※佐々木視点ですが、佐々木ものではないと思います。allです。ある意味痛い(?)でしょうか。ある意味ね。

作者は『団活、事件、図書館にて』と同一ですが、証拠はありません。話の構成上関連性及び接合性は2mgもありません。どうぞ気楽に。

 

 

『ランキング by.キョン』

 

 

 正直に言えば、軽い気持ちで出掛けて行っただけだった。

 定期試験を終えてその総復習や総括の期間も終え、気分転換に散歩に出かけようとおもったのがきっかけで、歩くうちに気付けば彼の学区に近いところまでに来ていて、ついでだからとその駅前の喫茶店に寄ったのだった。

 いや、そうは言うが心のどこかでは彼に会えないものだろうかと言う期待もあり、むしろそれが本望でこちらの方まで足を運んでしまったのだろう。そういう推論を立てられるくらいには、自己分析の精度などは増しているはずだ。

 話は逸れたが、要するに元々は軽い気持ちで、後にはちょっとした下心があってこの喫茶店にやってきて、既に20分経っている。別に何をしているわけではない。ただコーヒーを飲みながらぼうっと周りや外を行きかう人々の人間観察に勤しんでいたりしていただけだ。客観的に見てみて、普通の女子高生が一人で喫茶店に入って20分もぼうっとしてるだなんて光景は中々滑稽なものかもしれない。誰を待っているわけでもないのだし、理由を解することはできないだろう。

 ふと背後に気配を感じた。またナンパといった類の不躾な連中だろうか。

 自分では良くわからなかったが、客観的に見て自分の容姿は高水準に当たるらしい。客観的分析能力にも長ける彼も褒めるくらいなのだから、確かにそうなのだろう。いや、案外単純な彼のことだから突発的な主観意見だったのかもしれないが、そのほうがずっと嬉しい。彼に褒められるような容姿ならそれで十二分に満足だ。

 おっと、背後の気配についてだった。これについては振り返るだけで解決は十分にかの……

 

「おっ、やっぱり佐々木か。いや、見覚えのあるセミロングだったんでな、声をかけようとしてたんだ。相席、いいだろ?」

 

「キョ、キョン!? どうしてここに……」

 

 まさかの、だよ。まさかのキョンだよ。僕とした事が、かなり動揺してしまった。

 

「ん? ああ、ちょっと買い物の下見だよ。オーディオを買い変えようと思ってたんだが、俺の家にはあまり家電店のチラシが来んからな、店に出向こうかと駅にね。だが季節外れのこの暑さだ、のどが渇いてついこの店を見たら、あとはさっきの通りだ。偶然だな」

 

「あ、ああ。嬉しい偶然じゃないか。相席だったね、当然遠慮せずに座ってくれ」

 

「すまんな、ありがとう」

 

 席に着くと同時に、「しっかし暑いな。まだこんな時期なのに」と言いながら羽織っていた黒のジャケットを脱いで椅子の背もたれにかけた。今日は中々色っぽい恰好をしている。似合っていた。

 

「で、佐々木はどうしたんだ? 家からはそんなに近くもないだろ?」

 

「まあね。なに、特に理由はないさ。勉強続きだったからね、息抜きに歩いていたらすでにこんなところまで来てしまっていて、一応熱中症や日射病を警戒して水分補給の為に立ち寄ったのさ」

 

「ほぉ、大変なんだな」

 

「好きでやってたことさ」

 

 やってきたウェイトレスに、キョンがコーヒーを注文した。現在はあの先輩ではなく知らないウェイトレスに変わっていたようだった。そういえば気にしていなかったから気付かなかった。

 さて折角の機会だ、楽しく雑談をするとしよう。

 

 

 

 10分くらい経った頃だろうか、ふと思って僕はキョンに尋ねた。

 

「ところで、君の女性を見る際のポイントってのは何なんだい? いや特に理由はないが最も僕に近しい男性だ、興味がない事もない」

 

 後半部分は半分ほど嘘だが、まあキョンのことだ、気付くわけもないだろう。そして半ば回答を予想していた。彼の嗜好に合う髪型であるポニーテー……

 

「ん? あーそうだなぁ。そんなにあるわけではないが、強いて言えば頭の撫で心地か」

 

 ほらポニーテールではない……ない、ね。ないじゃないか。あれ?

 

「ポ、ポニーテールが好きだと言ってなかったかい?」

 

「ああ、髪型としてはな。まあ微々たる差だよ、ポニテの有無はな。むしろ、俺はどうやら頭を撫でるのが好きらしい。最近知ったよ」

 

 何だいそれは!? 頭の撫で心地だって? なんでまた…。

 

「ああ、いつか長門の頭を撫でてやった事があるんだが、まず長門がそれにハマったらしくてな。ことあるごとに『褒めて』といって頭を撫でるのを要求してくるんだ。まあ生まれてからずっと親なんか存在するわけもなかったんだ、そういう父性的な存在が欲しかったのかもな」

 

 いや、そうじゃないことは僕には頭を抱えたくなるほどわかってしまうんだが……。

 

「しかも最近になって、頭が勝手にランキングを作ってた。谷口ってやつのことを話した事があったが、あれに似ててかなり憂鬱になったもんだ」

 

 ああ……容姿別にランクを付けるのが趣味っていうクラスメートかい? …………………。

 

「参考の為なんだが、今は誰がトップ何だい?」

 

「おお、今は長門がトップだ。シャギーがかったちょっと特殊な髪質だしな、中々抜けんだろう。AA+だな」

 

「……続けてくれるかい?」

 

「ん? ああ、構わんが……」

 

 キョンがまた少しコーヒーを飲んだ。僕もそれに合わせて先ほど追加したコーヒーを湿らす程度に口に運んだ。

 

「とりあえず、次点のAAランクは何人かいるな。朝比奈さん(大)・森さん・喜緑さん・鶴屋さん、あとお前のとこの九曜なんかもそうだな」

 

「……ちょっと待ってくれ。君はいつどんなことがあって彼女達の頭を撫でたと言うんだい?」

 

「んー、朝比奈さん(大)は先月呼び出された後になんやかんやあって、結果的に助けてもらったからそのお礼に撫でてくれるだけで良いって言われたからか。

 森さんは俺が一人で留守番してる時にふらっと突然家にやってきて家中を漁ったかと思うと盗聴器やら何やらがわらわらと出てきてな、お礼をしようと思ったんだがむしろ頭を撫でて欲しいって言われて。大人になって褒めてくれる人間が少ないんだそうだ。ついでにそのあと帰って来た家族と家で晩飯を一緒に食べたよ。

 喜緑さんは、一人で部室にいた時にやってきて、『撫でて下さい』って有無を言わさない口調で言ってきたから。なんでだろうな、エラーがどうって言ってたが。

 鶴屋さんはそうだな、団活終わりに鶴屋さんの家、いや鶴屋邸に引っ張りこまれたんだが、そこでなんか色々とした中――卑猥なのはないからな――で頭を撫でたんだ。色々ってのは飯を食わしてもらったりなんか貴重なもんみせてもらったり、親父さんにも少し挨拶したか。まあそんな感じ。

 九曜は気付くと俺の部屋にいたんだ。あれはびっくりした。聞くと頭を撫でて欲しいと言うじゃないか。とりあえず言う通りにしてから飯を食わしてやってから帰した。

 こんなところでいいか?」

 

「………………………ああ、十分だ。他はどうだい?」

 

 とりあえず九曜さんには折檻が必要なようだね。硬く決意しておこう。あと鶴屋さんはかなりの強敵だ。気付いたら結納を終えてましたー、なんてことになりかねない。しかもキョンだと、「……まあそれはそれでいいか」とそのまま結婚してしまいそうで怖いし。

 

AA-は……ああ、朝比奈さんと阪中、あとミヨキチだな」

 

「そうか、経緯は?」

 

「えっとだな、朝比奈さんはいつもSOS団への奉仕が大変だろうと思って何かしようと思ったが、大きな事だと申し訳無いからって。

 阪中……クラスメートの一人だ、話した事もあったよな。犬の事件。それとは別に、俺の週番の仕事が運悪くとんでもない量になってしまってな、往生してたんだが手伝ってくれたんだ。その礼だったんだが、それだけでいいって言い張るもんだから。

 ミヨキチはお前も知ってるだろ?妹の親友だ。前に家に来たときに零していたんだがあんなしっかりした子だからと親が忙しくてもそのままにされるって。頑張ってるのにあまり褒めてくれない、と哀しそうに言うもんだからつい頭を撫でちまった。しっかし酷い親もいたもんだな」

 

 ………確かに、本当ならね。だが微妙に腹黒さを感じるよ。危険だね彼女は。

 

「…………まだあるのかい?」

 

「まあな。A+は妹とお袋、あと橘と岡本だな」

 

「再び待ってくれ。妹さんはまだわかる。だがきみがきみの母君の頭を撫でるというのはどういう状況だい!?あと橘さんも重要だが岡本さんは中学のだろう、詳しく説明を求める!!

 

「何を興奮してるんだお前。まぁ説明するとだな、妹はわかるだろうから省く。

 お袋は俺もよくわからん。妹を撫でてやってるときに突然『あたしも家事一般頑張ってるんだけどな~』って言ってくるもだから何をすればいいか聞いたら撫でて欲しいというからな、撫でてやった。思いの外撫で心地が良くて驚いたが、そのあとに『……これはいいわね』とかいってやがったが何がいいのやら。一応言うが、断じてマザコンではないぞ」

 

 ああ、そんなのわかっているさ。きみがマザコンなのではない、母上が息子コンプレックス略してムスコンなだけさ。

 しかし何故今頃になって発症したんだ?僕の知る母上君は……いや、わかってる。最近になってのキョンは体もそうだが顔も締まってきている、その容姿はもはや平凡の域を逸脱している。はっきり言ってかなり魅力的だ。かなり厄介な相手かもしれない。いや、流石に犯罪的な意味合いで手を出してくるとは思わないが……うん。

 

「で橘だがな。九曜もそうなんだが最近やたらめったら出て来るんだよ。それで事あるごとにこっそり協力してくれるんだがその事あるごとに『わたしは頑張ったのです』と撫でるのを強要してくるんだ」

 

「断ればいいじゃないか」

 

「減るもんでもないし斬って捨てる理由もない。確かにあいつは朝比奈さんを誘拐すると言う即コキュートス行き決定並の罪を犯したが、言うとおり頑張ってるのも事実だ。それこそ頭を撫でるに値するくらいにな。もう俺はあいつを責めるつもりはないよ」

 

 ああ、きみは優し過ぎる。だからこそ僕、いや私達は惹かれるんだろう、しかしそれ故に傷付けてることもあるんだが……。

 

「それと岡本だったな。偶然この前会って声をかけられたんだ。久々すぎたから驚いた。それで茶店に入ってしゃべってたんだが、あいつ新体操やってたのを覚えてるか?」

 

「あ、ああ。一度見せてもらったが中々綺麗で感動したよ」

 

 素直な感想だ。

 

「聞けば、あいつ国体に出たんだってよ。驚きだろ」

 

 ……ああ、先が読めてしまった。

 

「とりあえずおめでとう、と言ってからささやかな祝いとして茶店代を出すことにしたんだか、ふと突発的に頭を撫でてしまったんだ。しまったと思ったんだが特に気にしてないって。だが少し耳が赤かったから怒ってたのかも知れん。悪いことをしたな。どう思う?」

 

「………………いや、彼女はほぼ確実に怒っていない。確約しよう」

 

「そうなのか? まぁお前が言うならそうなんだろうな。安心した」

 

 こっちは心中穏やかではないがね。またひとり増えてしまったんだな。ん……いや、少し待てよ?

 

「喫茶店にはきみが誘ったのかい?」

 

「いや、折角だからと岡本がな。それがどうかしたのか?」

 

 ………………女子高生が久々に会った元中学同級生の男性を何の理由もなくお茶に誘うと本気で思っているのだろうか。いや、思っているからこそのキョンだね。

 中学の頃もほんの一刹那の表情から嫌な予感はしてたんだが、つまり元々敵だったと言うわけか。なんてことだ、かなりの数の敵じゃあないか。……って、あれ?

 

「そういえば涼宮さんは?」

 

「ハルヒか。あいつはB+だな。髪質なんかも普通だし、わるかないが少し良いって程度だな。成瀬や剣持、由良といった他のクラスメートの方が上だな」

 

 キョンはいったい何人の女性の頭を撫でているというのだろう。不可解だ。

 

「………………他は?」

 

「特にはいないな。強いて言えばシャミやルソー――阪中の犬だが――、あと国木田くらいか」

 

「くっ、国木田!!? かなり待ってくれ、どういうことなんだい!!!? 怒涛の如く納得のいく説明を求めるよっ!!!!

 

「興奮しすぎだ。ほれ、キャラメルやるから落ち着け」

 

 あ、ああ。すまない、僕としたことが。ありがとう、美味しく頂くよ。うん、甘い。……って、キョン。きみはいつもキャラメル常備なのかい?

 

「ああ、よくわからんがたいていキャラメルが解決してくれる。長門や九曜から始まり橘やハルヒまでいうことを聞いてくれるようになるからな」

 

 きみは周りの女性達を自分の子供だとでも思ってるのかい?しかもこの言い方だと先輩や、森さん朝比奈さん(大)をもキャラメルで……? 何と言うか……。

 

「んで国木田だが、前に長門を撫でてやってるときに羨ましそうに『いいなぁ~』っていうもんだから、その冗談に乗ってやって撫でたんだ。あいつが女ならA+以上だな。しかし撫でてやった後の微妙と言うか曖昧な笑みは何だったんだろうな。予想外で驚いてただけかね」

 

 ………………………これはまた……。いや、忘れよう。間違いが起こるはずがない。僕はキョンと、そして国木田も信じていたい。国木田、過ちを犯す罪深きアダムは一人で良いんだ。

 とりあえず最重要事項はコレだ。

 

「そういえば、僕は撫でてもらった覚えがないな」

 

「ああ、そうだな」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………な、撫でてくれないのかい?」

 

「は? 撫でて欲しいのか?」

 

「うん、撫でてほしいんだよ」

 

 ふ~ん不思議なやつだな、ってキョン。僕からしたらきみこそが人類の神秘だよ。きみくらいの年齢の男子は異性に対して悶々として卑猥な想いからなどで逆に勘繰るはずなんだが……。

 そう思っているうちに、キョンの掌が僕の頂点部に乗せられた。

 

電撃が走った、というのは比喩的表現だ。

 

 そう思っていたが、実際は正に言葉通りだった。

 温かくて大きくずっしりとしたキョンの掌。まずい、頭の中が桃源郷、エデンの園だ。ヘヴンズドアが開いたね。

 そしてすりすり、と……………………。すまない、言語化できる域を軽く超越している。とにかく気持ちいい。

 

「お~い佐々木、なんか頬がだるんだるんになってるぞ」

 

 うるさいな、乙女にそんな不躾なことをいわないでくれ。

 

「へいへい。なんかみんな同じリアクションで同じことを言うなぁ」

 

 まあこれは仕方ないだろう。

 そしつ少しして頭をぽんぽんとされた。終わりらしい。思わず、ふぅ、という我ながら悩ましい溜息が出てしまって少し恥ずかしかったがキョンは気にした様子はない。気付いてもないだろう。

 さて、と。

 

「それでどうだったんだい、僕の撫で心地は?」

 

 少しだけ卑猥に聞こえないでもないが、無視しよう。

 キョンが腕を組んで唸っている。採点中か?ふと、顔を上げた。「A-だな」

 

 ……………………………………………………え?

 

「だからA-だよ。悪くない」

 

 涼宮さんには勝った!が、九曜さんや橘さんに負けたのは屈辱……

 

「ふむ、髪質がな。さらさら加減は文句なしといえばそうだが、他の評価をすると些か普通だな。マイナス点があるんじゃなく、むしろプラス点がそのくらいだったと言うことだ。まあ落ち込むな、どうせ俺の主観的判断だし根拠なんかもない。平均を飛び越している事だけは確約するし、男側から見て良い撫で心地に値することもほぼ確実だ。さっき挙げたヤツらのレベルが高すぎたというのもあるからな」

 

 …………………いや、それらを総合してショックなんだが。

 

「まあ仕方ないさ、髪質は天性だし遺伝子的な決定でもあるしな。TFEIは情報統合思念体出身でも天蓋領域出身でもレベルは高いみたいだからその辺は違うのかもしれんがな」

 

 ……………………………ぐっ、仕方ない。九曜さんにキョンのブロマイド写真の一部を焼き増ししたので買収し、髪質の改変を取引き……。

 

「あっ、だからと言って神秘的パワーで髪質を変えるのは勧めないな。長門が言ってたんだが、局地的対生体情報操作の影響は情報統合思念体にも予想が不可能らしい。規則性があっても組み合わせや相互干渉なんかの影響も含めてカウントすると宇宙全体に存在する素粒子の数に相当するほどらしくて予想ができないんだそうだ」

 

 さしずめカオス理論か。DNAの改変についてはかの宇宙的存在ですら手を出せないなんて……変なところで凄い事をしないでくれ諸有機生命体。

 

「まあ落ち着けよ。変わろうとする力と維持しようとする力が均衡状態にあるからこそ人は生きていけるんだそうだぜ?」

 

「トランジスタシスとホメオスタシスかい? でもそれとこれとは話が別なのさ。人より劣ると言われて少しも落ち込まない人間なんて居ないさ」

 

 女の子で在れば尚更だよ、と付け加えるのは意味が無そうだから止めておこう。

 

「うむ、まあそうなんだがな佐々木よ」

 

「なんだい? 僕は中々メランコリーな状態にあるのだが……ね……?」

 

 気付いた時には僕の頭の上には彼の掌が乗っかっていた。キョンは穏やかな微笑を浮かべていて、これまでにないくらい大人でしっかりとした雰囲気を携えていた。

 

「俺は、佐々木が佐々木である事こそが重要だと思うぞ。変に変わろうとして変なお前になるんじゃなく、いつでも優秀で、とは言っても少しだけ抜けてたりずれてたりして、それでもやはり頼れる存在、そんなお前でいてくれ。俺はそんな佐々木が好きなんだしな」

 

 …

 …

 …

 …ねえキョン。このタイミングは卑怯だとは思わないかい? ここで落ちない女性も珍しいよ。相手にもよるけど、キョンであればそりゃあもう…………。

 あれっ? これってもっと重要なことじゃないかい? だってキョンが僕に『好き』って……。『好き』? いや、『隙』? 後者はないね、そこまでちぐはぐな会話を構成するような乏しい能力を持ってないよ、キョンは。

 つまりキョンは僕に『好き』と………ふぇえええええええええええええええええええええっ!!!!!? 

 

「そ、そ、そ、そんなの僕だって……」

 

「ははっ、やっぱそうだよな」

 

 そうだよな、って……え? 気付かれててたってのかい? こんなフラグを折る為に生まれてきたのかもしれない鈍感鈍重亀之介が? え、それって結構恥ずかし……。

 ちょっと待てよ?

 いや、このパターンは色んなところで見た事がある。ああ、そうだ。如何にもキョンがやりそうなことじゃないか。つまりこれは英語で言うところの『I love you.』やドイツ語で言うところの『Ich liebe sie.』などではなく、つまりは『I like you.』、親愛の意味だ。なぁんだ、まだか。やはり時期を見て僕、いや私が積極的に責めなければ。

 まあとりあえず意味も理解したし、会話を進めるとしよう。

 

「そうに決まってる。きみは僕の何処を見てきてたんだい?」

 

「だよな。よし、じゃあこのまま付き合って見るか」

 

 …

 …

 …

 …

 …先程の自分を数時間かけて折檻してやりたい。

 そうだよ、『好き』といわれたんだからそれは『好かれている』ということなのさ!! ヘタに疑った僕が非常にバカだった。本当に夢みたいだよ。夢落ちかい? それはない。考えられない。

 さあ、じゃあここからは前向きに理想であったキョンとの愛を育もうじゃないか……!!! 彼女達には悪いが、これがキョンの選択だ。ああキョン、僕は一戸建てでもマンションでもアパートでも賃貸でも構わない。一般的な収入さえあればやりくりできる。子どもは何人でも良いが、男に生まれたらシンジ、女に生まれたらレイと名づけて……って、僕は何を言ってるんだろう? それに子どもを作るのには……その……ぅぅ……無しだ無し! 今のは妄想だ、気にしないでくれ。ええい、消えろ消えろ!! とにかく、不束者だが末永くよろし……

 

「なんてな。はっはっは、流石に俺と佐々木じゃつりあわないよな。佐々木が勿体無すぎる、人類の重大な喪失だね。さっさとつっこんでくれよ、一人ボケツッコミみたいでバカらしいじゃないか。おっと、相当早めに出たとは言え流石にそろそろ長門も向こうについてるか。急がないとな。それじゃ悪いが俺はもう行くよ。また連絡でもくれ。ここは俺が持っとくからな、それじゃな」

 

 ……………………………………………………………そうか、こういう落ちか。ダブルフェイクかい? 酷いね。泣いてもいいかい? あれ、おかしいな、悲しいと思ってるのにでないんだよ、涙が。……ああ成程。これは怒り? 私は怒ってるんだ? へええぇぇぇぇぇぇっぇぇぇえええええええ~~~……。

 

 

 

 

 

後日談。

 

 非常に困った事になったのです。あ、わたし橘京子です。一つよしなによろしくなのです。

 そうじゃなくって、原因不明に佐々木さんから超々巨大規模な閉鎖空間が発生したのです。更に言えば、防壁が固すぎて私たちでも誰一人として入る事ができないのです。九曜さんによると、

 

『―――中は………芳しくない――状況―――』

 

 だそうなのです。しかも佐々木さんの機嫌がフルスロットルなのです、なぜか。ていうか、不機嫌が一回りしてハイ(highの方なのです)になっちゃったって感じ? でもこれより重要なのが、キョンさんがその中に閉じ込められちゃってるんですぅ~~~!!!

 しかも忌々しく罪深きアダムである古泉ニヤケ樹によると、

 

『涼宮さんの閉鎖空間にもほんの少しだけ影響しているようで、閉鎖空間内限定で佐々木さんの閉鎖空間内の様子が本当に僅か、ぼんやりとわかるのですが、新種の神人のオンパレードのようです。彼はその中でギリギリ生き延びているようですね。やれやれ、とは彼のセリフですが、僕たちはいつまで涼宮さんを騙せばいいのでしょう。閉鎖空間と神人のパラダイスですよ。しかも朝比奈さんも長門さんも更には鶴屋さんや喜緑さんに彼のクラスの阪中さんと言う少女、そして森さんまでもが超不機嫌で耐えられません。僕もそろそろ寿命かもしれません。死ぬのなら彼と同じ墓にはいりたいものです』

 

 とりあえず殲滅して太平洋に放り込んで置いたのです。これも彼のためなの……。

 とにかく、天蓋領域さんが擬人化(対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースとして実体化したらしいのです。なぜかポニテの美人だったのです)したものと長門さん(セミロングくらいに伸びててあと数日でポニーテールにしそうなのです。敵が強化されましたね、忌々しいのです)の協議と共同考察によると、あと数日で生きてでられるはず無そうなのです。とりあえずは安心しましたぁ。ふぅい。

 ま、彼が出て来た時にはそれはもうぶっちゅーっと濃~っ厚なベーゼを……やだ、あたしったらなに考えて……。あん、不潔ッ♪ 

 

 

 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年09月06日 02:19