「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」
俺は五月雨の如く乱射を続けた。少し怯んだ所にすかさず接近を図る。
その場から離れる様に、ビルの合間へと回避した謎の兵器を、
俺は構わず追撃する。逃がすものかよ!────

 

 外の奴らを粗方片付けた俺は、独り居住区に突撃して行ったギリアムを追って来た。
辺りを見回すと戦闘中のヴァルキリーをレーダーに捉える。
「あれは…ギリアムか?……いや違う…。ギリアムじゃない…誰だ!」
俺はモニター越しにヴァルキリーの戦闘光景を確認していた。
戦闘中のヴァルキリーの傍らに人影が映っている。俺はその人物にアップする。
モニターに拡大表示された人物に思わず驚愕した。
「有希!?…何でこんな所に!?────

 

 

 

 

 俺は謎の兵器に向けて乱射を続けていたが、突然ガンポットが止まった。
幾らトリガーを引いても発砲されない。
「くっ…た、弾切れ!?うぁ、やべぇ!」
今まで防御に徹していた謎の兵器が、俺の眼前まで迫ってきた。
謎の兵器が両腕を振り上げ、機体に思い切り叩き付けきた。
「うがぁぁあぁ」
その時、俺の目の前の謎の兵器が退いた。俺の視界に飛び込んできたのは、
グレーに黄と黒のラインの指揮官用のVF-25Sだった。
「アーマード?」
そのヴァルキリーからと思われる通信が流れた。
『誰だ貴様…!ギリアムはどうした!』
「おっ俺は…それより、何なんだよこの化け物は!」
俺の言葉に返答はなく、謎の兵器が機銃をVF-25Sに向けて放った。
それを回避したVF-25Sが、謎の兵器に蹴りを一発入れた。
VF-25Sが後ろに下がり、小型誘導ミサイルを乱射した。
「すげぇ…」
俺はあまりの壮絶な光景に息を飲み、ただ見惚れていた────

 

 

 

 

 警報の後、僕と佐々木さんが所属している機関からの通信が入った。
内容は、まさかとは思ったんですが、いやはや。
佐々木さんと共に、機関へと急いだ僕達は、到着するや自分達の愛機に搭乗した。
そして、市街地で行われている戦闘区域に向けて、発艦した。
戦闘区域に到着した僕のヴァルキリーのモニターに映し出されたのは、ヴァルキリー2機。
それとヤツラの内の1機。ヴァルキリー2機の方は、新川機とギリアム機で間違いない。
「隊長!ギリアム大尉!」
僕が入れた通信に応答が返って来た。
「古泉か?そいつはギリアムじゃない、素人だ!」
僕は自分の耳を疑った、ギリアム大尉じゃない…?
『そこの素人!事情は後だ、すぐに其処の娘を連れて逃げろ!』
『はい…!』
新川隊長が戦闘を続行しながら叫んでいる。僕はモニターに映る人影を拡大した。
娘…?あれは…長門さん!?─────

 

 

 

 

 

 俺はVF-25Sのパイロットの指示通り、俺の側に倒れこんでいる娘にヴァルキリーの手を側に寄せた。
「掴まれ!早く!…じっとしてろ…」
焦るなよ、俺。大丈夫だゆっくりやれば問題ない。潰さないようにそっとだ…。
「うわぁぁぁ」
悲鳴を上げる少女を上手く持ち上げる事に成功した俺に、
『かすり傷一つでもつけてみろ!反応弾で蒸発させてやる!』
となんとも恐ろしい脅迫の通信が入ってきた。本当にやりそうだこの人。
俺はヴァルキリーを動かし、逃げようとするが。目の前にもう一機現れた。
「くそっまだいやがったのか!」
俺はスロットルを全開にし、一気に速度を上げた。
「しっかり掴まっていろ!」
後ろから銃弾が飛んでくる。俺は少女に当たらないように、ヴァルキリーの左手で彼女を隠す。
「行くぞぉぉぉぉ!」
謎の兵器が1機、2機と増えていく中機銃の乱射を、機体を左右に滑らせながら、回避し更に加速する。
機体に一発被弾したが、俺は追撃を避けるために一気に上空へと上昇した────

 

 

 

 

 

 僕はビルの合間に降り立ち、スナイパーライフルを構えた。
モニター越しにヤツラに追われているヴァルキリーを確認する。
「本当に素人なのか…。それにしては随分腕が立つようですが…」
ターゲットをロックした僕は、ギリアム機の後方を追撃しているヤツラの内の1機に向け、
トリガーを引く。スナイパーライフルの銃口が火を噴き、命中した一機が墜落する。
再び、僕はギリアム機を確認した。僕の眼に飛び込んできた光景は、
垂直に立つビルに速度を緩めず突っ込んでいき、機首を一気に持ち上げ、
ビルを平行に上っていっているのが見える。
「なんて無茶するんだ!─────

 

 

 

 

 

 「うぉぉぉぉぉぉ」
俺は機首を一気に持ち上げ、目の前のビルに平行になるように、ヴァルキリーの足をぶつけ、
スロットルを再び全開にし、一気に上昇する。
そのまま、空に飛び上がった俺の目の前に、大爆発が起きる。
「くぅ…まずい!」
更に後ろから、銃弾の嵐が飛んでくる、回避する事が出来なく、
被弾するヴァルキリーの装甲から、左腕が吹っ飛ぶ。それに続けて右腕を撃ち抜かれてしまった。
ヴァルキリーから離れた腕から、少女が穴が空いたシェルの先、宇宙に吸い込まれていく。
「くぅ…うぉぉぉぁぁぁぁぁ!」
俺は彼女に向けて一気に加速し上昇した。彼女に合わせ、俺は機体を寄せる。
「つ…掴まれ…!」
恐怖に顔を歪ませている彼女から伸ばされた手を必死に掴もうとするが、
後少しの所で機体が逸れていってしまう。くそぉ、急げ!急げ!
「まずい!目を閉じて、口を塞げ!」
彼女が宇宙空間に放り出された彼女に向かって、
俺はヴァルキリーにワイヤーを繋げたまま脱出装置を起動させ、一気に接近し、
彼女の身体を抱き締め、ワイヤーを巻き戻し無事に搭乗席に着席した。
そして、ヴァルキリーを戦闘機形態にし一気にスロットルを全開にし加速した。
何とか自動修復を始めたシェルの穴を潜りぬける事に成功した。
ふぅ…まさに間一髪って奴だな。
だが、突如俺の視界に飛び込んできたのは、謎の兵器の触覚みたいな部分が光を蓄積し、
禍々しい光を放っているところだった。
「まずい…やられる!」
俺は思わず彼女を抱き締め、目を瞑った。その瞬間、爆発音が聞こえ俺は確認するように瞼を開いた。
撃たれたのか、自由落下を始めている謎の兵器が視界に入る。助かったのか?


 どうやら切り抜けられたみたいだ。俺は緩やかに高度を下げ始めた。
「大丈夫か?しっかりしろ!」
「………」
黙ったままピクリとも動かない少女を俺は優しく抱き締めていた。
「プログラム起動を確認。目標の生体反応を捕捉、これより異時空間を繋ぐ」
それだけ言うと、急に気を失ったのか、俺にもたれ掛るように倒れこんできた。
『……聞こえる?』
突如、モニターに写し出された映像と流れる音声。ノイズが酷く辛うじて認識出来る範囲だった。
そして、モニターに映し出された今では珍しい木造の部屋に見慣れない制服姿の少女だった。
その少女は、今俺の目の前で気を失っている少女だった。
「えっと…誰だ?」
『私の固有名称は長門有希』
モニターに映る少女は、無表情のまま淡々と喋り続ける。
『現状を話せば長くなる。今は時間がない為、最優先事項を伝える。
貴方が今存在しているのは、凉宮ハルヒが構築した擬似世界。こちらの世界との並行世界になる』
何を言ってるんだこいつは、全くもって理解不能だ、いや待て、今何て言った?
凉宮ハルヒがどうのこうの…。
『強制的にこちらの世界にリンクし始めた擬似世界により、貴方を含めた数十名。
そちらの擬似世界に連れて行かれた。私はこの状況を回避、是正する為に、
そちらに私のダミー情報を送った。それにより私の情報改竄は間逃れる事に成功した。
そして、その擬似世界の断層的なプロテクトを解除する為に、予め決められた事象を想定した
時限式ウィルスをダミープログラムに組み込んでおいた。そして、貴方との接触が鍵となり発動された』
「待て、じゃあ何か?俺が本来いるべき場所は違うと?」
『そう』
成程ね、通りで違和感を拭えなかった訳だ。だが、俺には元の世界とやらの記憶がない…。
「貴方の記憶はほぼ置き換えられている。凉宮ハルヒは貴方を含むSOS団の記憶媒体
に記憶されていた情報だけは全て改竄しなかった。そこに打開策がある」
段々と音声がうまく聞き取れなくなってきた。
そして、映像が完全に途絶え、最後に聞こえて来たのは。
『…なた…いに行く…』
「おい!」
完全にモニターから映像、音声が消えた。
その後、急に目の前の少女がもぞもぞと動き出した。
「えっ…あれ、なんで私!?」
俺の顔を見た途端驚いたのか彼女が身体を後ろに退けると、
その反動で俺の右腕が下がり機体が一瞬揺らぐ。
俺の上に背中から倒れ込んだ彼女を抑えるように抱き締めたが、手を添える位置が悪かった。
「あ…いや…」
「へ…あ…キャァァァァァァァ」
耳を劈くような悲鳴が辺りに響き渡った。まったく、やれやれだ────

 

 

 

 「なぁさっきの事覚えていないのか?」
「さっきの事って…?」
「いや、解らないならいい。そういえば、君の名前は長門…長門有希か?」
「え?そう…だけど何で知って…」
思った通りか。あながちあのモニター越しに語っていた少女の言う事は、
嘘でもないのか?いや、そう判断するには早すぎるか?
「それにしても、今日は助けてもらってばかりで…本当にありがとう」
深々と腰を曲げお辞儀をする彼女に俺は微笑み、ヴァルキリーを見上げた。
「あ…あぁ、こいつのお陰…」
その瞬間、この機体のパイロットの最期の姿が頭に過ぎる。
「礼を…言われるのは…俺じゃない」
怪訝な面持ちで俺を見上げている少女を横目に、俺はスケーターを起動させ、
そのままその場から立ち去った。
後ろから何かを叫ぶ彼女の声が聞こえてきたが、俺は振り返らなかった。


 俺は闇雲に走り続けた。市街地まで来ると、見るも無残な姿に成り果ててしまった、
建物に消化活動が開始されていた。揺らぐ炎、立ち上る黒煙。崩壊した建物。
その光景を目の当たりにした俺は、胃に強烈な痛みを感じ嘔吐した。
燃え盛る炎を見て、自分の非力さや強烈な喪失感を感じていた────

 

 翌日、朝6時に非常事態宣言が解除された。俺は昨日の戦闘の爪痕を横目に、
美星学園へと登校した。教室内に入ると、何やら騒がしい。
聞き耳を立てると、聴こえてきたのは涼宮ハルヒのコンサートの話しやら、
昨日の非常事態についてだ。やれやれ、どうしてこうも暢気でいられるのかね。
俺は只外を眺めていた。只、昨日の出来事。
特に、長門有希。あの台詞が頭から離れない。元の世界…SOS団…。
何故か妙に気になる。クソっ一体なんだって言うんだ。
HRの時間が迫り教室に入ってきた教師に名前を呼ばれた。教師の後ろに続き、
軍人数名が教室内に入ってきた。
その後、俺の目の前まで来て立ち止まった軍人を俺は睨みつけると、
其処には昨日見た軍服を纏った女性が目の前にいた。
その女が俺に同行を求めてきたが、事実上の連行だ。間違いない────

 

 

 


 今、私は病院に来ている。心配性の叔父さんが連れてきたんだけど、
身体はどこも痛くないし、別に必要ないと思うんだけど…。
検査を一通り終え、ソファーに座っている叔父の隣に腰を降ろした。
「何で私検査なんかしなきゃいけなかったの?全然元気だよ…?」
「念の為さ、それより注射で泣いたりしなかったか?」
「子供扱いしないで…。それよりおじさん。さっきの話し忘れないでよね?」
「あぁ…あぁあれか。しかし、一見普通に見えて普通じゃない男のパイロットか…」
叔父が顔を顰め私から目を逸らしている。
「また訳解らない事言ってると思ってるでしょ?本当なんだよ。
初見は極普通の男の子に見えたんだけど、他の人とは違う何かを持っていて…、
叔父さんの会社の人か軍人さんか解らないけど…。叔父さんなら調べられるでしょ?
人事部なんだし」
叔父は呆れた様な顔をし、
「解ったよ、調べてみる」
「ありがとう叔父さん!お礼に今日も差し入れ持って行ってあげるからね」
私はそのまま病院の外へと駆け出して行った────

 

 あいつには俺も用があるしな。走り去る有希の後ろ姿に手を振り、
少し考え込む。いやぁしかし、何でまた何処の馬の骨か解らん奴を有希が…。うぅむ…解らん。
「ここよ」
後ろから聞こえてきた聞き覚えのある声に振り向く。
「園生…?」
森園生…俺が昔に軍にいた時の部下だ。確か…今は新統合軍参謀本部所属と何かで聞いたが。
そんな彼女が何故ここに────

 

 

 

 

 「何で俺がこんな検査受けなきゃならないんだよ」
今俺は、病院に連れられてきて色々検査を受けている。今は採血の最中だ。
「必要な措置です。あなたは正体不明の敵に接触したようですから」
そういうと、写真を突き出してきた。何々?おぉ良く撮れてる。っじゃなくて、
いつ撮ったんだ?こんなもの。軍なら何か知っているかもしれん。
「何なんだよ、あの化け物どもは!」
「軍事機密です」
「何…?」
「あなたの生い立ちから何まで調べさせて頂きました。高等部進学時にパイロットコースに転化、
成績は次席、優秀ねあなた。だからと言ってヴァルキリーに乗って戦闘するのはやりすぎね。
軍は貴方を告発する要因があります」
何だって?クソ言いたい放題いいやがって、
「あの時はあぁするしかなかった!どっかの軍人はやられちまったし…」
「それは理解してます。ですから譲歩案も用意してあるわ。貴方、軍に入るつもりはない?」
おい、今何て言った?軍に入らないかだと?俺が?
「そんな素人を勧誘するなんざ、軍の人手不足も深刻なんだな」
突然、入り口のドアの辺りから声が聞こえた。聞き覚えがあるなこの声は。
俺がその方向に視線を送ると、そこには白髪の男性が壁に寄りかかっていた。
「新川…?軍を辞めたあなたには関係ありません」
女性軍人が声を荒げた。
「いや、関係あるんだな、これが。そいつが壊したVF-25は俺達SMSの管理下にある機体だからな」
SMS?確か民間軍事プロバイダーの…。
「だろ?森園生中尉────

 

 

 

 今、俺はこの妙なおっさんの車に詰め込まれ、ハイウェイを爆走中だ。
何故、こんなけったいな事になってるのか、誰か説明できる奴がいたら出て来い。
いや、理由は明白なんだよなぁ…これが。
その後、俺はSMSへと連れて行かれ、ヴァルキリーが並ぶハンガーへと連れてこられた。
正直、意外だったな…民間ってのはグダグダしてる感じが強かったんだが…。
「資本主義って奴さ。金の力は偉大って事だな」
「何で俺をこんな所に連れてきた」
こちらを流し目で見る、新川と呼ばれた男が、右手に見えるヴァルキリーを見た。
俺はその視線の先を確認するように顔を向ける。この機体は…。
「それは…こいつの為さ」
彼の手の側にあった台の上に、ヘルメット、拳銃、写真。様々な物が乗っていた。
「ギリアムは死んだ。お前はみていたはずだ。話してくれないか?
奴がどんな戦いをして死んだか。見取った奴は、残った者へ死に様を告げる。それがここの流儀だ」
彼が、そう話し始めると、周りに人が集まってきた。その中に俺が知っている人物が2人。
古泉?佐々木!?何でこんな所に!?2人も俺に気付いたのか驚愕の表情を浮かべていた。
俺が2人に声を掛けようとした瞬間、警報が鳴り始める。
『CODE:VICTOR』その意味は解らんが、なんとなくやばい事態なんだろう。
「スカル小隊!出撃準備!ギリアムの弔い合戦だ!行くぞ!」
「了解!」
新川と呼ばれた男性が声を荒げ叫んだ言葉に、2人が声を揃え敬礼をした。
取り残された俺は一人その場に佇んでいた。俺は…何してんだこんな所で。
俺の目の前を通り過ぎた新川と呼ばれた男を呼び止めた、そして抑え切れない想いを叫んだ。
「俺を…俺をヴァルキリーに乗せろ!」
俺の想いは届く事はなく、軽く鼻で笑われた。その後、拳が急に眼前に迫り、
直後俺の身体が後ろに吹っ飛んだ。
「ノリでほざいてんじゃねぇ!これは、戦闘だ!ヴァルキリーは子供の玩具でもなければ、
お前みたいなガキが思い付きで乗る物でもない!だれか!こいつを安全区域の放り出せ!」
くそっ俺だって…出来る事なら…。畜生…俺にはなにも出来ないのかよ──────

 

 

 


 「へぇ、あんたハルヒが好きなんだ」
「だって素敵…じゃないですか?歌も凄いし…踊りも。でも…一番凄いのがオーラです」
意外と解ってるじゃないこの子、私の凄さってものが。
「へぇ…へぇ~もっとないの!?」
少し考えるように顔を背けてる、小さな学生さん。まぁ私と歳はあんまり離れてなさそうだけど。
今、この子にあいつの居場所。そう、みくるちゃんが調べてくれたあいつは。
何だか変な綽名で呼ばれてるみたいね、なんかそっちの方が名前を見たときにしっくりきたのよね。
何でかしら?あいつに私の大切なものを返して貰う為に、お忍びで出掛けたのは良いものの。
慣れてないから迷っちゃったのよね。まぁ、でもこの子のお陰で助かったわ。
「インタビューとかで言い過ぎちゃうとこ!」
んなっ…!何ですって!?私がいつ言い過ぎたっていうのよ!
他のヤツラが解ってないだけなのよ。
「私も一度でいいからあんな風になれたらなって」
恥ずかしそうに頬を染め、俯くその子の面影に何故か懐かしさを感じていた。
「あなた…私と以前会ったことない?」
「え?」
怪訝な面持ちで此方を見上げてくる彼女に、私は言葉を続けた。
「いや、何か引っかかるのよね。本当に会った事ない?」
「いえ…多分ないと思います…」
そう答えると、黙り込んでしまった。やっぱり、私の気のせいなのかしらね。
まぁいいわ、今の目的はあいつよ。待ってなさいキョン────

 

 「綺麗ね…」
シェル内部に夜の風景が映し出されている。そして、舞い上がっていくヴァルキリー。
造りものだと解っていても、これが私達の世界。これが当たり前。
「はい…でも…」
あれ?私何か気に障るような事言ったかしら、あぁもしかして。
「知り合いに飛行機乗りでもいるの?」
「おじさんが昔…。今は事務の仕事だから安心なんですけど」
そう言うと暗い表情で空を眺めているその子が突然歌いだした。
「神様に…恋をしてた事は…。こんな別れが…来るとは思ってなかったよ」
『Uh....uh...』
「へ?嘘…」
私は彼女に合わせて歌いだした。だけど彼女は止めてしまった。
それもそうか、私の声聴けば解るものね。でも、私は続けた。
「もう二度と…触れられないなら…せめて最後に…もう一度抱き締めて欲しかったよ…Uh...。
It's long long goodbye....」
「…ハルヒ?」
私は彼女に振り向き、目深に被った帽子とサングラスを取った。
「こんなサービス、滅多にしないんだからね」
彼女は感動して涙を溜めていた。うんうん、それでこそ私のファンってもんよ。
「お前達…?」
え?あれ?あいつはまさか…、いえそのまさかね。探し物がこんなに早く見つかるとは、
私はサングラスでそいつを指し、大声で叫んだ。
「見つけたわ!キョン!──────

 

 

 

 

 目の前にいる2人、1人は涼宮ハルヒで間違いない。もう1人はこの前の…長門有希。
いや、しかし。何故涼宮ハルヒが俺の情けない綽名を知っているんだ?
まったく…。いい加減本名を名乗らせてもらいたいところだが。
「おい、その綽名は…って!」
突如現れた陰。上を見上げると…まさか昨日の!?
「イヤァァァァァァァ!」
目の前の長門有希が悲鳴を上げた。いや、正直生身じゃ俺も悲鳴を上げたいところだ。
なんていったって、昨日の何だかよく解らん兵器が目の前に居るんだからな。俺が唖然としていると、
謎の兵器に向かって黒と黄色のラインの入ったヴァルキリーが突っ込んできた。
その反動で怯んだ謎の兵器をガンポッドで追撃するが、効果は薄かったようで、
謎の兵器の腕部による打撃に直撃を受ける。そのまま組合形で、空を縦横無尽に飛び回り始めた。
その後方から、緑と蒼のヴァルキリーが2機飛んできた。
取っ組み合ってる2機の周りを旋回した後、緑のヴァルキリーがバトロイド形態に変形したが、
攻撃はしない。戸惑っているようだ。それを見兼ねたのか、蒼いヴァルキリーがバトロイドに変形し、
建物に張り付いた後、狙撃した。その弾が謎の兵器の頭部を貫通した。
「当てやがった…」
一度沈黙したかと思われた謎の兵器が再び動き出し、組合っていたヴァルキリー投げ、
腕部のマシンガンで撃ち込んだ。ヴァルキリーはそのまま爆発が包んだ。
謎の兵器が飛び上がった際に、尻尾が強化ガラスに当たり穴が開いた。
おいおい、まじかよ。空気が漏れ出して…。
「そんな!冗談じゃ…」
涼宮ハルヒがその穴を見て顔色を変えている。あぁこいつもこんな顔するんだな。
いや、そんな事考えてる場合じゃない。探せ!きっと何かが…。見つけた!

 「ハルヒ!こっちだ!」
俺は長門を抱え上げ、ハルヒに向かって叫んだ。そして一目散に向かったのは、
非常用の退避壕だ。俺は開閉スイッチを足で蹴り押し、ハッチを開いた。
「思ったより…いや、行くぞ!」
俺は中に勢い良く飛び込んだ。飛び込んだのはいいものの、結構深かったんだな。
着地した俺は、バランスを崩し尻餅をついた。その反動で長門が手から離れてしまった。
「キャァァァァァ」
俺は悲鳴の方を見上げた。
「って、うぉ!」
真上から降ってきたハルヒが俺の上に落ちてきた。いや、まじで洒落にならん。
「いててて…」
「痛いのはこっちだ…。いいからどいてくれ」
目を丸くしているハルヒが俺から急いで離れた。それと同時に、
「なななななにすんのよ!変態!」
いや、俺の上に落ちてきたのはお前だろ。でもまぁ怪我がないみたいで良かった。
安堵の息を付いたのも束の間、俺の服に長門がしがみついてきた。
「おい、離してくれないか」
その言葉に我に返ったのか、こちらを見上げた長門が、
「ごっごめんなさい」
と言ったのはいいものの、中々離れない。
それもそうだ、しっかりと両手で俺のシャツを握っているからな。
「あれ…嘘…どうして?」
といいながら、頻りに俺のシャツを引っ張っている。
「何…してるんだ?」
「えっいや…」
少し涙ぐんだ目をした後、深呼吸をし一気に手を離した長門は、
「大丈夫」
とぎこちない笑みを浮かべていたが、どうだかね。
「怯えてる女の子の1人や2人、俺が守ってやる!くらい言えない訳?あんたは」
ハルヒが冷めた目で俺を見てくる。そんな目で見ないで頂きたい。
「あのな…それが出来る状況ならいくらでもいってやる。だが…」
「だが、何よ?」
「今の俺には…何も…」
自分でも情けないくらいに、今の俺は非力だ。そんな台詞言いたくてもいえないね。
「そう」
っと呆れ気味に言うハルヒが、言葉を続けた。
「とっととこんな所出ましょう。その方がお互いの精神衛生上良さそうだしね」
「無理だな」
この言葉に、立ち上がろうとしていたハルヒが動きを止めた。
「ここは非常用の退避壕だ。ドーム内には通じていない」
「ちょっとそれって閉じ込められたってこと!?」
「えぇ…」
2人が唖然とした表情をしている、それもそうだ。
しかし、何でこうけったいな出来事が重なるのかね。まったく…やれやれだ。


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