12月7日、帝国軍は今更ながら、兵力を分散させる愚に気付き、迂回進撃をしていた部隊との再合流を果たした。
「小官は納得できません、別働隊は順調に迂回進撃していました。その途中で中断を余儀なくさせられ、戦わずして転進するなど、武人として最も恥とする所、
納得の行く説明を賜りたい。総旗艦での会議で、カルテンボルン中将が不満を述べ、他の提督達も賛意を示した。
ミュッケンベルガー艦隊を失ったとはいえ、未だ総兵力は敵を上回り、その戦意は高かった。これに対し、同盟軍も再集結し最終決戦に、備える準備をしていた。
しかし、同盟軍の内部分裂は、不可避の深刻なものになっていた。会議に出席しても、国木田は最早一切口を開こうとはせず、ハルヒも彼を無視していた。
だが、ハルヒの態度に立腹していたのは彼だけではなかった。SOS団副団長たる、古泉一樹が普段の温厚さとは、かけ離れた態度で糾弾したのである。
「何もかもが、涼宮さんの手の中だと言うわけですか!最高司令官だけで戦争が出来ると思うなら、1人で帝国軍を全員殴り倒してみれば良いのです」。
苦戦の連続で感情が激した、古泉はその様な発言まで口にした。SOS団マフィアの面々は、軍人としては有能で、私人としても決して劣悪ではなかった。
だが、集団としての生命力が、誰も気付かぬうちに衰弱していたのかもしれない。第2次ティアマト会戦に先立ち、これまで厚い友情と、信頼で結ばれていた
少壮気鋭の提督達が、我を張り、必要以上に対立意識を抱え込んでいた。次に、谷口提督も不満を口にした。
「涼宮、お前の人選ミスだぞ。やる気の無い鶴屋さんを前線に回すから、古泉も国木田も苦戦を強いられる」。
「谷口、結果的に別働隊との交戦に至らなかっただけで、抑えの重要性には変わりは無いぞ」。
「だが、俺の艦隊が遊兵になった事実には変わりは無いさ。今回俺は勝つ順番なんだぜ、もったいないとは思わんか」。
「解ったわよ、次はあんたに先鋒を任せるわ。言ったからには、戦果を挙げてもらうわよ」。
補給を終えた両軍が前進を開始したのは、12月8日に入ってからである。まずは第4艦隊が前進した、谷口提督の勝利のジンクスは伊達ではなかった。
僅か15分間の戦闘で、帝国軍の密集陣形を綺麗に切り裂く事に成功したのである。「ナイフでチーズを切る様に」とは、同盟軍の公式記録に残る表現である。
「何をしているか。突出してきた叛徒どもを左右から挟撃せよ」。「全艦90度回頭」。迂闊な命令に従ったカイト提督の艦隊は、たちまち袋叩きにされる事になる。
「今です、突撃を」。第5艦隊の側面攻撃を受け、たちまち大混乱に陥る帝国軍。
「戦艦バーリ撃沈、副司令官パルヴィッツ提督戦死」。「おのれ、叛徒ども許さん。再回頭して反撃」。しばしの砲撃戦に押され、後退を開始するカイト艦隊。
「勝てそうですが、問題は勝ち続けられるかどうかですね。」「おいビュコック、戦闘は勝っているのか」?「知るかよ、それより無駄玉撃つなよ」。
「戦艦クード撃沈」。「閣下、本艦をお下げください。危険です」。「ばかな!奴らに後ろを見せられるか」!
「しかし、副司令官が戦死されている以上、提督にまで万一の事があれば、戦線が崩壊します。ここはお引きください」。しかしすでに手遅れであった。
直撃弾を喰らい、カイト中将は一命は取り留めた物の重傷であり、この方面の帝国軍は、参謀長の懸念通り、統制を失い敗走した。ここで同盟軍が、組織的な全面追撃に出ていれば、
戦局は一気に決していただろう。しかし、第5艦隊の受けた損害も大きく、また疲労の蓄積も著しく追撃は不可能であった。
「一旦後退します、距離を取って下さい」。谷口と古泉の連携は、局地戦では大きな戦果を挙げた。しかし全体では一進一退を繰り返し、8日から9日に掛けて、
戦局は完全に膠着し、帝国と同盟、どちらが有利であるか容易には判断できない状況にあった。ハルヒは新たな計画を立てる。
「とにかく、帝国軍は迂回進撃に固執してくるわ。これは既成事実よ。その際我が軍は敵の動きを追尾しつつ、最も効果的な時点で、別働隊が急進して敵の本隊を
直撃するの。この別働隊は各艦隊から、艦隊を再編成してあたしが直接指揮を執るわ。そこで有希、あんたの第8艦隊から3千隻を割いて、総司令部の直属にするわ」。
「無理」。長門からの返答は簡潔極まりなかった。相変わらずだと思うキョンであった。
「何故、何故無理なのよ」?「貴女が一番良く解っている筈。ここで3千隻も割いたら、私の艦隊の前線が維持できなくなる」。
「3千隻が無いと、全軍が崩壊するのよ。そうなった時、有希あんたが責任取るって言うの」?「責任を取る取らないは別にして、その様な要求をする理由を教えて」。
「説明しないと解らないの?あんたとは、中学以来何年の付き合いだと思っているのよ。それくらい解らないの」。「23年と6ヶ月」。
短いが苛烈な応酬の末、ようやく有希は、3千隻の艦艇を割く事に同意した。ハルヒの予想通り、帝国軍膠着状態の打破を、当初の迂回進撃に求めた。
全軍を持って時計回りに迂回進撃を試み、あわよくば同盟軍を、半包囲の体制に置こうというものだった。だがこれを予測していた同盟軍は、帝国軍の動きに応じ、
これを追尾する体制を取った。それはあたかも、2匹の巨竜が互いの尾に喰らい付こうと、回り合う姿にも似ていた。この状態のまま戦闘は12月10日に突入し、
更に膠着した状態が続いた。多大な緊張と消耗に耐えられなくなった、激発同然の攻撃に出たのは、帝国軍カルテンボルン艦隊であった。
同艦隊は、驚くべき速力と、火力の投入により同盟軍を蹴散らしにかかった。「閣下、カルテンボルン艦隊が見事な攻勢に出ました」。
「愚かな、救援に行くぞ」。帝国軍の決死の攻勢は、勇気と人命の悲劇的な浪費でしかなかった。帝国軍は反撃の砲火に耐え、F4宙域を占領したが、
そこで行動終末点に達してしまったのである。秒単位の空白を谷口は見逃さなかった。「全艦、反転して砲撃」。
その鮮やかさは、敵味方を瞠目させた。「谷口、やるわね」。カルテンボルン艦隊旗艦「ダグザ」爆沈。
「やはり間に合わなかったか、味方を救出する。急げ」!シュタイエルマルクは艦隊を40の小集団に分け、極めて有機的な援護と反転後退のシステムを、
作り上げると、同盟軍の攻勢からついには無傷のまま離脱に成功させるかに思えた。しかし、底に冷静無比な長門有希が側面攻撃を仕掛けてきた。
「逃がさない、撃って」。側面を攻撃された帝国軍は、一方的な攻撃に晒され、更には高速巡航艦の集団突撃が反復され、帝国軍は2千隻余りを失い敗走する。
この様にSOS団マフィアの面々は、艦隊司令官としていずれも有能有為である事を証明したのである。だが11日16時40分戦況は一気に逆転する。
帝国軍主力艦隊が、不完全ながらも迂回進撃を果たし、第5、第8艦隊の後方に現れ、猛撃を浴びせてきたのである。それはこれまでに無い苛烈さであった。
「突破を許してはなりません。ここで突破を許せば全戦線が崩壊します。いや既に半ば崩壊しつつありますね」。
「現在の戦力比は、1対2で私たちの劣勢。2倍の敵の前には、小さな戦術など生かす余地は無い」。
第4艦隊も急行し、帝国軍の側面に猛攻を加えたが、たちまち10倍する火力で報復された。「涼宮の奴は何をやっていやがる」!
「涼宮さんは未だですか」!「涼宮ハルヒが来るか、死神が来るか、この勝負は見物」。同盟軍の各指揮官の神経は、焼ききれる寸前であった。
ここで大攻勢に出なければ、帝国軍は迂回進撃を成功させ、同盟軍は本国への退路を絶たれる。それが判るから焦りもする。
「総司令官が来るまで、戦線を維持するにょろ。皆頑張って」。「護衛艦被弾」!「回」・・・・画面を見ていた谷口は口笛を吹いた。ついに来たのである。
「味方です。総司令官の部隊が来ました」。18時10分、戦局は再び逆転する。帝国軍は前後から挟撃される事になった。
ハルヒの砲撃方向の選択は正しく神業であった。帝国軍の左側面を削ぎ取る様に急進し、途中で方向を変え、斜め様に、帝国軍の中央を突破し、
帝国軍を一気に壊乱の淵に叩き込んだのである。「帝国軍、戦線崩壊しつつあり」。「どう、キョン」。しかしある事に気付くハルヒ、
「鶴屋さんはどうしたの」?「既に戦死・・・・・護衛艦の爆発に巻き込まれたと、先ほど副司令官のコッパーフィールド少将から連絡が」。ハルヒは驚愕し、
「そう、鶴屋さんに元帥昇進の先を越されたわね。第9艦隊は後退させて再編成させて」。
明るい鶴屋さんの戦死に、同盟軍は涙したが、帝国軍の涙はその3倍に及んでもなお足りなかった。涼宮ハルヒが心血を注いで構築した、重層的な罠の中で、
手負いの猛獣となりのた打ち回った。最早秩序も隊形も無く、戦闘ではなく虐殺であった。
勝敗が完全に決したのは、12月11日18時50分前後の事とされる。僅か40分の戦闘で、帝国軍は、60名の将官の戦死者を出したのである。
コーゼル大将は、この当時としては珍しい、平民出身の大将であり、実績も人望も大きかった。彼は善戦したが、遂に限界が来た。
古泉提督と長門提督、どちらか片方だけなら、百戦錬磨のコーゼル大将は支え切れただろう。しかし両者からの同時攻撃を受け、最早成す術は無かった。
18時35分「ディアーリウム」は3本の直撃弾を受け、コーゼル大将以下司令部はほぼ全滅し、残余は投降して同盟軍に救助された。
ほぼ同時刻に壮年の宿将である、シュリーター大将も戦死し、この戦いによる損失を回復する為に、10年もの年月が必要となる。これ以降人材確保の為、下級貴族や平民にも
昇進の道が開け、ミッターマイヤー、ロイエンタール、ワーレン、ビッテンフェルト等の、次代の帝国軍を担う、若き提督たちが登場する下地となる。
更には、ラインハルト・フォン・ローエングラムの、急激な台頭を許す要因にもなったと言う意見もあり、「長期的に見れば、戦術的には同盟軍の完全勝利だが、
戦略的には帝国軍の勝利」だと主張する歴史家も多い。やはり、涼宮ハルヒは戦術家なのかもしれない、
後世において評価は、ヤン・ウェンリーの方が、遥かに高い点から見てもそれが伺える。
最後まで、戦場に留まり、味方の脱出を援護してきた、シュタイエルマルク艦隊であったが、18時52分に遂に抗戦を断念して、戦場からの離脱を開始した。
その直後、ハルヒの旗艦「ハードラック」は、3隻の巡航艦と6隻の駆逐艦に守られ、主戦場から前進を開始した。なお孤立した敵艦が、散発的な攻撃を
して来たので、直衛の巡航艦が、僅かに旗艦を離れて応戦を開始した。正に、その瞬間であった。流れ弾の姿をした運命が、「ハードラック」の艦体中央右舷右下
直撃したのである。直後2次爆発が起き、破片がハルヒを直撃したのである。
「キョン、早く軍医を呼んで、皆にみっともない所を見せられないわ」。直ぐに軍医が駆けつけたが、出来た事は死亡時刻を確認する事だけであった。
死因は腹部裂傷による出血性ショック死、享年35歳であった。
「ふう、長門さん僕達は勝ったのでしょうか」?「私たちは残り、帝国軍は去った。一般的にはこれを勝利と呼ぶはず」。
そこへ別の通信が割り込み、SOS団マフィアの面々は、彼らのリーダーが永遠に失われた事を知ったのである。
短い時間ではあったが、長門も驚愕の表情を浮かべていた。私が、長門のその様な表情を見たのはそれが初めてだった。
大勝利を挙げた同盟軍ではあったが、勝利の祝杯を上げる事も無く、重く苦い沈黙を浮かべながら、帰途についた。
数時間後、「ハードラック」は損傷著しいので放棄され、キョン以下の生存者と、ハルヒの遺体は別の艦に移乗していた。キョンは艦橋で憂鬱な思いをしていた。
「朝比奈さん、これも既成事項だと言いたいのですか」?天使のような朝比奈みくるは、彼らが士官学校へ入学した、2ヶ月ほど後に、姿を消した。
「親の仕事の都合で、遠くの惑星に行く」。と言う名目であった。ハルヒや鶴屋さんの手で、送別会も行われ、彼女は未来に帰っていった。
それ以降何度かはビデオメールが来た。大人の朝比奈さんの訪問を受けた事もある。しかし、士官学校を卒業した後は、一度も会ってはいない。
最早、涼宮ハルヒは用済みと言う事なのだろうか、とキョンは恐ろしい想像をする。その恐ろしい考えを頭から追い出そうとしたが、出来なかった。
本当に信用すべきは、あのニヒルな未来人「藤原」の方だったのかもしれない。古泉も、「朝比奈みくるの外見や仕草に騙されないで下さい」。
と言っていた気がする。それは正しかったのかも知れない。もし藤原を信用していたら、今もハルヒは熱帯の太陽のような笑顔を浮かべて、
居てくれたのだろうか?キョンは、当面朝比奈さんに会いたくは無かった。今会えば、朝比奈さんを殴りつけてしまうかも知れない。
しかし、キョンは確信的予感があった。最早、今後二度と彼女を含む未来人が自分の前に、姿を現すことは無いのだと。事実その通りだった。
「閣下・・・・ひっ」!入室してきた通信士官は、たじろいで後退した。
それほどまでに、今のキョンには近寄り難い雰囲気があったのである。「帝国軍より通信が入りました」。
「ふん、ざまあみろとでも言って来たのか」!「違います。シュタイエルマルク中将の名で、丁重な弔電が入電しました」。
「そうなのか、すまん取り乱してしまった。少し考え事をしていた。気持ちの整理が付いたら見るよ」。
「閣下も、少しお休みください。しかし、堂々と弔電を送ってくるとは思えませんでした」。
「そうだな、帝国軍にも高潔な人物はいると言う事だな。しかし、シュタイエルマルク中将は、恐らく軍中枢からは白眼視されるだろうな」。
キョンの予想通り、シュタイエルマルク中将は、軍内部から忌避され、最終的な階級は上級大将で、役職も軍務省次官に留まる。
孤高を保ち、会戦から25年後に穏やかな終末を向かえる事になる。彼の戦術理論の著作は、高い評価を受け、多くの次代の提督たちが範とする所となる。
彼に元帥号が贈られるのは、会戦から55年後、ローエングラム王朝が成立した後の事となる。
年が明けて、1月8日盛大な国葬が営まれ、ハルヒ提督には元帥号が贈られた。死後の事とは言え、同盟軍史上最年少の元帥である。
ダゴンの英雄2名ですら、元帥に叙されたのは、40歳を過ぎてからである。だが、この記録は後に当時32歳のヤン・ウェンリーに書き換えられる事となる。
彼は、生前贈与であり、結局涼宮ハルヒは「後世の評価」「実績」「記録」を全て書き換えられる事になる。最もヤン提督はそれを望んではいなかったが。
ハルヒの名声を不朽のものとする為に、同盟政府は軽い政治的配慮を行っている。同じく戦死した鶴屋提督は、死後直ぐの昇進で大将に留められ、
元帥号が贈られるのは、死後7年も経過した後となる。この様な配慮は、英雄信仰を増すと同時に、反感を抱かせる原因になったのかも知れない、とヤンは思った。
「貴重な、お話をありがとうございました」。「回想録に書いた事ばかりで、新しい発見は無かったのではないかね」?
「いや生のお話を聞けた事は、有意義だと思います」。「そうかな、こんな話でよければ、いつでも聞きに来てくれ」。ヤンは敬礼をして去るが、ミヨキチが門の所まで付いて来た。
「涼宮ハルヒ提督の事を調べているの」?「ええ、そんな所です。キョン提督とは親友だったのでは」?
「涼宮ハルヒが祖父の親友?あの女は、祖父の武勲を盗んだのよ!盗賊にもいろんな種類がいるわ。国を盗む奴もいれば、他人の妻を盗む奴もいる。
その中で、一番最低なのは他人の功績を盗む奴よ、そう思わない」。
「賛成です、一般論としては、ハルヒ提督は貴女の意見に反論できませんよね。で私としては、なるべく小さな声を拾い集めておきたいのですが」。
「ずいぶん、おためごかしの口を聞く癖があるのね」。「すみません」。珍しく赤面するヤン。
「別に謝る必要は無いわ。私が酷い事を言っているのだから、貴方は鼻で笑っていれば良いのよ。無責任な意見に耳を傾けていたら、脳細胞が破裂してしまうわよ。」
「気を付ける事にします。ところで、貴女が仰る事には、根拠がおありですか」?「仕事なんでしょ、自分で調べれば。憲兵さん」。
「せめて探偵さんと呼んでくれないかなあ」。閉じられた門に向かい、不毛な感想を述べるヤンであった。数日後、統合作戦本部のオフィス
ハルヒ提督の死に、謀殺の可能性が有るとしたらどの辺りだろう。旗艦「ハードラック」の正確な位置が敵に知られていた、と言う事だろうか?
同盟軍の情報が敵に漏れていたのだろうか?それとも、意図的に誰かが漏らしたのだろうか。政府には、ハルヒとSOS団マフィアに対し、不満と不信があった。
ルドルフが銀河帝国を簒奪した様に、SOS団マフィアが軍閥化して、軍事力と市民の多大な人気を背景にして、軍事独裁国家を築くのではないかと言う不安。
しかし、第2次ティアマト会戦で同盟が敗れるのは困る。この2重立反を解消するには、同盟軍が勝利して、ハルヒが戦死すれば良い、と言う事になる。
そして結果は正しくその通りになったのである。偶然か必然かは別にして。
「結局、ハードラックへの直撃弾は、何処から飛んで来たかは、今でも不明なんだよな。あの時は、既に帝国軍は壊滅していたから、冷静に狙い撃つというのも、
難しいだろうなあ。やはり流れ弾なのかな。味方からの誤射の可能性も有るが、そんな間抜けはいないだろうし、目撃者もいない・・・まるで見えない敵にでもやられたみたいだ。
未来人なら、正確な旗艦の位置を知っていてもおかしくないけれどな。なんてね」。
「それにしても、一連の発端となった、ハルヒ提督の死は戦死ではなく、謀殺だという投書は誰が書いたのだろう。」
ヤンがキャゼルヌ中佐から、聞いたところによると、封筒には阪中さんの名前が有ったらしい。
彼女は、SOS団マフィアとは共通の友人で、一緒に旅行へ行ったりとかもしていたらしい、確かに彼女なら、涼宮ハルヒ提督の死に疑問を持ってもおかしくはない。
しかし、9年前に病死しているので除外された。次に浮かんだのは、キョン提督の妹さんである。彼女も、SOS団とは密接な関係にあり、
ハルヒ提督や鶴屋提督に可愛がられていたらしい。しかし、半年前の3月に病死している。投書が始まったのは4月頃からである。よって除外される。
ヤンが、考えていると、キャゼルヌ中佐が慌てた様子で入室してきた。先輩には珍しい慌て様だとヤンは感じた。
「ヤン、象牙の塔を騒がせて悪いが、ちょっとしたニュースが入った」。
「どうしたんです、誰か死んだのですか」?無論ヤンは冗談で言ったのである。しかし、
「キョン退役大将が亡くなられた。今日の朝、遺体が発見されたそうだ」。ヤンは仰天した、先日会ったばかりである。
「それも病死ではないらしい。自殺か事故か、あるいは他殺の可能性も有ると言う事らしい。ちょっとばかり妙な事になったな」。
予想もしてしなかった事態に、ヤンは愕然としていた。宇宙暦788年10月6日の事である。

 


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