一 章
 



 
 日曜日だというのに朝っぱらから電話がかかってきた。
「お休みのところすいません。早急にご相談したいことがありまして」古泉だった。
「なんだ。日曜くらいゆっくり寝かせろ」
「実は……その……」
ボソボソ言うだけでよく聞こえない。口篭もる古泉なんてらしくない。
「なにがあったんだ、言ってみろ」
俺はもう、たいがいのことでは驚かない。
「涼宮さんと……なんです」
「なんだぁ?聞こえねーぞ」
「だからですね!涼宮さんとヤッってしまったんですよ!!」
そのとき俺は、数秒間だけ硬直し、次の数分を爆笑の渦に巻き込まれて一気に目がさめた。腹を抱えて笑い出すのを抑えきれず、電話のマイクの穴をやっとの思いで押さえた。
「もしもし、聞いてますか」
「ああ、き、聞いてる、聞いてるとも」胃が痙攣するかと思うくらい腹がよじれた。
「ずいぶんと大げさに笑ってらっしゃいますね」
だって、これが笑わずにいられるか。あの、いつでもクソまじめ爽やかキャラの古泉が、プーッ。
「で、で、なにを相談したいんだ」
マイクのこちら側で声の震えを抑えられない。
「ええと、詳しい状況は後でお話するとして。今朝目がさめたら隣に涼宮さんが寝てまして、怖くなってそのまま帰ってきたんです」
もう古泉、お前は俺を笑い殺す気か。
「ご足労なんですが、どこかでゆっくり話せませんか」
 
「キョンくん、なにがそんなにおかしいの?なにがあったの?」
電話を切って枕をボスボスと叩きながら笑い転げる俺を妹が怪訝な顔をして見ていた。いやいや、なんでもない。自分をイケメンだと思ってた男の、とんでもない誤算ってやつだよ。
 家の前に車が止まった。いったい古泉のやつ、どんな顔をしてるんだろう。
「どうも、ご迷惑おかけします」
車の窓から覗いた古泉の顔を見て噴いてしまった。目の下にクマができている。BMWなんかに乗るからバチがあたったんだ。クックック。
「とりあえず出ようか」
 
国道沿いのファミレスはまだ人が少なかった。
「じゃあ、話を聞こうか」
俺は足を組んでコーヒーをすすった。先に飲んでおかないと盛大に噴き出しそうだからな。
「ええ、涼宮さんのご希望で合コンをやりまして……」
ハルヒがそんなことをするのは珍しい。
 
 昨日の晩のことだ。ハルヒの命令で同期やら知り合いやらをかき集めた。幹事は古泉。カラオケと酒場をはしごするうち、ふたり、ひとり、ふたりと消えてゆき、最後にハルヒと古泉だけが残った。
 
 ハルヒが酒に強いのは知っているが、その日は腰が立たなくなるまで飲んで、いったいなにがあったのかと思わせるほど酔っていたらしい。
「ごいじゅみぐん……あたしわ天涯孤独なんらからね!」ハルヒはそればかりを口にしていた。
「はいはい、ボクがいつでもソバにいますよ」
「うぇぇえええん。ごいじゅびぐん、やさしいのれ。のんれ、のんれ」
古泉はもともとそんなに飲めるほうでもなく、仕方なしに付き合っているうちにとうとう記憶が飛んだらしい。どうやって二人がハルヒの部屋までたどり着いたのか、まったく覚えていない。
 
「あ、朝、目が覚めたら、隣に涼宮さんが……ハ、ハダカで寝てまして」
「寝てるうちに脱いだんじゃないか」
「いえ、僕も素っ裸で。それに事におよんだシーンをうっすらと覚えているんです」
「ぷ……ゴホンゴホン」
咳払いをしたが、俺の顔は痙攣していたにちがいない。
「着の身着のまま、そのまま逃げるようにして部屋を出たんです」
「まずい展開だな。というか、よくあるパターンじゃないか」
「そうなんです。このままじゃまずいと何度も自分に言い聞かせたんですが。涼宮さんが目覚めたらどういう顔をすればいいのか、という一抹の不安が僕に逃げろと囁いたんです」
ここで深呼吸した。少し落ち着いてきた、俺が。
 
「で、どうしたいんだ?」
「どうすればいいんでしょう?」
途方にくれた顔で俺を見た。それからうつむいて、冷めたコーヒーをじっと見つめた。
「まず聞くが、ハルヒと付き合う気はあるのか」
あらかじめ言い訳しておくが、これは古泉に助け舟を出すつもりで言ってるわけじゃない。ここでハルヒを古泉に押し付けてしまえば俺が多少なりとも楽になるぜ。などという我田引水的な下心がそう言わせたのだ。
「それはどうかと。僕のキャラは設定上作られたものですし、これを二十四時間続けるのは精神的にきついかと」
「まあお前のキャラ云々は置いといて、本気で付き合ってみたらどうだ」
「そうですね……。今すぐはなんともお答えしようがありません。この動揺している心理状態では」
「そうか。まず今日をどうするかだな」
「こういうハプニングの後では、どうすればよかったんでしょうか」
「キスでもして女を起こして、照れた笑いを浮かべて、それからシャワー、朝飯ってパターンだろうな。逃げるのがいちばん悪い」
「やっぱり。僕は最悪のシナリオを自ら展開したわけですね」
そのたうりだよ古泉クン。
 
「もうまじめに付き合ってしまえよ。それしか道はない」
「そうでしょうか。魅力的な人だとは思うんですが、なにせこの古泉一樹というキャラクタが窮屈で」
「そんなもんイメチェンすりゃ済むだろう」
「これを設定したのは機関なんですよ」
“機関”という言葉を口にした古泉の顔に縦線が入った。
「僕……たぶん機関のお偉方に殺されますね」
「まだ知られてはいないんだろう?」
「いえ、監視されてるはずです」
「じゃあハルヒ次第ってことだな。ハルヒが望んだからああなりました、と」
「それは男としてどうかと思いますが」
この期に及んで男のプライドか、そんなもん捨てちまえ。
 
「で、ハルヒはよかったか?」
「それは禁則事項です。というより、覚えていませんからね」
いいや、かすかでも覚えているに違いない。俺はニヤニヤが止まらない。
 古泉の携帯が鳴った。ビクっと飛び上がった。
「涼宮さんからです!なんと言えばいいでしょうか」
ここまでオロオロする古泉は見ていて楽しい。
「男だろ!ズバっと言ってしまえ」
「は……はい」
「イメチェンしろイメチェン」
古泉は携帯を開いた。
「お……おう、俺だ」ちょっと胸を張る。そうそう、それだ。
「は、はい、僕です」
なんだこいつ、いきなり素に戻りやがんの。
「いえいえ、泊めてもらったのは僕ですから。突然行方をくらまして申し訳ありません。いえ、けしてそんなつもりでは……」
聞き耳を立てているが、ハルヒの声は聞こえない。だが何を言ってるかくらいは想像がつく。
「も、申し訳ありません」
電話相手に起立して頭下げるな。
「切られてしまいました」
古泉の顔は困ったような、ホッとしたような、あるいは絶望したような、およびそれらの混合。
 
「怒ってたか」
「ええ、あれは事故だったんだからもう口にするなと」
「最悪だな」
「ええ、最悪です」
「お前とハルヒとの仲だ。ハルヒにも、もしかしたらという期待もあったんだろう」
「僕と涼宮さんが付き合うという可能性ですか」
「そうだ。それが顔と顔を付き合わせたとたん、尻に火がついたように逃げられた。そりゃ怒るわな」
「はああ……」古泉が頭を抱えた。
少し可愛そうになってきた。古泉にしちゃあとんだ災難だろう。
「まあ、今日のところは帰って風呂にでも入ってゆっくり休め。今後のことはゆっくり考えよう」
「そうします。お手数おかけして申し訳ありません」
そういうふうに俺に謝るな。
 
 その日の夕方、また古泉に呼び出された。今度は自転車で駅前まで。見れば、ゲッソリやつれている。
「どうした」
「予想通り、機関の局長クラスに呼び出されて二時間ばかし説教されました。始末書の山です」
「そうか。災難だったな」
CIA仕込みの施設で絞られてる古泉を想像して笑わずにいられない。
「いえ、自分で撒いた種ですから」
「で、減俸とか降格とか、まさか解任じゃあるまいな」
「それはないでしょうが、当分は二十四時間監視付き、定時連絡ありです」
「いくらなんでも二十四時間見張られてちゃストレス溜まるだろう」
「これも仕事ですからね」
そういってのける古泉はなんだか癪だった。
「経歴に傷がつくようなことにならなきゃいいがな」
「どうやら以前にも似たようなことがあったらしくて戒告処分だけで済みました。局長が男でほんとよかったです」
前例って、機関内部の色恋沙汰か。まさか新川さんと森さん……いやいや年齢的には多丸弟のほうが似合って、ってなに妄想してんだ俺は。
 
「それより、これからどうするかだが」
「そうですね」
「俺が取り成してみるか。こじれた場合、友達が助け舟を出すのはよくあることだし」
「それはやめたほうがいいかと。涼宮さんのことですから、僕に頼まれて仲介に入ったんだと思われます」
「なんにせよ一度失った信用はなかなか回復するもんじゃないよな」
俺はひとり腕組みをしてウンウンとうなずいた。
「それを言わないでくださいよ……」
「だがハルヒも俺から電話があることぐらいは予想してるだろう」
「それもそうですね」
「ちょっと打診してみるか。その前にお前自身の方針だが」
「方針と申しますと」
「付き合うつもりがあるのかってこった」
「ええ、それで涼宮さんの機嫌が直るなら」
「そんなんじゃ、たぶんハルヒは切れてしまうぞ。自分はお情けで付き合ってもらってるのか、ってな」
「じゃあ誠心誠意、付き合います。これでいいですか」
「なんだかお前の言い方は計算づくというか論理づくというか……」
「じゃあどう言えばいいんですか。苦痛を甘んじて受け入れる僕の身にもなってくださいよ」
「ハルヒ、俺について来い!みたいな感じで」
「ハルヒ、俺について来てくれませんか」
「だいぶ違うね」
「そうですね」
 
 ともかくハルヒに電話をかけた。向こうは向こうでどういう反応をするのかすごく気になる。もしかしたらこれがハルヒの弱みを握る人生初のチャンスかもしれない、などと妙に期待を膨らませつつ呼び出し音を数えた。
「おう、俺だが」
「キョン?なによ。どうせまたくだらないことでしょ」
「古泉に聞いたんだがな、」
「もう!その話はしないでって言ったのに!」携帯のスピーカーからハルヒの顔が飛び出しそうな勢いで耳にキンキン来た。
「あのな、古泉はけっこうマジみたいなんだ。付き合ってみる気はないか」
「電話でそういうことを言うもんじゃないわよ!」
プツン。つーつー。
「古泉、すまん。忘れてた。ハルヒは電話で告白されるのが嫌いなんだ」
高校一年のときあれだけ念を押されていたのだが、すっかり忘れていた。
「最悪じゃないですか」
「もう、花束でも持って会いに行け」
「なんですか、映画のシーンを地で行くわけですか」
「そうだ。失敗してもいいから、がむしゃらなところを見せろ」
「そういうアプローチは僕のキャラに合わない気がしないでもないですが……」
 
四の五の言う古泉を連れて、花屋に行った。
「いよっ、キョンくんじゃないか。古泉くんもかい?」
「あれれ、鶴屋さん。こんなところで何やってるんです?」
「見て分からないかい。花屋さっ」
「バイトですか」
「ちっちっち。ここ、あたしが経営してるのさぁ」
俺も古泉も、ほぉぉへぇぇと唸った。さすが経営者の鑑、いろいろなさっておいでで。
「知らなかった」
「さすがは鶴屋さんですね。どうですか商売のほうは」
「まあ、ぼちぼちさね。わははっ」
「鶴屋さん、これから女の子に告白するんですけど花束見繕ってもらますか」
「ほほ~う、そうなのかい。あたしもあやかりたいねっ。予算はどれくらいなんだい?」
「ええと……五千円くらいで」
古泉、半分持ってやるからお前半分出せ。
「ようがす。バラは何本入れるかい?」
「できればエコノミーで、ボリューム感出してもらえますか」
安っちい愛の告白だな。
「よっしゃ、おまかせっ。それで、相手は誰なんだい?」
「鶴屋さんもよく知ってる人ですよ」
「ほうほう。もしかしてあの人かい?」
「お察しのとおり、涼宮さんです」
「あれれ、告るのは古泉くんなのかい?」
「ええ。恥ずかしながら」
「そいつぁサプライズだね。あたしはてっきりハルにゃんはキョンくんとくっつくのかと思っていたさ」
前にも同じ事を言われたような気がしないでもないですが、それはあり得ません。絶対に。
 
 鶴屋さん手製の、カスミ草でデコレーションした派手な花束が仕上がった。
「こんなもんでどうかなっ。メッセージはなんか入れとくかい?」
「じゃあカードと封筒を一枚ください。手書きでやります」
と言ったはいいが、古泉は水性ボールペンを握ったまま考え込んでいた。
「こういうときなんと書けばいいんでしょうか?」
「なんかキザなセリフを書けばいい。お前なら得意だろ」
「愛してます、とかですか?」
「それじゃベタすぎるだろ。相手はあの涼宮ハルヒであることを忘れるな」
「そうでした」
古泉はなにやら英語っぽい文章をスラスラと書いた。
「“あなたの笑顔はバラより美しい。そのトゲに刺されても僕は本望です”。ラテン語にしました」
「愛してます、とたいして変わらん気もするが。これ、あいつ読めるのか?」
俺が見るとどうも魔法の呪文ぽいんだが。
「読めるでしょう。ラテン語くらい基礎教養のひとつですよ」
教養がなくて悪かったな。まあハルヒが読めなくても意味を調べることはできるか。
「古泉くん、何があってもがんばるんだよ。キヒヒッ」
八重歯をむき出しにして豪快に笑う鶴屋さんに礼を言って店を出た。
 
「じゃあ行こうか」
古泉がタクシーを止めた。
「今日は車じゃないのか?」
「今回の失態で公用車を使うことはしばらく禁止されました。交通費は自腹です」
「お前も大変だな」
外車に乗れなくなったのはちょっと残念だ。
 五分くらいでハルヒの住んでるアパートに着いた。実家が近いのに一人暮らしとはもったいない。
「いいか、お前には押しが足りない。押しで行け」
「分かりました。俺と付き合え!ですね」
「腹から声を出す!」
「おう!俺と付き合え!」
俺に向かって言うな。通りすがりのお姉さんが引いてたぞ。
 古泉が髪を撫で付け、直立不動の姿勢で丁寧に呼び鈴を鳴らした。
「涼宮さん、古泉です」
がちゃりと鍵を回す音がした。精一杯の笑顔で、古泉の第一声。
「涼宮さん、俺と」
ドアが開くなり、バケツ一杯の水が飛んできた。
「帰れバカキョン!バカ古泉!」
勢いよくドアが閉まり、後には濡れネズミになった野郎が二人、無言で立ち尽くしていた。もらい水に花だけは喜んでいたようだが。
「……」
「……」
「しょうがありません。花だけ置いて帰りましょう」
「そうだな。気持ちは伝わったと思う」
「涼宮さん、花置いていきますので活けてやってくださいね」ドア越しに叫んだ。
もしかしてあのバケツ、あらかじめ用意してあったのか。だとしたらいい勘してるな。
 
 てくてくと歩く帰りの路上でぽとぽとと雫を垂らしながら、古泉は終始しょげ返っていた。
「まあそう腐るな。これからだろ」
「はい……」
「なんたってハルヒだし、どうしたって一筋縄ではいかないだろうよ」
「そうですね。こんなことなら最初からお付き合いを申し込めばよかったですね」
古泉は、思わぬことで距離が開いてしまったハルヒに、その存在の大きさをいまさらに感じているようだった。今まで、手を伸ばせば簡単に届くところにあると思っていたものが、上から崩れ落ちて埋まってしまったかのように。
 
 俺たちがハルヒに会ってから八年になろうとしているが、今になって恋愛の対象として付き合うなんてこと自体にまず無理があるかもしれん。古泉はなにかにつけてハルヒのことを、魅力的な人だとは思いますが、としか言わなかった。友達にならなれるかもしれないが、彼女にするにはちょっと……というやつなのだろう。いや待てよ、一度だけだが古泉が「好き」と言っていた記憶があるな。あれはええと、そう、長門が改変しちまった世界でのことだったか。あの古泉はハルヒの尻に敷かれていたというか腰ぎんちゃくみたいな立ち位置だったようだが。こっちの二人が付き合ったら、やっぱりあんな関係になるのか?
 
「今日長門のところで飯を食う予定なんだが、一緒に来るか」
「ええ、でもお邪魔じゃありませんか」
ほんとはそんな気はさらさらなかったんだが、古泉の顔を見ているうちに、ひとりにしておくのはちょっとかわいそうな気がしたのだ。
「いいさ、こういう事態だ。ひとりでいて落ち込むよりはいい」
「そうですか。じゃあお言葉に甘えます」
いちおう長門に電話を入れた。「……いい」
 
 部屋のドアを開けると、長門が古泉を上目遣いに見て、笑っているような無表情なような微妙な顔で迎えた。長門が吹き出すということはないが、口のはしがピクと震えた。どうやら知っているようだ。
「ひどいなぁ、長門さん、もうご存知なんですか」
古泉が俺を責めるような目で見る。
「俺はひと言も言ってないぞ」
長門にとっちゃなにごとも秘密にはならないだろう。
「いいんです。こういうことはすぐ知られるもんですから。悪事千里を走る、と」
別に悪事ってわけでもないと思うが、格言を口走るなんて急に悟りを開いたな。
 
 ハルヒなしで古泉がこの部屋にいるのは珍しいかもしれない。俺以外の誰かが来るときはたいてい五人が揃っているものだ。
「お二人は付き合い始めてどれくらいですか」
「そろそろ六年か。考えたら長いな」
「……そう」
「あなたがたがうらやましいです」
「俺たちだって何もなかったわけじゃないさ。こう見えても紆余曲折あったんだからな」
「……わたしは、エラーの連続だった」
「それを言うなら、今回の僕はもう致命的エラーですよ」
長門は後輩の失敗を優しく見守る先輩のような眼差しをしていた。
「……当初、わたしは恋愛というものの正体すら理解できていなかった」
「それは人間にも理解できているとは言いがたいでしょうね」
「……何冊もの本を読んだが理解不能だった。そもそも情報統合思念体にはそのような概念がない」
「ええ、恋愛論は人類の永遠のテーマですから」
「……言語では概念を説明できない、彼がそう言った。それで分かった」
はて、俺そんなこと言ったっけ。
「僕から見れば、あなたがたは代名詞的に非常にうまくいっているカップルだと思いますよ」
「……ありがとう」
そこでちょっとだけ頬を染めてみせる長門だった。
 
「きっかけからして決定的だったでしょう。涼宮さんがうまくリードしてくれた」
だったよな。その言い草が“付き合うのか付き合わないのかはっきりしろ”だった。あれがなかったら俺と長門の関係は今でも曖昧なままだったかもしれん。
「僕の場合、きっかけがこれですから。もうどうしようもないですよね……」
そこで鬱っぽくなるなって。
「……この失敗が必ずしも悪い結果になるわけではない」
「そ、そうでしょうか」
「……涼宮ハルヒの場合、巷に氾濫しているようなメロドラマやラブストーリーと同じ男女関係の展開を当てはめることはできない。つまり、属性の転換が可能」
「つまり災い転じて福と成す、ですか。なるほど」
マイナスとマイナスは時としてプラスになると言いたいのか、かなりこじつけっぽいが、長門がいうと妙に説得されてしまうのは理論好きの古泉の弱いところだな。
 
「涼宮さんの理想の男性像って、どんなタイプだと思いますか?」
「そうだな。あいつはずっと自分がリード役だったから、引っ張っていってくれる頼もしいやつがいいんじゃないか」
「それは僕のキャラクタでは無理がありますね」
「あいつ、中学生の頃はとっかえひっかえだったらしいぞ」
「ええ、知ってます。宇宙人未来人超能力者の彼氏を探していたようですね」
「この際だから正体を明かしてもいいんじゃないか。即決だろ」
「それが無理なことはあなたもよくご存知のはずですが……」
古泉は苦笑してみせた。分かっているが、つい言ってみたまでだ。
「別に超能力じゃなくてもなにか特殊な能力を持ってるならいいんだろう。七つの声で腹話術ができるとか、トランプの札を全部記憶できるとか、百メートルの高さからダイビングして生きていられるとか」
「エンターテインメント系ばかりな気もしますが。涼宮さんはなぜ特殊な能力にこだわるんでしょうか?」
「そのほうが楽しいから、らしい」
「うーん……とても無理ですね」
古泉は頭を抱えてため息をついた。
 
「長門、ハルヒは今どうしてるか分かるか」
「……涼宮ハルヒは、花束を花瓶に活けている」
遠い目をして千里眼を使う占い師のように呟いた。
「そうなんですか」古泉が身を乗り出した。
「……バラが気に入った模様」
「さすがは長門さん、脈ありですね。メッセージカードは読んでもらえたでしょうか」
「破り捨てられている」
「意味が分からなかったんじゃないか?」
長門がおもむろに目を見開いてなにかを凝視した。かと思うとうつむいて、頬が少し赤くなった。
「どうしたんだ?」
「“私のトゲで刺して欲しいと望むか?”……ラテン語が間違っている」
「ぼ、僕としたことが」
古泉は真っ赤になった顔を覆ってうつむき、俺はまたもや腹を抱えて笑った。こいつは一度こけると何度も続けて転ぶタイプだな。
 
「それはそうと、花代半分出していただいてありがとうございます」
「それくらいはしてやるさ」
「……わたしは、花束をもらったことがない」
長門がボソリと言った。
「なんですか、ご自分は彼女に花のひとつもプレゼントしないなんて」古泉と長門が俺を見る。
「だ……だってなあ、長門は本とか歴史のあるものとか情報系のものが好きだと思ってだな」
だって長門に花贈ったら品種鑑定からDNA分析までされそうだし。
「長門さんだって花を贈られるべき女性ですよ」
「そ、そうだな。すまん長門。いつかタイミングのいいときに花束を贈るよ」
「……そう。待っている」
長門と花の組み合わせを想像できなかったのは、俺の失態だった。
 
 時計を見ると十一時を回っていた。話し込んで古泉も少しは気が楽になったのか、晴れた表情で背伸びをしている。
「長門、じゃあな。ご飯おいしかったよ。見送らなくていいから」
「……そう」
「おやすみなさい、長門さん」
「……おやすみ」
長門は一度だけ手を開いて閉じた。俺と古泉は長門の部屋を後にした。
 
「長門さんもずいぶん変わりましたね」
「お前もそう思うか」
「彼女をあそこまで変えたのはあなただと思います」
「まあ最初に会った頃は、ほとんど感情を出さなかったよな」
「その後はどんな感じなんです?泊まったりはしてないんですか?僕に気を遣ったのならすいません」
「いや、俺と長門はお前が考えてるような付き合い方じゃないんだ」
「といいますと」
「あいつにはふつう一般で言うところの男と女の付き合いは難しいんだ」
「フィジカルな関係のことですか」
「まあ、それも含めてな。はじめてキスしたとき、気絶して倒れたことがあってな。あいつ流の言い方だと“機能不全を起こした”ってやつだが。俺は何が起こったのか分からずオロオロして、喜緑さんを呼んだら、長門には刺激が強すぎると怒られた」
「そうだったんですか」
「世間一般に比べたら俺たちはかなりゆるやかな恋愛かもしれん。お前らみたいにいきなりヤッたりはせんからな」
「だから、あれは事故ですってば」古泉が苦笑した。
「分かってるさ」
笑いながら軽くジャブをかました。
「長門は俺がいると、どんな小さなことでも活性化指数が上がる、らしい」
「それはTFEI流で言う、幸せを感じられるってことでしょうか」
「そうだと思う」
「僕も見習わないといけないですね。より強い刺激に走りがちですから」
 
 夜空は晴れていた。そのうちのひとつくらい流れないだろうかと星を見上げた。長門は長い年月俺を待っていたんだ。だったら少しくらいゆっくり歩いたっていいじゃないか。
 
 月曜日、ハルヒは頭痛がすると理由をつけて会社を休んだ。古泉は朝からハルヒに会うのにどんな顔を見せたものかと気をもんでいたが、休むと分かってほっとしたようだった。
「考えようによっちゃ、これはこの世界にとって予防接種みたいなもんじゃないか」
「興味深い意見ですね。うかがいましょう」
「たとえばだが、俺とハルヒがくっ付いたとして、その後破局を迎えたらどんな異変が起こるか」
「考えただけでも末恐ろしくなりますね。きっとこの世界が嫌になって、あなたの存在しない新世界を作り出すでしょうね」
「あいつは俺を抹消する気か!」
「まあまあ、例えばの話です」
まじでやりそうだから怖い。
「ハルヒが失恋したり喧嘩別れしたりするのは、人として生きてりゃふつーにありえる話だ。そのための予行演習だと思えば安いもんだろ」
「まったくリスクの高い予行演習ですが」
「でも、今回は閉鎖空間は発生してないだろ?」
「そういえばそうですね。あなたの役回りが今回は僕に回ってきた、と考えるべきでしょうか」
「付き合いが長いお前だったから暴走しないで済んだのかもしれんな。ってお前、そんな他人事みたいに言ってていいのか」
「僕はいつでも客観的に物事を判断するように心がけていますから」
なんだかまたいつもの古泉に戻ってきたようだ。ちょっと情けをかけてやるとこれだ、いまいましい。
 
「それより、どうやって涼宮大魔神の怒りをなだめるかだが」
「なにぶんにもこういった経験がないので、方策すら思いつきません」
古泉が酔って女の部屋に転がり込むのが経験豊富だとかいうと、それはそれで困ったことだがな。
「いきなり付き合ってくださいというより、地味に一回ずつデートに誘ってみるとか」
「僕と涼宮さんが、ここまで来てそれはないかと思いますが」
「そうか。幻想だよな」
「いきなり結婚してくださいのほうがまだ説得力あります」
「それは爆発しかねん。閉鎖空間だけじゃ済まないかもしれんぞ」
「怖いですね」
古泉は青い顔をしてブルっと震えた。
 
 俺と話してると口だけは達者なのだが、古泉はその日ずっと仕事が手につかないありさまで、窓の外を眺めたり何度も同じ書類を読んだり、電話の会話もシドロモドロで、見ていて実に痛々しい一日だった。午後一時になってもまだ机の前に座ったままで昼飯を食いに行く様子がない。
「おい、飯は食ったのか」
「なんだか食欲がありません」
「食わないと後で堪えるぞ」
「今でも十分堪えてますよ」
薄く影を落として笑う古泉を見ているとナースを呼んで点滴でも打たせようかという気になった。
「古泉、一度ハルヒと話し合って白黒つけろ」
「白黒と言われましても、もう済んだことですし」
「お前たちがそんなじゃこの先会社としてやっていけん」
社長が引きこもり、秘書が右往左往しているようじゃ船頭どころか舵すらなくして延々と蛇行する船だ。
「それはそうですが、今はただ、嵐が過ぎるのを待つしかないと」
その嵐はきっと家やらビルやらを広範囲に渡って巻き込んだ挙句、何日も停滞して被害甚大になる可能性大だぞ。と言うと古泉は顔にかかった髪の陰をいっそう濃くして冷や汗を垂らしながら笑った。
 
 俺は古泉が見ている前で受話器を取り、ハルヒの携帯にかけた。
「おいハルヒ、具合はどうだ」
「社交辞令みたいなこと言ってんじゃないわよ。頭痛の原因は知ってるでしょ」
「あれはまあその、なんだ、事故だと思ってだな。お前がそんなだと経営にも影響あるわけだし、はやく忘れろというか記憶のかなたに葬り去れというか」
「他人事みたいに言ってんじゃないわよバカ!!」
怒鳴りつけて切りやがった。まあ俺にとっちゃ他人事なんだがね。脇を見ると、あまり涼宮さんを刺激するようなことは言わないでください、と古泉が両手をあわせて拝みつつすがるような目で俺を見る。閉鎖空間の後始末がたいへんですからと涙目だ。お前も他人事みたいに言ってんじゃねえ。
 
 ガチャ切りされた電話にまだ耳鳴りしているところだが、俺は耐えがたきを耐え忍びがたきを忍び、もう一度電話をかけた。
「なあ、いつまでもそうやって引きこもってるわけにもいかんだろ。大人なんだから一度ちゃんと話し合って、ケリをつけちまえよ」
「あんたに言われなくても分かってるわよ。修羅場の前にワンクッションくらいあってもいいでしょ」
ハルヒが修羅場などという言葉を使うと、ハルマゲドン襲来の宣言のように聞こえて背筋が寒くなった。俺の隣では古泉が聞こえない二人のやりとりをハラハラしながら見守っている。
「とにかくだな、会って話をしろ。お前らの間で起きたことはお前らで始末をつけろ、俺は知らん」
こういう突き放した言い方は、稀にだがハルヒにやる気を起こさせることがある。軽めのショック療法的というか、映りの悪くなったテレビを叩いてみる修理法というか、魚の縄張りでルアーを躍らせてイライラさせる釣り方というか。
「分かったわよ……。古泉くんは今どこにいるの?」
「俺の隣でオロオロしてるさ」
ハルヒはそこで軽く息を吸い、ため息をついた。そう、古泉が呆然自失するところなんて哀れな姿は俺も見たくない。
 
 俺はなんとかハルヒをなだめて、ようやく古泉との話し合いの場を持たせることに成功した。話し合いというか、ふつーにデートのセッティングなのだが。
「会ってなにを話せばいいでしょうか」
「もう、直球で行け。あいつならジャストミートでヒットエンドランか、思い切りよく空振り三振するかだろう。ファールってのはありえん」
自分で言ってて何に例えてるのかよく分からん試合予想だ。九回裏二死満塁どころか一回の表で土砂降りになって試合中止の宣言をするべきかどうか迷っている主審の気分だ。
 
 キザな誉め言葉も花束もやめよう。駅地下の静かなバーに二人を呼び出した。男と女が込み入った話をするのにはちびちびと酒でも飲みながらのほうがいいだろうとその場所を選んだのだが、まさかこの状況であの二人が泥酔して事故再び、って展開はギャグ漫画でもありえんだろう。ちょっと不安だが。
 
 俺は長門を先に帰らせ喫茶店で古泉の戻りを待っていた。
「どうだった?」
「振られました」
古泉はすごく爽やかで、疲れたような笑顔で言った。どっちかにしろ。
「だめだったか。だが、あきらめるのはまだ早いぞ」
「彼女には好きな人がいるらしいです」
「そうだったのか」
初耳だ。まじで初耳だ。
 
── ごめんね。古泉くんはいい人だと思うわ。でもあたしにはずっと憧れてる人がいるのよね。
 
「嫌われたわけじゃないようだな」
「でも、いい人、ですよ。いい人というのはそれ以上の関係になれないどうしようもない存在です」
「いっそのこと、その憧れているやつってのを消しちまったらどうだろう」
機関なら簡単にやれそうじゃないか。ヒットマンを雇うとか、北方四島のどれかに飛ばしてしまうとか。
「さあ、どうでしょうね。その人の素性すら分からないですから」
「誰なんだ、そいつ?」
「ジョンスミスとかいう外人らしいですが」
俺は飲んでいたコーヒーを古泉に向かって盛大に噴いた。
「うわ……ひどいじゃないですか」
「すまんすまん!コーヒーが……気管に入った」
俺はおおげさに咳をしながら謝った。
「ちょっと洗ってきます」
古泉はぶつぶつ言いながらトイレへ行った。
 
 いやあ、今のは驚いた。ずっと俺を待っていたのかハルヒは。なんてこった。
 
「……あなたは、愚鈍」開口一句、長門が言った。
「なんでだよ」
長門になじられるのは初めてのことで、俺もちょっとムカついた。
「……八年間、涼宮ハルヒのそばにいて気がつかなかったのは、あなたが悪い。……あなたが、悪い」
長門が同じセリフを二度繰り返すのは、本当に怒っている証拠だ。
「……涼宮ハルヒはずっとジョンスミスを探していた。そして今も探しつづけている」
「そうだったのか」
最初に会った七夕から考えると十年は経っていることになるな。毎年七月になるとメランコリーなハルヒを見かけるのはそのせいだったのか。高校の頃、部室で七夕の飾りを作っているとき、妙にため息ばかりついていた記憶がある。あれはジョンスミスを想ってたんだな。いつまでも人を待ちつづけるのは精神的に疲れるだろう。長門を見ていれば分かる。
 
「こうなったら是が非でもハルヒに古泉をベタ惚れさせねばならんな」
「……それは困難の極み」
「なんでだ?」
「……古泉一樹は涼宮ハルヒが恋愛の対象として好む人格ではない」
「でも、嫌いってわけでもないだろう」
「好き、と、そうでないのは雲泥の差がある」
そういうものか。
「……そう」
俺は考え込んだ。俺の経験則から言うと……。
「いいや、長門。お前は間違っている。好きになったりときめいたりするのはな、本人の気持ちとは関係ない、まったく別の作用によるもんなんだよ」
意外に説得力あったようで長門が目をぱちくりしている。これはかわいい。
「……」
「理屈や予測やらが通用しない、だからみんな悩むんだ。恋は盲目って言うしな」
なんて古風な表現を使うんだ俺。
「……確かに」
「古泉の意外な一面を見れば、ハルヒだって惚れるかもしれないじゃないか」
「……確率は低い。でも量子的に見ればありえなくはない」
そこで量子論ですか、長門さん。
「閉鎖空間で戦う古泉をハルヒに見せるってのはどうだろう?」
「……推奨しない。涼宮ハルヒが自らの能力に気が付いてしまう可能性がある」
「それは困るな」
「それに、閉鎖空間発生時の涼宮ハルヒの精神状態を考えれば、閉鎖空間に誘うことなど、無理」
それは確かに言えてる。イライラの真っ最中にデートに誘うようなもんだよな。
 
 俺はため息をついた。
「まったく、なんでジョンスミスでなくちゃならんのだ」
「……あなたは、少女の心理を理解する必要がある」
「男の俺には乙女心は分からん」
「……生まれたばかりのヒヨコは、目の前にいる動くものを親だと認識し、精神的刷り込みがなされる。涼宮ハルヒにとって、ジョンスミスは最初の未来人として刷り込まれた」
「それで俺か。まいった……」
どう転んでも俺がハルヒと付き合うわけはないじゃないか。今は長門と付き合ってるし、だいいちタイプじゃない。
 高一のとき、はからずもハルヒとキスをしてしまった夜が今はトラウマになっちまってて、あのときのことが今でも脳裏から離れない。俺がハルヒをそういう目で見てないのにあの状況が無理にそうさせたからなのだ。
 
「絶対無理だ」
俺はあのときのシーンを思い出しそうになって頭を振った。いや待て、ハルヒが探しているのはジョンスミスだ。キョンだとは言わなかった。
「もし、もしもだ。古泉がジョンスミスなら……?」
「……」
「あのときの七夕に現れたのが、古泉だったら?」
長門が驚いた顔をした。
「……あなたは、歴史を改変するつもりか」
「もしもの話だ。教えてくれ。あの日、古泉が東中グラウンドに現れた場合どういう結果になる?」
長門は数分間考え込んでいた。膨大な計算をしているようだ。
「あのときの時空は複雑に入り乱れていて、予測不可能。強いて言えば、二十五万通り以上の結果が予測される」
「二十五万通りって、なにも予測しないのと変わらんな」
「……そう」
「じゃあ、過去の七夕に現れなくてもいい。自分がジョンスミスだって言ってしまえばいいじゃないか」
「それは、もう無理」
だよな。古泉はもうジョンスミスの名前を聞いてしまったわけだし。
 
 だがここでみすみす放置するわけにもいかない。ハルヒの口からジョンスミスの名前が出てしまったということは、その正体がバレてしまうのは時間の問題だろう。ジョンスミスの正体を知っているのは確か朝比奈さん(大)と長門だけだ。
 その朝比奈さんにそそのかされるようにしてやったことが、歴史に影響を与えたのは疑う余地のないことだが、だったら俺も朝比奈さんスタイルでこのもつれた糸を解きほぐしてやってもいいんじゃないか。
「……あなたが実行するなら、検討の余地はある」
長門は反対しているわけではないらしい。それが俺の責任ならやってもいいという意味なのか、俺には歴史を動かす力があるという意味なのかは分からなかったが。
 とはいっても、本人がやる気にならないと事はうまく運ばないだろう。俺はハルヒとジョンスミスにからんだ歴史を修正する気があるかどうか古泉に打診することにした。
 
 帰り際、ドアの前で靴を履きかけて思い出した。七夕といえば、長門が俺とはじめて会ったのもあの日だ。それから長門の肩を少しだけ抱きしめた。
「お前も七夕から三年間、ずっと俺を待っていたんだよな。今それを思い出したよ」
「……さっきは、怒って悪かった」
いいんだよ。どうせ俺は鈍い男だからな。ふん。



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最終更新:2020年05月17日 18:26