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(……また、鍵が開いている)

 

「おかえりなさい、遅かったのね? コンビニご飯ばかりじゃ栄養も偏るし、一緒に夕食でも食べに行かない?」

 

フルフル(ノーサンキュー。朝倉涼子、これで42回目の不法侵入。彼女に常識について学んでもらう事は困難)

 

「あれ、そういえば何も持ってない……もしかして、ご飯済ませてきちゃったの?」

 

「そう」

 

(玄関が狭いんだから入り口に立たないで欲しい)

 

「……なんだろう、凄くいい匂い。ねえ、何を食べてきたの?」

 

「聞くのを忘れた」

 

「聞くって何を?」

 

「(……彼女は、私生活における常識は皆無。でも学校では優等生。利用価値はある)貴女に頼みたい事がある」

 

「え、本当? 何でも頼んで!」

 

(歩きにくいからくっつかないでほしい)朝倉を引きずりつつ辿り着いた台所には、調理器具の一つも見つからない。

 

「美味しい夕食の作り方を教えて欲しい」

 

簡単でおいしい!おかずレシピ「キョンの夕食」 2食目

 


 深夜の着信、それは今までの経験で言えば何かが起こる悪い兆しでしかなかった。
 だから俺は電話に出る以前に、相手が誰なのかを確かめるのも躊躇っていたのだが――ええい、仕方ない!
 無理やりに気合を入れて、携帯電話のディスプレイを開いた。
 そこに写っていたのはハルヒの名前でも古泉の名前でも、残念ながら朝比奈さんの名前でもなく……長門だと?
 珍しい事もあるもんだ、俺は急いで受話ボタンを押した。
 もしもし?
「助けて欲しい」
 通話口から聞こえてきた第一声はそれだった。続いて聞こえてきたのは何か金属の物が転がる音と、誰かの
悲鳴。
 な、何があったんだ? 今どこにいる?
「マンション」
 わかったすぐに行く!
 


 

 説明してもらっていいか?

 

「彼女は朝倉涼子。同じマンションに住んでいる住人」

 

「そして長門さんとは友達以上恋人未満です」

 

 お前らの関係じゃねーよ。ってゆーか朝倉、お前そんなキャラだったんだな。

 

「まあね」

 

 否定もなしか。まあいい、なんで床にカレーが入った鍋が転がってるんだ?

 

「事故だった。以上」

 

 説明はそれだけか、そうか。まあいいお前ら怪我はないか?

 

「もうない」

 

 もう?

 

「両手に重度の火傷を負ったが復元した」

 

 カレーで火傷って……。

 

「でも変なのよ、ちゃんと作り方を調べてその通りに作ったはずなのに全然美味しくならないっていうか不味いの」

 

 何を参考にしたんだ。

 

「このサイトよ」

 

 (香辛料の粉から作る本格カレー)……なるほどね。悪い事は言わん、これはやめとけ。

 

「えー? せっかくわざと時間がかかりそうな料理サイト見つけたのに」

 

「……朝倉涼子、貴女に話がある」

 

「え? せっかく戻ってこれたのに情報連結の解除はいやー!」

 

「消えるのって嫌。分解されたくない。 私には情報生命体の死の概念がよく理解出来ない」

 

 長門、その辺にしておいてやってくれ。

 

「貴方が、そう望むのなら」

 

「キョン君//」

 

 この床を掃除する奴が居なくなる。

 

「のー!」

 

 で、俺は何をすればいいんだ?

 

「うう、カレーって中々落ちないのね」

 

「貴方の料理は、短時間で安価な食材を美味しく昇華させる素晴らしい物。情報統合思念体が興味を示した」

 

 朝倉、翻訳してくれ。

 

「コンビニ弁当の生活に飽きたから、キョン君に料理を教えて欲しいんだって」

 

 なるほどね。って何気に俺をキョンとか呼んでるし。

 

「貴方へのお礼をする為にも、是非ご指導ご鞭撻の程を」

 

 まあいいか、お題はカレーでいいのか?

 

コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク

 

 多いぞ。さて材料は……たまねぎしか残ってない気がするんだが。

 

「他の材料は不慮の事故で使えなくなった」

 

 事故って?

 

「鍋を移動しようと掴んだら加熱されていた鍋により指の耐熱温度を大きく超えた、接地面の皮膚が融

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い……で、鍋ごと落とした、と。

 

「そう」

 

 じゃあ必要な物を買ってくるから朝倉の掃除の手伝いでもしててくれ。

 


 

 ――ただいま。お、綺麗になってるじゃないか。

 

「頑張った」

 

「主に私がね」

 

 まあいいが、じゃあ作ってくるからそこで待ってろ……。じゃない、作り方を教えればいいんだったな。

 

コクコク

 

「うんうん」

 

 お前もか朝倉。

 

「有機生命体の料理なんて中々見れないもの、見学させて?」

 

 いや、手伝わせるぞ。長門、最初は玉葱を二つに切ってくれ、方向は上からだ。

 

「こう」

 

 そうだ、そして切った面を下にして細切りにしてくれ。方向は同じ縦方向に頼む。

 

「この向きに意味は」

 

 ある、玉葱の繊維の方向に沿って切らないと目にしみる上に細長く切れないからな。

 

「メモメモ」

 

「(ガサゴソ)カレー粉が2種類と……あれ? キョン君この袋の中の小さな箱は何かな」

 

「!」

 

 ああ、それは隠し味だ。……なんだその残念そうな顔は。

 

「別に」

 

「なんでもないわ」

 

 まあいいか、じゃあ鍋に油を少し入れて玉葱を炒めよう。朝倉、焦げないように見ててくれ。

 

「見てるだけでいいの?」

 

 いや、時々混ぜてくれ。

 

「混ぜる物がないんだけど。あと油も」

 

 ……一つ疑問なんだが、もしかしてここには鍋以外の調理器具はないのか?

 

「ない。鍋は前の住人の忘れ物」

 

 おい、もしかしてご飯もないのか?

 

「それはある。これ」

 

 なるほど、さとうのご飯か。

 

「このご飯の加熱に関しては完璧。ここ2週間は失敗した事が無い」

 

 よしよし、偉いぞ。

 

「//」

 

 今更だが現状の把握はできたぞ。ある物は包丁とまな板、鍋が一つ、カレー皿とスプーンが3つ、さとうのご飯が大量、以上。

 

「間違いない」

 

「お皿とスプーンは私のよ」

 

 俺、帰っていいか。

 

「……」

 

 わかった、帰らないから液体ヘリウムみたいな目で俺を見るな。

 

コク

 

 朝倉、状況が変わった。鍋に半分くらい水を入れてコンロにかけてくれ。

 

「はーい」

 長門はまず玉葱をカレー皿に入れろ。

 

「……完了」

 

 よし、次はその皿にコップ半分の水を入れてレンジに入れてくれ。ラップは……

 

「ない」

 

 じゃあそのままでいい。

 

「時間は」

 

 そうだな、5分でいいぞ。強さは最大で頼む。

 

「お安い御用」

 

「キョン君、鍋はこのままでいいの?」

 

 蓋をしてくれ、沸騰したら教えて欲しい。

 

「はいはーい」

 

 チーン

 

 よし、朝倉鍋の蓋を開けろ。長門はその中に玉葱を入れて、後はレンジで2食分のご飯を温めておいてくれ。

 

「任務了解」

 

 じゃあしばらく煮込むぞ、蓋は開けたままがいい。

 

「それって貴方の趣味?」 

 

 吹き零れないようにだ。

 

「メモメモ」

 

 その間にカレー粉を刻むか。

 

「どうして刻むの?」

 

 その方が早く溶けるからさ。よし、鍋にルーを入れて……と。隠し味を入れるとしよう。

 

「これは……クノール、カップスープ?」

 

 そうだ、今回はオニオンクリームポタージュを使う。

 

「これをどうするの?」

 

 入れる。サラサラ

 

「あー! あー! ……そんな」

 

 普通の隠し味にしたかったんだが、こんな深夜じゃコンビニしか空いてなくてな。まあ、味は保障するから安心してろ。

 

「じゅるり、なんと胃を刺激する匂い」

 

 いい感じにできあがったな。……味も悪くない。

 

「私も味見」

 

 ん、ほれ。

 

「……美味しい」

 

「私もー」

 

「……」

 

「やっぱりいいです。そんな液化窒素みたいな目で見ないで」

 

チーン

 

 ご飯も出来たな、じゃあ試食だ。

 

「美味しい! 何で作りたてのカレーがこんなに美味しいの?」

 

 クノールに感謝しろ。それとカレーのルーは2種類使ったせいだろうな、お勧めは中辛1に甘口1の割合だ。

 

「我々の食生活において貴方は鍵」

 

 褒め言葉か。

 

コクコク

 

 そうかい、じゃあ俺は帰るから残りのカレーは適当に食べてくれ。

 

「ありがとう」

 

「ご馳走様~」

 


 簡単でおいしい!おかずレシピ「キョンの夕食」 2食目 終わり

 

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