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「キョーンくーん!!」

…その一声で目を覚ますと。

「あーさーだーよ!!」

妹が空中にいた。

ドスン!!

「ぐはっ!!」
「早く来ないとご飯食べちゃうよ!?」バチンバチン

頭を叩きながら話しかけてくる。
…こないだ家に置き去りにしたことをまだ根に持ってやがるな。

元気に部屋を出て行く妹を見ながらあと3分後に鳴る予定だった目覚ましを手に取る。

…あいついつの間にムーンサルトプレスなんか覚えたんだ?

「キョンくん早くー!」
「あぁ、今行く」

また平凡な1日の始まりだ。

身支度を整えて家をでると谷口がいた。
…お前の家は遥か彼方じゃないのか?

「そんなことどうでもいいんだよキョン!聞いて驚け!!なんと今日は転校生が来るらしいぞ!!」
「あぁそう」
「あれ!?反応薄い!?お前しかも女子だぞ女子!!」

というかこの時代、転校生ごときで一喜一憂してるのはお前くらいだ。

「ちぇー…まぁいいや。可愛い子だといいなぁ」
「というかこの時期に転校生か?」

もうすぐ二学期も終わっちまうぞ。

「何でも親の仕事の理由で海外から日本に来るそうだ」

帰国子女みたいなもんか?
ハルヒが黙っちゃいなさそうだな。

「というかそこまで知ってるなら顔もわからなかったのか?」
「…お前わかってねぇな」

…谷口に同情される日がくるとは思わなかったよ。

「いいか!?転校生ってのは未知の遭遇なんだぞ!?性別はまだしも顔の御披露目は当日のお楽しみになるんじゃないのか!?しかもそれが女ならなおさらだ!!」

これはもう…何というか…あれだな。

「…ほら、早く行かないと遅刻するぞ」
「おまっ!待てよ!!」

追いかけてくる谷口をシカトして俺は学校手前の登り坂を全力疾走した。

教室に着くと既に転校生の話題で持ちきりになっていた。
何だ…みんな知ってんのか。

「俺がチェンメで回したんだ」

誇らしげに話す谷口。
…俺のところには来てないんだが。

「あぁ、お前には俺直々に伝えてやろうと思ってな!朝5:30から家の前で待機してた!」
「そうか。二度とそんなことしなくていいぞ」

…まてよ…チェンメで回したってことは…

「ちょっとキョン!!大ニュースよ!」

同クラスのハルヒも知っているわけで…

「…ニュース?」

まぁ一応聞いといてやるか。

「あれ?あんた知らないの?」
「知ってること前提で話しかけたのか?」
「確かチェンメ回ってたと思うんだけど…まぁいいわ!聞いて驚きなさ「おーいみんな席につけー」

絶妙なタイミングで岡部が入ってきた。

「あ!変なタイミングで…まぁいいわ」

渋々机に座るハルヒ。
…前のこいつだったら授業中だろうが会話を続けただろうな。
…ハルヒも変わったのか。

「さて、今日はHRの前にみんなにしらせることがある」

騒がしかった教室がピタリと静かになった。
多分ハルヒは目を輝かせてるだろうな。

「今日からこのクラスに転校生が来ることになった」

谷口はここまで聞こえる音でハァハァ言っている。
…周りの女子が引いてるぞ。

「おーい、入ってきてくれ」

ガラガラと戸を開けて入ってくる人物。
谷口がうほっ!と言ってるのが聞こえる。

青い髪をなびかせて転校生はみんなの前に向き直った…ってあれ?

あいつは確か…

「ん?どうした『禁則事項』?知り合いなのか?」
「え?あ…いや…気のせいでした…あはは」
「ちょっとキョン!SOS団に泥を塗るようなことはしないでね!?」

あぁわかったわかった。
というかだな。
俺以外の人物がこいつを不思議に思わないのが不思議なわけで。
…何が言いたいかというと。

「こんにちは。朝倉涼子といいます」

ま た お ま え か 。

「涼しいという字に子供の子で涼子と言います」

何て言いながら説明する朝倉を唖然と見つめる俺。
ってか何で誰も疑問に思わないんだ?

こいつは…

「親の仕事の事情でカナダから来たそうだ」

そう、こいつはカナダに「行っている」ことになってた筈だ。

確かにこいつはこの間長門の家に出現した。
そのままこのクラスに戻ってきても自然な流れになるだろう。…だが何故誰もこいつを知らない?

「ちょっとキョン!帰国子女じゃない!是非ともSOS団に加えましょう!」
「いや…ハルヒ?俺の勘違いかもしれないが朝倉って…最初にこのクラ…」ドガッ!!!!!

…気がついたらハルヒの机にチョークが刺さっていた。

「あ、ごめんなさい☆手が滑っちゃって」

投球のアフターモーションに入っている朝倉がいた。
口は笑ってるが…

『喋ったらぶち殺す』

と目が語っていた…

「ち、ちょっと危ないじゃない!」

後ろで騒ぐハルヒと自分の席に着く朝倉を交互に眺めながらこう思った。

…やれやれ。

朝倉は完全にこのクラスにいたことは無いとされてるみたいだ。
俺だけ記憶に残ってる理由がよくわからんが…

「ねぇねぇカナダってどんなとこ?」
「生まれは日本なの?」

今朝倉はクラスの女子から質問責めにあっている。

「おいキョン!俺達も話しかけてみようぜ?」
「一人で勝手に行け」

というか、言ったとしても何話していいかわからん。
…何せ一度殺されかけた相手だもんな…いや、二度か?あのカレーは人を殺せそうだしな。

しかしながら俺には谷口をスルーすることはできても…こいつをスルーすることは出来ないようだ。

「ほらキョン!あの子早く勧誘しにいくわよ!」

…俺としては一度長門に相談してから行きたかったんだが…

「朝倉さん!不思議な事には興味無いかしら!?」

いきなり机をぶっ叩いて叫びやがった。
前言撤回。こいつちっとも変わってねぇ。

「不思議な事?例えばどんな?」

目を輝かせて返事をする朝倉。…本当は知ってるんじゃないのか?

「わがSOS団では宇宙人以下略を筆頭に世界中の不思議を探し回っているわ!」

相も変わらずぶっ飛んだ内容だ。

「面白そう!是非入団させて!!」

お前も食いつくな。
っていうかこいつの目的がわからん。
長門の家ではそんな素振りは無かったが…また俺を殺しにきたのか?

「決まりね!じゃあ早速今日の放課後か「あ、ごめん」

ハルヒの話を朝倉が遮る。

「今日は終わってから変な手続きを受けないといけないみたいだからすぐに行けそうに無いわ」
「あらそうなの。まぁそんなの終わってからでもいいわ!部室の場所はわかるかしら?」
「全然わからないわ」
「安心しなさい!ここにいる雑用係のキョンが案内するわ!」
「何で俺が」
「あんたがSOS団雑用係であたしがSOS団団長だから!」

有無を言わさぬ目で話すハルヒ。

「…わかったよ」

まぁ朝倉に聞いてみたいこともあるしな。



というわけで放課後だ。

ちなみに朝倉の身体能力、学力、容姿は相変わらずずば抜けていて、100m走でハルヒと同じタイムを叩き出して、小テストも満点、そして谷口は速攻でAAAランクをつけた。

ひとつ変わったことと言えば…

「じゃあ朝倉さん!終わらせたら早く来てね!」
「えぇ、わかったわ」

ハルヒと朝倉の仲が良いことくらいか。
そうは言っても入学当初はハルヒが一方的に突き放してたんだがな。

今現在教室に俺一人。
待っている間勉強でもしてみようかと思って教科書を広げたはずなんだが、机に突っ伏して寝ていたようだ。

「ふぁ…」

欠伸をしながら眠い目をこすると、空が紅くなり始めていた。
…部室に入った瞬間ハルヒにどやされるな。

…そういや朝倉はまだなのか?

「いるわよ。ここに」
「のわっ!!」

真後ろのハルヒの席にいやがった。

ってか来てたのなら起こせばいいだろ…

「だってキョンくん、あまりにも気持ちよさそうに寝てたんだもん」
「…あぁそう…部室に行く前にお前に聞いておきたいことがあるんだがいいか?」
「私のこと?」
「そうだ」

しかし…何から聞けばいいんだろうな…

「お前は…俺を殺そうとした朝倉と同じ存在なんだよな?」
「そうよ。まぁ前にも言ったように殺す必要は無くなったんだけどね。危害を加えるつもりもないわ」

にこやかに返事をする朝倉。
普通に可愛らしいんだが台詞が恐ろしい。

「…なら何故俺以外の奴はお前のことを覚えないんだ?」
「厳密に言うと、涼宮さん以外のSOS団メンバーね。私のことを覚えいるのは」

何でそんなことする必要がある?

「だって不自然じゃない?一度カナダまで行ったはずなのに半年もせずに戻ってくるなんて。生活し辛くなる気がするわ」

…確かに。

「それに…そうすると私の目的の障害にもなっちゃうわ。できるだけスムーズにやりたいもの」

…目的?

「復讐よ」

空気が変わった気がした。

「あの時この教室で私が言ったこと覚えてる?」
「………」
「…やらないで後悔するよりやって後悔する方が良い。私ね、まだやり残したことがあるの」
「…それが…復讐?」
「そう…だからまずあなたに

そう言って後ろに手を回す朝倉。

って俺に危害を加えるつもりはなかったんじゃないのか?

とっさに飛び跳ねて机から離れる俺。
朝倉はまだごそごそやっている。

早く出口を…戸が塞がってやがる。

「逃げちゃだめよ。あなたにも…」

朝倉が真後ろにいた。
何か金属のようなものを持っている…

「手伝ってもらうんだから」
「へ?」

間抜けな声が出てしまった。

朝倉が手に持っていたのは…ただのお玉だった。

つづく

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