「コックリさんやるわよ!!」
また涼宮さんが騒ぎだしました。
「キョン! なにやってんの!? 早く500円玉出しなさい!」
「なんで俺なんだ!? でなんで500円玉!?」
「高額の方が御利益があるのよ。」
いつもの夫婦漫才です。

詳しい手順は知りませんが、涼宮さんはどこからか取り出した模造紙に『はい・いいえ』
とかひらがな50音、テンキーの並びで数字を手早く書き込んでいきます。
鳥居の絵が禍々しいですね。

「さあみくるちゃん! 有希! 指を出すのよ!」


「コックリさんコックリさん、みくるちゃんに恋人はいますか?」
なんだかよくわからない手順のあと、質問が始まりました。
「へぇぇ!? いきなりそんな質問なんですか!?」
「みくるちゃん静かに! 指を離しちゃ駄目よ!
 最後に手順通りに終わるせないうちに指を離しちゃ何かに憑かれるから!」
「何かって何なんですかぁ!?」
「何かって何なんかなのよ! ほら力入れない!」
500円玉はずりずりと『はい』と『いいえ』の間をさまよっています。
結局朝比奈さんが競り勝ち、『いいえ』の上に500円玉が来ました。
コックリさんってそんな遊びでしたっけ? 

「(おい古泉、まさかまた変なことが起きたりしないだろうな?)」
「(さあ、よくわかりません。今のところは何もないようですが。)」
長門さんは500円玉に指を乗せているから会話に参加できません。
かすかな表情から察するに、この遊びを楽しんでいるようですが。
「(長門の様子から考えると大丈夫そうだな。)」
「(そうですね。涼宮さんは誰かがやっているのを見て羨ましかっただけなんでしょう。)」

「では、みくるちゃんの前世は何?」

「(ちょ!?)」
「(未来人朝比奈さんの前世ですか。もし前世というものがあったとして、
  それが現代の我々、しかも我々の知り合いだとしたら…。)」
「(知り合いだったらまだいい! もし朝比奈さんの前世がハルヒだったら!?)」
「(ちょっとした恐怖ですね、その考え方は。一考の余地があります。なるほど、だから朝比奈さんが選ばれた。)」
「(おい古泉! 冗談でもやめてくれ!)」
「(そうしましょう。本気で怖くなってきました。)」

500円玉は無難に『ふ』『ら』『ん』『す』『の』『お』『ひ』『め』『さ』『ま』
と動きました。くわばらくわばら。

「んじゃー、キョンの好きな人は」
「なんで俺が出てくるんだ!? それもいきなり俺の好きな人だと!?」
「部外者は黙ってなさい!!」
「なるほど、そういうことですか。」
「古泉くんも黙る!」
「おおせのままに。」
って、長門さんの眼に力が入ってませんか!?
「(涼宮さんは実は最初からこの質問をしたかった、いえこの質問だけがしたかったようですね。)」
「(なんだよ、また俺を笑い物にしたかっただけなのか?)」
「(……一度笑い物になったほうがいいかもしれませんね。)」
「(どういう意味だ。)」

「はゎゎ」といいながら健気に指を添え続けている朝比奈さん。
どう考えても涼宮さんと長門さんの指には力が入っています。プルプルしてますよ。
500円玉は『す』と『な』の間をギリギリと行ったり来たりしています。
最初は均衡して停止ししかけたのですがその位置を見て彼の
「『ち』って誰だ?」発言からあわててちょっとずれました。
「ちょっと有希、力入ってんじゃないの!?」
「入れていない。あなたが力を抜くべき。」
「人聞きわるいわね。……そろそろ諦めたら?」
「あなたは自分の不利を悟っているはず。7文字と5文字、どちらが有利かは明らか。」
「有希らしくないわね。濁点を忘れるなんて。」
「……濁点を考慮に入れてもわたしが有利。」
「おい、ハルヒ、長門、いったい何の……」
「「うるさい。」」
「はい…。」


涼宮さんが動きました。
「ひぇぇぇ!!」
「なかなかやるわね。」
「許容範囲内。しかも状況は私に有利になった。」
これじゃあわかりませんよね。では今起こったことを説明しましょう。

ギリギリと500円玉が『な』に動き出した瞬間、涼宮さんがその方向へ力を入れました。
当然力を入れている長門さんの指のベクトルに涼宮さんの力が加わり、
一気に500円玉は『な』の上を通り過ぎ、『は』の方向へ進みます。
すぐに長門さんは事態を理解、その勢いを加速させて『ゆ』まで500円玉を運びます。
そこで涼宮さんは軌道を修正、いま500円玉は『や』と『ゆ』の間の空白にあります。
何より一番すごいのは指を離さなかった朝比奈さんですね。

再び膠着状態。
「おい、そろそろ質問を変えたらどうぐぁっ!!!!」
「キョンくん!!」
「あなた!?」
「ああ!! キョン!!」

……ひとり変な事を言っていますが流しておきましょう。
何が起きたか再び解説です。
『ゆ』から再び『は』に動かすように仕掛けた涼宮さん。
しかし今度は長門さんがそれを読んでいて500円玉を机に押し付けていたのです。
ですがお互いの馬鹿力が作用しあったのか、500円玉はその場で跳ねて、




彼の額に突き刺さりました。 


彼は白目をむいてひっくり返ってます。
「きゃあぁぁーー!!血が!血が!!」
「ちょっと!噴水みたいじゃない!!」
「あqwせdrftgyふじこlp;@!!!」
長門さん!! 呪文は駄目です!!!!
やれやれ、と、これは彼のセリフでしたね。

結局、僕と朝比奈さんとで彼を保健室に運んでコックリさんは終了しました。






次の日、
「エンジェルさんやるわよ!!」
結局涼宮さんは懲りずに名称のみが異なる遊びを提案してきました。
やれやれです。
おや、そう言えばコックリさんを手順通り終わらせないと
危ないことになるって話はどうなったんでしょうね? 



fin?


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