「やめろ古泉!!」
赤い玉がこちらに迫ってくる。
俺の前で赤い玉は何かに阻まれるように激突し、激しくスパークし、そして地面に落ちて古泉に戻る。
「やはり、無理でしたか」
古泉は苦笑すると、立ち上がった。
「でも物理的手段なら」
古泉がふところから黒光りする銃を取り出し、俺に突きつけた。
そして引き金をひく。
「・・・・・・」
何も起きはしない。
「私では無理なのですね。やはり」
俺は古泉の手を掴むと銃を取り上げ、遠くに投げ捨てた。
「とうとう本当の事を話す時が来たようです。貴容さん」
古泉はニヒルな笑を浮かべると俺に言った。
「どういう事なんだ?」
「あなたは神を信じていますか?」
「神? ハルヒの事か?」
「違います。本当の神様です」
「別に否定はしないさ。いた方がいいと思う。死後の世界だってあった方がいい。悪人も善人も結果は同じなんて理不尽だしな」
俺は肩を竦めた。
「神は、実在します。二人の神が」
この世には、善の神と悪の神がいて戦っていると古泉がいった。
そして、最後の決着をつける為に二人の神の代理人とも言える存在を生み出したのだと。
「それがあなたです」
「すまん。なんだって?」
「あなたは神によって創造された代理人の一人なんです。だからこそもう一方の代理人以外に殺す事は出来ない。世界は、あなたともう一人の代理人の最終戦争によってその運命が決まるんです」
「もう一人は誰なんだ?」
それは俺がよく知っている相手の名前だった。
「俺はそいつを倒すしかないのか」
閉鎖空間が赤く染まっていた。あり得ない色に染まっていた。
「それはあなた次第です。あなたは神によって創造された存在、第三の選択をする事すら」
確かに小さい頃から、まわりの奴が、ザコ、カスにしか思えなかった。
どのような相手ですら俺の敵ではなかった。勉強などゲームのようなものだった。
「だが、世界の運命と言われてもな。いや、元々、SOS団は世界の運命を背負わされていたのだったな」
俺は笑って肩を竦める。神は、ハルヒにせよ、本物にせよ。
何時もそうやって俺をけしかける。
「不可能な事、大きな事を目の前に出されると征服したくなる性質でな」
俺はポケットに手を突っ込むと歩き出した。
閉鎖空間がはじける。
俺は町に歩き出した。
そして、俺は部室棟に行き。そしてSOS団の扉を開いた。
そこには涼宮ハルヒが立っていた。
「ハルヒ、いや、実は、古泉の事なんだが」
眼が虚無的だった。まるでハルヒじゃないみたいだ。
「こんちは、キョン。いいえ、佐橋貴容さん。実は、私は涼宮ハルヒではありません。いいえ、涼宮ハルヒなどという人間は本々存在しません。日本に涼宮なんてみょうじはないんです」
なにを言ってるんだこいつは。
これが最後の戦いの始まりだった。
次回につづく