彼女が告白されたという事実はあっというまに北高全体に広まりました。
彼女は有名ですからね。残念ながらいい意味、悪い意味でもなく変な意味でですが。

「おい、古泉。例の話はもう聞いてるよな?」
「おや、気になりますか? あなたでしたら本人に直接確認できるのではないのですか?」
「アホか。さすがに直に聞けるわけないだろ。」
ふむ、あまり動揺している感じではないのですが。
「もちろん聞いてますよ。彼女に告白した人物Aについて機関の調査も始まっています。」

昼休みの文芸室、我々SOS団の溜まり場には僕と彼、長門さんが
今朝の大事件のせいか集まっています。
長門さんはいつもいらっしゃるようですが、はて、朝比奈さんは来られないのでしょうか?
それにしてもお二人はそんなに動揺している感じではありません。
僕は心穏やかではないのですが。長門さんはともかく、彼も本心を隠している?

「とにかく」
彼はお得意のやれやれポーズで嘆きます。
「朝から大騒ぎだ。校門前で他校の生徒があのハルヒに告白。」
「おまけに彼女はまんざらでもない返答だったらしいじゃないですか。」
なんと涼宮さんは明日土曜日のデートをその場で承諾したそうです。
「『面白』そうなことだからじゃないのか? 中学生の時は告白されても断ることなく
 片っぱしから付き合っていたらしいじゃないか。しかもハルヒ好みの直接告白だ。」

「ともかくこれはハルヒ自身の問題だ。俺たちがとやかく言うことじゃないだろ。」
「あなたは涼宮さんが他の誰かと付き合うのには反対じゃないのですか?」
「他人の恋愛に口を出す気はないな。ハルヒも同じことを言っていたぞ。
 確かに俺たちの知らない奴と付き合うっていうこと自体はあまりいい気はせんが、
 これから知り合いになればいいわけだし。第一俺たちが何をするんだ?」
「おや? 我々の存在意義をお忘れですか?」
存在意義と今回の事件はまるっきり関係ないのですが。
「実は最近奇妙な現象が続いていまして。閉鎖空間が生まれそうになっては萎むんですよ。
 おかげで準備万端な我々はいつも肩すかしです。」
「いいことじゃないか。あいつも自制が利くようになったってことだ。神人退治しなくて済むんだろ?」
「でも万が一に備えていつも突入寸前で待機する必要があるんですよ。
 あなたにも涼宮さん対策班長として何らかの対応をお願いしたいんですが。」
「だからなんで俺がそこ枠組みに入るんだ? それに大体ハルヒが誰かと付き合うと世界の危機が訪れるのか?」

……そこを突かれると辛いですね。
正直涼宮さんには彼しか付き合って欲しくないというのは僕の希望です。
そこに赤の他人が入ってくることは想定外です。ひょっとして朝比奈さんはご存じなんでしょうか。
「長門さんはどう思われますか?」
彼女に話を振ることで少しはぐらかします。
「……今の時点で特に問題はないと思われる。」
一言、また読書に戻られました。いつも思うんですがひょっとして僕は嫌われているんでしょうか?
「長門もそう言ってんだ。とりあえず暖かく見守ろうぜ。」

結局昼休みの対談はそれで終了となり、午後の授業のあとSOS団の活動時間となりました。
「涼宮さんはまだですか?」
「掃除当番だ。」
彼は朝比奈さんからお茶を受け取っています。
「朝比奈さん、今回の事件で未来から何か言ってきましたか?」
「いいえ。特に何も言ってきませんよ? だから今回は特に未来に影響する事象じゃないと思うんですけど。」
ふむ。なら問題はないんでしょうが。
「古泉、そんなに気になるのか? 機関が調査したらどんな人間かはわかるんだろ?」
「人物Aについては調査中ですが、現時点では問題はないようです。」
「じゃあいいじゃないか。」
「確かにそうですが、彼女に悪影響があると困ります。」
「そんなもん知るか。それこそ機関が見張っとけばいい話じゃないのか?」
彼は本当に涼宮さんが気にならないのでしょうか?
ふと長門さんがこっちを見ていることに気付きます。
目が合うと何だったんでしょう? また読書に戻ってしまいました。

「遅れてごめんー。ついでになるんだけど、明日の探索はあたしの都合で悪いんだけど中止にします。ごめんね。」
「学校中で噂になってますよ。明日デートだそうですね。」
「あら、古泉くんまでそんなこと言うの? 意外ね。」
「気になりますよ。何といっても我らの団長の話ですから。」
「そうね。団員なら話を聞く権利はあるはずね。」
うまいこと話を誘導することができたと思います。というよりもしかして誰かに話したくてうずうずしていた?
「ええとね……」

朝、登校してきたら人物Aが校門前で待ち伏せしていたこと、
会うなり「一目ぼれしました。お付き合いしてください」といきなり告白されたこと、
人物Aのプロフィールとして本名(気に食わないのでこれからも人物Aと呼称し続けることにします)
・年齢(同い年でした)・学校(近所の有名大学付属高校生だそうです)などを紹介されたこと、
知人のツテをたどってたどってようやく彼女に行きついて今日に至ったこと、

「そんで直接、正々堂々とあたしに会って告白してきたのが気に入ったわけよ。」
「見た目はどんな感じなんですか? あたしも噂でしか聞いてないんでどんな人かわからなくて。」
「そうね、背は高くてそこそこ筋肉質っぽい感じなのにスリムで、顔は古泉くんとは違うタイプのイケメン。
 キョンを全ていい方向に100倍した感じ?」
「何で俺を引き合いに出すんだ? イケメンなら古泉と比べるのが妥当だろ。」
何故彼を引き合いに出したのでしょうか? まだ彼を想っていると考えていいのでしょうか?
「指標として分かりやすいかなと思って。古泉くんとは方向が違うから例えにくいのよ。」
僕をほめて頂いているのですね。光栄です。
「とにかく、明日会って確めてくるわ。キョン! ついてきちゃダメよ!」

いつもの、しかし浮ついた感のある活動?の解散後、また四人で集まってもらいました。
「で、なんだ? 古泉。」
「取りあえず明日、涼宮さんをつけてみませんか?」
「おいおい、ついてくるなと言われたろ。」
「確かに。でも偶然居合わせたとしたら?」
「ハルヒにそれが通じるわけないだろ。それに昼に言ったように
 ハルヒと誰かが付き合うことについて邪魔する気は毛頭ない。」
ダメです。完全に興味がなさそうです。いつもと様子が違うような気がするのですが。
「朝比奈さんはどう思われますか? 未来から何かメッセージが来ているとか?」
「ええぇと、うん、何も言ってきていません。特に何もないんじゃないかなぁ?」
と、なるとこれは規定事項なんでしょうか?

「古泉一樹、あなたは何にこだわっている?」
彼だけでなく長門さんまで僕の事を不審に感じているようです。
「いえ、すんなりと涼宮さんが人物Aと会おうとしているのがちょっと。」
「涼宮ハルヒがはっきりとした態度の人物を好むのは知っているはず。」
「……。」
「……了解した。では、わたしとあなた、朝比奈みくるの三人で後をつけるのが良策だと思う。」
「おい長門!?」
「彼女は『ついてくるな』とはあなたにしか言っていない。」
長門さんにしては大胆な案を出してきました。
「大丈夫でしょうか? あたし、すぐ見つかっちゃうと思うんですが。」
「その時は偶然を装う。わたしと朝比奈みくる、古泉一樹の二手に別れるなら自然。」


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