「こ、これは…、いったい、何の冗談だ…?」
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「あっ。」
「どうしました?」
「部室に忘れ物した。」
「そうですか。明日は土曜日ですし、物にもよりますが、取りに帰っては?」
「お前に言われんでもそうするさ。」
「これは失礼。」
微笑を浮かべながら言うな。まあ、慣れてるがな。
「おーい、ハルヒ。」
「なによキョン。」
「部室に忘れ物したから、とりに帰ってくる。」
「あっそう。それじゃあ、はい。」
「おっと、って、何だ?」
「見てわかんないの?鍵よ部室の合鍵。」
「それは、わかる。俺が言いたいのは何で部室の合鍵をお前が持ってん
のか、って事だ。」
「部室の鍵毎回借りるの面倒だなって言ったら、
有希が作ってくれたのよ。」
「そう…。」
おいおい。勝手に作ったらまずいだろ。
「何よ。なんか不満そうね。だったら貸してあーげない!」
「おっと。誰が返すか。ありがたく借りさせてもらう。」
「最初っからそう言えばいいのよ。」
ハルヒは満足そうな笑顔を浮かべてやがる。くそっ、何か納得いかん。
「鍵は来週返す。またな。」
「またねー。来週、鍵忘れんじゃないわよ。」
「また…。」
「またね、キョン君。」
「また来週。」
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ピカッ!ドーン!
雷か…。かなり近いな、念のために急ぐか。
だっだっだっだっ
ピカッ!
「なっ!」
突然、俺は凄まじい光に包まれた。
これって、まさか直撃か!?
「……………」
「ん?」
おかしい、なんとも無い?
恐る恐る目を開くと…。
時に異常はない。よかった、無事だ。
「何だったんだ?」
まあいい。そんなことより忘れ物だ。
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「文芸部に到着っと。雲行きも怪しいし取るもの取ったらさ…。」
今、何か違和感を感じたような…。
しかし、その違和感はすぐに魚を手づかみしたときのようにするりと
手の内から抜けちまった。何だったんだいったい。
俺は妙に引っかかりを感じつつ文芸部の扉を開けた。
ガチャ
「なっ……。」
俺は唖然とした。だってそうだろう、目の前にこんな光景が広がっていたら…。
今俺がいるのは、ほんの1時間前まで俺たちがいた部室…のはず。
しかし、今俺の目の前に広がっている光景は、
あるものと言えば机と椅子と本棚しかない―ハルヒの持ち込んだものや、
長門の本、朝比奈さんの衣装、古泉のボードゲームが
綺麗さっぱりなくなっている。もちろん俺の忘れ物があるはずも無い―
ただの文化部用の部室だった…。
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