決して消えない光    (キョン)

高校を卒業して早三年、俺達も立派な社会人…
などには全くなっておらず、SOS団のメンバーは揃いも揃って無職だった。
毎日みんなで集まってはだらだらと、『今が良ければそれでいいじゃん』なんて言いながら過ごしていた。 
やりたいこともない、夢もない、希望もない、くそったれな生活だ。
そんな俺達は酒を飲んでいる。もう何日もぶっ通しでだ。
何件目になるかわからない飲み屋で俺達は二日酔いを軽くするため、もしくは他にすることがないから酒を飲み続けていた。
「さあさあ、みんなもっと飲みなさい!」
ハルヒが蔓延の笑みで酒をすすめる。いつぞやの禁酒宣言はとっくの昔に解除されていた。
コイツは仲間を一人残らず楽しませなきゃ満足しないタイプだ。
こっちがそんな気分じゃなくても無理矢理テンションを上げさせようとする。
まったく迷惑なヤツだ。
「わかってるよ。これもらうぞ」
俺は机の上に置いてあったウィスキーのボトルをつかむと胃に流し込んだ。
「いやあ。やっぱりみんなで飲むのは楽しいですね」
酔いのせいでさらに締まりのなくなったニヤケ面で古泉が言う。
それを見てハルヒは満足そうにうなずいた。
俺は『何言ってんだお前』って顔をしてやった。
後の二人?一人は無言でビールを延々と飲み続けている。
もう一人はすっかりできあがってさっきから『ダメですぅ…禁則…禁則事項ですぅ…』なんてぶつぶつ呟いている。
ま、この二人はきっとこれで幸せなんだから放っておくにかぎる。
店でかかってるラジオからイギー・ポップの「Lust for life」が流れた。
「あ!あたしこの曲大好きなのよ!」
ハルヒはそう言うと身体を揺らしながら大声で歌いだした。
「まったくもってその通りかと」
何がその通りなのかはわからないが古泉も一緒に歌い始めた。
店員がチラチラと迷惑そうにこっちを見てきた。
どうやらこの店は俺達みたいなガラの悪い客に慣れてないらしい。
「おい、あんまり騒ぐな。他の客に迷惑だ」
俺が言うとハルヒは不満そうな顔になる。
「何よ。ただ歌ってるだけでしょ。迷惑なんかじゃないわよ!」
ウィスキーをガブガブ飲みながらハルヒが怒鳴った。
やれやれ、コイツはもう一度道徳の授業をちゃんと受け直したほうが良さそうだ。
「さすが涼宮さん。まったくもってその通りかと」
古泉、お前はいい、黙ってろ。
俺はやれやれと首をふると、酒を取りに席を立った。
俺はカウンターの横にかかっている鏡を覗いてみた。
そこにはひどい自分の顔が映っている。目は充血してるし髪はベトベトだ。
最近まともに寝てないからな…
いつの間にか店で流れる曲が変わっているのに気づいた。
「Light that never goes out」スミスの曲だ。
繰り返し『決して消えない光がある』と歌っている。
俺はカウンターによっかかりタバコに火をつけながら考えた。
こんな状況でも、クソみたいな状況でも光はあるんだろうか…
将来やりたいこともない、ただ惰性で毎日を過ごしているだけ…
そんな人生に何の意味がある?
俺は酒を受けとると一口飲んでから席へ戻った。
ハルヒは一人で上機嫌に笑っていた。
古泉は気持ち悪くなった朝比奈さんを優しく介抱している。
あわよくばこの後ヤれるかもしれないと狙っているんだろう。
一体俺達は何をしているんだ。こんな生活に満足してるのか?
イラついた気持ちで酒を飲んでいると後ろから袖を引っ張られた。
「…そろそろ家に帰りたい…」
振り向くと長門がいた。
「ああ、帰っていいんじゃないか?ハルヒには俺から言っておくから」
「送っていってほしい…」
袖を引っ張り続けながら長門が言った。
長門の意外な頼みにしばらく呆気にとられた。
こいつが自分の願望を伝えるなんて珍しいこともあるもんだ。
俺は周りを見渡し、他のメンバーを見る。
ハルヒはいつのまにかカウンターに移動して隣のお姉ちゃんにからんでいた。
古泉は相変わらず朝比奈さんにご執心だ。
あれだけ酔っ払ってたら今夜のことは覚えてないだろう。
俺達がいなくなってもわからないはずだ。
「いいぜ。じゃあ店を出るか」
俺が言うと長門は少し嬉しそうに微笑んだ。
長門を連れて目立たないように店を出る。
外の空気は冷たく、ほてった身体に心地良かった。
「…家に着いたらしばらく一緒にいて欲しい…一人でいたくない…」
長門が俺の手を握りながら言った。
「ああ…」
俺は手を握り返しながらうなずく。
長門の気持ちがわかる気がする…俺も一人でいたくないからだ。
でも全部はわからない。全部はな。
でも…この気持ちは大事な気がする。
俺はオアシスの「Let there be love」を口ずさみながら長門と一緒に暗い夜道を歩き始めた。

-----------------------------------


|