかもしれませんね」
キョン「だからどういう意味なんだ?」
古泉「いずれお気付きになる日が来ますよ」
キョン「なんだそりゃ」

これ以上古泉と話していてもラチがあかないので、珍しく本でも読もうかと、本棚に近付いたときだった。

長門「……鈍感………」キョン「ん?何だ長門、今何か言ったか?」
長門「私は何も言っていない」
キョン「そうか」
長門「そう」

相変わらず無表情な長門だったが、俺を見つめるその目から、怒りのようなものを感じたのは気のせいだったのだろうか。

ある日のこと、部室に行くとそこには誰もおらず、俺一人だった。一人だと何もやることがないので、時間を置いてから出直そうとしたのだった。

キョン「ん?」

出るときにふと目についたものがあった。部屋の片隅に捨てられるように放置されてあった、いつかの笹の葉である。
葉も短冊も随分汚れており、何が書かれてあるかなんて全くわからなかった。

しかし、よく見ると一つだけ新しい短冊があった。誰かが付け足したのだろうか。

さてさて、ハルヒが新たに何と書いてあったか見せてもらおう。多少の罪悪感はあったといえばあったが、好奇心には勝てなかった。悪いなハルヒ…でも隠すならもっと見付かりにくい場所に隠すべきだぜ。

それにしても、ハルヒにしては随分無用心というか、迂濶だったな。古泉や朝比奈さん、長門なら見付けても何も言わなかっただろうが、残念ながら見付けたのは俺だ。

運が悪かったな、ハルヒ。

一応念のために警戒しておこう。え~っと、廊下には誰もいない、来る気配もなし。

よし、じゃあ拝見させてもらいますよ~ハルヒさん。



俺がこのあと激しく後悔するなんて、誰が予想できただろう…いいや、誰もできやしないね


短冊に書かれていたのはこうだった。

「キョンが(消した跡がある)、キョンと…幸せになれますように 涼宮ハルヒ」

俺は頭が真っ白になった。つまりこれの意味するところは、ハルヒが…俺を…。

正直俺は困った。いや、ハルヒが嫌いだから困ったわけじゃない。ハルヒが俺をそんな風に思ってるなんて、考えたこともなかったのだ。そもそも俺にとってハルヒは、俗に言う友達以上恋人未満な存在で、恋愛対象として認識していなかった。
見なければよかった…明日から、いや今からどんな顔して接したらいいんだ…。
こういうとき俺以外の第3者なら、軽々しく「今まで通りでいいじゃないか」といったことを言うだろう。
俺だって当事者じゃなかったらそう言う。

だが今は違う。俺がその当事者なのだ。少なくとも俺にとって、今まで接するというのは困難である。

そうこうしてるうちに足音が近付いてきた。まずい、笹の葉を隠さないと…!

なんとか笹の葉を元の場所に戻し、見えないように隠すことができた。さぁ誰だ、誰が来るんだ…ハルヒか…今来られるとちと厳しいが…

ガチャ

長門だ…よかった。今のこの状況では一番安心できる。

キョン「よう、ハルヒ達ならまだ来てないぞ」
長門「休み」
キョン「えっ?」
長門「先程涼宮ハルヒに会った。今日は彼女の都合で休み。私はあなたへの伝言を頼まれた」
キョン「ああ、そうか…わざわざありがとな」
長門「いい」

休み…か。今はそのほうがありがたいな。

キョン「じゃあな長門、また明日な」

長門は小さく頷いた。あいつなりの挨拶だったんだろう。


俺は振り返ることができなかった、長門の視線を感じたからだ。あいつに見つめられると、隠し事を全部話してしまいそうになるからだ。


さて、明日からどうする…俺


翌朝、こんなに学校へ行くのが憂鬱なのは久々だ。できることなら昨日に戻って、あのときの俺を引き止めたいところだ。しかし、休む訳にもいかないのでしぶしぶ俺は、学校へ行った。

教室のドアを開けると、ハルヒが待ってましたと言わんばかりに

ハルヒ「おっはよーキョン!今日もシケた面してるわね~朝御飯ちゃんと食べてんの?」
最近のハルヒは、以前に比べ随分社交的になり、クラスの男子や女子と普通に会話するくらいになっていた。
しかも以前までの奇人変人ぶりもピタリと止まっており、男子にも女子にも人気が出てきたようだ。
まぁ性格以外は完璧だったからな、こいつは。

ハルヒ「聞いてキョン!今日は弁当箱も新しいのに変えたのよー」
前に中庭で食べて以来、俺とハルヒは毎日一緒に昼食をとっていた。人気急上昇中のハルヒと弁当を食べている俺は、谷口曰く「羨ましい」の一言だそうだ。
しかし今日の俺は一緒に食べる気にはなれなかった。

キョン「すまん、ハルヒ。悪いが今日は一緒に食べれそうにない」
ハルヒ「え?……どうして……」
キョン「昼休み、少し用事ができてしまってな、だから今日は…すまん」ハルヒ「うん…わかった…仕方ないわね」

ハルヒはすでに普通の女の子となっていた。それだけに、このときの悲し気で寂し気な表情は、直視できなかった。

俺はその日から、ハルヒを避けるようになってしまった。授業中、休み時間、部活に関しては適当に理由をつけてずっと休んでいた。最初の頃はハルヒも問いつめてきたのだが、次第にそれもなくなり、会話すらもしなくなった。

そんなある日のこと、ハルヒは学校を休んでいた。会話はほとんどしていなかったが、いないとなると寂しい気もする。

国木田「キョン、お客さんだよ」

お客とは古泉、朝比奈さん、長門だった。

古泉「最近姿を見せませんね、どうしたんですか?」
みくる「涼宮さんがすごく心配してましたよ…それに、悲しそうでした…」
長門「あなた…なぜ…?」
キョン「それは…ちょっと理由があって…」
長門「嘘」

たしかに下手な嘘だったが、俺はとっさに

キョン「嘘じゃねぇよ、証拠でもあんのか?」
ある、今ムキになっている俺自体がその証拠だ。
長門「ならどうして、私達を見ない?嘘じゃないのなら、どうして私の目を見ない?」

みくる「長門さんの言う通りですよ。キョン君、本当のことを教えてください。」

キョン「………」

古泉「言えませんか。ということは、もう気付いてしまったのですね、涼宮さんのこと…」

古泉は何もかもお見通しのようだった。俺のことも、ハルヒのことも。

古泉「長門さん、頼みます」
長門「了解」

古泉がそう言うと、いきなり長門は例の呪文を唱え始めた。

キョン「な、なにをするつもりだ!古泉!」
古泉「知ってもらおうと思いましてね、最近の涼宮さんを」

キョン「ハルヒを?どういう意味だ…!?」古泉「あなたがいないときの涼宮さん。その情報をあなたの脳に送ってるんですよ。ほら?だんだん見えてきたでしょう?」


ハルヒ『キョンは…また来ないの…?どうして?』
『お弁当がマズかった…?』
『最近は話してもくれない…見てもくれない…』
『グスッ…嫌われちゃったの…あたし…。もしそうなら、謝るから…グスッ…あたし、謝るから…。
グスッ…キョンに…会いたい…話がしたい…キョン…どこ行っちゃったの?…戻ってきてよ…』

古泉「機関や閉鎖空間、そんなのは抜きにして言わせてもらいます。涼宮さんを助けてあげて下さい。ここまで彼女の心を弱くしたのはあなたです。追い詰めたのもあなたです。だから助けてあげて下さい」

みくる「キョン君…わたしからも、お願いします。私もあんな悲しそうな涼宮さん、見てられません」

長門「あなたには責任がある。義務がある。拒否は認められない」
そんなに言わないでくれよ、泣いてるあいつを見たとき、もう決心してたさ。

キョン「あいつは今、どこにいるんだ?」

長門「自宅。じゅう…しょ…は…」
言い終わる前に長門の体は消滅した。

キョン「長門!?」

古泉「閉鎖空間ですね、しかも今までに類を見ないほどの速さです。この速さだと、さすがにぼ…くも…」

続いて古泉が消えた。
みくる「キョンくん…涼宮さんのこと、よろしくお願いします。」
そう言って朝比奈さんは、笑顔で消滅した。

背後ですさまじい轟音が聞こえた。振り返るそこにいたのは…神人だ…しかも数が尋常じゃない。古泉達に気をとられていたが、クラスの連中も消滅していた。

俺は急いで崩壊する学校から脱出した。ハルヒに会いに行くために。だが住所がわからない、教える前に長門が消えてしまったからな。
仮に聞いたとしても、この状況だと住所の確認なんかしていられない。

俺はただ走った…崩壊する街を…崩壊する世界を…。ここで世界を、いやハルヒを助けられなきゃ、俺はただの屑だ…。

ハルヒの居場所はわからない、だけど闇雲に走っているわけでもない。あいつの居場所は、神人が教えてくれる。
神人が唯一壊していない、きれいな道…俺はその道をただひたすらに走った。

こんなときでも俺の体は消えていない…ハルヒが、俺を必要としてくれているんだな…ありがとう、ハルヒ


部室の机に伏して泣いているハルヒ、朝比奈さんに泣きついているハルヒ…俺がいない間の、ハルヒの記録だった。

そして俺は、ハルヒを見つけた。周囲にいるのは神人だけ…それ以外は何もない、寂しい場所だった。

キョン「ハルヒ…」

座ってうずくまっていたハルヒがゆっくり顔を上げる。

ハルヒ「キョン?どうしたの?そんなに血相変えて…」

今にも消えかかりそうな声と、弱々しい表情でハルヒは言った。

キョン「帰ろう、元の世界へ」
ハルヒ「元の世界?何言ってるの?」
キョン「いいから。こっちへ来るんだ、ハルヒ。」
ハルヒ「……イヤ…」
キョン「ハルヒ?」
ハルヒ「イヤ…行きたくない。」
キョン「どうして!?」ハルヒ「だって…そこには誰もいないもの…有紀もみくるちゃんも、古泉くんも…」
キョン「俺がいるじゃねぇか!」
ハルヒ「いないわよ!あんたは今、目の前に立ってるけど…どこにも…いないわよ…」
キョン「ハルヒ…」
ハルヒ「もう帰って…誰も見たくない、誰とも話したくない…みんな消えちゃばいいわ…」
キョン「嘘つくなよ…」ハルヒ「嘘じゃないわよ!」
キョン「嘘だ!じゃあ俺はどうして消えてないんだ!?お前が本当にみんな消えちまえって思ってるんなら、俺はここにはいない」
ハルヒ「それは…」
キョン「お前はわかってるはずだ、何もかも。だから…」
ハルヒ「うるさいうるさい!もうあたしに構わないで!ほっといて!」

その瞬間、俺の体が…足元からゆっくりと消え始めた

キョン「はは…まいったな…どうやら本当に必要なしと判断されたらしい」

ハルヒは俺を睨みつけている。敵意を剥き出しにして…

キョン「ハルヒ…実は俺、お前が新しく書いた短冊…見ちまったんだ」
ハルヒ「えっ?」
キョン「それで、お前の気持ち…知ってしまったんだ。そのせいで俺、どんな顔してお前に接したらいいかわかんなくてさ…悪かったな。」
ハルヒ「キョン…」
キョン「お前が誰も必要としてなくてもいい。ただ覚えててくれ、俺達SOS団は…最期まで団長のお前を必要としていたってこと」

ハルヒ「キョン…ダメ…行っちゃダメ…」

ハルヒは立ち上がり、目からは大粒の涙を流していた。そして消えかかる俺に近付いてくる…

ハルヒ「わたしを置いて…どこ行っちゃうの…?もうどこにも行かないで…独りは寂しいの…」

キョン「俺だって…寂しいさ…すごくな…」
ハルヒ「どうして…どうしてこれ止まらないのよ…あたしが止まれって命令してんのよ…キョンは消さないでよ…。世界の終わりに、独りはイヤなの…」

キョン「ハルヒ…もうそろそろ限界みたいだ…」ハルヒ「ダメ…ダメ…!あんたが消えるなら…あたしも消える!」

ハルヒの体が消え始める…すごい速さで…

キョン「バカなことはやめろ、ハルヒ!!」
ハルヒ「いいの…ごめんね…最期までワガママな女で…素直になるのってむずかしいね…」

ハルヒの体は俺と同じくらい消えかかり、速度も俺と同じになった。

キョン「今のお前は…充分素直だよ…」
ハルヒ「でも、遅すぎたわね…こんなギリギリで…」
キョン「お互い様だ」ハルヒ「……キョン…?」
キョン「なん……」

ハルヒは自分の唇と俺の唇を重ね合わせた。前の閉鎖空間とは逆になっちまったな。

ハルヒ「好き……よ、キョ………ン…」
キョン「ああ、お…れ……も……だ……」


そして俺達は消えた。世界と共に








目が覚めた。
どこだ?
部室だ
どうして?
俺とハルヒは確かに消滅した。
なのに体は元通り…どうなってる…?

ハルヒが倒れている…まさか死んでるなんてことはないよな…

キョン「おい、ハルヒ。ハルヒ!」
頼む、目を覚ましてくれ

ハルヒ「う……ん……キョン?」

キョン「よかった…一瞬死んでんじゃないかと思ったぜ。でも、どうして…俺達部室にいるんだ…あのときたしかに…」
ハルヒ「消滅したわよ…あたしも、あんたも…」
キョン「じゃあ何で…?」
ハルヒ「それは…その…」
キョン「もしかして、お前がやったのか…?」
ハルヒ「うん……。完全に消えちゃう前に、一つだけ願い事したの…」

キョン「願い事?なんて?」
ハルヒ「何てって…あんたも知ってるじゃない…」

ハルヒはもじもじしてそう言った。

キョン「知るわけないだろ。あの状況でどうやってお前の思考を読みとるってんだ」

ハルヒ「そ、そうじゃないわよ…!」
キョン「じゃあ一体どういう意味なんだ?」

ハルヒ「だ、だからぁ…」
こんなときに何考えてんだって思うかもしれないが、もじもじしながら下を向いて、耳まで真っ赤にしているハルヒはかなり可愛かった。

ハルヒ「見たんでしょ?あの短冊?」
キョン「短冊?ああ…見たな」
ハルヒ「だからあたし、それをお願いしたのよ…。キョンと一緒に…幸せになれますように…って…」

俺と幸せになる…俺の幸せって何だ?元の世界に戻ること?違う。ハルヒと一緒に生きること?違う

元の世界に戻って、ハルヒと一緒に生きることだ。

そうか……だからか。だから戻って来られたのか…。

キョン「ハルヒ」
ハルヒ「何よ……あっ……」

俺はハルヒを抱き締めた。

キョン「これからはずっと一緒だ。もうどこにも行かない。」
ハルヒ「……約束よ?」
キョン「約束だ」
ハルヒ「破ったら…死刑なんだからね…」
キョン「望むところだ」
ハルヒ「バカ…キョン」

それからしばらくして、古泉と朝比奈さん、長門とも再会できた。朝比奈さんは号泣し、古泉はいつものスマイルで「よかったですね」、長門に関しては…

キョン「世話かけたな」長門「ええ」

てっきり「いい」って言うと思ったんだがな。

キョン「長門」
長門「なに?」
キョン「えーっと、その…」
長門「おかえりなさい」キョン「えっ?」
長門「おかえりなさい、キョン…お疲れ様」
キョン「何だか新婚の奥さんみたいだな」
長門「そうね。ふふっ」

長門が初めて笑った。カメラがあれば…カメラがあれば…!!

俺達はそのまま鍋パーティーをした。材料等は『機関』と鶴屋さんがどうにかしてくれた。

俺はこれから、ハルヒの側にいようと思う。閉鎖空間なんて発生させない。もし発生してしまっても、そのときは俺がなんとかしてやる。

俺の隣にはハルヒが、ハルヒの隣には俺がいる。俺達は手を握りあった、もう二度と離れないように…いつも一緒にいられるように…


ハルヒ「幸せに…なれますよーーにっ!!」


        Fin
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