涼宮ハルヒのOCGⅠ


いつもの通り、SOS団は平凡な日常を送っていた。ハルヒはパソコンの前でマウスをせわしなく動かしながら何事かやっていて、長門は黙々と読書、朝比奈さんは最近買ってきた茶の葉についての本を読んでいる。というか朝比奈さん、そんなに一生懸命お茶について勉強しなくてもいいですよ。

ちなみに俺と古泉はいつもの通りゲーム・・・といっても最近はカードゲームだ。小学生の時に流行った○戯王ってやつでな、オセロやチェスにもいい加減飽きたのでここ2週間ぐらいはこれをやってるというわけだ。

「では、手札から緊急テレポートを発動します。デッキからクレボンスを特殊召喚して、フィールドの星3モンスターとシンクロ、マジカルアンドロイドを特殊召喚します。」

おっと、そうはさせるか。特殊召喚時に奈落の落とし穴を発動するぞ。何かチェーンはあるか、古泉。

「残念ながらありません。カードを一枚伏せてターンエンドです。」

そうか、なら俺のターンだな。えー墓地には風属性が2体、闇が3体・・・と、いけるな。墓地の風闇を除外して手札からダーク・シムルグを特殊召喚、んで手札からハーピィクイーンを通常召喚、魔法カード死者蘇生を発動、対象は古泉の墓地のクレボンス。6シンクロで召喚するのは・・・氷結界の龍、ブリューナク。手札を一枚コストにしてその伏せカードをバウンスだ。チェーンするか?

「いえ、残念ながらできませんね」

ならバトルフェイズ、ブリューナクとダルシムで攻撃だ、全部通れば俺の勝ちだが、どうだ?

「僕の負けです。いやはやあなたは強いですね。これで7連敗です。」

いやどうみてもお前が弱すぎるんだろ、古泉。というか構築が悪い。いくら自分が超能力者だからってサイキック族ばっかいれればいいってものでもないぞ。パイプ椅子によりかかりながら大きく伸びをしたとき、ふいに長門と目があった。読書は終わったのだろうか。珍しいこともあるものだ。どうした?長門。

「どういったゲームをしているのか気になった」

長門が気になるなんて珍しいな。コンピューター研との勝負の時もそんな雰囲気をまとってたっけか。ルール教えてやるからやってみるか?

「そうする」

長門に説明している(といっても30秒ほどだが)と、いきなりハルヒが声をかけてきた。どうやらこいつにも長門が何かに興味を持つことは珍しいと感じたらしい。

「有希が興味持つなんて珍しいわねえ・・・。ねえキョン、古泉君。あたしにもルール教えなさいよ」

今俺は長門に教えてるんだ。古泉、任せるぞ。

「承知しました。では涼宮さん、ご説明しましょう。まずこの山札をデッキといいまして・・・・」

まあハルヒも行動は常軌を逸しているが勉強はできるし頭もいい、10分ほどで大体把握したようだ。長門?俺が説明して1分ほどで終わったよ。俺がわざわざ説明する必要あったのかね。

ハルヒと長門がデュエルをしてる様子を(デッキは俺と古泉のを貸してやった)朝比奈さんのお茶を飲みながら眺めていた俺と古泉だったが、どうやら長門だけでなくハルヒも○戯王にはハマったらしい。結局今日は朝比奈さんに時間を言われるまで誰も帰ろうとしなかったな。

「あ~あ、もっといろんなカードないのかしら?古泉君、○ナミの知り合いっていたりしない?」

学校からの帰り道、ハルヒが不満そうな顔をしながら言った。ちなみに今日古泉の(構築目的不明の)デッキを使っていたのはハルヒだ。

「残念ながらすぐには思い当たりませんね。今日帰宅したら調べてみます」

さすがに機関といえどもカードゲーム会社の伝手はなかったようだ。まあそりゃそうだわな、高校生にもなった俺たちが今更カードゲームをやるなんて誰も思わんだろう。

「あたしも今日帰って少し調べてみようかしら」

しかし本当に珍しいな、ハルヒが突発的に何かに興味を持つのは珍しいことではないが、大抵は一日かそこらで終わるものだ。この調子だと明日も放課後はデュエルになるかもな。



翌日、掃除当番+岡部の呼び出しでかなり遅めに部室に行った俺は驚愕した。部屋の片隅には山のようにダンボールが積み上げられ、机の上には大量のカード、そして奥ではハルヒと長門がせわしなくデュエルを続けている。

「いくわよ有希!剣闘獣ラクエルとベストロウリィをデッキに戻して、剣闘獣ガイザレスを特殊召喚! フィールド上のライラとガロスを破壊するわ!何かチェーンある?」

「ない」

「じゃあガイザレスでダイレクトアタック!」

おいおいなんだこの異様な光景は。朝比奈さん、いったい何がどうなったんですか?

「えーっと、昨日古泉君の機関に、カードを大量に売りたいって人から電話があったらしくて・・・」

それでここにあるのは全部そのカード、というわけですか。まあ新品じゃないから傷ありのものが多いがそれでも一枚数千円するような代物もある。

「長門さんが情報操作で作ったカードも半分くらいはいってるみたいです」

長門、それはどう考えても情報操作の無駄使いだぞ。


「私のターン、メインフェイズに手札から大寒波を発動。チェーンは?」

「ないわ」

「そう。墓地のライトロードはライラ・ライコウ・ルミナス・ガロスの4種類、手札より裁きの龍を特殊召喚。効果発動、1000ポイントのライフを払い、このカードを除く全てのカードを破壊する。」

ハルヒも長門も昨日ルールを覚えたやつとはとても思えないほど、デッキ構築もプレイングも向上している。いったいどうやったら一日でこんなに上手くなるんだ?

「二人とも、昨日は遅くまで調べてたらしいですよ」

朝比奈さんがお茶を淹れながら言った。やれやれ、そんなに面白かったのかね昨日のデュエルは。

「おっと、あなたもいらしていましたか。」

部室のドアをあけながら片手にダンボールを抱えた古泉が入ってきた。朝比奈さんから聞いた話だが、あれは本当なのか?

「ええ、我々の方でも想定外でしてね。機関の方で把握できなかった動きとなると、やはり涼宮さんの能力、ということになるんでしょうね。」

なにがやはり涼宮さんの能力、だ。というか機関はこんなにカードを買って財政的に大丈夫なのか。

「去年の孤島での費用の二十分の一です。安いものですよ」

古泉はニヤニヤしながら言った。ダンボールの中身はデッキケースとデュエルフィールドだったらしい。

「どうです?あなたもデッキ構築しますか?」

ああ。悪いがやらせてもらうぜ。ハルヒの能力が俺にプラスに作用することなんて滅多になさそうなんでな。

「あ、キョン君。デッキ組んだら私とやりましょうね?」

え、朝比奈さん。未来でもこんなことやってるんですか?というかデュエルできるんですか?

「この時間軸の何倍も流行ってますよ。それ以上は・・・禁則事項です」

朝比奈さんの言うとおり未来でも○戯王が流行ってるとしたらどんな風にやってるんだろうか。まさかバイクに乗って・・・・そんなわけないか。

「死者転生を発動。手札を一枚捨てて墓地から裁きの龍を回収。召喚条件を満たしているので特殊召喚。起動効果、コストを払って全体除去を・・・」

「甘いわ有希!効果発動したときに罠発動!剣闘獣の戦車」

「・・うかつ」


ハルヒと長門は相変わらず白熱している。まあ、たまにはこういうのも悪くないかもな。よし、朝比奈さんやりましょうか

「はあい。」



END

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