よぅ…お前ら、景気はどうだい?俺がここに顔を出すのは初めてだな…
俺?俺ゃ、猫だ。名前は最近、『シャミセン』って付けられた。
これまでは自由気ままに野良やってたんだが、ちょいとした縁で
今は『キョン』とか言う腑抜けた名前の間抜け面な奴に飼われてやっている。
このシャミセンって名前の由来が実に不愉快で
なんでも人間共が使う『三味線』なる楽器に猫の皮が使われているから
俺の名前をシャミセンにしたらしい。
飼われてやってるんだから飯ぐらいは食ってやっても良いが、
さすがに俺の皮とプライドまではやるつもりはねぇぞ。
猫には猫の生き様ってもんがあるからな。

ところで、今、そのキョンの部屋にだな、お嬢ちゃんがやって来ている。
それがハルヒのお嬢ちゃんだ。
実はちょいとした縁ってぇのは俺がよ、街をプラプラ散歩してたら
このハルヒお嬢ちゃんにとっ捕まっちまった訳よ。
で、いきなり映画で主役級。
まぁ、いわゆるスカウトってやつだな。
きっと俺の美しい三毛スタイルがハルヒお嬢ちゃんの
メスとしての本能を射止めちまったんだろう。
俺に抱かれたメス達は罪な奴だと俺の為に涙を流してくれ…
分かる奴には分かっちまうから…
俺のようなオスは言葉で語らずとも背中が雄弁に語っているのさ……
例え、猫背であってもな。 

しかし、人間ってな、不思議なもんで生まれつき賢く出来てる割には
それじゃ飽き足らないらしく、年頃になると頭突き合わせて
更にお勉強しなきゃいかんらしい。
全く、人間ってやつは限度を知らんというか、鎖に縛られちまってんだな。
それ以上、賢くなってどうするんだ?って猫から見りゃ思っちまう。
猫は飯さえ食えりゃ、あとは寝てても何の問題も無い。
ただ俺には分かる。
なんせあのキョンの野郎の普段とは違う落ち着きの無さは尋常じゃねぇ。
猫の俺には匂いで分かっちまうんだ…
さっきからあいつら、互いに興奮して体内で凝縮された濃いフェロモンが
汗腺という汗腺からガンガン放出しまくっている。
意識しまくって心臓の鼓動が相当、早くなっているのも聞こえる。
だが、煮え切らねぇ…。
チラチラ目配せしたり、肌が触れ合わないように微妙な距離を測ったり、
お互いに牽制し合ってばかりでどちらにも動きやしねぇ…
何がやりてぇんだ、こいつら?

良いか、キョン…
闘いを挑まない臆病者にはな、メスも縄張りも守る資格はねぇんだ…
オスってのは愛しのメスを抱いてこそ、生きる資格を得るんだ。
愛ってのはつまり、甘ったるい言葉や小手先のテクニックじゃなくて
オスとメスの互いの本能同士のぶつかり合いなんだよ!!
それはつまり、パッション、情熱!!そして、スパークなんだよ!!
どんなじゃじゃ馬なメスとだってな、オスとメスが一つになって
一緒に本能でぶつかり合う火花を散らせば、途端に愛と官能の旋律を奏でる
素直な楽器に変貌しちまうのさ…。
そうか…お前はまだそこらへんが分かってないのかもな…
もしそれが分からないってんなら…
良いか?よく見とけ、キョン…今、俺がその手本を見せてやる!! 

「キャ!!ちょっと、シャミセン!!スカートの中に潜り込まないの!!」
よく見てろよ、キョン!!まずはここにだな、こう身体をねじ込ませて…
「いやん!!コラッ♪くすぐったいから止めなさ~い、シャミセン!!」
そうするとほ~ら…ハルヒお嬢ちゃんのフェロモンが更に溢れ出してきただろ?
「あぁん…もぅ…もぞもぞ動かないでよ…シャミセン!!」
そして、こうするとどんなメスでも本能で大人しくなるのさ…
しかし、ここで変化を加えて激しく…
「ヤダッ!!シャミセン!!スカートの中で暴れちゃ駄目!!」
ここで猫舌といわれる繊細で冷たい舌先でハルヒお嬢ちゃんを舐め上げると…
「駄目だってば、シャミセン!!くすぐったいからペロペロしないの!!」
そして、このまま…ん???おい、何しやがる!?キョン!!おい、コラッ!!
「一体、何してやがる?このセクハラ猫が…」
何がセクハラだ!?お前がちんたらやってっから俺が色々と教えてやろうと…
「全く…お前は勉強の邪魔しに来たのか?シャミセン」
勉強はこれからだ!!まだまだこれからが本番だろうが!!
「もぅ…シャミセンったら…ペットは飼い主に似るって言うけど
このHなシャミセンは一体、誰に似たのかしら?ねぇ~…キョン?」
「少なくとも俺じゃあ、ない!!」
誰がこんなキョンみたいな腑抜けたオスに似るかってんだ!!
「悪戯好きの悪い子ね!シャミセン♪」
お前もフェロモンたっぷりでオスを引き寄せる悪いメスだぜ、ハルヒのお嬢ちゃんよ… 

「喉渇いたわね。キョン、ちょっと休憩入れましょ?
あたし、100%のりんごジュースで良いわ。
なければ他のでも良いけど、グレープフルーツは駄目」
俺は猫用ミルクをストレートで頼む。
「そうだな、ちょっと休憩するか」
「じゃあ、あたしがシャミセン預かっとくわよ」
なんだい?…キョン抜きで俺達だけで愛の営みをしようってのかい?
よし、そういう事なら…ほら、さっさとミルク取りに行けってんだ、キョン!! 

「シャミセン、毛がふわふわね。柔らか~い♪」
ペロッ!!
「キャッ♪もぅ~…ほっぺたペロペロしないの!!」
肉球はないが、ハルヒちゃんの手も柔らかいな…特別に指を甘噛みしてやるよ。
「あら?甘噛みしてきたわ。意外と甘えん坊さんなのね」
はむはむ…感じるかい?ハルヒお嬢ちゃんよ…。
「あたしにもシャミセンの肉球、触らせて♪」
あぁん…いやん…駄目…そこは、そこは弱いから…肉球は…
あっ…そんな…そんなソフトにやられると…感じて…
くわっ!!いかんいかん…危うくハルヒのお嬢ちゃんに手玉に取られる所だったぜ。
俺の弱い所をピンポイントで攻めてくるなんざ、さすがお嬢ちゃん。
やはり良いメスだぜ…キョンにも、もうちったぁ甲斐性があればな。
「でも、こうやって見ると猫耳萌えってのも分からないでもないわね」
良い耳してるだろ?よし!!ご褒美にお嬢ちゃんに俺の匂いを付けてやろう!!
さぁ、顔を擦り寄せろ。俺だけのメスにしてやるぜ…
「尻尾も柔らかいわね~♪」
あぁん…だから駄目だってば…そこも、そこも弱いから…尻尾は…
そんなに激しくしちゃいやん…
ぎゃふ!!ハルヒお嬢ちゃんの攻撃は激し過ぎるぜ…
キョンも色々と大変だろうな…。
尻尾巻き付けてやろう。愛を示してやらないとな。 

猫パンチ!プニ。猫パンチ!ムニムニ。猫パンチ!プヨプヨ。

「おい、ハルヒ。何やってんだ?」
お、キョン。ミルク持ってきたか?
「あたしは何もやってないわよ!
さっきからずっとシャミセンがあたしの胸ばっかり猫パンチしてくるのよね」
猫パンチ!ポヨ~ン。猫パンチ!プルル~ン。猫パンチ!ポヨヨ~ン。
「な、な!いや、その…なんだ…」
フッフッ…悪ぃな、キョン。
ハルヒお嬢ちゃんのおっぱいは俺が先に頂いちまったぜ。
「何よ?」
おいおい、キョン。顔が真っ赤だぜ。嫉妬すんなよ、それとも照れてんのか?
「いや、何と言うか…見た目としてそれは色々とまずい…」
キョンみたいな発情期真っ盛りのオスにゃ、ちと刺激が強過ぎるか? 

「何?あんた、何考えてんのよ?やらしいわね…エロキョン!!」
エロキョン!!
「エ、エロとかじゃなくてだな!一応、俺も健全なる男子高校生である訳で…
それでお前も見た目は健康なる女子高生であって…それが、その…つまり…」
妄想真っ盛りで二人っきりだともう我慢出来ませんって事だな?
「変態……何?いつもあたしの事見て変な妄想とかしてんじゃないわよね!?」
おぅよ。こいつは結構な変態だと思うぞ。
「しとらん!!」
やっちゃえよ、やっちゃいなよ。
「雑用係の分際で、もし、この団長たるあたしに指一本でも触れてご覧なさい!!
大声出すからね!!ボコボコに殴って蹴り入れてやるんだから!!」
お嬢ちゃんは綺麗な良い声で鳴きそうだもんな!!
「あと、全裸で四つん這いにさせて『地底人はどこだ~?』って叫びながら
学校三周させるわよ!!」
全裸で四つん這いになって学校三周なんて楽勝だな。
俺はいつもやってるようなもんだ。
それにしてもドSだな、お嬢ちゃん。
キョンはそういうプレイがお好みなのか?
「何もせん!!さすがにそれは勘弁願いたい」
本当はしたいんだろ?…素直になれよ、キョン。
「まっ!あんたにそんな度胸があるとは思えないからね!」
ヘタレだからな、キョンは。お嬢ちゃんからいかないと駄目かもしれねぇぜ。
「度胸とかの問題じゃないだろ?全く…」
ただ、お嬢ちゃんもこれで意外と結構、奥手だからな…。
「ご主人様は変態だ、ねぇ~?シャミセン♪」
猫パンチ!猫パンチ!猫パンチ! 

おい!!てめぇ、キョン!!俺を部屋から追い出すとは一体全体、どういう了見だ!!
俺抜きでお前らだけでしけこもうってのか!?許さんぞ、コンニャロー!!
ドア引っ掻いてやる!!いっぱい傷つけてやる!!
「ねぇ?キョン。外でシャミセンが暴れてるわよ」
ニャー!!!
「放っとけ!放っとけ!全く…
シャミセンに試験勉強の邪魔されて今度、赤点でも取ろうもんなら
俺の高校生活は真っ暗闇だ」
くそ…どうあっても開ける気はないらしいな…
だがな、ハンターとしての猫の能力、舐めんなよ!!
獲物を捉えるには押して駄目なら引いてみろ、だ…
「静かになったわ。シャミセン、どっか行っちゃったのね」
………。 

「あぁ、そうだな。俺ちょっと、トイレ行ってくる」
チャンス…
「あっ!!シャミセン!!」
ふりゃ!!潜入成功。
「全くこいつは…」
「まぁ、いいじゃない、キョン。あたしが面倒見とくわ」
ありがとよ、お嬢ちゃん。
「隠れて隙をうかがってたのね、さすが猫だわ」
そんなに褒めるなよ、ハルヒのお嬢ちゃん。
なんだかキョンがうるせぇからしばらくは
お嬢ちゃんの膝枕で大人しく寝とくよ、やれやれ…。
「やれやれ…シャミセンの悪戯好きにも困ったもんだ」
猫だからな。
「これくらい大人しかったら邪魔にはならないから大丈夫よ。
ほら、キョン!!あんたはさっさとあたし特製のテキスト進める!!」
ハルヒのお嬢ちゃんは膝枕は柔らかいし、メスの匂いは堪らんし、
撫で方も上手だし、言う事無しだな。最高の寝心地だ…。 

「ふわぁぁあ~~……なんだかシャミセン見てたらあたしまで眠くなってきたわ…」
「相変わらず、余裕だな」
「あんたと違って普段からの積み重ねがあんのよ」
「ぐっ…それには文句は言えん…」
「ちょっと昼寝するわ、キョン。ベッド貸しなさい」
うぉっと!!寝てる時にいきなり立たれるとびっくりするぜ。
「ベッドって…おい!!俺のベッドかよ!?」
「良いじゃないのよ、減るもんじゃなしに…」
そうだそうだ。俺も邪魔するぜ、ハルヒのお嬢ちゃん。
「あら?あんたも一緒のお昼寝したいの?ほら!隣においで、シャミセン♪」
添い寝してやるよ。
「わぁ~…シャミセン、柔らかくて気持ちいい~♪暖かい♪」
そうだろ?お嬢ちゃんも良いメスの匂いだぜ。
「絵面としては実に最高なんだがな…」
「何か言った?」
「いや、別に…」
「なかなか良い寝心地ね、この布団。あんたが朝、駄目な理由が分かる気がするわ」
朝のキョンは死んで腐った魚みたいな目してるからな。
「俺が朝弱いのは低血圧気味なだけだ」
「おやすみ~♪」
おやすみ… 

ハルヒとシャミセンが俺のベッドで寝息を立てている。
勉強しなくても余裕と言った風情のハルヒに忌々しい想いと共に
欲望滾る男子高校生には実に堪らん最高の絵面とシチュエーションが
目の前に転がっている。頼むから起きてくれ!!ハルヒ!!
猫を抱きかかえて昼寝する美少女なんて素晴らしいものを目の前に出されると
試験勉強どころじゃない!!全く集中出来ん!!
そんな俺の想いとは裏腹にハルヒはシャミセンを抱き枕にして
安らかな寝息を立て穏やかな寝顔でスヤスヤと昼寝している…忌々しい…。
「う…うぅん…」
ん?寝言か…あ~ぁ…俺も眠くなってきた…
シャミセンは気楽で良いよな…俺も猫になりたい…
あ…悪い、目を覚ましちゃったか?悪いな、シャミセン。
「ん~駄目よ…あたしの隣にいなさい…こっち…」
うぉ!!何しやがる!?人の髪の毛引っ張んな、ハルヒ!!
「ふふ…柔らかくて暖か~い♪」
これはシャミセンじゃなくて俺の頭だ!!離せ、ハルヒ!!禿げる!!
寝惚けてんのか?起きててわざからかってんのか?わからん…しかし、
「ね…こっち♪」
ちょっと待て…さすがに頬擦りは…柔らかくて気持ちいいけどな…
いやいや!!顔が近い、近過ぎるってハルヒ…これはさすがにやばいぞ…。 

全く、キョンの野郎。無理矢理、俺を起こしたのは
お前がハルヒお嬢ちゃんの隣にいきたかっただけなのか?
そんなに顔くっつけて、どうやら俺はお邪魔なようだな。
俺は枕元で見とくからな、キョン。お嬢ちゃんと好きなようにやれるチャンスだぞ。
オスの根性見せろよ!!
「あんた、何やってんのよ!?」
お!お嬢ちゃん、起きたのか?
「あんた、やっぱりあたしに今、変な事しようとしてたでしょ!?
女の寝込みを襲うなんて……最低!!変態!!痴漢!!ドスケベ!!」
「断じて違う!!ハルヒ、お前が寝惚けて俺の髪の毛引っ張ったんだよ!!」
何だ?痴話喧嘩は猫も食わねぇぜ。
「あ、あたしがそんな事する訳ないでしょ!!
大体、それでなんであたしとキョンがほ、ほ……頬擦りなんてする距離になるのよ!?」
おいおい、若い者同士ってのはすぐに惚れたはれたで興奮して真っ赤になるな…
お前ら、仲が良いのは結構だが熱くなり過ぎんなよ。
「知らん!!寝言でハルヒが『こっちに来い』とか言ってたから
大方、変な夢見てたからじゃないか?」
猫の俺には分かるぜ、お嬢ちゃんが見てた夢。
そして、お前らがどっちとも今は最高に上機嫌で喜んでるって事もな――――

さてと…俺ゃそろそろお暇させて頂くぜ…
まぁ、お前らとも縁がありゃいつかまた、どっかで出会えるだろう。
じゃあな…あばよ――――

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最終更新:2008年09月30日 09:24