~登校中~

 

ハルヒ「こないだのこと覚えてる? ルソーが行方不明になった時のこと」
キョン「ん? ああ、覚えてるぜ。1時限目の授業をサボって街中を走り回った時のことだろ。その日の2時限目が体育で、体力を使い果たして疲労困憊していたから、辛かった記憶として俺の脳細胞に刻みこまれている」
ハルヒ「あんたの体力が低いだけなのよ。私はピンピンしてたわよ」
キョン「お前の基準で判断されても困る……」

 

ハルヒ「でね。私、思うのよ」
キョン「何をだよ」
ハルヒ「あの時、みんなで手分けして探し回ったのにルソーは見つからなくて、結局ルソーは自分で学校にやって来たわけじゃない」
キョン「ああ。放課後にまた街中を走り回らなきゃいけないのかと辟易してたから、とても助かったよ」
ハルヒ「その時はあまり気にしてなかったけど、ルソーが自分から学校へやってくるっておかしくない?」
キョン「何故だ? 飼い主である阪中を追いかけて、わざわざあの登り坂を歩いてきたんだろ。いなくなった犬が飼い主の許へ帰って行くことはよくあることじゃないか」
ハルヒ「阪中家に帰るのなら分かるけど、一度も来たことのない北高へやってくるなんて、偶然にしちゃ出来すぎだわ」
キョン「迷子になったルソーが街をさまよっているうちに、たまたま北高にたどり着いただけのことだろ。過程をどうこう言ったって、現実に起こった事実はそうなんだ。ならそれでいいじゃないか」

 

キョン「ルソーが北高へやってきたのは偶然だ。深く考えるな」
古泉「いえいえ。一概に偶然とも言い切れませんよ。僕らの知らないだけで、ルソー氏は阪中さんと一緒に北高へ訪れていて、それを記憶していたルソー氏が北高へやってきた可能性もあります」
キョン「なんだっていいだろ、別に。いなくなっていたルソーが自分から阪中の許へ帰ってきた。それだけで十分じゃないか。それ以上の考察など必要ない」

ハルヒ「私ね、思うのよ。あの時ルソーが北高へやってきたのは、神さまのおかげなんじゃないかって」
キョン「はあ? 神さま?」
ハルヒ「そうよ。みんなでお参りしたじゃない。坂の麓の小さな社に祭られている神さまに」
キョン「藤原さま、だったっけ? んなわけないだろ。どこの世界にドッグフードを奉られて、願いを叶えてくれる神さまがいるってんだよ。軽くバカにしてるっぽいじゃないか」

 

キョン「ネコのエサを神社に置いてった俺が言うことじゃないが」
ハルヒ「本当につまらないヤツね。あんな都合の良いことは普通起こりえないことでしょ。だったらそれが例え偶然であっても、神さまのおかげってことにしておいた方が面白いじゃない」
キョン「お前に言わせりゃ、神道も仏教も拝火教も、面白いかどうかという二極論で決められるんだろうな」

ハルヒ「ねえキョン。あんた最近、無くした物ない?」

 

ハルヒ「ううん。最近じゃなくてもいいわ。子どもの頃でもOK。それに、どんな小さな物でもいいわよ。ボールペンとか、自販機の前で落とした10円玉とか」
キョン「……それを知ってどうしようっていうんだ。まさか、そんなどうでもいいことをまた藤原さまにお願いしようっていうんじゃないだろうな?」
ハルヒ「そうよ! あんたが藤原さまの存在を信じていないから、もう一回藤原さまに紛失物を探してもらうのよ!」
キョン「お前な。神さまをパシリか何かと思ってるんじゃないだろうな。神さまだってお前の思いつきに付き合ってくれるほど暇じゃないと思うぞ」
ハルヒ「何言ってるのよ。神さまなんてのはね。崇める人がいてこそのものじゃない。信徒を失った神は神とは言えないわ。私はそんな消え去りつつある神さまに救いの手を差し伸べてあげてるの」
キョン「なんで上から見下ろしてます目線なんだよ。そのうちお前の頭上に神罰がくだされるぞ」
ハルヒ「それも面白そうね。神罰だか仏罰だか知らないけど、くだせるものならくだしてみなさいってのよ。言っとくけど、私はやられたら倍以上にして返すが信条なの。それは神さまに対しても例外ではないわ」

 

ハルヒ「そんなことはどうでもいいのよ。いいからさっさと言いなさい。無くした物はなに? 神さまに探してもらえるにふさわしい立派な遺失物を提示しないさい!」
キョン「はあ……。相変わらず無茶言いやがる」

 

キョン「まあ、しいて言うなら、みんなのゴルフ4かな。こないだ久しぶりにやろうと思ったんだが、どこにしまったか分からなくなってしまったんだ」
古泉「ああ、ありますね。そういうこと。長いことやってないから久しぶりにやろうと思ったけれど、ディスクがどこにいったか分からなくなってしまったゲーム」

 

ハルヒ「じゃあ早速、藤原さまの神社にキョンのみんゴル4が見つかるよう、お願いしておきましょう」
キョン「面倒くさいな」
古泉「まあ良いじゃありませんか。藤原さまへお参りしたことで困った事態に陥るわけでもありませんし」
キョン「そうだな。奇天烈なハルヒパワーが炸裂したとしても、俺のみんゴル4が見つかる程度のことだろうし」
ハルヒ「んじゃ、早速神社に行くわよ!」

 

 

~~~~~

 

 

藤原「ぼりぼりぼり」
みくる「……あの」
藤原「ぼりぼりぼりぼりげふぅぼりぼり」
みくる「なんで突然私を呼び出したんですか? そして何故ドックフードをゲップが出るまで食べながら不遜な顔つきで私を出迎えるんですか?」

 

藤原「朝比奈みくる。唐突だが、緊急事態だ」
みくる「とても緊急時の姿には見えないんですが」
藤原「ん? ああ、本当だ。ズボンのチャックが開いてた」
みくる「そういう意味じゃなくてですね!」

 

みくる「私、これから学校なんですけど。用があるなら放課後にしてくれませんか?」
藤原「むしゃむしゃ。この馬鹿者め。人の話をちゃんと聞かないか。緊急事態だと言っただろう。緊急ということは急いで対処する必要がある状況ということだ。放課後までいちいち待ってなどいられるか」
みくる「あ、言われてみればそうですね……すいません」

 

みくる「で、その緊急事態って何ですか?」
藤原「うむ。よくぞ訊いた。ぺちゃぺちゃごくん」

 

藤原「涼宮ハルヒの一味に、キョンとかいう鹿みたいなアダ名の男がいるだろう」
みくる「ええ」
藤原「あの男がゴルフゲームのディスクを紛失したんだそうだ。ふん。馬鹿げたことだ。アダ名だけでなく頭の中身まで動物並みというところか」
みくる「……それが、どうかしたんですか?」
藤原「鈍いな朝比奈みくる。ここまで話したら普通、流れで分かるだろう? 最後まで言わないと分からないくらい鈍感なのか? カマトトぶってるのか?」
みくる「いえ、なんとなく想像はついているんですが……でもまさかね。藤原さんがそのゲームを探してあげようとしているなんてわけありませんし」
藤原「なんだ、やはり分かっているんじゃないか。余計な手間をとらせるなよ」

 

みくる「……あの。ひとつ訊いてもよろしいですか?」
藤原「手短にな」
みくる「ひょっとしてそのドッグフード、またあの神社にお供えされてたものじゃ……?」
藤原「思ったより勘がいいじゃないか。その通りだ。あんたの仲間たちがまた僕に無くし物を探してもらいたいとかで置いていったのだ。目上の者に物を頼む際、上納品を納めて依頼するとは。なかなか分かっている連中じゃないか」

 

藤原「はっはっは!」

 

みくる(ああ、そうか。ハトがパンくずを投げてもらえる場所を覚えて、公園にむらがってるみたいな感じなんだ……)

 

みくる「で、でも私はこれから学校がありますから。そんなことで授業を休むわけにはいきません。これで失礼させていただきます」
藤原「おいちょっと待てよ」

 

藤原「なくね? この流れでそれはなくね? これは、あれだろ。『しょうがないですね。それじゃキョンくんのおうちまで案内しますよ』って展開が正解だろ?」
みくる「それは私にとってバッドエンドルートでしかないので。これで失礼させていただきます」
藤原「ちょっ、ちょっ待てよ! 分かった分かった。分かったって、しょうがないな。ちょっとだけだぞ」
みくる「いりませんよ、ドッグフードなんて」
藤原「まあそう言うなよ。分かってるって。僕は何でも分かってる。ドッグフードは欲しいけど、素直に頂戴とは言えない複雑な乙女心が邪魔をして背伸びしているんだよな。みなまで言うな」
みくる「や、やめ……! ドッグフードおしつけないでくださぁい!」
藤原「素直じゃないな。遠慮することはないさ」

 

藤原「はい渡しました! ドッグフード渡しました! 報酬を受け取ったんだから、ちゃんと協力するんだぞ朝比奈みくる!」
みくる「いやだって言ってるじゃないですか! 返しますからこれ!」
藤原「返却は認められないぞ。一度受け取ったからには、それはもうあんたの物だ」
みくる「うわっ、なんかくさい! 梅雨の時期の犬のにおいがする! いりませんって、返します! 受け取ってくれないんならもう捨てちゃいますよ!」
藤原「あんたは他人からもらった物を、いらないって言って返すのか? 人の気持ちを無下に踏みにじるような心の狭い人間なのか!?」
みくる「あからさまに嫌がらせじゃないですか、これは!」

藤原「しかたないな。じゃあもう3個追加してやるから。な? 欲深いあんたでも、これなら満足だろう。ほら、やるよ」
みくる「いりませんって! 分かっててやってるでしょ、絶対! どこをどう見たらこの場面で私がドッグフードを追加要求してるように見えるんですか!? 数が増えれば増えるだけ逆効果ですよ!」
藤原「じゃあ逆にお前にやったドッグフードを返してもらってやるから。それならいいだろ?」
みくる「何がいいんですか!? もうわけが分かりませんよ!」

 

みくる「私は絶対に行きませんからね!」
藤原「………そうかよ」

 

藤原「ふーん、そうかよ。ああそう。そうなんだ。あんたは仲間が困っていても見知らぬふりして背中を向けるような冷血な人間だったわけだ。そいつは知らなかったぜ……」 チラッ

 

藤原「あぁあ、かいかぶり過ぎてたかな~。朝比奈みくるは近年まれに見るほどの仲間思いで、悩んでいる人を見かけたら放ってはおけない慈愛に満ちた人間だと思っていたんだけどな~」 チラッ

 

藤原「まいったな。俺は困ってる人を見かけたら助けてあげたくてしかたなくなるほど出来た人間だけど、残念ながらキョンってヤツの家が分からないんだよな~。あぁ、困ったな~」 チラッ

 

みくる(うわぁ……めんどくさ……)

 

みくる「ええそうです。私はキョンくんが無くしたゲームソフトを探すお手伝いもしてあげない冷血な人間なんです。それじゃそういうことですので。私は授業がありますのでこれで失礼します。それじゃ」
藤原「いやいやいや待てよ。まあ待てよ。ちょっと落ち着こうぜ朝比奈みくる。今のはほら、あれだよ。場を盛り上げるための演出っていうかさ、そういう発言なんだよ。雰囲気読もうぜ」
みくる「ちょっと、腰にまとわりつかないでくださぁい! どこ触ってるんですか!?」

 

みくる「大声出しますよ!? そしたら警察がやってきて、藤原さんは婦女暴行未遂の現行犯で逮捕されちゃいますよ!? それでもいいんですか!?」
藤原「ほほう。あんた、僕を脅迫するつもりか? ん?」
みくる「脅迫されてるのは私の方ですよ。逮捕が嫌なら、さあ、早く離してください」
藤原「面白いじゃないか。この僕と脅迫合戦をやり合おうってのか? ふふん。なんて愚かな」

 

藤原「あんたがその気なら、僕にもそれ相応の対応をとらせてもらうことになるぜ。それでもいいのか?」
みくる「この状況で藤原さんに何ができるっていうんです? 私が大声を出すだけでチェックメイトなんですよ?」
藤原「ふふふ。読みが浅いな朝比奈みくる。本当にそう思っているのか?」
みくる「な、なにがですか……。口先ばっかりの藤原さんに何ができるっていうんですか」

 

藤原「大声出すぞ。いいのか?」
みくる「はあ?」

 

 


藤原「みくるううぅぅうううぅぅ! 見捨てないでくれえええぇぇぇ! うおおおおん! うおおおぉぉぉん!」
みくる「え!? な……ちょっと藤原さん……!?」
藤原「僕にはお前が必要なんだ! なのに、別れるなんて嫌だぁぁぁ! キミが僕を見捨てないと言うまで、僕は、僕は絶対にキミを離さないぞ!」
みくる「なななな!? わ、わけのわからないことを言わないで! ははははなしてくださぁい!!」


藤原「ひぃぃいいいぃぃぃ! うぉぉぉおおおおぉぉぉん! ぎゃおおおおぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉん!」

 

通行人「あら、何なのかしら。朝っぱらから騒々しい。通学路で別れ話?」
通行人「あんな若い身空で人目もはばからず。最近の若い者はみっともないったらありゃしない」

 

みくる「わ、わ、わ、みんな見てますよ!? 恥ずかしくないんですか!?」
藤原「キミを失うくらいなら、みっともなくたって構わない! 僕は絶対にあきらめないぞ!」

 

通行人「あんなに泣き叫んで。彼氏の方もかわいそうに」
通行人「何があったか知らないけど、彼女も話くらい聞いてあげればいいのに」
通行人「あら? あの女の子、確か、こないだ商店街でバニーガールの格好して映画を撮ってた子じゃない?」
通行人「本当だわ。確か、朝比奈ミクル、だったかしら?」

 

みくる「いやあああ! 私の意図しないところでどんどん話が大きくなってる!」
藤原「ふふふふふ。早いとこギブアップしといた方がいいぞ。【惨めなヒモ男の哀願】作戦が本領を発揮するのはこれからだ。そしたらあんた、もう二度とこの界隈を歩けなくなっちまうぜ?」
みくる「作戦名かっこ悪ッ!」

藤原「それでもいいのか? え? どうなんだ?」
みくる「うぅぅぅ……」

 

通行人「あの子もおとなしそうな顔して。ずいぶん遊んでるのね」
通行人「北高もずいぶん品が落ちたわね」

 

みくる「わ、わかりました! わかりましたから! もう離してください……」
藤原「ふん。最初からそう言っておけば良いのだ。そうすればあんたが余計な汚名をこうむることもなかったし、僕の世間体が悪くなることもなかったんだ」
みくる「……藤原さんも身体はってるんですね……」

 

 

~~~~~

 

 

カエル「……はい、鶴屋さん。パン買って来ました」
鶴屋「ご苦労さん」

 

鶴屋「あれ? これクリームパンじゃん。私が頼んだのはあんパンだよ? 間違えたの?」
カエル「あの、もうあんパンは売り切れてたので、代わりにクリームパンを買ってきたんです」
鶴屋「ええ~? ダメダメ。今の私はあんパンの気分なのっさ。クリームパンなんて食べたくないね」

 

鶴屋「やりなおし!」
カエル「ええ!? そそ、そんな……もう売店にはあんパン置いてませんよ」
鶴屋「だったらコンビニに行ってくればいいっさ。みくるはみんなの買出し係さんなんだから。クラス内での仕事はちゃんとやらないと」
カエル「ぅぅぅ……ひっく……わかりました……」

 

橘(カエルのきぐるみを着て朝比奈みくるの身代わりに学校へ潜入したのはいいけど……パシリにされるなんて)

 

橘(朝比奈みくるも学校では苦労してるんだ)

 

橘(正体がバレないためにも、早くコンビニにパンを買いに行かないと)

 

橘(泣くもんか。絶対に泣いたりするもんですか)

 

 

鶴屋「今日もみくる休みなのかな。具合でも悪いのかな?」
財前「ねー」

 

 

~~~~~

 

 

藤原「ここがあの男の家か。何の変哲もない普通にしょぼい家だな」
みくる「どうするつもりなんですか、これから。鍵もしまってますし、誰もいないようですよ。平日の午前中なんだから当然といえば当然なんですけど」
藤原「なんだ。好都合じゃないか。家人がいては面倒なことになるからな」
みくる「え!? ちょ、ちょっと藤原さん。まさかとは思いますが、家に入るつもりですか?」
藤原「ほら、さっさと裏に回るぞ。ぐずぐずするな。見つかってしまうぞ」
みくる「ちょっとぉ!?」

藤原「まったく。狭苦しい場所だな。いくら裏口とはいえ、もうちょっと余裕を持った作りにしておくべきじゃないのか。これだから貧乏人の建築物は」


みくる「あの、それはいいんですけど、これからどうするつもりなんですか? 勢いで裏口に回ってきちゃいまいたけど、やっぱり鍵がかかってますし、中には入れませんよ」
藤原「僕にまかせろ。ちゃんと考えてある」
みくる「ここまで来てこう言うのもなんですが、やっぱりやめませんか? 帰りましょうよ。勝手に入ったら犯罪ですよ」
藤原「何を言うか人聞きの悪い。いいか、朝比奈みくる。こういうのはな、考え方ひとつでどうとでもなるんだよ」

 

藤原「あんたはこの裏口から家の中へ入ることを犯罪だと考えているようだが、それは単なる思い込みだ。先入観にすぎない。不法侵入だと思うから犯罪なんだ」
みくる「他にどう解釈しろって言うんですか」
藤原「近道をするためにちょっと家の敷地内を通らせてもらいますよ、と思えばいい」
みくる「どこをどう考えれば近道のために家の二階まで上がって行くっていうんですか」
藤原「近道させてもらうだけだけど、ついでにキョンくんの部屋を物色させてもらうだけ。ただそれだけ。そう思ってろ」
みくる「物色したら完全アウトじゃないですか。まあ、家に入った段階ですでにアウトなんですけど……」

 

藤原「よし。覚悟はいいか? そろそろ行くぞ。こういうことは時間をかけず、迅速に済まさねばならないんだ」
みくる「もう帰りたい……」
藤原「ところで朝比奈みくる。あんた、ピッキングできるか?」
みくる「できるわけないじゃないですか! 私はこの時代の人じゃないという点を除けば、どこにでもいる普通の女子校生なんですよ!?」
藤原「なんだよ、使えないヤツだな。しかたない。あれを使うしかないようだな」
みくる「あれって、何ですか?」


藤原「じゃ~ん!」

 

藤原「オッキ3号!」


みくる「また出ましたよ、チン妙オブジェ!」

藤原「このオッキ3号を使えば、家屋侵入など造作も無いこと」
みくる「どうするつもりなんですか?」

藤原「まあ見ていろ」

 

藤原「オッキ3号、起動!」
オッキ『オッキオッキ』
藤原「よし、頼んだぞオッキ3号!」
オッキ『フルオッキ!』

 

 ガシャーン!

 

みくる「ひいいぃぃぃ! オッキ3号で窓ガラスを叩き割った!」

 

みくる「どどど、どうするんですか、そんな大きな音たてて! 絶対近所の人が不審に思って見に来るか、通報されますよぉ!」

 

みくる「どどど、どうしよう、どうしよう!?」
藤原「慌てるな、うつけ者め。このオッキ3号はフルオッキした時、半径1mに空気の振動を完全に遮るフィールドを展開するのだ。ゆえに、今のガラスの割れる音は僕ら以外には聞こえていない」
みくる「ほ、本当ですか……? なんか心配」

 

藤原「このオッキ3号は元々、忘年会で騒ぎたい人や、内緒の話をする人、愛を囁きあう恋人たちが周囲を気にすることなく談笑に花を咲かせられるため等のために作成された物だ。絶対にフィールド外へ内部の音を逃すことはない」
みくる「そ、そうなんですか……なんだかすごい技術をすごく無駄遣いしてるような……」
藤原「しかし、何故だろうな。このオッキ3号は便利なアイテムなのに発売されてから数週間で市場から姿を消してしまったんだ。今じゃオッキシリーズの中でも珍品中の珍品としてプレミアがついてるアイテムなんだ」
みくる「……たぶん、こういう使い方をする人がいたから販売中止になったんだと思いますよ」

 

 

みくる「で、でもどうするんですか? 音は漏れてなくても窓ガラスは粉々ですよ」
藤原「そんなことまで気を配る必要はない。家人が帰ってきて異常に気づいても、その時僕らはここにはいないだろうからな」
みくる「キョンくんとそのご家族の皆さん、本当にごめんなさい……」
藤原「そんなに気に病むことではない。そんなに警察の捜査が怖いのか? なんなら、捜査かく乱のために張り紙でもしておくか」

 

 『藤原さま+α 参上!』

 


~~~~~

 

 

キョン「なあハルヒ」
ハルヒ「どうしたのよ」
キョン「今朝、みんなのゴルフ4を無くしたから藤原さまに見つけてくださいってお参りしただろ」
ハルヒ「ええ。置き場所を思い出したの?」


キョン「まあ、そんなところだ」

 

キョン「よく考えたら、半年前に古本屋にCDとかと一緒に売り飛ばしてた」
ハルヒ「そうだったの?」
キョン「ああ。もう半年も前のことだから、すっかり忘れてたぜ」
ハルヒ「ふーん。せっかく藤原さまのご利益を確認できるチャンスだと思ったんだけど。それなら仕方ないわね」

 

 

~~~~~

 

 

藤原「どうだ、そっちは。見つかったか?」
みくる「いえ、ないです。ゲームソフトをまとめて置いてるから、このあたりだと思うんですけど」

 

 がさごそ がさごそ

 

藤原「無いな。くそ、あの地味顔男め。どこにしまいやがったんだ」
みくる「もうだいぶ探したんだけど……ここまで探して無いっていうことは、もうこの家の中にはないんじゃないですか?」
藤原「諦めるな、朝比奈みくる。遺失物の捜索ってのはそういうものだ。こういう地道な下調べをこなさなければ、見つかる物も見つからないのだぞ」
みくる「それもそうですね」

 

藤原「お、あったあった。あったぞ朝比奈みくる」
みくる「ありましたか? 良かったですぅ。これで安心して帰れます」
藤原「ほら。みんなのテニス」
みくる「みんテニじゃないですか!」

 

藤原「もういいじゃんこれで。飽きたよ」
みくる「飽きたって。遺失物の捜索は地道な下調べをこなさないといけないんじゃなかったですか?」
藤原「まあそうなんだけどな。でもほら、何事もほどほどが大切っていうか、潔さも必要だと思うんだ。引き時をしっかり見極めることも大切なことだってよく言うじゃないか」
みくる「ほどほどでテニスを出されても対応に困りますよ。妥協するんなら何事もなかったのように何もせず、そっと帰りましょうよ。それが一番いいですって」

 

みくる「あ、窓ガラスは直しておきたいですね……ガラスをどうやって手に入れるかが問題です」
藤原「まったく、朝比奈みくるは文句が多い。探せばいいんだろ、探せば」

 

 がさごそ がさごそ

 

みくる「藤原さん? いくら見つからないからって、本棚の裏やベッドの下には置いてないと思いますよ」

 

 がさごそ がさごそ

 

みくる「ねえ、藤原さんってば。机と壁の間に手なんかつっこんだって、落ちてないですよ、きっと」
藤原「分からないじゃないか。もしかしたら、本棚やベットの下にあるかもしれないだろ」
みくる「確かにそういう可能性もあるかもしれませんが。もういいじゃないですか。ガラスのことを考えて、もう帰りましょうよ」
藤原「ええい、うるさい。捜査の邪魔だ」
みくる「私がテニスを代わりに置いておくくらいなら何もなかったように帰った方がいいって言ったこと怒ってるんですか? 謝りますから、そんなにムキにならなくても……」
藤原「ええい、うるさい! 健全な若い男の部屋にはな、『ウッヒョー』 な本が隠されてるって相場が決まっているんだよ!」
みくる「ちょ、藤原さん、何を探してるんですか!?」


藤原「どこに隠していやがる。よもや机の引き出しの中なのか!?」
みくる「ダメですよ! 勝手の人の引き出しをのぞくなんて悪いことです! ていうか、最初と趣旨変わってきてますよ!?」
藤原「走りだした衝動はもう止まらない!」
みくる「ダメですぅ! そ、それ以上は!」

 

藤原「げっふううぅぅぅ! いてててて! おい、首しまってる! 首しまってるって!」

みくる「ダメなんですぅ! キョンくんの机を勝手に漁っちゃいけませぇん!」

藤原「わわわ、わかった! わかったから、わかったから裸締めはやめろ! けけ、け、頚動脈が……」

みくる「ダメなんですよぅ! 引き出しを離してくださぁい!」

藤原「お、おま、おまえが、はなせ……けへぇぇ………」

 

 がらがら がしゃーん

 

藤原「ぎゃあああ! 引き出したひっこぬけた!」

みくる「きゃあ!」

 

藤原「がふううう! 机から飛び出した引き出しが僕の左脚にクリーンヒット!」

 

藤原「いってー! 超いってー!」
みくる「あいたたた……。藤原さんが後ろに倒れてくるから、私まで倒れちゃったじゃない……です……か……」

 

みくる「……あの、藤原さん? そ、その手に持ってるのって……」
藤原「え? 俺の手?」

 

藤原「………なんだこりゃ?」
みくる「どこにあったんですか、そんなもの……」
藤原「いや、どこにって言うか、机の引き出しの中にあったんだよ」

 

藤原「引き出しがひっくり返った時に、たまたま手につかんでしまったんだ」
みくる「嘘ですよ! キョンくんの机の引き出しにブラジャーなんて入ってるわけないじゃないですか!」
藤原「本当だって! 入ってたんだよ、この引き出しに! ブラジャーが!」
みくる「藤原さんのエッチ! いつまで持ってるんですか! 早くしまってください!」

 

 がちゃがちゃ ばたん

 

藤原「やばい! 玄関の開く音!? 家人が帰ってきたのか!?」
みくる「どど、どうしよう! と、とりあえず引き出しを机に戻して……と」
藤原「朝比奈みくる! 逃げるぞ!」

みくる「に、逃げるって、どこからですか!? 下にはもう人がいるのに……!」

 

藤原「窓から隣の家の屋根へ飛び移るんだ!」
みくる「ううぅ……なんで私がこんな目に………」

 

藤原「早く! 逃げるぞ!」
みくる「なんでブラジャーを頭にかぶってるんですか!?」
藤原「気にするな! 戦利品だ!」

 

藤原「ハリーアップ!」

 

 

~~~~~

 

 

キョン「ただいまー」
妹「あ、キョンくんおかえり! 大変だよ、事件だよ!」
キョン「は? 事件?」
妹「うちにね、泥棒がはいったの!」
キョン「なに!? 泥棒!?」

 

妹「そうなの。今日お母さんが買い物から帰ってきたらね、家の裏口の窓が割られてたんだって」
キョン「そうなのか。で、母さんは無事だったのか? 盗られた物とかは?」
妹「お母さんは大丈夫だよ。買い物から帰って来たときにはもう泥棒は逃げた後だったみたい」

 

妹「どうしてか分からないけど、キョンくんの部屋だけが荒されてるの」
キョン「お、俺の部屋が? なんで?」
妹「わかんない。それでね、何か無くなってるものはないかってお父さんたちが言ってた」
キョン「分かった。すぐに見てみる」

 

妹「でね。なんだかよく分からないけど、これが裏口のガラスのところにあったんだって」
キョン「ん? 紙?」

 

 『藤原さま+α 参上!』

 

キョン「…………」

 

キョン「……ハルヒのやつ……」

 

キョン「……藤原さま超こえー」

 

 

 おわり

 


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