月曜の放課後、気乗りしないまま文芸部室へ向かいます。
「これで全員そろったわね。ちょっと聞いて欲しいんだけど。」
僕が最後だったようです。
「えーと、団長の私が言うのも無責任なんだけど。」
ちょっとためらう涼宮さん。
「今週の活動は無しにしたいの。」
「彼氏がらみか?」
「うっさい! まだ付き合ってるわけじゃないの!」
「じゃあなんで休みにするんだ?」
「ぐ。…そうよ、彼がらみよ。」

やはりそうですか。心がちくちくします。実際胃が痛くなってきました。
「彼と昨日おととい話してみたんだけど、面白いのよね。話題豊富だし、話し方もいいし。」
「それで今週はデートに充てたいのか?」
「デートと言われるとちょっと認めたくないんだけど。他人からみたらデートになるわね。
 あたしとしては彼がどんな人間か見極めたいわけ。次の土曜には結論を出すつもりよ。」
「それは早くないか? クラスメイトならともかく初対面だったんだろ?」
「いつまでもだらだらと中途半端なのは嫌なのよ。SOS団にも迷惑かかるし。」
「まぁお前の思うようにやればいいさ。お前の団だしな。」
「ほんとごめん。来週から再開するから。その間は副団長の古泉くんに頼むわ。
 別に無理して活動する必要はないからね。」

涼宮さんは待ち合わせがあるから、と行ってしまいました。
僕がバイトと称して出ていくのを他の人はこのように見ていたんでしょうかね。
「さて、土曜の話を聞かせてもらおうじゃないか。お前のことだから土曜のうちに呼び出されると思ったんだが。」
そうでした、彼にはまだ報告していません。
ですが呼び出そうとしても長門さんと一緒で迷惑だったんじゃないですかね?
「長門さんから色々聞いているんじゃないですか。」
「ん、確かに多少は聞いているが、お前と朝比奈さんからも話が聞きたい。どうでした、朝比奈さん?」
うまくごまかされた感じです。

朝比奈さんの説明は主に容姿関連です。イメージ化には重要な情報です。長門さんには無理でしょう。
僕は日曜にも涼宮さんと人物Aが会っていたことを話ました。
「ということはお前も駅前にいたのか?」
「当然でしょう。いたからこうやって報告できるのですから。いたらまずかったですか?」
あなたはそこで長門さんとデートしてましたからね。まずいですよね。
「い、いや、問題ない。見つからなくてよかったな。」
あなた達を見つけましたが。慌てる彼、変わらない長門さん。朝比奈さんは何も勘づいてない様子。

「さて、これからどうしましょうか。」
「どう、って。いつも通りでいいんじゃないか? っていうか、ここの活動自体なにをしてたんだ?
 朝比奈さんからお茶をいただいて、お前とゲームして、長門が本を読み終えたら解散。
 ハルヒは居ても居なくてもほとんど影響ないだろ?」
「おや、SOS団の活動の方が心配ですか? 嫌がってた割にすっかり染まってますね。」
「うっせぇ。もう覚悟は決めた。」
「諦めではなくて? 僕が聞きたかったのは涼宮さんと人物Aについてですが。」
「ハルヒが気に入ってるならつきあってもかまわん。機関とやらの調査ではシロなんだろ?」
「まだ結果は出ていません。」

珍しいことに調査に苦労しているようです。
基本的な情報は集まっていますが、いくつか不審な点があるそうです。
「お前がこだわってるのは何なんだ?」
「涼宮さんが特別な方だということは理解していただいているとは思います。」
「ああ、あいつは特別すぎる。」
「その特別な涼宮さんに選ばれたあなたはやはり特別な存在なんです。」
「キャンディーのCMみたいなセリフだな。」
「ちゃかさないでください! 自覚していますか? あなたはジョン・スミスなんですよ!」
「す、すまん。だが、それとこれは別の話なんじゃ?」
「あなたは涼宮さんが好きじゃないんですか?」
「好き嫌いでいうと好きの範疇に入る。あいつは確かに美人でスタイルもいいし。」
「キョンくん!」
「す、すいません。それと無茶苦茶な性格も含めてあいつのことは好きだと言っていい。」
なら…
「だけどな、古泉。好き嫌いと恋愛感情は別だ。ハルヒとは親友になる自信はある。だが恋人の関係は想像できん。」



参りました。正直ショックです。今日は彼に裏切られるとは。
まあ長門さんを含めて、裏切られたっていうのは僕の勝手な言い分ですが。
そう言えば昨日は長門さんと一緒でしたね。
彼女の手前なのか本心からの発言なのかは判断できませんが、今の彼の考えはそうなのでしょう。
いえ、彼と涼宮さんが相思相愛だというのは確かに僕らサイドの勝手な思い込みと願望です。
しかしはっきりと否定されると辛いものがありますよ。
「古泉、お前をがっかりさせるつもりは無かったんだが、これが俺の本心だ。
 あいつが俺のことをどう思っているかは知らんが、少なくとも今はその人物Aに向いているんだろ。」
駄目押しはいらないです。
「そうですか。いえ、僕の勝手な希望を押し付けるようで申し訳ありませんでした。」
「古泉、お前が心配するのもわかるが、もう少しハルヒを信用しようじゃないか。」

今日のSOS団の活動はここまでとなり解散となりました。
律儀にメイド服となっていた朝比奈さんは着替えのため残り、先に3人で部屋を後にします。
明日、彼が学校で涼宮さんを色々探りを入れてくれるそうです。
頼みますよ、物理的にも心理的にも涼宮さんに一番近いのはあなたなのですから。
長門さんと並んで帰っていく彼を見るとちょっと不安なんですが。
別れる時、あまりに自然に二人で帰っていったんで僕もしばらく気づきませんでしたよ。
いつからこの二人はこんな仲になったんでしょうか。
僕が転校してきた時からと言われるとそんな気もしますし、
クリパの前に起きた騒動、僕は全く知らない騒動ですが、その後から二人の距離が縮んだのは明白だったので
そこから順調に関係が進んだのかもしれません。
しかし長門さん、あなたは何のためにこの場この時間に存在しているのか考えているのでしょうか?
それとも本当に些細な出来事で、大騒ぎしているのは僕だけなんでしょうか。
このところ同じ疑問がぐるぐる回っています。

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最終更新:2008年07月07日 05:23