その日、俺は誤ちを犯した。
「みくる。夏のせいだ。そうだ。夏が全て悪い」
偶然着替えを見てしまった俺は、みくるを産まれたままの姿にしていた。
「はうはう、こんな事をしたらハルヒさんが」
唇を優しくふさぐ。指先タッチ感覚。
そして、俺は燃えた。燃え上がった。世界は溶解し、俺の前に征服され、一人の女を支配した俺に不可能はなく、万能感が、俺に自身を神と告げていた。
ガチャ。部室の扉が開いた。
「ちょっと何してるのよ、キョン!」
驚愕というのを絵に描いたような表情でハルヒが俺を見ていた。
そして、その目に涙が盛り上がってくる。
「待ってくれ。違うんだ、ハルヒ」
俺は手を上げてそう言っていた。
「何が違うのよ、キョン。もういや、皆いやーーーーーーー」
そして、ハルヒの記憶から俺達は消えた。
入学式まで時間は戻り、俺の後ろには普通の女。
更に、古泉が調べてところではハルヒは坂の下の進学校に行ったのだという。
俺は、愕然として入学式を迎えていた。
あの時をまたやり直せたら、夏の妖精の誘惑すら振り切ったのに。
翌日、目を覚ました俺は、重い気持ちで、着替え、朝食を終え、そして、ダッシュしていた。
遅刻だ。このままでは完全に遅刻だ。
そして、学校に向かう、最後の角を曲がった瞬間。
背後から女生徒に激突していた。
かばんが開きモノが散乱する。
その女生徒が顔を上げる。黄色いカチューシャをした凄い美人がそこにはいた。
「ちょっとあなた。前に会った事がある」
もし、ハルヒに再び出会えるのなら。
そんな偶然を神が起こしてくれたのなら。
もう間違わない。
もう道を間違えはしない!
「ああ、会ったさ。三年前に、俺はジョン・スミスだ」
俺はハルヒを抱きしめてそう言っていた。
まわりの遅刻気味の生徒の視線も気にしなった。
もし、再び、やりなおせるのなら。
「今度は浮気したらダメだからね」
ハルヒが怒った目をしてそう俺を睨んだ。
判っていたのかハルヒ。お前もやり直したかったのだな。
あの日、あの時をやり直せるのなら!
通学路の脇にあるラブ・ホテルが俺達を誘っていた。
もう俺達の愛を阻むものは何もなかった。
そう、夏の妖精ですらも。
二人のラブストーリーはまだ始まったばかりだ・・・・・・。
涼宮ハルヒの再 会 完 灼熱の夏再び、みくる・マイ・ラブ~二度めの誤ち~につづく