これは「涼宮ハルヒの改竄 Version K」の続編です。

 
プロローグ
 
俺はこの春から北高の生徒になる。
 
そして明日は入学式だ。
 
担任教師からは「もう少し頑張らないときつい」と言われたし
 
親父と母さんは「もうすぐ高校生なんだからしっかりしなさい」と言われた。
 
はぁ、全く以って憂鬱だね。
 
さぁ、明日は朝から忙しくなりそうだし、もう寝るとするか。
 
睡魔が俺の頭を支配する寸前、何故だか「はるひ」の泣き顔が頭をよぎった。
 
なんであいつの顔が出てくるのだろう?
 
等という疑問も睡魔に飲み込まれていった・・・


 
とてもいい夢を見た様な気がする。
 
どうせなら、現実と入れ替えたいと思うような夢だった。
 
ん?どうして、夢だって分かるのかって?
 
何故なら、それは現実ではまずありえないことだったからな・・・
 
だから夢だって分かる訳さ。
 
どうやら夢というのは一番いいところで終わるものの様だ。
 
もう少し見ていたい気もするのだが・・・
 
最近、腕がメキメキと上がる妹のボディプレスで俺は目を醒ました。
 
「妹よ、もう少し優しい起こし方は出来んのか?」
 
「だって、こうしないとキョン君起きないもんっ!!」
 
ふむ、どうやら中々起きない俺にご立腹の様だな。
 
俺が起きたのを確認すると足早に1階へと降りていった。
 
それを見送った俺は枕元の時計で時間を確認する。
 
そこで頭が一気に覚醒した。
 
ヤベッ、寝坊したっ!!
 
起こしてもらって寝坊してたら、そら腹も立つわな・・・
 
妹よ、スマン。



 
「涼宮ハルヒの入学 version K」



 
俺は慌てて部屋を出て階段を駆け下りた。
 
が、その時足が縺れ、俺は豪快に階段を転げ落ちた。
 
母さんが慌ててリビングから出てくる。
 
「ちょっと、キョン大丈夫っ!?」
 
「いって~、初日の朝からこれかよ?ダッセー」
 
「そんなことどうでもいいわよっ!!それよりちゃんと立てるの?」
 
「あぁ、大丈夫だ。朝から騒々しくしてスマン」
 
そう言って俺は立ち上がった。
 
が、一瞬フラついて壁に手を当てた時、俺の腕に激痛が走った。
 
「っ痛!」
 
俺はもう片方の手で痛みが走った腕を押さえた。
 
「ちょっと腕見せてみなさい」
 
それを見ていた母さんは、俺の腕を心配そうな顔で見ていた。
 
「折れてはいないみたいだけど、一応病院に行った方が良さそうね」
 
「これ位なんて事無いから、大丈夫だ」
 
と言った俺は母さんにポカっと頭を殴られた。
 
「確かにただの打撲かもしれないけど、万が一って事があるでしょ?学校には連絡しとくからとりあえず支度だけはしときなさい」
 
「分かった。朝から面倒掛けてスマン」
 
「いいわよ。あたしが年取ったらいっぱい面倒掛けてやるんだから。覚悟しておきなさい」
 
この時ばかりは母親の強さというものが骨身に染みた。
 
「あぁ、幾らでも掛けてくれ」
 
「えぇ、そうさせてもらうわ。お父さん帰ってきたらすぐに病院に行くわよ。だからさっさと着替えなさい」
 
と言いながら俺の寝巻きを剥いできた。
 
「ちょ、自分で脱ぐからそれだけは勘弁してくれ~」
 
「何言ってんの?腕怪我してて自分じゃ脱げないだろうと思って手伝ってやってんじゃない。いいから黙って剥かれなさい」
 
前言撤回したくなってきた。
 
この人は間違いなく遊んでいる。
 
そこへ妹が興味を引かれてやってきた。
 
「何してるの~?」
 
「なんでもあr「あ、ちょうどいい所へ来たわ。キョンが腕に怪我したから寝巻き脱がすの手伝って」
 
「そうなの~?キョン君大丈夫~?」
 
それを聞いた妹は心配そうな面持ちで俺を見てきた。
 
あぁ、お兄ちゃん想いの妹を持って俺は幸せ者だなぁ等と思っていたら、妹は俺のズボンを引っ張り出しやがった。
 
ここから
 
「こ、こら、ズボンを引っ張るんじゃありません。」
 
「なんで~?ケガしちゃって大変なキョン君のお手伝いしてるだけだよ~」
 
もはやこの親娘を止められる奴なんかこの世に存在しない事を悟った俺は抵抗を諦めた。
 
「好きにしろよ、もう」
 
母さんと妹から強制ストリップショーを敢行させられた俺は無事北高の制服に身を包んでいた。
 
のだが、それだけでは終わらなかったのである。
 
現在、母さんは学校と親父に電話を掛けている。
 
俺はというと、テーブルに座り朝食にありつきたいのところなのだが箸を妹に拘束され、俗に言う「お預け」状態にあった。
 
俺は俺の箸を強奪して至極楽しそうにしている妹を恨めしい目で見た。
 
「お母さんが電話終わるまで待ってなさいって言ってたでしょ?」
 
いったい何なんだこれは?果てしなく嫌な予感がするぞ。
 
そして母さんが電話から戻ってくると俺の嫌な予感が的中したのだ。
 
「腕が痛くてご飯もおちおち食べられないキョンのために、あたし達が今日だけ特別に食べさせてあげるわ」
 
なんですと~っ!?
 
今、この人はなんて言ったの?
 
って、俺が現実逃避している間に母の手により一口サイズにつまんだ白米が口元まで進攻してきていた。
 
っく、覚悟を決めるしかないのか?
 
「最近、キョンったら全然釣れないんだもの。こういう時しかキョンで遊べないもんねぇ?」
 
「うん、キョン君で遊ぶの久し振りだから楽しい~」
 
こいつ等、やっぱり遊んでいたのか・・・
 
親父、早く帰ってきて俺を助けてくれ。
 
もう、あなただけが頼りだ。
 
その時、玄関の方から「ただいま~」と救世主の声が聞こえた。
 
グッジョブ親父!!
 
と思ったのもつかの間だった。
 
「なんだ?怪我したっていうから急いで帰ってきたのに、随分羨ましい事してるじゃないか?」
 
「そう思うんだったら代わってくれ、今すぐに」
 
「キョンってば冷た~い、あたし達はもっとキョンと仲良くしたいだけなのに」
 
「キョン君は私達が嫌いなの~?」
 
なんなんだ、このアホアホ家族は・・・
 
「分かった、分かったよ。有難く頂きます」
 
俺はヤケクソで母さんと妹から運ばれる朝飯を食い尽くした。
 
「美味しかった?美味しくない訳無いわよね~?」
 
「あぁ、美味かったよ。もうお腹いっぱいだ、色んな意味でな」
 
「そう?褒め言葉として受け取っておくわ」
 
俺の皮肉もどこへやらで母さんはどうやら満足したらしい。
 
はぁ、やれやれ・・・
 
「じゃあ、そろそろ病院行きましょうか」
 
やっとか・・・長かった。
 
「おぅ、先にこいつと車で待ってるぞ」
 
「分かったわ~」
 
というわけで俺は今親父と二人、車内で母さんと妹を待っている。
 
「怪我はどうなんだ?そんなに酷いのか?」
 
「いや、ただの打撲だと思う」
 
「そうか、あんまり母さんに心配掛けるなよ。あぁ平静を装ってるが、内心はパニック寸前なんだからな」
 
また迷惑を掛けちまったな。
 
後できちんと謝ろう。
 
「あぁ、分かってる。これからは気を付ける」
 
「あぁ、そうしてくれ。あとたまにはちゃんと話もしてやれ。母さん寂しがってるぞ」
 
「そうする」
 
そうだ。普段は強気でいるけど母さんはその実とっても弱いんだ。
 
俺は母さんをどれ位傷つけたんだろう・・・
 
図体ばっかで全然成長出来てないな俺・・・
 
その時、母さんと妹が車に乗り込んできた。
 
「ごめ~ん、お待たせ!!さぁ、病院へレッツゴー!!」
 
母さん、病院はそんなハイテンションで行くところじゃありませんよ・・・


 
その後、病院へ行って診察してもらった結果やっぱり打撲だった。
 
それを聞いた時の母さんの安心しきった顔を俺は一生忘れないだろう。
 
そんなこんなでやっと北高へ着いた。
 
もう式も終わっていて今はクラス毎にLHRが行われている時間だ。
 
俺は「もう式も終わってるんだから今日は休もう」と言ったら「ダメ。初日からサボリなんて許さない」と両親から最大級の威圧を与えられ今、受付に向かっている。
 
俺は片付けを始めている受付で自分の受験番号と名前を述べた。
 
「受験番号???の○○○○です。事情が合って遅れてしまったのですがクラスを教えて頂けますか?」
 
「はい連絡は受けています。○○○○さんのクラスは1年5組になります。座席表は教室の入り口に貼ってありますから教室に入る前に確認して下さい。本日は御入学おめでとうございます」
 
「はい。ありがとうございます」
 
俺はペコッと頭を下げると1年5組の教室を目指した。
 
教室のドアの前に立って自分の席を確認した。
 
どうやら、今教室内ではクラスメイト達が自己紹介をしている様だ。
 
その時、自分の後ろの席の奴の名前が「涼宮ハルヒ」と書かれていることに気づいた。
 
へぇ、あいつと同じ名前だなぁ、どんな奴だろ?
 
もしかしてあいつだったりしてね?
 
いや、そんなドラマ的展開はないか。
 
あいつは今元気でやってんのかなぁ?等と考えつつドアを開けた。
 
「東中出身。涼宮ハr「遅れてすいませんでした~」
 
ヤベッ、自己紹介と被っちまった。
 
とりあえず謝っておくか。
 
背後から怒りのオーラ出しまくってるしな。
 
なんか、今日は朝から謝ってばっかりだな、俺・・・
 
「あ~、とりあえずスマン」
 
謝った途端、そいつはこっちを怒り120%で睨みつけてきた。
 
そこにはすっかり美人になった「はるひ」がいた。
 
いや、前に会った時も十分美人だったぞ。
 
今のはそれ以上という意味だ。
 
って俺は誰に説明してんだ?
 
俺が見惚れているとハルヒが聞いてきた。
 
「ちょっとジョン、なんであんたがここにいるのよ?」
 
おいおい、誰だよそりゃ?
 
「誰だ?そのジョンというのは?頼むからこれ以上変なあだ名は増やさないでくれ。はるひ」
 
「じゃあ、あんたはあの時の「あいつ」なの?」
 
「あぁ、久しぶりだな」
 
「ホントにね。ってか何であたしの名前知ってんのよ?」
 
あぁ、周りの目線が冷やかしモードになってきたな。
 
初日からこれはマズイ、色んな意味で・・・
 
「それは話せば長くなるんだが、とりあえず後にしよう」
 
頭に?マークを浮かべているハルヒに手で周りを見るように促した。
 
ハルヒは満足出来ないという面持ちだったがとりあえず席に座ってくれた。
 
はぁ、とりあえず助かった・・・のか?
 
俺は、このクラスの担任らしい人に挨拶をした。
 
「遅れて申し訳ありませんでした。ただの打撲で済みました」
 
「そうか、それは良かった。しかし、打撲だからといって侮っちゃだめだぞ」
 
「はい、ご心配おかけしました」
 
「よし、じゃあ席に着け。今は見ての通り自己紹介をしてもらっている最中だ」
 
「はい」
 
そう言うと俺は自分の席に着いた。
 
「じゃあ、今来た○○○○には最後に自己紹介をしてもらう。悪いが涼宮もう一回頼む」
 
な、なんだって~っ!?
 
まぁ、落ち着こう。
 
落ち着いてハルヒの自己紹介を聞こう。
 
「東中出身。涼宮ハルヒ。趣味は不思議探索です、以上」
 
なるほど、不思議探索ね。
 
って、不思議探索ってなんだ?
 
後で聞いてみよう。
 
こちらに向けられている怒りの視線の理由と一緒に。
 
そして、本来なら最後のクラスメイトの自己紹介が終わり俺の番がやってきた。
 
「○○中出身の○○○○です。一年間よろしくお願いしま~す」
 
なんともありきたりな自己紹介だと自分でも思う。
 
しかしながら、変にギャグキャラを気取って一年間そのキャラを演じ続けられる自信もない。
 
今日の予定は全て終わった様でSHRの後、本日は解散となった。
 
席に座ってボーっとしていると国木田が話しかけてきた。
 
「キョン、朝から災難だったみたいだね~」
 
「あぁ、全くだ」
 
ホント色んな意味で大変だったさ。
 
「キョン、この後はどうするの?」
 
さっさと帰って寝たい気もするが、ハルヒと少し話をしようと思う。
 
まぁ、そんな事を国木田に言えるわけも無く
 
「あぁ、ちょっと用事がある」
 
と誤魔化した。
 
「そうなんだ、じゃあまた明日ね」
 
「あぁ、じゃあな国木田」
 
国木田を見送るとハルヒの方に視線を向けた。
 
「な、何よ?キョン」
 
ちょ、お前まで俺をそう呼ぶのか!?
 
俺は「やれやれ」と言いながら溜息をついた。
 
なんとかやめてくれないものかと微かな希望を持ってハルヒに言った。
 
「お前も、俺をその名で呼ぶのか?出来たら勘弁してもらいたいのだが」
 
「いいじゃない。キョンの方が愛嬌があるんだから」
 
「はぁ、もう好きにしてくれ」
 
ハルヒの機嫌もどうやら良くなっているようだからな。
 
「そうするわ。でもホントに久しぶりだわ。キョンはあんまり変わってないわね」
 
あぁ、俺も朝に自分でそれを思い知ったさ。
 
「ははは、そうかもな。ハルヒはとっても綺麗になったな。一瞬誰か分らなかったぞ」
 
ハルヒの顔が段々赤くなっていく。
 
さて、俺は今なんて言ったんだろうな?
 
え~っと・・・
 
うわっ、何恥ずかしい事さらっと言ってんだ俺!!
 
自分の顔が熱くなっていくのが分かる。
 
その時、ハルヒの携帯が鳴った。
 
と思ったら俺の携帯も鳴り出した。
 
発信は母さんか。
 
何の用だろうな?
 
ハルヒが俺の方を見ているので俺もハルヒを見て無言で頷いた。
 
ハルヒが電話に出たのを確認して俺も電話に出た。
 
「あ~、俺だけど」
 
「あっ、キョン?もう遅いわよ、何してるの?今から昼ごはん食べに行くからさっさと出てきなさい」
 
「ん、分かった。今から行く」
 
「ちゃ~んと、ハルヒちゃんと一緒に出てくるのよ、いいわね?一緒に来なかったら昼はキョンの奢りだからね」
 
「おい、母さん何言t「プチ」
 
ツー ツー ツー
 
何で母さんがハルヒがいるって知ってるんだ?
 
さっぱり、理解できん・・・
 
隣を見るとハルヒが俺と同じような事を考えてる様な顔をしている。
 
俺はまた「やれやれ」と溜息をついた。
 
俺とハルヒは横に並びながら昇降口へと向かった。
 
昇降口を出ると、親父と母さんがどっかで見た事ある人と話をしていた。
 
誰だっけ?どっかで見た事あるんだよな。
 
あっ、あれってまさか・・・
 
「キョン、どうしたの?」
 
一応聞いてみるか・・・
 
「あれ、お前のとこの両親だよな?」
 
「うん、そうだけどそれがどうかしたの?」
 
だよな、道理で見た事あるはずだ。
 
「隣に居るのは俺の両親と妹だ」
 
「ふーん、そうなんだ。って、えぇ、な、何であたしの両親とあんたの両親が仲良く話してんのよ?」
 
「俺にもさっぱり分からん」
 
すると妹がこっちに気づいた。
 
まだ気付くな!まだ心の準備が出来てない!!
 
「あ~、キョン君達来たよ~」
 
「や~っと来たの。もう、ハルヒちゃん可愛いから2人の世界に入っちゃうのは分かるけど、少し位周りの事も考えなさいねキョン」
 
「ですよね~。でもキョン君もあんなに格好良いからハルちゃんが夢中になるのも分かるわ。あたしもあと20歳若かったらキョン君狙ってます」
 
等と俺の母さんとハルヒの母親が冷やかしてくる。
 
「ちょ、何勘違いしてるのよっ!?あたし達はそんなんじゃないわよ」
 
「「ふ~ん」」
 
「あ~もう!!黙ってないでキョンも何か言ってやりなさいよっ!!」
 
だめだ。相乗効果で手がつけられなくなっている。
 
「スマン、ああなると母さんは止まらないんだ。諦めてくれ」
 
「あんた、苦労してるのね。親からもあだ名で呼ばれてるし」
 
「分かってくれるか?」
 
「えぇ、あんたに送ってもらった日からあたしの母さんもあんな感じだから・・・」
 
「お互い苦労するな」
 
「全くね。でも、あんたとなら誤解されてもあたしは嫌じゃないけどね」
 
「え、それはどういう意味だ?」
 
「なんでもな~いわよっ!!」
 
そう言って走って行くハルヒの顔は心なしか赤かった。
 
俺はダブルマザーの元へ走っていくハルヒを追い掛けた。


 
その後、俺の家族とハルヒの家族とで合同入学祝いが執り行われた。
 
親たち曰く「祝い事は大勢でやるもの」らしい。
 
この現場をクラスメイトに目撃されてない事を祈ろう。
 
「高校生にもなって酒も飲めんでどうする~」
 
とハルヒの父親が突然絡んできた。
 
「いや、高校生だから飲んじゃいけないと思うんですが」
 
必死に抵抗していると、俺の親父まで悪ノリしてきた。
 
真面目なくせにノリだけはいいからな、親父・・・
 
ダブルマザーもアテにならないので俺はハルヒにSOS信号を発信した。
 
ハルヒはテーブルに置いてあった日本酒を一気に飲み干して親父達に言い放った。
 
「ちょっと、あたしのキョンになにしてんのよっ!?いい加減あたしに返しなさいよっ!!」
 
は、ハルヒさん、いきなり何を・・・
 
親父達がポカーンとしている間に俺は腕の牢獄を抜け出し、慌ててハルヒの手を引いて部屋から脱出した。
 
俺は中庭に出るとハルヒを備え付けられたイスに座らせた。
 
こうしてるとあの時みたいだな・・・
 
あぁ、気まずい。何か話題を振らねば。
 
「どうしたんだ、いきなり?あんな事言うからビックリしたぞ」
 
「ん、ごめん・・・」
 
こうして見るとやっぱりあのときのハルヒだな。
 
そう思い、俺はハルヒの頭を撫でた。
 
ハルヒは恐る恐る顔を上げて俺を見上げてくる。
 
俺はそれに応えるように微笑んだ。
 
「もう、すっかり元気になったみたいだな。これでも結構心配してたんだぞ?」
 
「ホントに?ホントに心配してくれたの?」
 
「あぁ、ホントに心配したぞ」
 
「ありがと・・・」
 
突然ハルヒが俺に抱きついてきた。
 
俺は心臓が止まるかと思うほど驚いていたが、またハルヒの頭を撫でてやった。
 
ハルヒが俺の胸元から顔を覗きこんできて、愛しさのあまり我慢が出来なくなった俺はそっとハルヒの顔に自分の顔を近づけた。
 
ハルヒはそれに応えてくれたようで俺の首に両腕を回してきた。
 
そして俺は目を閉じて待っているハルヒの唇に自分のそれを近づけた。
 
「あ~、キョン君とハルヒちゃんがちゅーしようとしてる~」
 
突然の声に驚いた俺とハルヒはばっと離れて声がした方を凝視した。
 
そこには妹が指を指しながら立っていた。
 
「妹よ、そこで何をしている?」
 
「ん~とね、お母さん達がキョン君達帰ってくるの遅いから呼びに言ってきてって」
 
「そうか、分かった。今から行くから先に戻ってなさい」
 
「うん、分かった~」
 
妹が足早に中庭を出て行ったのを見計らって俺はハルヒに話掛けた。
 
「だ。そうだ。残念だが次回に持ち越しだな」
 
「そうね、ホントに残念だわ」
 
「仕方ない。戻るぞ」
 
「えぇ、そうしましょ」
 
と言ってハルヒは立ち上がろうとした。
 
が上手く立ち上がれず転びそうになる。
 
俺は「やれやれ」と溜息をつきながらハルヒを抱きとめた。
 
「大丈夫か?またおんぶしてやろうか?」
 
「大丈夫、歩いていけるわよ」
 
ハルヒは真っ直ぐ歩けないほどフラフラしていた。
 
仕方ない。またあれをやるか。
 
「なんなら、お姫様抱っこでもいいが?」
 
「そうね、そうしてもらうわ」
 
これは予想してなかった訳ではないが流石に驚いた。
 
ハルヒはしてやったりという顔をしている。
 
こりゃ、一本取られたな。
 
まぁ、いいか。
 
「よし、いくぞ」
 
と言ってハルヒを持ち上げた。
 
こりゃいかん、これはおんぶ以上に緊張する。
 
「スマンが、慣れてないから首に掴まっててくれるとありがたい」
 
ハルヒは俺の言った通りに首に両腕を回しながら文句を言った。
 
「自分からするっていったんだから、しっかりしなさいよね」
 
あぁ、なんか懐かしいな、このやりとり。
 
「おう、任せとけ」
 
部屋に向かってる最中ハルヒは俺に聞いてきた。
 
「ねぇキョン、あたし変われたかな?頑張れたかな?」
 
「お前が自分で変われたって、頑張れたって思うのなら達成出来てるんじゃないか?」
 
「うん、そうだよね。でもね、あたしを変えてくれたのも、頑張れるようにしてくれたのもキョンなんだよ」
 
「そ、そうなのか?」
 
びっくりだ。
 
俺なんかが誰かの役に立てるなんて。
 
「うん、そうだよ」
 
「そうか、それは光栄だね」
 
「だからキョン、これからずっとよろしくね!!」
 
「おう、こちらこそよろしくな」
 
部屋に到着するとみんなビックリしていた。
 
まぁ、当然だよな。
 
俺は腕からハルヒを下ろした。
 
残念そうに見えるのは・・・気のせいじゃないだろう。
 
ハルヒは何かを思い出したらしい。
 
ハルヒは制服のポケットからアイロンをかけたハンカチを取り出して俺に差し出した。
 
「キョン、これ返すわ。いままでありがと」
 
「ん、あぁ、これか。なんだったらずっと持ってていいぞ」
 
「ありがと。でも、もう必要ないわ。だって・・・」
 
「だって?」
 
聞き返すまでも無いな。
 
「これからはずっとキョンと一緒なんだからっ!!」
 
fin


 
エピローグ(ver Hのエピローグ2の続き)

 
「ねぇ、キョン。さっきの続きしよ?」
 
「ん?あ、あぁ」
 
正直俺は混乱しまくっていた。
 
さっきのってのは、やっぱり料亭でのアレの事だよな・・・
 
あの時は、雰囲気やら勢いやらがあったが今は違う。
 
クソッ、どうする俺!?
 
今、してしまったら歯止めが利かなくなってしまうかもしれない。
 
俺達、正式に付き合ってるわけじゃないんだからまだそこまでしてしまうのはマズイだろ。
 
俺はふと、ハルヒの顔を見た。
 
俺は愕然とした。
 
そこにさっきまでの楽しそうなハルヒは居なかった。
 
代わりにいたのはあの日の泣いているハルヒだった。
 
「あ、その、ハルヒ?」
 
「そ、そうだよね。あたしはキョンの彼女でもなんでもないんだからそんなの無理よね。あたし一人で勘違いしてた。ゴメンね、無理言って・・・」
 
どうやら考えていた事が口から出ていた様だな。
 
俺のバカヤロウっ!!朝、気付いた事が何にも活かされてないじゃないか!!
 
今日の出来事を全部思い返してみろよ!!
 
今日、ハルヒは何度も告白してくれて俺はそれに何度も返事してるじゃないか!?
 
あぁ、そうだった。
 
ハルヒは何度も勇気を振り絞って俺に想いを打ち明けてくれたのに、俺は一度も自分の想いをハルヒに伝えていない。
 
だったら、今の俺がするべき事は一つだ。
 
俺はハルヒの肩にそっと手を置いた。
 
ハルヒは驚いた顔で俺を見ている。
 
「ハルヒ、ホントにゴメンな。お前は何度も俺に想いを打ち明けてくれたのに、俺はお前になんにもしてやれてない。ホントどうしようもねぇバカヤロウだ」
 
ハルヒは黙って聞いてくれている。
 
「あの日からいつも頭のどっかにお前がいた。お前が望むならいつまでだって傍にいてやる。だから、ハルヒもずっと俺の傍にいてくれ。頼む」
 
ハルヒは、俺が言い終わると同時に抱きついてきた。
 
「キョン・・・キョン~、・・・ヒック・・・ホントに・・・・ホントにあたしでいいの?あたしなんかでいいの?」
 
ハルヒは俺の胸でわんわん泣いた。
 
「当たり前だろ?もう、お前以外なんて考えられない」
 
俺も涙で何も見えない。
 
俺はわんわん泣くハルヒを二度と離さないように、壊さないように抱きしめた。
 
「ハルヒ、好きだよ。愛してる」
 
「あ・・あたしも・・・グスッ・・・キョンを愛してる・・ヒック・・大好きだよ・・キョンっ!!」
 
ガキの恋愛だと笑われたって構わない。
 
俺はもう、生涯ハルヒを離さないっ!!
 
俺は、ハルヒの頭に手を回し、そっと俺の方へと寄せた。
 
ハルヒはこちらを向き、まだ涙がたっぷり溜まっている瞼を閉じて待ってくれている。
 
俺は自分の唇を、ハルヒのそれにくっ付けた。
 
たったそれだけの行為でこんなにも幸せになれる。
 
ハルヒの唇からハルヒの想いが流れ込んでくるようだった。
 
どれ位していただろう・・・
 
お互いが自然に唇を離し、その余韻に浸っていた。
 
もう一度と唇を近づけた時、ドア越しに会話が聞こえた。
 
なんだ?と思っていたらハルヒと目が合った。
 
どうやら、ハルヒにも聞こえるらしい。
 
俺とハルヒはそーっとドアに近づき、聞き耳を立てた。
 
「・・・・・ルヒちゃんはうちのにはもったいない位です。」
 
「ホントよね。キョンにはもったいないわ」
 
「そんなこと言わないで下さい。キョン君以外の子にハルヒを上げる気はないんですから!ね、お父さん?」
 
「そうですよ。十分ハルヒと渡り合っていけます。あの子が私以外の異性であんなに楽しそうに話すのはキョン君だけなんですよ」
 
「そう言ってもらえると光栄です。これからもうちのをよろしくお願いします」
 
「あたしからもよろしくお願いします」
 
「「こちらこそ」」
 
ハルヒは肩をワナワナさせている。
 
どうやら大変ご立腹の様子だ。
 
無論、俺も例外ではないのでアイコンタクトを取ると一緒にドアを物凄い勢いで開けた。
 
「「さっさと寝ろ~っ!!雰囲気ぶち壊しだ~っ!!!!」」
 
この後、親たちから散々からかわれたのは言うまでも無い。

 

はぁ、やれやれ

 

 

fin

 

 

 

エピローグ2

 

 

 

後日談

 

 

 

「そういや、なんであの時ハルヒの両親と一緒に居たんだ?」

 

 

 

俺はふとそんな疑問を母さんにぶつけた。

 

 

「あぁ、あれ?とりあえず気分だけでも味わおうと思ってみんなでブラブラ校門の辺りを歩いてたら会ったのよ」

 

 

「へぇ、そうなのか?」

 

 

「うん、そうなのよ。まぁ、初めから一緒に入学祝いをする計画だったんだけどね」

 

 

「ふーん。って、あの時初めて会ったんじゃないのか?」

 

 

「違うわよ?えーっと、そうね。もう、3年位の付き合いになるかしら」

 

 

「何をどうしたらそうなるのか教えてもらいたいもんだ・・・」

 

 

「いいわよ、教えてあげる。あれは、たしかあんたがハルヒちゃんを送った3ヶ月後くらいかしらね。お父さんと買い物に行った時偶然会ったのよ」

 

 

何なんだ・・・この因果律は?

 

 

「で、そのまま一緒にお昼ご飯食べて仲良くなったわけ。どう?分かった?」

 

 

「あぁ、理解した。で、なんでそれを俺に隠してたんだ?」

 

 

「だって、親が横槍入れたら上手くいくものも上手くいかなくなるでしょ?」

 

 

「なるほど。って納得いかん。って事はあれか?同じ高校に入る事も事前に知ってたのか?」

 

 

「もちろん!!でも、まさか同じクラスになるとは思わなかったわ」

 

 

そりゃそうだ。そこまで操作出来る訳がない。

 

 

「もうあれね?これは運命よね?キョン、あんたハルヒちゃんとチューしたんだからちゃんと責任取りなさいよ?」

 

 

「あぁ、そうする」

 

 

これからもお互い苦労しそうだ。ハルヒよスマン。

 

 

「あぁ、早く孫を抱きたいなー。あたしはハルヒちゃんそっくりの女の子がいいわ。キョン頑張ってね」

 

 

もう何を言っても聞きそうにないな・・・

 

 

はぁ、やれやれ・・・

 

 

fin

 

 

 

 

 

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最終更新:2020年03月12日 01:29