「どうです、佐々木さん」
「トリプルループからの急反転上昇。僕が構築したプロセスなら問題ないと思われる」
俺の視界の端で、古泉と佐々木が何やらけったいな話しをしているのが小耳に入る。
まぁ俺自身、ポスターで紙飛行機を作ってる真っ最中だ。
しかし、どうせ俺も巻き込んで何かをするつもりだろうから、嫌味の一つでも言ってやる。
「くだらねぇ…そんなに周ってどうするつもりだ?壁にぶち当たって落ちるのがオチだな」
佐々木がきょとんとした顔をこちらに向け、それに付随する様に古泉がこちらを振り向く。
「たかがコンサートの余興といえど、それぐらいのパフォーマンスは必要ではないかと」
「そんなのお断りだね、第一そこまで身体を張る必要が何処にあるんだ?」
古泉が俺の側まで来ると、俺の耳元で囁いた。
「僕には貴方なら出来ると思うのですが…それとも恐れをなしましたか?」
「おい、今何て言った?」
「おや、お気に障りましたか?」
「くそ…それより、顔が近い離れろ」
古泉は一歩後ろに下がり、肩をすくめて溜め息をつく。その気障ったらしい仕草が妙に様になるのがまた腹立たしい。くそっ一発殴ってやろうか。そんな俺達のやり取りを見て、佐々木が呆れ返り笑顔を引き攣らせていたのが視界の端に映った──────

 

 

 

「…本当に涼宮ハルヒのチケット取れたの?」
『あぁ…本当だ。有希の為なら俺に不可能はないぞ?』
「有難う…おじさん」
そう、取れたんだ。私の憧れの人、涼宮ハルヒのコンサートのチケット。
嬉しい。ずっと会ってみたかった人に会えると思うと心が躍る。
携帯電話を握ったままその場に佇んでいると、後ろから肩を叩かれた。
「鶴屋…さん?」
「駄目だぞ…有希っこ!お仕事さぼっちゃ!」
私の耳元で叫ばれた声に私は身体を上下に揺らし驚いた。
彼女なりに、囁くような声で言ったつもりなのだろう。
だけど、その囁き声は間違いなく店内に響き渡っている。
呆気に取られている私の前に、湯気を立ち上らせている料理が突き出された。
「折角の天然ポークよ!冷めたら台無しよ!」
「す…すいません…」
私の勤める中華料理店の店長が今にも憤慨しそうな程に顔を赤くし、怒りを露にしている。
いつの間にか注目の的になってしまっている私は、あまりの恥ずかしさに俯いてしまった。
それを横で高らかに笑い声をあげながら背中を叩く鶴屋さんに一瞥し、
料理を受け取り小走りで運んだ──────

 

 

 

『彼女の身に何かあったら国際問題だ。扱いはくれぐれも丁重にな、森園生中尉』
「了解です、大統領閣下」
私は今、数人のシークレットサービスを連れ、
フロンティア居住区画にあるスペースポートと連結されたターミナルにいる。
さて、今回の護衛対象となるのは歌姫と知れ渡っている、涼宮ハルヒだ。
本人を実際に見るのはこれが初になるが、どのような人物なのか少々興味がある。
それはさておき、仕事をしないといけないわね。
「各員、配置に付け」
私の命令に、俊敏に反応し各自持ち場に着いた─────

 

 

 

 

 今し方、フロンティアに到着したばかりの私だが、さっそくみくるちゃんと一緒に、
ターミナルに向けて無重力通路を通ってきた。
通路とターミナルの連結区画にあるゲートの前に来ると、アナウンスが流れた。
『間もなく人口重力エリアです。足元にご注意ください』
その音声と共に、宙を浮いていた身体に重力が掛かり、私は地に足を付いた。
「あぁ…」
かなりの長旅の所為か、身体は酷くだるい。思わず溜息を盛大に吐くと、
「大分お疲れの様ですね」
みくるちゃんが私を心配そうな面持ちで伺っている。
「時差ぼけとフォールド酔いで最悪よ…」
少し俯きながら、私がお気に入りの白い帽子を整えていると、
「取材…キャンセルします?」
とみくるちゃんが眉毛を八の字にし、心配という言葉を体現しているのを視界の端に捉えた私は、疲労にまみれた身体を奮起させた。
「みくるちゃん?私を誰だか忘れたの?私はハルヒ。涼宮ハルヒよ」
そう言葉を放った瞬間、眼前にあるゲートが開かれた。
私は瞼を閉じ、記者達が様々な歓迎の声やカメラがフラッシュをたく音を肌と耳で感じていた。
この瞬間は正直心地良い。自分をスター歌手だと実感させてくれる。
私はゆっくりと瞼を開き、真っ直ぐ前を見据えた────

 

 

 

 

 「おや、これは…涼宮ハルヒだね。皆見てご覧」
佐々木の声にパイロット訓練生の皆が駆け寄った。
皆、佐々木のノートPCにまるでどこぞの悪女に魅入られたかのように釘付けになっている。
勿論、古泉も一緒になってみているが、何故か俺の方にチラチラと視線を送ってくる。
やめろ、やめてくれ。鳥肌が立つ。
皆が、もうすぐ彼女に会えるという事に歓喜をあげている。
正直、そんな事に興味はない俺は、先ほどポスターで折った紙飛行機を目一杯の力を込め、
モニター越しの女に釘付けの呆気者達に向けて投げた。
「いけぇぇぇ!」
俺の投げた紙飛行機が激突コースを迷う事無く進んでいくと、古泉が、
「伏せてください!」
と叫んだ。その声に反応し頭を下げた皆の頭上をかすめ、紙飛行機が空高く舞い上がっていく。
「危ないじゃないですか!」
「そうだよ、キョン。いくら紙飛行機といえど辺り所が悪かったら怪我をするじゃないか」
滅多に微笑を崩さない古泉が珍しく真剣な顔をしている。
それに佐々木、その綽名はやめてくれ。いい加減その綽名から離れたいんだ俺は。
それはさておき、訓練用EX-ギアの簡易型耐Gスーツのウイングを広げ、空に手を掲げる。
「北北西の風、秒速4mってとこか」
俺は、カタパルトの方に歩を進めた。後ろの奴らが何か言ってるが気にするものか。
「よし…ランチャーカタパルト接続…、エンジン良し、フラップ良し!テイクオフ!」
一気に身体にGが掛かる、だがこの耐Gスーツのお陰で然程気にはならない。
そのまま加速していき、俺は空に舞い上がって行った。この瞬間は最高だ。
初めて飛行訓練を行った時には、あまりの速度と高度に肝を冷やしたのだが、
今となっては慣れたもので、空を飛ぶのが当たり前の如く自由に動ける。
「風に乗ったね」
「まったく彼らしいというか自由な人ですね、まぁそこが彼の長所でもあるんですが」
俺はそのまま着々と高度を上げて行き、人工的に造られた雲を突き抜け、
限界高度をであるシェルターの内壁まで達した。だが、それと同時に俺の中を苛立ちと、
空虚な感覚が支配し始める。空が低い。いつか、本物の空を────

 

 


 私はバイトを終えた後、私の身元引き受け人である新川の叔父さんの所へ行き、
コンサートのチケットを受け取った。叔父はいつも私に優しくしてくれる。
本当の子供でも無い私を、まるで自分の娘の様に扱ってくれる。
コンサート場に向かう為に電車に乗ったのは良いものの、満員電車を降り、目的地である涼宮ハルヒのコンサート場まで向かっている。
だが、周りに見えるのは人だかりばかりである。こうなると自分の背の低さが恨めしく思えてくる。
それにしても、これじゃ動けない。開演時間まで時間が無くなりそう。
焦った私は人だかりを避け横道に入り、コンサート場に向かって走り出した─────

 

 

 

 「ちょっとキョン、これはあんまりじゃないのか」
公園の半ばまで歩いてくると、トランクにうなだれる様に座り込んだ佐々木が、
行き成り文句を言い出した。一応聞いておいてやるが何があんまりなんだ?
「更衣室も無いとはどういう事だ。僕は一応女なんだぞ?

今回は先に下に着てたからいいものの、ちょっとキョン、ちゃんと聞いてるのか?

剰え僕が作ったプログラムに対して申し立ててくるとは。
まったく持って憤りを感じざる得ないな。君はどう思うんだい古泉君」
訓練用EX-ギアを装着しながら、古泉がお得意の微笑を浮かべ、
「仕方ないですよ、佐々木さん。クライアント側たっての要望ですし。
確か、先鋒が申していたのは、危険度の高い、派手なプログラムははずせ!でしたよね。
正直、僕も佐々木さんのプログラムには期待したので、残念ではありますが」
「だからって、キョンのコークスクリューもはずす事はないんじゃない?」
古泉が、涼しげな表情のまま佐々木の肩に片手を添え、佐々木を宥め始めた。
「佐々木さん、少し落ち着いてみては如何でしょう。
そこまで熱を入れる仕事でもありませんし、ここは穏便に済ませましょう」
「あ…あぁ、そうだな。すまない。僕としたことが、少し冷静になるよ」
「そうして頂けると助かります。一応リーダーである僕の決定という事で、
皆には納得してもらうしかありませんね。」
最初は怒りの矛の先を俺に向けていた佐々木だが、後から古泉に向けてくれたので。
俺は黙ってこの二人のやり取りを横目に座っていた。

まぁ厄介事は専ら古泉に押し付けてるからな俺は。
「ところで、いつまでそうしてるつもりですか?」
「何だよ」
「いえ、何やら不満なご様子なのでね、もしお気に召さないのであれば、
次は僕の上に立つ様に励まれては如何でしょう?」
余計なお世話だ。ったく涼しい顔してよく言う。忌々しい、あぁ忌々しい。
それだけ言うと、古泉が先に行ってますよと言い残し去った。
「僕は見たかったんだけどね、キョンのコークスクリュー」
「別にいいさ、どうせ2000で行き止まりの空だ。それに俺は承諾した覚えもなかったんだが。
それに飛ぶといってもたかが知れてる。せめてヴァルキリーにでも乗れたらな…」
俺の言葉に着替えながら怪訝な表情を浮かべている佐々木が、
「キョンは卒業したら軍人になるのかい?民間のパイロットでも飛べるじゃないか。
態々危険に身を投じる事もないだろう」
「決められたコースをか?それもぞっとしないな」
服に手をかけ始めた俺から目を逸らした佐々木が、
「先に行ってる」
と言い残しこの場を去った。独り取り残された俺は、独り言を呟いていた。
俺はここに居たくないんだ。何故か解らないが違和感を感じる─────

 

 

 

 

 随分離れたところまで来てしまった。完全に迷ってしまったのだろうか。
先程、遠くに見えた建物がコンサート会場で間違いはないはず、
だけど今私がいるのは森林公園。急がないと本当に遅れてしまう。私は必死に走っていた。

大木の根をよじ登り、辺りを確認したが結局周りに見えるのは木ばかり。
私は木から降り、少し下りになってる道を駆け下りた。
少し開けた場所が見えた瞬間、目の前に見えたスプリンクラーが突然散水を始めた。
「えっ!?あぅ…」
一瞬の出来事に驚いた私は、後ろに倒れこんでしまった。
「痛ぁ…、はぁ…もう。ビショビショ…」
私は視界の先のほうに人影があるのに気付いた。男の人…かな。
その人物に視線を向けていると、彼がこちらを振り返った。
振り向いた彼は至って普通の顔立ちをしていたのだが、

どことなく他の人とは違う雰囲気を身に纏っていた。
「何だ?お前」
彼が不思議そうな顔をして、私のほうに近付いてきた────

 

 

 

 今、俺が貸してあげたシャツを身に纏っている少女のワンピースを、

EX-ギアのエンジンユニットを点火させ、乾かしているところだ。しかし、何故こんな所に?
「ありがとう…もうコンサートいけなくなるかって…その…」
なるほどね、君も涼宮ハルヒのコンサートを見に着たのか。
「あなたはこんなとろこで何を…?」
「俺はそのコンサートとやらで、これから仕事さ。服なら大丈夫だ、もうすぐ乾くさ」
顔を俯かせて黙り込んでしまっている彼女を視界の端に捉えながら、
俺はEX-ギアのエンジンを止めた。そろそろ乾いただろう。よし、大丈夫だ。
「ほれっ、もう大丈夫だぞ」
顔を穂のかの赤らめさせ、俺を見上げた少女に服を手渡す。
「よし、着替えたらコンサート会場に向かうぞ」
コクリと頷く彼女が背を向け、木陰に走っていった────

 

 

 

 「そういや、コンサート会場はこっから結構離れているし、何故こんなところに?」
「あ…あの…道に迷っちゃって…、木の上から見下ろせば解るかなって」
やれやれ…何とかと煙は高いところに昇るってか?
「…酷い」
あれ、声に出ていたのか?うぅむ…迂闊だった。
「あぁ…えぇと」
「ふふ…。あっ…うわぁ~」
涼宮ハルヒの曲をテクノ調にアレンジした音楽が聞こえてきた。
俺達の眼前にコンサート会場が、その姿を露にしたのだ。
「ありがとね、案内してくれて」
俺の目の前の少女は後ろで手を組み、嬉しそうに笑いかけてきた。
「なに、別に礼はいらないさ。俺もここに用がある訳だし」
「でも、悪いよ…そうだ、私ニャンニャンで働いてるの、良かったら来て?」
なんだ?そのニャンニャンってのは。
「ニャンニャンニャンニャンニィハオニャン~♪ゴージャスデリシャスデカルチャ~♪
ってCM知らない…かな?」
ぎこちない振りつけ付きで歌ってくれたのはいいんだが、残念ながら見たことがない。
「あぅぇ?」
彼女から携帯のバイブ音が聞こえてきた、彼女は携帯を手に取り驚愕の色を浮かべ、
「もう、こんな時間?」
そういうと、俺の事など見向きもせず駆け出していった。かと思いきやこちらを振り向き、
「必ず…きてね?」
と恥ずかしそうに笑みを浮かべ、再び駆け出していった。俺はその後姿を文字通り見送った。
脚部のスケーターを起動させ、俺は前進を始めた…が、ふと笑いが込み上げてきた。
「変な女だったな…」
何故か、彼女と出会ってから俺の心中に憂いはなくなり、心なしか爽快な気分だった。
よし、やってみるか!──────

 

 

 

 演奏が始まり私のステージが始まった。目の前に無数の人達が歓声を上げている。
ステージに立つ私の周りに眩い光が一瞬放たれる。そして、私はマイクを強く握り歌い始めた。
「重力反比例~火山みたいに光るfin 君は知ってんの~あたしのbeating heart~♪」
私の周りを幻想的な演出がなされている。あぁ…最っ高!この胸の高ぶり、爽快感。
会場内にこだまする私の歌声。観客の歓声。全てが交じり合い興奮は最高潮まで昇っていく───

「持ってっけ~流星散らしてデイト ココで希有なファイト~エクスタシー焦がしてよ~
飛んでけ~君の胸にsweet おまかせしなさい~ もっとよくしてあげる~アゲル…
射手座☆午後九時Don't be late……─────

 

 


 「何が銀河の妖精だ」
今、俺達は会場内を飛んでいる。というのは別にサーカスみたいな曲芸をしている訳ではなく、
パイロット養成コースで培ったノウハウを生かして、EX-ギアを用いてだ。
俺達の仕事は会場内の撮影も兼ねている。

頭部に付けたCCDカメラであらゆる角度からとの依頼だ。
まぁこの程度の仕事なんか、ちょろいもんだ。
会場内を旋回していると、先程会った女の子が視界に飛び込んできた。
良かった、間に合ったみたいだ。
俺達が次の曲に合わせて飛ぶ準備のため待機していると、

突然演奏が止まり、会場内に明かりが灯された。
すぐに警報が鳴り始めた後、続いてアナウンスが流れ始めた。
『マクロス・フロンティア行政府からお知らせします。全艦に避難警報が発令されました。
市民の皆様は速やかに最寄のシェルターに避難してください。繰り返します─────

 

 

 

 私は今の現状が把握出来なくて只呆然とその場に立ち尽くしていた。
「涼宮さん、急いでください!」
舞台裏から駆け込んで来たと思われる軍服を着た女性が私の腕を掴んできた。
「ちょっと…なに言ってんの?まだ…」
「早く!こちらに」
私は強引に引き摺られるように舞台裏に連れて行かれた─────

 

 

 

 「了解、直ちに戻ります。行きますよ佐々木さん」
「了解した」
俺の後ろに居た二人が、そのやり取りをした後飛んで行ってしまった。
「おい、古泉!佐々木!何だ…何が起こってやがる…?」
俺の足元に見える観客達は会場の外へ避難を始めている。
そうだ、あの娘。大丈夫だろうか?
取り敢えず、俺も会場の外へ出る事にした。
コンサート会場を出た俺は、屋根に取り付き、俺の視界に飛び込んでくる光景に驚愕していた。
遠方から聞こえる爆発音。そして唸るように光を放ち爆発を繰り返している。
何だ?何が起こってるんだ?
「乗って、早く!」
俺は声のする方を見下ろした。そこには軍人と思わしき人物達が、
涼宮ハルヒを車両へと乗せているのを目で捉える。
俺は、急いで下降し、その車両へと近付いていく。
「おい!何なんだよ、これは!」
俺の言葉に反応した軍人達が俺を拘束でもしようとしてるのか、2名ほど近付いてきた。
車両の側に立っていた軍服を着た女性は、凍て付いたような目で俺を睨みつけてきた。
そして、何も言わずに車両へ乗り込もうとする。
「待てよ!まだ残ってるのがいるだろう!あんたらだけとっとと逃げる気か!」
「ここからはプロの仕事よ、アマチュアは黙って下がりなさい」
俺の言葉に反応したのは、意外にも車両の中に居た人物、涼宮ハルヒだった。
その冷め切った言葉に、俺は憤りを覚え、奥歯を噛み締めた。
「なん…だと?皆あんたを見たくてここに着たんだ!自分だけ逃げるのか!」
叫ぶ俺の声に、涼宮ハルヒは言葉を返してこなかった。くそったれ…。
「それでもプロかよ!」
俺は押さえつけてくる軍人を押しのけ、スケーターで助走をつけた。
「ちょっと…待ちなさい!」
女性の軍人が何かを叫んでいたが、俺は構う事無く空に舞い上がっていった。
上空まで昇り、辺りを見渡していると馬鹿でかい生き物の様な物が視界に飛び込んできた。
「兵器…なのか?」
周りの建物を壊しながら歩を止めない謎の兵器に向かって、戦車が五月雨の如く砲撃を繰り返していた。だが、効果がないのか。まったく動じる気配がない。
謎の兵器が急に立ち止まり、尻尾と思われるものを空に掲げ、戦車の方に向けると。
禍々しい光を放ち、戦車部隊を一掃した。
こちらに気付いたのか、ソレが頭部と思わしき部分をこちらに向け、機銃を撃ち込んできた。
咄嗟の出来事に、一瞬動揺したがここで死ぬわけにはいかない。
俺は、襲い掛かってくる銃弾の嵐を避けるようにロール、旋回をした。
だが、ウイングを撃たれてしまい、俺は真っ逆さまに地上へ向かって堕ちていく。
「うぉぁぁあああああ」
何とか体勢を整え、着地に成功した。いや、正直やばかった。まじで。
空を見上げると、新型のヴァルキリーVF-25が空を舞っているのを視界に捉えた。
「VF-25…もう実線配備に…?」
呆然と立っている俺に、突然通信が入る。
『とっとと逃げろ!坊主!仕事の邪魔だ!』
通信機越しに叫ばれる声が耳を劈く。

多分、この通信の主はあのヴァルキリーのパイロットだろう。
俺は再び空を見上げた、謎の兵器がヴァルキリーの両翼に取り付いた瞬間だった。
ヴァルキリーがガウォーク形態に変形し、振り落とそうとした瞬間、謎の兵器の一撃により、
そのまま勢いで市街地へと墜落していく。
ヴァルキリーが背部に取り付いている、謎の兵器をビルに叩き付けたが、
機体を押さえつけられている。このままじゃさすがにやばいんじゃないのか?
脱出したパイロットが謎の兵器に向かって、マシンガンを乱射し始めた。
だが、マシンガン程度の武器が通用する相手ではないのは一目瞭然で、
謎の兵器の手と思われるものに捕まってしまう。おいおい、やばいだろ!
ミシミシと音を立ててパイロットを握り潰されそうになっている。
「おい、やめろ!やめろぉぉぉぉぉぉ!」
俺の雄たけびはソレに届く事は無かった。

グシャリと音を立て、謎の兵器の手から大量の血が零れ落ちた。
俺は目の前の光景に戦慄を覚えた。目の前で、人が…人が…。
「いやぁぁぁ!」
女性の声と思われる悲鳴が俺の耳に飛び込んできた。声の発生地に俺は視線を送ると…。
まずい、あの娘だ。名前も知らない女の子だが見捨てる事なんて出来ない。
俺は目のヴァルキリーを見た。何を迷う必要がある?やるしかないだろう!
搭乗席に飛び込み、EX-ギアをVF-25に接続した。よし、行ける。
ヴァルキリーを起動させ、俺は謎の兵器に向かってガンポットを乱射した。
ずっと憧れていたヴァルキリーに、まさかこのような形で乗る事になるとは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 


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