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【朝比奈みくるの秘密】 (避難所投下時のタイトルは「星に願いを」でしたが、同名のページが存在したため改題しました)



「張り切って観測するわよ! 流星群のピークは明け方近くだから、それまでは新星発見に重点を置きなさい」
「新星発見ともなればSOS団の名は世界中に知れ渡るわ。 世界にSOS団の名を轟かせるのよ!」
「さあ、みくるちゃん! がんばって新星を発見するのよ!」

「はぃぃぃぃ、がんばりますぅ」

新星発見の任を言い渡された朝比奈さんは、望遠鏡のハンドルをくりくりと回して星を探している。
SOS団の名をこれ以上広めたいとは思わないが、新発見の栄誉なら悪名で無いだけましだろうか。

「涼宮さんがあのようにおっしゃっていると、本当に発見するかもしれませんね」

「まさかだろう。 世界中のアマチュア天文家が夜な夜な筒を覗いてるんだ。 未発見の天体なんてそうそうありゃしないさ」

「本当にそう思いますか?確率論が当てはまる方ではないと思いますが」

「あのぅ…… このぼんやり見えるのって星でしょうか?」

マジかよ。 ちょっとご都合主義が過ぎやしないか?

「ホントに見つけたの!? でかしたわみくるちゃん! 名誉一日団長にしてあげる!」

一日団長ねぇ。 おおかた、『目立たなきゃダメよ!』とか言ってバニーコスプレさせたあげく、校門前でビラ配りだな。
なんだ、いつもと同じじゃないか。 朝比奈さんにも予想が付くのか、ひえぇぇぇぇとかわいい悲鳴を上げていらっしゃる。

「まぁまぁ、そう慌てずに。 ちょっと見せて」

天文部 部長氏がやってきて筒を覗きこむと、つづいて部員Aが筒の脇に座り、なにやら数字を読み上げた。
すると部員Bがこれまたなにやら興奮した声で、該当無しです。 と報告した。

「観測を続けてみないと新星か小惑星か彗星なのかわからないけど、新発見の天体には違いないと思うよ」

古泉のやつにひそひそと耳打ちされた。
「さて、これは果たして偶然なんでしょうか?」
俺が知るか。

「発見者には命名権があるけど、どうする? 結構自由に付けられるよ。 『タコヤキ』なんて名前の小惑星もあるくらいだから」

「なら、『朝比奈みくる』でもいいのね。 おめでとう、みくるちゃん! 名前が歴史に刻まれたわよ!」

「ふえぇぇ? れ 歴史にですかぁ? そんなの困りますぅ……」

未来人が過去の時代において名を残す。 というのはどうなんだろう。
甚だしく禁則事項に該当するような気もするが、本気で困ることになるなら朝比奈さん(大)あたりが事前に何か言って来ただろうし、ここは素直に喜んでもいいんだよな。

「いいじゃないですか。 鶴屋さんあたりが知ったら、『みくるはお星様になってしまったにょろ?』くらいのジョークを飛ばしてくれますよ。 きっと」

「あのぅ、本当に、私が決めちゃってもいいんでしょうか?」

部長氏がフォローを入れた。
「まだ第一発見者の確認は取れてないけど、ここにいる人の中では朝比奈さんに命名権があるね」

「そうだ、みくるちゃんの好きな人の名前を付けちゃいましょう! さぁ、みくるちゃん? 正直に吐きなさい! 一人や二人いるでしょう?」

そういってハルヒは、朝比奈さんを後ろから抱きかかえた。
「えっ? やっ! やだっ! 涼宮さん、そこだめえぇっ!」
「ほらほら正直に言わないと、もぉっと凄いことしちゃうわよ?」
「アッーーーー!」

いいかげんにせいっ! ハルヒの脳天にチョップを入れる。
「いったいじゃない! なにすんのよ、キョン!」

「何度も言ってるだろ、朝比奈さんをおもちゃにするんじゃありません!」

「ふーんだ、アンタだって興味あるくせに」
いつものアヒル口でぶーたれるハルヒ。

ふむ。 朝比奈さんの思い人か。 確かに、興味があると言えば無い訳じゃないが……
考え込んでしまった俺を、ハルヒが興味深そうに見ているのに気づいた。

なんだ?

「べっつにっ」

なんだ? 妙に嬉しそうだが。

「天文台の確認が取れたよ。 やっぱり朝比奈さんが第一発見者だって」

今の騒ぎの中で冷静に電話していたのか。 天文部 部長氏、ひょっとしたら大物かもしれん。

「みくるちゃん、おめでと」

天文部員からも賛辞と拍手が贈られた。

「ありがとうございます、涼宮さん。 みんさんもありがとうございます」

「それじゃあ、その、お言葉に甘えちゃいます」

「名前、決まった?」

「はいっ!」

大きくうなずいて、元気よく応える朝比奈さんは本当に嬉しそうだ。

「名前は……」

みんな、言葉の続きを待っている。

「    ですっ!」

聞こえなかった。 得意そうに叫んだはずの名前は、聞こえなかった。 ただ、口だけが動いていた。 あれは――

声にならなかった。 そのことに気づいた朝比奈さんはしおれたようにうつむいて
「……あれぇ…… どうしてだろ…… あっそうかぁ…… そうですよね…… ちょっと考えれば…… 馬鹿だぁ……」

不思議そうな、みんなの顔が自分に向いているのに気づいて、慌てて場を取り繕い始めた。
「あはっ! 冗談ですよ、みなさん。 ごめんなさい、見事にすべっちゃいましたね」
いかにも失敗しちゃいましたぁ、と言うように、舌を出してみせる朝比奈さんは、あまりに痛々しかった。

冗談なんかでないことは全員がわかっていた。 けれど、誰も追求しようとはしなかった。
ハルヒは今までに見たこともないほど厳しい顔で、朝比奈さんを見つめていた。

※※※※※※※※※※※※※※※※

「まったく、一体どういうことなのよ」

あのあと朝比奈さんは逃げるように帰ってしまい、新発見の興奮も冷め切った観測会を終えて、俺とハルヒは帰り道を歩いている。
ハルヒは追いかけようとしたが、俺が止めた。 おかげでその後はピリピリし通しだったし、古泉には急なバイトが入った。

「あれは洗脳とか、強力な暗示とか、とにかくそういう類の何かだったわ。 声に出せないよう、強制的にストップがかかったのよ」
「みくるちゃんを洗脳するなんて、誰の仕業よ、絶対に許せない。 見つけ出してギッタンギッタンにしてやるわ」

おまえ、よくあの場で噛みつかなかったな。

「天文部の連中がいたからね」

「なぁハルヒ、この件、見なかったことにできないか?」

ハルヒが目を剥いて怒鳴った。
「そんなことできるわけ無いでしょう!? 洗脳だの暗示だの、人格に対する冒涜よ!」

俺は足を止め、ハルヒの肩を掴んで向き合った。
「朝比奈さん自身が受け入れていたら? その上で話せないんだとしたら? 逆に朝比奈さんを苦しめるぞ」
「俺はSOS団の外にいる朝比奈さんのことを何も知らない。 家族のことも、何もだ。 お前はどうだ?」

バツが悪そうに横を向き、不本意そうにつぶやく。
「……あたしも…… 知らないわ……」

「きっと話せない事情があるんだ。 とはいえ、お前もこのまま何もしないってんじゃいられないだろう?」

「そうね。 だって許せないもの。 腹が立つのよ」
はっきりと俺の目をにらんで言い切った、意思にあふれたハルヒの顔。 だが俺はハルヒの意思を挫かないといけない。

「だからな、一度だけ確かめろ。 それで、話せませんごめんなさいされたら、今は諦めろ。 話してくれるまで待つんだ」

ハルヒは無言で横を向いた。 口が見事にアヒルになっている。
やがて向きを変えて歩き出す。 俺もハルヒの肩から手を放し、後をついて歩き始めた。

別れ際、ハルヒは
「いいわ。 なんだか丸め込まれたような気もするけど、キョンの言うとおりにしてあげる」
怒りのオーラを漂わせながら、立ち止まらずに言い残して去っていった。
あのぶんじゃ、古泉に苦労かけそうだな。

※※※※※※※※※※※※※※※※

「さぁ、みくるちゃん。 たのしいお着替えの時間ですよ?」

「ひえええぇぇ」

「とっとと脱いだ 脱いだ!!」

「すっ涼宮さっ! 待っ! 自分でっ 自分で脱ぎますからっ! アッーーーーー!」

靴下に至るまで全部剥いて、隅々まで丹念になであげる。
それにしてもきれいな肌してるわね。 それにいつみてもおっきなおっぱい。
ん~~~~~~~~ えいっ! あ~~ やっぱきもちいいわ。

「だめぇっ! もまないでぇっ!」
「ふえぇぇぇぇん」

ひとしきり柔らかい感触を楽しんでから手を止めて、みくるちゃんの耳元でささやく。
「ねぇ、みくるちゃん」

「ふぇ?」

「あたしたちに隠してること、ない?」

「ないですぅ 全部見られちゃってますぅ」

そうじゃなくて

「キョン君に見られるのはいやですぅ」

なんでキョンだけ名指しでだめなのよ。 ってそうじゃなくて!

「洗脳とか、暗示とか、そういうことをされた心当たりはない?」

「えっ?」

みくるちゃんの体がぎくりぎくりと硬く震えた。
あぁ、みくるちゃんは自覚してるんだ。

「どうしてですか? 変です。 いきなりそんな話。 あるはずないじゃないですか、そんなこと」

「とぼけなくていいわ。 あたしが知りたいのは、それがみくるちゃんを不幸にしてないか、どうなのかってことだけ」

驚いて、少しおびえているみくるちゃんの目があたしを見つめている。

「裸じゃ落ち着かないわね。 いいわよ、服着て。 注射針の痕とかもないようだし」

「はい……」

※※※※※※※※※※※※※※※※

「星の名前を言おうとして言えなかったでしょ。 あのときのみくるちゃんはすごく悲しそうだった」
「すぐ近くにあたしたちがいるのに、世界にたった一人取り残されたみたいに淋しそうだった」
「あたしはあんなの二度と見たくない。 けど……」

キョンと約束したから

「教えて。 みくるちゃんはそれを解きたいのか、そうじゃないのか」
「みくるちゃんが自由になりたいと思っているなら、あたしは解く方法を絶体に見つけてみせる」
「そうじゃないなら、あたしは今回のことを全部見なかったことにして忘れる。 いつか、みくるちゃんが自分から話してくれる、その時まで」

メイド服を着直したみくるちゃんは、あたしと正面から向き合った。
いつものみくるちゃんとは違う、あどけなさの消えた真剣なまなざしにあたしも緊張する。

「これは、今の私にとって必要なんです。 だから、ごめんなさい」

「そう……」

淋しい。 隠し事をされるのが淋しい。 誰にだって秘密の一つや二つある。 それが当たり前。
わかっているのに、わかっていてもやっぱり淋しい。 はぁ、今の顔は誰にも見せられないわね。
背中を向けると、みくるちゃんにそっと抱きしめられた。

「心配してくれたんですね。 ありがとうございます。 話せなくてごめんなさい」

「さあ? 何のことだかわからないわね。 全部見なかったことにして忘れたばっかりだから」

背中に柔らかい笑みが伝わってくる。

「ひとつ、甘えてもいいですか」

あたしは床に毛布を敷いて、みくるちゃんに膝枕をしている。
みくるちゃんは抱きつくようにあたしの腰に手を回して、あたまを押しつけてくる。 ちょっとくすぐったい。

「とってもあったかいです。 とっても優しくて、愛情が深くて、それを押しつけない強さもあります」
「涼宮さんはきっと、いいお母さんになります。 だから今だけ、ちょっとだけ甘えさせてください」

お母さんだって。 あたしはそんな物になるつもりはないんだけど、それでも照れるわね。

「キョン君は幸せ者ですね」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっ!!??」
「どうしてそこでキョンの名前が出てくるのよ!」

「だって。 ううん、秘密です。 ふふっ」

みくるちゃんはあたしを強く抱きしめてから、勢いよく起き上がった。

「さ、みなさんのお茶を淹れなくちゃ。 二人とも廊下に追い出されて、きっと寒がってます」

みくるちゃんが扉を開けると、キョンと古泉くんが入ってきた。

「ずいぶん長い着替えでしたね。 ってメイド服のままなんですか?」

「私がどんな格好してると期待してましたか?」

「いや、どんなって言われましても」

「よぅハルヒ」

いきなり話しかけられて、あたしは逃げるように団長席のパソコンモニターに顔を隠した。
今はキョンと顔を合わせたく、ない。

みくるちゃんはそんなあたしを見て、くすくすと笑っている。

キョンはそんなあたしたちを見て、安心したようなため息をついていつもの席に落ち着いた。

古泉くんはボードゲームを取り出し、有希は最初からずっと本を読んでいる。

いつもの風景。 いつまでも続いて欲しい、でも必ず終わる、だからこそ大切にしたい。
みくるちゃんとはいつか、大きな別れが来るのかもしれない。
ううん、みくるちゃんだけじゃなく、古泉くんとも、有希とも。
あたしは沈みそうになる心に鞭を入れ、大きく息を吸って立ち上がった。
未来は未来! 今は今! 未来なんて成るようになるわ!

「さあ! みくるちゃんはさっさと星の名前を決める! 決まったら天文部へ遠征よ!」

今をせいいっぱい楽しまなきゃ!

fin.

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