五 章



Illustration:どこここ

 



 
 これからやろうとするやつは誰もが未経験なわけで、結婚の経験が豊富だとかいう人はあんまり幸せでもなさそうなのだが、未経験な人のためにブライダルプロデューサーとかプランナーなどという、ゼロからサポートしてくれる職業があるらしい。結婚専門のプランニング会社ってのもあるのだが、ホテルやブライダルホールにも専属のプランナーがいて、招待状のデザイン、式場の手配から披露宴のシナリオ、スピーチ原稿まで手取り足取り面倒を見てくれる。結婚するカップルを集めて合同の式場ツアーなんかも催されているらしい。
 
 ホテルやブライダルホールの中にミニ教会があったりミニ祭壇があったりして、教会や神社に行かなくてもその場でやってくれるようだ。まあ本格的にやりたい人は現地に出向いて神様の前でやるのがいいんだろうが。
 宗教色をなくした人前結婚式ってのも多くて、広々とした芝生の上でやるとかプールなんかでやるカップルもいるらしい。むかし見た映画で一面の芝生が広がる豪華な家の庭に白い椅子を並べてやってるシーンがあったが、あれはやってみたい気もする。
 
 俺も早いとこ披露宴の場所決めとかないとなぁなどとため息混じりにWebサイトを見ていると、今まで居眠りをしていたハルヒがガバと顔を上げて尋ねた。
「そういえばキョン、あんた結納どうすんの?」
俺としちゃ、もうそんな形式ばかりになった日本古来の儀式なんてやめちまっていいと思うんだが。
「親同士の顔合わせだけでいいだろ」
「あんた、めんどくさいからってまた手抜きしようとしてるわね」
「結納なんてもともとお武家様とか由緒ある商家でやってたもんだろ。庶民がマネしてやってもお飾りにすぎんと思うんだがな」
「そういう問題じゃないでしょ!」
ハルヒがまじで怒っている。
 
「まあ長門がやりたいって言うんなら考えるが」
「分かってないわね。結婚は誓いのキスだけじゃないのよ。二人が出会って好きになってプロポーズして、双方の親に紹介して指輪を選んでウエディングドレスをあつらえて、モチベーションを上げていくすべての過程が結婚なのよ。遠足は家に帰るまでが遠足だって言われたでしょ」
「お前にしては分かりやすいな」
「あったりまえでしょ。女は生まれたときからこの日を夢見て生きてるんだから。言っとくけど、結婚した後は女のほうが大変なんだからね」
「まあ結婚するまでは男が大変なのは分かる」
男の俺はいまいち真剣味が足りないようで、ハルヒはため息をついた。
「いい?一生に一度しかないんだから、やれることは全部やんなさい」
お前まさか、スモークを炊いたステージで新郎新婦の乗ったゴンドラから降りて来いなんて言わないだろうな。あれは恥ずかしいぞ。
「あんなのはただのお芝居よ。結納ってのはね、昔は家と家が契りを結ぶ大事な儀式だったのよ。不精してないでちゃんとやんなさいよね、ケジメよケジメ」
またそれか。日ごろが大雑把かと思えばこういう妙なところでまめなんだからなこいつは。
 
「長門、結納どうする?」
横でずっと話を聞いていたのだが、長門に改めて問い直した。
「……あなたに、任せる」
式まであんまり時間がないからなあ。略式でも結納品の手配とか手順を覚えたりもあるしな。
「……伝統には興味がある」
「そうか。長門がそういうならやってみるか」
正直、長門の晴れ着姿を見てみたい。いや、単純にそれだけの理由なんだが。
 
「古泉、ちょっと相談なんだが」
今度はハルヒに聞かれては困る話なのでまたトイレに呼び出した。
「なんでしょうか」
「ハルヒが結納をやれというんで正式なのをやろうと思うんだが」
「あなたにしては珍しいですね」
「長門も興味あるらしいしな。俺的には男尊女卑の名残っぽくてあんまり気が進まないんだが。あれは嫁さんに準備金を渡すためのもんだろう」
「最近は記念品の交換くらいで済ませるカップルも多いと聞きますね。元々は華族とか士族などで家同士の契約の名残らしいですからね」
「うちは武士でも貴族でもないしな。お前ならどうする?」
「僕はどっちかというと洋風で、家族より本人達が主体のほうが好みですね」
「だよな」
俺だけかと思っていたが、男はなんというか、結婚後の生活のほうに夢膨らませていて、あんまり儀式的なことにはこだわらない気がする。結婚するまでの準備期間が楽しいという女には理解できないらしいのだが。
 
 まあそれはともかくだな。
「新川ならいつでもご用意できますよ」
そんな隣の長屋から猫を借りるみたいに、渋くてダンディな新川さんを表現するな。あまつさえ年上なんだから。
「機関の人は事情を知ってるからいいんだが、ハルヒにどう説明するかだ。結納に出るのは両親と決まってるわけだし、まさか長門の父親が突然出てきましたってのも無理がありすぎると思うんだが」
「難題ですね。新川の面は高校のときすでに割れていますし」
「どうしたもんか。ほかに頼めそうな人はいないだろうか」
「それはもう機関は人材には事欠きませんが、別に新川が父親でなくても養父ってことでもいいんじゃないでしょうか」
「執事のかっこした新川さんが長門の義理の父か。それもかなり無理な設定だとは思うが」
「では叔父ではどうですか」
うーん、マンションの管理人のほうがまだ説得力ある気がするが。落語にもあるだろ、大家さんが仲人で親代わりになるみたいな話。
 
「あのなハルヒ、ちょっと長門のことで話があるんだが」
「なに、有希になんかしたの!?」
なんでそう長門のことになるとムキになるんだこいつは。
「前に長門の親族がどうとかいう話をしたことがあったろ」
「有希が引っ越すかもしれないとかいうあれ?」
「あの親族ってのは実は新川さんなんだ」
「見た目渋くてかっこいい新川先生が有希の親類だったの?実は悪いやつだったのね」
そうか、こいつの記憶では新川さんは臨時の先生だったんだな。
「いや、それは俺の誤解でな。あのときは年端もいかない娘が一人暮らしをしてるのは問題があるだろうってことで行政の児童福祉担当が無理に引っ越させようとしてたらしいんだ」
「問題ってなによ、女の子が一人暮らししちゃいけないっての」
「俺に噛み付くなって。経済的にとか防犯上とか、いろいろと鑑みてのことだろう」
「やっぱりね、お役人ってのは丸いものを四角い枠にはめないと気がすまないのよ。個人の事情なんてお構いなしだわ」
 
「まあそれはいいんだがな。新川さんに長門の後見人というか、まあ親代わりを頼もうと思う」
「あれ?有希の親御さんってエルサルバドルにいるんじゃないの?」
ううっ、確かに長門がそんなことを言ってたような記憶があるっ。ホンジュラスとかエルサルバドルとか、ヒューマノイドはなぜ中南米にこだわるんだと突っ込んだ記憶もあるっ。
「実は、飛行機事故で、」
「ええっ亡くなったの?いつ?」
「高校を出て、すぐくらい」
「なんで黙ってたのよアホキョン!!」
「俺も、最近知った」
俺がロボット並みに棒読みしてるのにハルヒがまったく疑いもしないことが返って悲しいのだが、本当のことを吐けと首を絞められないだけでもマシなのかもしれん。これもいつかはバレるんだろうなあ。嘘で嘘を上塗りしちまってまたハルヒにドヤされる覚悟を今からしなきゃならんとは。
 
 まるで自分の親の訃報を街頭テレビで知ったかのようにハルヒが呆然としているところへ、ドアが音もなく開いて長門が入ってきた。
「ゆ、有希!!もうなんで言ってくれなかったのよ!!」
雨の日の公園を散歩中に段ボール箱で鳴いている捨て猫を見つけた女の子のように、ハルヒはやおら涙目になって長門に抱きついた。こういう不幸な身の上話には徹底的に弱いとみえる。最近のハルヒは映画を見てもチープな恋愛ドラマを見てもよく泣くらしい。気のせいかもしれんが、たぶん古泉と付き合いだしたあたりからだな。もしかして古泉に不幸な作り話を散々聞かされてるとか。
「……なんの、話」
「あんたのご両親が亡くなってたってことをたった今聞いたのよ」
「……」
長門はいったいなにごとが起こったのだという感じで、首をちょこんと傾けて俺を見る。俺は両手を合わせて、スマン長門適当に話を合わせてくれと唇だけ動かして伝えた。
「……そう。両親は五年前、ホンジュラス経由で渡航中に飛行機事故に遭遇。テグシガルパ空港当局者によれば、着陸時に上空を低気圧が通過中で視界不良、滑走路を二百メートルほどオーバーランして大破した」
って長門、その友達にロイター通信の記者がいますみたいな話の合わせ方は逆にあやしいぞ。仮にも不幸な話なんだから少し悲しい表情をしてくれ。
 
「あんたのことはあたしが面倒を見るからね、心配しなくてもいいからねっ」
「待て待てハルヒ、その役は俺だ」
「だめよ社会的責任のある人じゃなきゃ」
「じゃあ俺は無責任男かよ」分かっちゃいるけど言われたくないっと。
「あたしが有希を養女にするわ」
「養子縁組って二十五才以上で結婚してないとできないんじゃなかったか」
突っ込みどころ違うだろ、結婚の話そっちのけでなに言ってんだ俺は。
「じゃあうちの親の養女でもいいわ、あたしの妹ってことにすれば。里帰りはうちの実家に来ればいいじゃない」
まさかそこまで言い出すとは考えていなかった。古泉は右手のグーを左の手のひらにポンと打ちつけ、ナルホドその手がありましたねとうなずいた。無責任に感心してる場合かよ、そんな無茶苦茶な姻戚関係が発生したら俺の周辺の家計図はどうなる。ハルヒが俺の義理の姉になっちまうぞ。ハルヒの尻に敷かれるのは古泉だけで十分だ。これまでずっと俺が座布団代わりに敷かれてきたんだからな。
 
「まあ待て、お前たちには媒酌人を頼もうと思うんだ」
「そ、そうなの?」
媒酌人ってのは披露宴で新郎新婦の両隣に控えている人で、慣習的には夫婦が引き受けるもんなんだが、まあほかに当てがあるわけじゃなし、ハルヒにもなにがしかの役割を与えておかないとなにをしでかすかわからんしな。
「有希、あたしでいいの?」
「……いい。あなたが適任」
「なにより、俺たちが付き合うきっかけを作ったのはお前だからな」
「あ、あたしはそんなことはしてないわよ。キョンがあんまり優柔不断だからケツを蹴ってやっただけじゃない」
真っ赤になりながらそう弁解するハルヒはまんざら悪くもなさそうで、一組の男女の運命を決めた切り札が自分だったことを喜んでいるようだ。
 
「分かったわ、あたしにまっかせなさい。あんたたちの挙式は我がSOS団が責任を持って取り仕切るわ」
おいおい町内のお祭りかなんかと間違ってないか。今までお前のお遊びでやってきたSOS団のイベントとはわけが違うんだぞ、などという心配はすでに時遅しで、ハルヒの目んたまキラキラ度が三百パーセント増量中だ。
「新規事業として我が社はブライダルプランナーをやるわよ!」
うちはイベント会社じゃないんだが、前回のゲームショウで味を占めたらしいな。やれやれ、とうとう色物事業にまで手を染めちまったか。
 
 長門の親代わりを頼むのに、古泉に新川さんを呼び出してもらった。機関の事務所は実は北口駅から近いらしく、喫茶ドリームで待ち合わせた。
「おひさしぶりでございます」
執事姿でない新川さんが濃いグレーのダブルのスーツにステッキを突いてやってきた。俺みたいななで肩が着るとそうでもないのに、こういう肩幅のある人が着るとスリーピースのダブルも映えるんだよなあ。雰囲気がどことなく大手の経営者とか重役っぽい。うちの取締役に欲しいくらいだ。
「お忙しいところお呼びたていたしまして恐縮であります」
育ちが悪いのか付き合ってるやつらが悪いのか、使い慣れない丁寧語に舌を噛み奉りそうな俺である。
「いえいえ、お役に立てて嬉しく存じます」
「……ご足労、謝意を表する」
長門は丁寧的なのか古風的なのかよく分からん挨拶をした。
 
「ええと、このたび、長門有希と婚姻の儀を取り計らうことに相成りまして、」
このまま喋ってたら舌噛んで死んでしまいそうなのでふつうに話すことにした。
「ぜひ新川さんにご協力いただけないかと。長門の個人的な事情はご存じでしょうか」
「はい、伺っております。わたくしども機関はあなたがたのサポートが使命です。どんな役目を仰せつかっても完遂する所存にございます」
やる気満々、任務のためなら一命を賭しても悔いはない勢いの新川さんだ。俺たちみたいなの珍奇な集団にそこまで言っていただけるとはどうも恐縮してしまうのでありますが。
「新川さんに長門の親代わりをやっていただけないかと思っていまして」
「喜んで承ります。どのような背景を持った人物をお望みでしょうか」
「ええと、両親のいない長門を引き取って面倒をみていた叔父の役というところでどうでしょう」
「かしこまりました。設定に合わせた簡単な略歴などをご用意しましょう。キョンさんのご両親とスムーズな会話をするために」
毎度ながら、機関の人のこういうところはすごいなあと思うわけだ。
 
「ええとそれから、これがちょっと厄介なんですが、ハルヒには偽のアリバイを仕込んでありまして」
「伺っております」
新川さんは口ひげを揺らして微笑んだ。
「長門の両親はエルサルバドルにいたことになってまして、で、亡くなったことがつい先日ハルヒにバレて、実は新川さんが血縁だったことが判明した、イマココなわけですが」
「それはまた複雑なイマココでございますな」
「勝手にアリバイの証人に仕立ててしまいまして申し訳ないです」
「いえいえ、長門さんのお身内になれるなら喜んで」
古泉なんかの無責任スマイルとはまったく違う、酸いも辛いも味わった人生観の漂う渋いスマイルを見せる新川さんだった。長門も少し口元を動かして微笑んでいる。
 
 氷の浮かんだコップに口をつけてから新川さんは意外なことを言った。
「ひとつだけ問題がございます。わたくしは実は独身でございましてね。叔父とはいえ祝いの席に出るには夫婦そろっての役のほうがよろしいのではないかと」
「え、そうだったんですか」
「恥ずかしながら、離婚暦がございます」
まれに見るシブメンの新川さんがバツイチだとは知らなかった。なんというかその渋さは苦労したがゆえの哀愁から来ているのかもしれない。
「身の回りが軽い相方がいればよいのですが、あいにくとこればっかりは妥当な人材がおりませんで」
つまり新川さんに歳の近い未亡人か独身女性で、長門の事情を知った上で親代わりとしてあれこれ面倒を見てくれそうな人ってことですか。そんな特殊な身分の人は日本中を探してもいないだろうな。
「片親でもいいんじゃないでしょうか。最近は多いようですし」
「結納に片親だけでは少し寂しい気もいたしますが、長門さんのお気持ちのほどはいかがでしょうか」
「……気持ちだけで嬉しい。贅沢は言わない」
長門は控えめにボソリと答えた。本当は家族に似たものが欲しくて、一度は消えた朝倉を呼び戻したり失踪した姉を数億年も待っていたりしたことを俺は知っている。だからなおのことだ。かりそめでもいいから長門にも身内と呼べるものを作ってやりたい。
 
「お待たせしました」
三人で考え込んでいるところへコーヒーが来た。どうもなじみのある雰囲気がして顔を上げた。
「あれれ喜緑さんじゃないですか。こないだはどうも」
「こんにちは、皆様おそろいで。ホットコーヒー三つですね」
「こんなところでなにやって、」
「もちろんアルバイトですわ」
この喫茶店でもたまにしか見かけないこの人が、日ごろの糧をどうやって得ているのか非常に気になるところだが。
「ええ。ときどきここで雇っていただいています。こちら伝票になります」
お盆を脇に挟んでしずしずとカウンタへ戻っていく喜緑さんを眺めた。
「あの、ちょっと待ってください喜緑さん、」
「はい?」
重要なことを忘れていた。俺の知る限りこの地球上で長門の唯一の関係者がここにいる。長門の身内がひとりもいないなんてとんでもない勘違いじゃないか。新川さんも気がついたようで、これはしたり大事なことを忘れておったわいという感じで眉毛を髭と同じ角度のハの字に曲げている。
 
「ちょっとここへ座って話を聞いていただけませんか」
「あいにくと勤務中ですから……」
「重要な話なんです」
俺は店のマスターにちょっと従業員を借りますという感じで指を刺して合図した。あとで心づけを払っておかんといかんな。
 喜緑さんは俺の向かい側、新川さんの隣に音もなく座った。
「お話とはなんでしょうか」
「じ、実は長門と結婚します」
「そうですか。お二人様、ご婚約おめでとうございます」
思念体の情報網とか話の流れからしてすでに知ってはいたとは思うのだが、喜緑さんは立ち上がって丁寧にお辞儀をした。俺もなんだか条件反射的に立ち上がって何度もハアドウモアリガトウゴザイマスとペコペコしてしまった。
 
「ちょうど新川さんに長門の親代わりをお願いしていたところなんです。突然でまったく申し訳ないんですが喜緑さんに相方をやっていただけないでしょうか」
「まあ……わたしにですか。嬉しいですわ」
喜緑さんはなんというか、ほんとうにそうなれれば幸せなのになという感じで新川さんを見つめてポッと頬を染めてみせた。
「でも、わたしは年齢的には娘さんの世代ですから」
「娘ということではいかがでしょうか」新川さんが言った。「わたくしが長門さんの叔父、喜緑さんがその娘ということで」
「つまりわたしが長門さんの従姉妹ですか」
バツイチの叔父にその娘ってことなら一般的にありそうだな。無理にこじつけて叔父夫婦を用意しなくてもいいわけだ。なんとなくだが、不ぞろいだったパズルのピースがはまりそうな気がする。
「それでいきましょう。意外にもリアリティあっていいですね」
新川さんの渋い顔が苦笑になってしまった。ややリアリティがありすぎたのかもしれない。
 
 長門がひとこと、喜緑さんに向かってつぶやいた。
「……借りができた」
「そんな、水臭いですよ長門さん」
にっこりと笑う喜緑さん。この二人を見ているといつも思う、喜緑さんが姉で長門が妹という設定でこの地上に現れてもよかったんじゃないかと。
「新川さん、喜緑さん、お手数おかけしますがよろしくお願いします」
「……謹んでお願いする」
珍しく長門も深々と頭を下げた。それから二人の出番になりそうな当面の予定を伝えた。
 
 スケジュールと呼べるほどの余裕はまったくない唐突にはじまってすでに進行中の日程だが、まず親同士の顔合わせ、その後で結納、式場の見積もりと披露宴のプラン、招待客のピックアップと招待状の発送、衣装とヘアメイクの準備、ハネムーンの手配、などなど、覚え切れなくて俺でなくてもため息が出そうなくらいやることがある。しかもこれを一カ月以内にこなさないといけないなんて尋常じゃないわな。だから言ったじゃないのというハルヒの声が聞こえてきそうだ。
 
 ロケット打ち上げ計画書の頭から二百ページ分を省略したいくらいの気分なのだが、式と披露宴はハルヒに任せてあるのでその部分は省略するとしよう。はじめての結婚式の仕切りにハルヒがやたらとはりきってるが、あいつに任せたらなにが飛び出てくるか分かったものではないので監視役に古泉をつけて二人で立案しろと言っておいた。ミイラ捕りがミイラになっちまう不安もないのではないのだが。
 
 うちの両親と新川さん喜緑さんを引き合わせるのに適当な場所が思い浮かばなくて、近場の料亭でお座敷をチャージして晩飯にすることにした。自宅に呼んでもよかったんだが、唐突過ぎておふくろがパニくってしまい、なにを着ればいいのか寿司を取ればいいのか中華を取ればいいのかバナナはおやつに入るのかなどと、どうでもいいことでフル回転していたので外に連れ出すことにした。
「キョン、あんたそんなかっこうでいいの?」
「そんなかっこうって、スーツでいいだろ」
「仕事着でしょう、それ」
「いいんだよこれで。向こうは顔見知りなんだから」
とは言うがこれ以外のスーツは持ち合わせていない俺だった。フォーマルなやつをひとつ新調しなくてはな。
「……どうだ」
「あんた、似合ってるわよ」
親父は妙にかしこまってダークスーツなどを着ているありさまだ。まあ初めての挨拶だからあながち間違いではないんだが。
 
 玄関を入って名前を告げると長い廊下の先にある座敷に通された。こないだと同じスーツ姿の新川さんが待っていた。
「お待ちしておりました」
「……は。はじめまして、キョンの父であります」
水を吸った水飲み鳥のように何度も何度も深々と頭を下げていた。見ていてこっちが赤面してしまうが、この世代の挨拶はこれなんだろうな。
「こちらこそ、はじめまして新川と申します。こっちは娘の江美里です」
「お初にお目にかかります。よろしくお願い申し上げます」
喜緑さんは襟が広めのオレンジのワンピースを着ていた。その隣で長門が無表情に座っている。
「は、はいよろしくお願いします。この度はうちの息子が有希さんを見初めたようで、なにとぞよしなに、よしなに。こらキョン、あんたも頭下げなさい」
親父とおふくろはまるで自分が結婚するかのように緊張しっぱなしでペコペコと頭を下げていた。ふつうに食事会なんだからそんなに冷や汗を垂らさなくてもいいのに。ともあれまあ、このギクシャクした雰囲気も酒が入ればなんとかなるだろう。
 
「有希さんにこんなきれいなお従姉妹さんがいらしたなんて知りませんでしたわ」
「有希が親を亡くしてからというものは、ずっと姉がわりの江美里の背中を見て育ったものです」
「それはそれはまあ、ご苦労なさいましたねえ」
「素直で優しく育ったこの子の晴れ姿を両親に見せてやれたらと思うと、まったく不憫でなりません」
「まったくよくできた娘さんですね。キョンにはもったいないお相手だわ」
おふくろはヨヨヨと涙に誘われていた。某国営放送の連ドラにでもありそうな展開だな。
「……いやあ、キョンみたいな息子をこんな美しい娘さんが好いてくださるとは、もうなにも思い残すことはありませんな」
親父は酒が回ってきたらしく饒舌になっている。俺はそろそろ飽きてネクタイを緩め、あと何分くらいここにいればいいだろうかなどと考えていた。おふくろが俺の耳をひっぱって、キョンなに胡坐かいてんのよちゃんと正座しなさい正座と耳打ちした。
「すまん、ちょっとトイレ」
俺は立ち上がりかけたのだが足に力が入らず、みんなの前でゴロンと転んだ。
「キョンなにやってんのあんた!」
おふくろは真っ赤になって怒りあわてて俺の腕を引いて起こした。なんつーか笑いを取ろうとしたわけじゃなくて足がしびれて動かなかっただけなのだが。長門がクスリと笑っている。
 
 新川さんと喜緑さんは終始笑顔を崩さず、たまにお酌をしたりされたり、長門の架空の昔話をしたりしていた。人間の長門だったらそういうエピソードもあったのかもしれないと思えるくらい、デティールに凝っていた。このへんはどうやら古泉の仕込みっぽい気がするな。
 
 俺と親父がホロ酔いになったところで宴はお開きになった。
「……有希さん。出来の悪い息子で申し訳ない」
「……問題ない」
「……親に似てまったくふつつかな息子だが、よろしく面倒みてほしい」
「……承知した」
素直に承知してくれる長門も嬉しいんだが、もともと酒に弱い親父が何度も同じことを言いはじめたので、俺は二人をせかしてさっさと帰ることにした。
 帰りのタクシーの中でおふくろがボソリと言った。
「いい家族ね」
「……そうだな」
即席だが、いい感じの叔父と従姉妹だったと思う。これからは俺が本物の家族になってやらないとな。
 
『やあキョンくん、長門っちと結婚するんだって?』
二日酔いで頭痛のする翌朝に電話がかかってきた。
「あ……どうも、いつもお世話になっております」
『水くっさいなあ、あたしも噛ませておくれよ』
「え、あ、そうですね。お手数おかけします」
冬眠から覚めたと思ったらまだ雪の中だった熊並みに脳の反応が鈍い。えっと、俺はいったい誰と何の話をしてるんだ。
「あのすいません、どなたですか」
 
 聞けば、昨日ハルヒと呑んでいて、俺がとうとう結婚するという話で盛り上がったらしい。人の婚姻をネタに酒を呑むなと言いたいところだが、どこの酒の席でもそれは常だからな。
『それで、結納は終わったのかい?』
「まだ昨日やっと親同士の顔合わせが終わったところなんです」
『じゃあうちの座敷でやんなよ。うちの床の間広いよ、畳二枚分はあるんだから』
「床の間?」
『知らないのかい?古来より結納品は床の間に飾るんっさ』
そいやシキタリについてはまだなにも調べてなかったな。
「じゃあちょっと長門と相談して後ほどお電話入れます」
『あいよっ』
朝から元気のいい人だ。今朝まで呑んでたらしいんだが。
 
 結納結納っと、少し予習しとかないとな。
 結納てのは、嫁さんの両親に今まで娘さんを育ててくれてありがとうという挨拶と、旦那の親から嫁さんへよろしくという挨拶を形式的に表したものだという。実際は衣装やら嫁入り道具やら、いろいろとモノ入りな女のために結婚準備金を渡すための儀式なのだが、地方によって決まりごともシキタリも違うし、いつごろから始まったというはっきりした歴史があるわけでもないらしい。
 
 正式には仲人がすべてを取り仕切るもんで、まず仲人が新郎の家に結納品と目録なんかの書類を取りにゆき、新婦の家に届ける。二人は挙式まで顔を合わせない。今は仲人なしの略式結納ってのが多いらしいが、その場合は新郎が両親と連れ立って新婦の家に挨拶に行くのか。嫁に来てもらうわけだから当然そうなるわな。
 
 結納品は紅白のノシで飾られた品で、五個とか七個とか九個とか、小数点を使わないと二で割り切れないセットで用意する。これが勝男武士(かつおぶし)とか寿留女(するめ)とか子生婦(こんぶ)とか、漢字を習いたての小学生でも使わないような、ダジャレにもほどがあるというかガード下の落書き夜露死苦を上回る勢いの当て字で名前をつけてある。いくらなんでも結美和(ゆびわ)はやりすぎだと思うんだが。
 
 それを寿の文字がでかでかと書かれた箱に入れて大風呂敷に包んで新婦の家までいそいそと運ばにゃならんのだが、今は店頭から直送してくれるらしい。新婦の家に着いたら軽く挨拶をし、床の間を借りると断って飾り付ける。床の間に赤い布を敷いて、松竹梅の模型を飾る。この松竹梅の下に結納金を置くことになっている。指輪はすでに渡してあるわけだから、九品の中でいちばん高価なのはこのプチ盆栽セットってことだな。
 
 飾り付けが終わるとみんなで対面して並び、新郎の親が前の晩に必死で覚えたセリフ「本日はよいお日柄で……」とはじまる。目録を渡すと新婦の親がリストを確認して、受け取りの証書みたいなものを返して一件落着となる。
 
 とても覚え切れんわ。こりゃあ身内でリハーサルやらんといかんな。
「もしもし長門か、俺だ」
『……頭、痛い』
長門よ、お前が二日酔いするなんてガソリンでも飲んだのか。
「鶴屋さんが結納するのに座敷を使えって言ってくれてるんだが」
『……歓迎すべき提案。うちには床の間がない』
「じゃあ鶴屋さんちで場所を借りることにするわ」
『……分かった』
「また後で連絡する」
 
「、ということでした。お願いしてもよろしいでしょうか」
『鶴ちゃんにお任せっ、なあに、あたしはこういう祝い事は好きでね。うちのおやっさんもあたしのリハーサルだと思えばいいっさ』
「まことに唐突なんですが、」
『うちは明日でもいいよ』
いやぁ、こういう即対応してくれる人にはほんとに助かる。
「次の土曜日あたりはご都合いかがでしょうか」
『ほいさ。土曜日ねえ、っと友引か。じゃあ夕方ってことにするさ。いいかなっ』
そいや仏滅とかだめなんだよな。六曜までは気にしてなかった。
「それでお願いします。じゃあ俺は出席者全員に伝えます」
『うちにも毛せんとか風呂敷もあるから、もし足んなかったら使うといいっさ』
「なにからなにまでありがとうございます。そのときはお願いします」
 
 その週末、風呂敷で包んだミカン箱を三つ抱えて鶴屋さんのお屋敷まで車を出した。直接鶴屋さんちに発送してもらってもよかったんだが、妹が結納品を見たいとせがむのでやむなく自宅に配達してもらった。まあ親同士の顔合わせのときに連れて行かなかったんでだいぶスネてたからな。
 
 親父はダークスーツ、おふくろも黒のフォーマルドレスを着ていた。俺はというと、いつものスーツに長門からプレゼントされたネクタイだが。妹はここぞとばかりに新しいドレスをねだり、両親もいろいろとモノ入りで金銭感覚が緩くなっているのか二度返事でOKしてやった。こいつが結婚するときはさぞかし派手なんだろうなあ。娘がひとりでよかった。
 
 鶴屋さんちの前に車を停めて、親父と二人でミカン箱を運ぶ。両親はその屋敷の豪華さに圧倒されて終始無言だった。門から母屋の玄関までがやたら長いんでいったいいつたどり着くのかとキョロキョロしていた。昔の結納は庭の縁側から入ったらしいんだがな。
 
 俺は何度も来ていて手馴れているところを見せようと、玄関の扉を開けて、ちわー結納の品お届けに参りましたぁ、などとジョークを飛ばそうとしていたのだが、最初の「ち」のところで親と同じく無言の行に陥ってしまった。玄関に並んだ靴の数々。いくら鶴屋さんがマリーアントワネット張りの生活をしているとはいえ、この靴の数は多すぎる。急に足の数が増えたのか、にしちゃサイズがまちまちじゃないか、ハイヒールと革靴が並んでるのはどういうアンバランスだ、などとなかなか正しい解答にたどり着かない俺である。
「キョン、おっそいじゃないの、もうみんな待ってるわよ」
「な、なんでお前がここにおるんだ」
「なにいってんの部下の結納には、あら、お父様にお母様。お久しぶりでございます」
なにそのいきなり猫かぶりに豹変する態度は。カメレオンでももう少し時間をかけて変身するもんだぞ。
「あらハルヒちゃんじゃないの、古泉くんは元気?」
「元気元気、もうカラ元気よ」
おふくろとはなぜか気の合うハルヒであるが。まあハルヒの第一声のおかげで両親の緊張が一気にほぐれたことだけは感謝しておこう。
「お父様、相変わらずお元気そうでなによりです」
「……」
親父は顔だけで声もなく笑っていた。
 
 座敷のほうがやたら騒がしい。俺が真顔に戻って座敷の障子を開けると、鶴屋さんを筆頭に、古泉、部長氏、開発部の面々、それから森さんに多丸兄弟がずらりと並んで座っていた。今日は神聖にして荘厳なる儀式だってのになにやってんだこいつらは。古泉がビデオカメラなんか構えてるが、お祭りじゃないっての。あ、来てくれてたんですね朝比奈さん、あなただけは大歓迎ですよ。
 
 二つの和室が敷居で繋がった超広いお座敷で、片方にギャラリー、片方に出演者が座っている。床の間に向かって左側に黒スーツの新川さん、留袖の着物の喜緑さんが座っている。右側に俺の両親と俺が座る。結納の出演者には座布団は敷かないものらしい。
 
 親父が両手をついて頭を下げ、
「床の間をお借りいたします」
寿と書かれたミカン箱を床の間の前に運び、赤い布を敷いた。厚手のフェルトの布なんだが、これが毛せんという。ちゃんと把握してくれている鶴屋さんが、鶴と亀の掛け軸を掛けてくれていた。こういうときは縁起物の掛け軸をかけるのが慣わしらしい。
 箱を開けて、松竹梅のジオラマ、白髪の爺さんと婆さんのフィギュア、熨斗(のし)から柳樽料(やなぎだるりょう)までを丁寧に配置してゆく。
 
 飾り付けが済むと一同がシンと静まり返った。新川さんが隣の部屋から長門を連れてきた。スルスルと裾が床をすべる音がする。
「おおー」
こんなときに大声を上げるなんてマナー違反もいいところだが、みんなが感嘆の声を上げた。はじめて見る、長門の振袖姿だった。濃い紫色の生地に七色の花柄をあしらったきれいな振袖だった。短い髪もうまくまとまっている。ハルヒと鶴屋さんがごにょごにょと内緒話をしているところをみると、この二人が着付けをやったらしい。いや、ご苦労だったな。
 
 長門がしゃなりと座り、喜緑さんが振袖の袂を広がるように整えた。膝の前に扇子を置くのだが、実はこれ相手との間に衝立を置く意味らしい。
「……」
この無言は長門ではなくて、うちの親父が完全に固まっていた。長門の姿を見て脳の思考停止に陥ったようだ。おふくろが肘で突付くとやっと我に帰り、再生ボタンを押されたCDプレイヤーのようにしゃべり始めた。
「オホン。……この度は良いご縁談を賜り誠にありがとうございます。本日は良いお日柄につき、ご婚約の印として結納のご祝儀を持参いたしました。幾ひさしくお納めください」
ほとんど棒読みだったが、おふくろが結納品のリストを書いた目録をふくさに包んで親父に渡し、親父が新川さんに渡す。新川さんが目録を開いて一読し、
「結構な結納の品々、誠にありがとうございます。幾久しくお受けいたします」
新川さん、喜緑さん、長門が手をついてお辞儀をする。
 
 次に、喜緑さんがふくさに包んだ受書を新川さんに渡し、新川さんが親父に渡す。受書ってのは受領書みたいなもんだ。
「結納の受書にございます。お改めください」
親父が中身をチラ見して、
「無事、結納をお納めすることができまして、本日はありがとうございました。今後とも幾ひさしくよろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ、幾ひさしくよろしくお願いいたします」
両者が深々と頭を下げる。
 
 終わりの合図がどれなのか分からず、そのまま無言のままじっとしていた。おふくろががホゥとため息をついたのをきっかけにギャラリーから拍手が沸いた。芝居じゃないってんだが、アンコールも必要か。
 
「キョンくん、よくやったねっ」
なんというか、俺は座っていただけでほとんどなにもしてなくて、途中かなりはしょったりもしたんですが、そう褒められると背中がムズムズします。
「鶴屋さん、お座敷を貸していただいてありがとうございました。親父さんに厚くお礼を言っていたとお伝えください」
「いいってことさぁ、キョンくんと長門っちのためなら、ひと肌でもふた肌でも脱いじゃうからね」
着物の袖を捲り上げてガッツポーズを取る鶴屋さんだった。
 
 鶴屋さんが手でラッパを作って叫んだ。
「さあっみんな、向こうの部屋に酒が並んで待ってるよっ、早いもの勝ちだよ」
そう言うが早いか、ハルヒを先頭に縁側をドタドタと走って全員が消えた。この家にはいったいいくつ客間があるんだろうね。って妹はまだ未成年なのだが。
 
 同じ広さの和室にテーブルがコの字に並べてあり、まるで披露宴かと思えるような料理の品々が並んでいた。まさか仕出しを頼んでくれていたなんて、ずいぶん予算を使わせちまったなあ。
「ちっちっち、これうちで作ったんさ」
それまた手間を取らせちまって、なんというか鶴屋さんには一生頭が上がらない気がする。今日から屋敷に足を向けて寝れないな。
 
 俺は帰りの運転があるんでずっとウーロン茶を飲んでいたのだが、妹はすでに回ったらしく朝比奈さんの膝枕で眠っていた。さぞかしいい夢を見てんだろうね。
「キョンくん、おめでとう。いよいよ結婚するのね」
「ありがとうございます朝比奈さん。よく時間と場所が分かりましたね」
「えへ。スケジュール通りだから」
まあ未来人からしたらすべては時間通りってことだな。
「古式ゆかしい結納の儀式をはじめて見たわ」
「未来ではもう結納はやってないんですか」
「伝統を残そうって人たちがやって……。あっ、これ禁則事項ですね」
朝比奈さん、今なんか情報漏れが。
 
 古泉を見ると酔って大騒ぎをしているハルヒをずっとビデオカメラに収めていた。お前、それ後日なにかに使うつもりだろ。
 みんな腹も膨れて酔いもまわったところだが、まあこれが本番の披露宴ってわけでもないんで適当なところでお開きになり、タクシーを呼んだり迎えが来たりしてそれぞれ帰っていった。
 
 誰もいなくなって静かになった座敷で、うちの親と新川さんが静かに昆布茶を飲みながら鶴屋さんに礼を言っていた。
「鶴屋さんのお嬢さん、とてもいいお屋敷ですね」
「あははっ、でも固定資産税がハンパじゃなくってね。せめてこういうときのためのもんだとあたしは思ってるよ」
「お嬢さんがお屋敷を継がれるんですか」
「そうするっきゃないねえ。あたしはひとりっ娘だから」
「じゃあいいお婿さんを捕まえないといけませんなあ、はっはは」
「いやあ、キョンくんみたいないい男がなかなかいなくってねぇ、あはははっ」
鶴屋さんは真っ赤になって俺のほっぺたをつねった。これ、冗談だよな。
 


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最終更新:2009年05月21日 20:28