放課後の部室。
いつものように朝比奈さんが淹れてくれたお茶を啜る。
これのためだけに部室に足を運んでいると言っても過言ではない。
 
ハルヒのヤツは掃除当番で来るのが遅れると言っていた。
小泉のヤツは知らん。
 
朝比奈さんとボードゲームでもして暇を潰そうか、そう思った矢先長門が立ち上がった。
スタスタと機械のような正確な歩幅で俺の隣まで来る。
 
どうした、長門よ。
 
 
「今日の夜、貴方の家に行く許可を」
 
 
なぜ?
 
 
「貴方の部屋で花火をする」
 
おい、情報統合思念体。
長門にエラーが蓄積しまくって意味不明になってるぞ。
 
 
「現在、軽度のエラーは発生しているが無視できるレベル。任せて」
 
 
何を任せればいいのだ。
いつもと変わらない無表情な顔で訳のわからないことを言い出す無敵宇宙人。
もしや、これは長門流のギャグで、俺は「やっちまえ」と言えばギャグが成立するのだろうか。
 
 
それはギャグか?
 
 
「?」
 
 
長門が首を小さく傾げる。傾げたいのは俺のほうだ。
朝比奈さんに助けを求めるが、俺と同じく長門の意味不明発言に戸惑っていた。
 
だが、俺たちの戸惑いなど関係なしに長門は続けた。
 
 
「不許可の場合、明日より小泉一樹の上履きが行方不明になる」
 
 
地味に嫌だな。
いや、しかしおかしな話だと思わないか?
許可すれば俺の部屋で花火が行われ、不許可すれば小泉の上履きが行方不明になる。
断ったほうが断然いいに決まっている。
 
 
なぜ、不許可の場合に限って小泉に被害が出るんだ?
 
 
「……」
 
 
長門の表情を見分ける眼力なら世界どころか、宇宙一と言える俺は長門の微妙な表情の変化を見逃さない。
あの長門が珍しく困っているのだ。
 
裏があると見て間違いはない。
またハルヒ関連で事件が発生していて、長門はそれを言えないのだとしたら。
 
 
今日じゃないとダメなのか?
 
 
「……」
 
 
長門は無言のままミリ単位で頷いた。
あの長門が困っているんだ。
俺はこの無敵宇宙人の提案にのることにした。
すると部室のドアが勢いよく開いた。
 
 
「イヤッホー!! ってアンタ、有希となにしてるのよ?」
 
 
暴風雨のごとく、ハルヒは部室に入ってくるなり、いちゃもんをつけてきた。
 
団員同士が会話をするのがいけないのか?
 
 
「そうじゃないけど……ち、近いのよ! 離れなさい!」
 
 
俺と長門の距離感は会話をするにはベストだと思う。
ハルヒにとやかく言われることでもないきがするが……反論しないでおこう。
ハルヒの後ろで常ならニヤケた面の小泉が、血走った目で俺を見ているのだ。
ここで下手にハルヒを刺激して閉鎖空間でも発生させてみろ、苦労するのは小泉だ。
 
 
ああ、長門。さっきの話は許可する。
 
 
「感謝する」
 
 
長門も気づいているのか、一言そう言ってスタスタと指定席に戻った。
 
団長様はむすっとした顔で俺を見ると、そのまま足音を鳴らして団長席に座ってパソコンの電源をつけた。
おおかた、昨日からカウンターの回っていないサイトを見て、不機嫌になるんだろうな。
 
 
「助かりましたよ」
 
 
向かいに座った小泉が小さな声で言った。
 
言っておくが、あっちのほうは俺はどうすることもできないぞ。
 
 
「わかっています。ですが貴方のおかげで閉鎖空間の規模は小さくなるでしょう」
 
 
血走っていた目はどこにやら、いつものニヤケ面に戻っていた。
どうにもコイツはこうゆう顔をしていないと落ち着かん。
俺はオセロを用意すると、小泉は当たり前のごとくに白を選んだ。
 
ハルヒの機嫌が直らなかったこと意外は、何事もなく部活は終わった。
朝比奈さんは着替えがあるので、俺と小泉は真っ先に部室を出た。
 
 
そうだ、長門が今日俺の部屋で花火をしたいそうだが、どうゆう意味だと思う?
 
 
と訊く俺に小泉は驚いたように目を見開いた。
 
 
「あの長門さんが? それはまた、変な話ですね」
 
 
そして考え込む仕草を見せた。
無敵万能宇宙人長門の次に有能なのはコイツなのだ。
つまりコイツがわからないのであるなら、一般人である俺はどんな推測も立てられない。
 
 
「……思い当たる節があります。ですが」
 
小泉が口ごもる。
何だと言うのだ。勿体つけてないでさっさと言え。
 
 
「もし今夜、僕が貴方の家にお邪魔するようなことがあればお話しますよ。それでは、急用ができたので」
 
 
俺の疑問を解決させないまま、ニヤケ面は焦ったように駆け出した。
いったいなんだというのか。ますますわからなくなった。
下駄箱に着くと、すでに靴に履き替えた長門が待っていた。
 
 
「今から貴方の家に直接向かう」
 
 
それは決定事項か?
同級生の女子を連れて帰るのには少し勇気がいるのだが。
 
 
「任せて。情報操作は得意」
 
 
お決まりの台詞を信じてみようじゃないか。
 
朝なら登校するのも嫌になる坂道を、長門と並んで歩く。
そこで一つ気づいたことがある。
 
長門がせわしなく辺りを見回すのだ。
普段のコイツなら絶対にありえない。
 
どうかしたのか?
 
 
「……貴方は、甘口と辛口のどちらが好き?」
 
 
なんだとつぜん。カレーの話ならあえて中辛だな。ベストな辛さだ。
 
 
「私も中辛が好き」
 
 
奇遇だな。
 
 
「奇遇」
 
普通の高校生の会話かどうかはわからないが、人間らしい会話であることに違いない。
昔の長門は口を開けばハルヒのことばかりだった頃に比べれば進歩したほうだろう。
 
ここでふと男女らしい会話を思いついた。
 
 
長門、お前は好きなヤツとかいるのか?
 
 
「いる」
 
 
おお、これは意外な返事だ。
 
 
「貴方」
 
 
…………なんだと!?
話題を振ったのは俺とは言え、唐突過ぎるぞ長門有希。
こんな場面をハルヒに見られたもんじゃあなんと言われるかわかったもんじゃない。
間違いなく赤面しているが、夕焼けと誤魔化せるであろうか?
 
 
「……SOS団のメンバー」
 
 
長門はそう続けた。
どうやらコイツの言う好きは、SOS団の全員に向けられるものであったらしい。
思い違いとは言え、なかなか悪いもじゃなかったぞ、長門。
 
唐突に話が飛ぶが、俺の家に着いた。
長門を自転車の後ろに乗せて警察に呼び止められ、警察官二名がどうなったかの話は省かせてもらおう。
 
それで、だ。
俺は同級生の女子を連れて来たことを妹と母親にどう説明すればいい。
 
長門もそれなりに出入りしているとは言え、今日はハルヒたちはいない。
そんな俺の懸念を知らず、長門はなんのことなく玄関を開けて入った。
 
どうにでもなれと、自暴自棄になって家に入ると、それを探知して自動で動くのか妹が二階から降りてきた。
 
 
「キョン君お帰り~。あれぇー有希ちゃんも一緒?」
 
 
先の試験に向けて長門が勉強を教えてくれると言うので連れてきたんだ。
決してやましいことはないぞ? 本当だぞ?
 
 
「? 変なキョン君。おかーさーん」
 
妹は早速母親に密告しに行った。
長門を先に二階に行かせ、俺は母親に捏造した経緯を話した。
寛大な母親は、突然の来客に夕飯を振舞うと張り切ってOKをしてくれた。
 
ジュースをお盆にのせた妹を連れて部屋に戻ると、長門は正座して窓の外を見てた。
 
 
「有希ちゃんジュース」
 
 
「ありがとう」
 
 
妹の相手をする長門の表情がすこし和らいで見えた気がした。
一緒に遊ぶと言い出しそうな妹は、一階から母親に呼ばれて早々に部屋から出て行った。
 
部屋に残された俺と長門。
長門は相変わらず外を眺め、俺はその後姿を眺める。
 
今日はやけに空が気になるみたいだな。
 
 
「……貴方はどんなカレーが好き?」
 
 
またカレーの話か。
そうだな、手作りのカレーならなんでもいけるぞ。
 
「……そう」
 
 
そうゆう長門はどうなんだ?
 
 
「レトルトでも手作りでもかまわない。むしろレトルトのほうが栄養バランスが緻密に考えられている」
 
 
たしかにそうだな。
しかし、レトルトと手作りしたのでは味が段違いだぞ。
 
 
「……機会があるなら、貴方の作ったカレーを食べてみたい」
 
 
それくらいお安い御用だ。
機会があればいくらでも作ってやるよ
 
 
「そう」
 
 
結局俺の問いに答えることなく、長門は空を眺める。
どうやら今回の件に関係する話は話したくないらしい。
 
空が夕日から星空に変わる。
長門は好きなはずの読書もせずに空を眺め続ける。
 
ドタドタと階段を駆け上がってくる足音がした。
どうやら、夕飯の時間か。
 
すっかり重くなった腰を上げて立ち、長門に声をかけようとした。
長門もすでに立って俺を見ていた。
 
俺は見た。
長門の後ろ、窓の外が灰色の閉鎖空間に変わっているのを。
 
 
「予定より一時間と二十五分三十四秒早い」
 
 
長門がつぶやく間に、真っ赤な炎の塊が迫っていた。
窓を突き破った炎が部屋に入ってくる。
 
長門は片手を突き出した。
すると目の前に見えないバリヤーのようなものが展開されて炎を防いだ。
 
 
「来て」
 
 
長門は俺の胸倉を掴むと、ベランダに飛び出して大きく跳躍した。
服を破くまいと必死に細い腕に両手で掴む。
 
一回の跳躍で10軒くらい隣の民家の屋根に着地した。
そして、俺は、息を飲んだ。
 
 
「オオオオオオオォォォォォオオオオ!」
 
 
数十の『神人』が、叫び、町を破壊する。
前に小泉と一緒に閉鎖空間に入ったときは『神人』は一体だけ、ハルヒときだって両手で数えられる程度しかいなかった。
 
それに比べてこの数はなんだ。
こんなにもハルヒはストレスを溜め込んでいたとでも言うのか?
 
 
「貴方の見解は半分正解だが、この閉鎖空間は故意に生み出されたもの」
 
 
長門の見上げた先、ビルの屋上に人らしき影がある。
 
 
「この閉鎖空間を作り出したのはあそこにいる情報統合思念体とは別の思念体。そして私は高確率で敗北する」
 
 
長門がなにを言ってるのか、正直理解できなかった。
あの長門の口から敗北の二文字が出るなんてありえないだろ。
 
「情報統合思念体は、敵性情報統合思念体と交戦中。今あそこにいるのはそのインターフェース」
 
 
長門、どうしてこのことを黙っていたんだ。
 
 
「情報統合思念体はこのことを貴方に伝えた場合、混乱した貴方が逃走して守ることが困難になると判断した」
 
 
充分逃げ出したい状況なわけだが、それもできないんだろうな。
 
 
「できない。戦闘で勝つ以外の道は残されていない」
 
 
敗北率ってのはどれくらいなんだ?
 
 
「……私の未来の異次元同位体すべてと同期がとれない」
 
 
つまりそれって……。言葉を飲んだ。
敗北率がどうとかそうゆう話じゃない。
これは敗北が決定した戦いなのだ。
 
「大丈夫」
 
 
胸倉を掴んでいた手を離し、長門は俺を見た。
 
 
「未来は分岐を繰り返す。私が一パーセントになってみせる」
 
 
長門が片手を頭上に上げる動作に釣られて顔を上げた。
振り下ろされた『神人』の腕がまた見えないバイヤーによって弾け飛んだ。
 
そして長門は大きく跳躍し、『神人』の群れに向かっていった。
両手を広げ、俺には見えない攻撃が次々と『神人』に穴を開けていく。
攻撃しようものならバイヤーによって弾け飛ぶ。
 
長門はいつもこうやって一人で戦っていたか。
俺が寝ている間も、もしかしたら勉強している間も、それが自分の使命だと思って、戦ったいたのだろうか。
 
こんな状況で俺にできることってなんだ。
長門を信じて待つだけしかできないのか?
 
長門が一人で戦ってるのに、そんなことできるはずがない。
やれることは一つ。敵のインターフェースを見逃さないことだ。
 
長門の実力は一目瞭然、『神人』が束になっても負けないだろう。
ならどうして未来の長門は敗北したのか。
 
敵のインターフェースの攻撃以外に考えられない。
まだ敵のインターフェースは屋上で長門を見ている。
 
長門にやられて『神人』が次々に倒れていく。
そして敵のインターフェースが動いた。
 
 
「ナガトォォォォォォオオオオオ!!」
 
 
「!」
 
 
攻撃するかどうかもわからないうちに叫んでいた。
それにも関わらず、攻撃は同時に行われた。
 
敵のインターフェースから放たれた黒いビームのようなものが『神人』を貫き、その内側にいた長門に迫っていた。
 
長門は見えないバリヤーを展開して黒いビームを弾き、『神人』の顔を踏み台にして大きく跳んだ。
スカートも押さえず、俺の隣に着地すると一息ついた。
 
 
「迂闊。貴方の声がなければやられていた。どうやら敵インターフェースの攻撃はステルスに該当するらしい」
 
 
役に立てたことにホッとする。
これで敵のインターフェースは俺にも気を配ってなかなか攻撃することができないはずだ。
 
正気はあるか?
 
 
「『神人』については問題ない。問題はその数」
 
 
さっきから倒しているのに減ってる気がしないんだが。
 
 
「倒す度に再生を行っている。どうにかして敵インターフェースに攻撃を仕掛けたいが、貴方が危険が及ぶ」
 
 
俺が長門の足枷になっているのは自覚していたが、はっきり言われるとへこむ。
そもそも『神人』の相手はあのニヤケ面の仕事じゃないのか?
 
 
「ご名答。『神人』の相手は僕らの仕事ですよ」
 
見計らってたんじゃないかと思えるくらい、タイミングよく背後で聞きなれた声がした。
振り返れば、見知った顔がいくつもあった。
 
遅かったな小泉。
 
 
「少しこの入るのに手間取りましてね。僕らも全力でやっていたのでご容赦願いたいですね。にしても」
 
 
見回して『神人』を数えると、ポーカーフェースも崩れて苦笑いした。
 
 
「これはさすがに多勢に無勢でしょうね。長門さん、打開策はありますか?」
 
 
「敵インターフェースの破壊」
 
 
「わかりました。『神人』は僕らに任せて長門さんはどうぞ、あちらの敵に集中してください」
 
 
「了解した」
 
 
 
宇宙人と超能力者集団は同時に飛び出した。
無数の赤い砲弾となった超能力者は『神人』と戦い、長門は、ビルの屋上を吹っ飛ばしていた。
 
皆が皆、敵と戦っているのに、お前は残ってていいのか?
そう小泉に訊いた。
 
「もちろん僕も戦いますが、その前に貴方の知り得た情報をお聞きしたくてね」
 
 
情報というか、長門とのやりとりと今に至った経緯を話してやった。
小泉はそれに相槌を打つにつれて、ニヤケ面から真剣な顔になった。
 
 
「つまり、貴方の言うことでは、長門さんはあの敵インターフェースに敗北する。ということですね?」
 
 
それは俺の推測だ。
 
 
「それは失礼しました。しかし、その推測は変ではありませんか? 今の長門さんを見ればわかると思いますが」
 
 
長門は、『神人』顔負けに建物を容赦なく破壊して敵のインターフェースを追い続ける。
小泉が言いたいのは、単純な話であって、あの敵のインターフェースに長門以上の力はない。
 
そうゆうことだな、小泉。
 
 
「さすがです。それではここで一つ僕の推測をお聞かせしましょう。長門さんは絶対に貴方を守るでしょう」
 
 
長門はそうゆうヤツだ。
 
 
「少々酷なことでしょう……。はっきりいえないのは僕の弱さ。いいですか、長門さんは絶対貴方を守りますよ!」
 
小泉は風に放ち、いつか閉鎖空間で見た赤い弾丸となって『神人』の群れに飛んでいった。
超能力者集団の介入により、長門は敵のインターフェースを攻撃し続けることができる。
 
さすがは何でもありな宇宙人だ。
その戦闘は俺の想像をはるかに超えている。
 
説明しようにも早すぎて一つ説明してる間に十は過ぎてく。
わかることがあるとすれば、長門が敵のインターフェースを圧倒してることだ。
 
このまま行けば確実に勝てる。
だが、腑に落ちない。
 
たとえば、今みたいに超能力者の介入があって今みたいな状況が未来にあったはずだ。
未来の長門はこの状況でどう負けたんだ?
 
 
「危ない!」
 
 
考え込むうちに『神人』の腕が落ちてきた。
かわす術のない俺はその光景を見ているしか出来なかった。
 
だが、寸前のところで小泉らしい赤い弾丸が腕を吹き飛ばしてくれた。
終わったらお礼の一言でも二言でもいってやるよ。
 
攻撃をかわした敵のインターフェースと目があった。
ああ、なるほど。狙われてるのは俺か!
 
長門の攻撃をすり抜けた敵のインターフェースが猛スピードで迫ってくる。
俺に攻撃する術? あるわけないだろ。
 
そこで俺は長門頼みになるしかない。
案の定、長門は敵よりも早いスピードで戻ってくる。
 
小泉の言うとおり、長門は絶対に俺を守ってくれる。
今までの長門が敗北した理由なんて、もう一つしかないな。
 
敵の手が伸びてくる寸前で長門が俺の前に立った。
これは朝倉の攻撃から俺を守ってくれるときと重なる。
 
俺のやるべきことはわかっている。
長門の行動が手に取るようにわかりやすくて助かった。おかげで、
 
「あ」
 
長門の前に出て敵のインターフェースの攻撃を受けることができる。
 
ホント宇宙人はなんでもありだ。簡単に人の胸を貫いてくれる。
肺に血が溜まり、口に血が逆流して吐血した。
 
痛いというより、熱いな。
朝倉の攻撃受けたお前もこんな感じだったのか、なぁ長門。
 
 
「あああああああああああああああ!!」
 
 
長門の絶叫が俺の聴いた最後の音だった。
 
 
 
 
 
……。
…………。
 
少しナゾナゾを出そう。
俺は確かに閉鎖空間で敵に胸を貫かれた。
 
貫かれて生きてる人間がどこにいる?
あいにくだが、ここにいるんだな。
 
今は元の部屋にいる。
長門の顔が目の前にある、正確には見上げているのか。
なぜなら長門に膝枕されているんだからな。
 
 
よぉ、俺は生きてるのか?
 
 
「生きている」
 
 
夢でなくてよかった。
あのあとどうなったんだ?
 
 
「敵インターフェースの破壊に成功。及び『神人』の一掃を行い、貴方の再生に成功」
 
そりゃ、よかった。
 
これで今まで死んでいった俺に報いることができたな。
長門の無表情な顔、その黒い宝石のような瞳か涙が落ちてきた。
 
お前でも泣くことができるんだな。
 
 
「私は貴方を守りきれなかった」
 
 
いいや、あれは俺が悪い。気にするな。
 
 
「それでも」
 
 
なかなか強情だな。
ならなんで自分の命を投げ出してまで俺を助けようとした。
 
 
「……私個人として、貴方に死んでほしくなかった。貴方のことが大切だから」
 
 
俺だってそうさ。
大切なヤツが目の前で死ぬ光景なんて真っ平ごめんだ。
 
「……」
 
 
大切なら命を賭けて守ってやりたいもんさ。
 
ドタドタと階段を駆け上がってくる足音がした。
ドアが開いて妹が顔を覗かせた。
 
「キョン君カレー……キョン君が有希ちゃんに膝枕してもらってるー! おかーさーん」
 
こりゃ、ややこしい話になりそうだ。
 
「私と貴方が……付き合っていれば問題ない」
 
だからややこしい話になるんだよ。
我らが団長様がなんて言うかだ。
 
「そう」
 
今日の夕飯はカレーだそうだ。
レトルトと手作りの違いを味わっていくといい。
 
「……うん」
 
 
fin
 


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