お天気シリーズ第三段
「…なによ、バカキョン!雑用の癖にあたしに楯突くなんて!」
「そんなことどうでもいいだろ!それよりさっきの言葉を訂正しろ!」
怒ったキョンを見るのは、初めてじゃなかった。
あたしが悪いのはわかってるし、本当は謝りたいのよ。
…でも、あたしに対して怒るキョンを見ていると、何だか言い返したくなる。
「そこまで言う必要ないじゃないっ!」
そう、それは、ある雷の日。
原因は…、なんだったかしら。
忘れちゃったけど、とにかくその日、キョンとあたしは喧嘩をしたの。
怖かった。
嫌われてしまうんじゃないか。
いや、こんなに怒ったってことは、もう嫌いになっちゃったのかも。
なのにあたしは、『ごめん』の一言も言えない。
なによ、あたしのバカ…
「バッカじゃないの!?うるさいわよ!」
いつもはにこやかな古泉くん、いつも本から目を離さない有希までもが、こちらを真剣な面持ちでじっと見ていた。
みくるちゃんは――泣いてる。声を殺して。
あたしだって泣きたいわ。
どうして、どうしてあたしはいつもこうなの?
そのとき、雷が鳴った。
「きゃあ!」
格好悪いから言ってなかったけど、実はあたし、雷が苦手なの。
だって吃驚するじゃない。いきなりゴロゴロ言われたら!
で、あたしはつい悲鳴をあげてしまったわけ。
「……」
それまでうるさかったキョンが黙った。口を阿呆みたいにぽかんと開けて。
そのときのあたし、凄く恥ずかしかったわよ!
団長としての威厳が保てないもの。
「…っは、ははは!」
え?
次はあたしが驚く番だった。怒ったあとぽかんとしていきなり笑い出すなんて、
もしかしてあんた、どうかしちゃった?
…なんてことを考えてたら、あたしまで笑えてきた。
やっぱり、キョンが笑顔になってくれたからだと思うわ。
空気が柔らかくなるっていうか、安心したのよ、あたし。
でもすぐ気付いたわ。
…キョン、あんた、あたしが雷を怖がってるところを見て笑ったわね!?
あたしがキョンをぽかぽか叩いているのを見ていた3人の目は、とても温かかった気がするわ。
今から思えばあたし、なんてくだらないことを考えてたんだろう。
反省してる癖になんとなく嫌だから謝りたくないなんて。
そうそう、その後はちゃんと素直に言えたわよ。ごめんね、って。
キョンも、俺も言いすぎたって言ってくれたわ。
あのね、人間、いつ死ぬか分からないのよ!
生きてきた時間の中は、なるべく楽しいことで埋めたいじゃない?
つまんない喧嘩なんて止め止め。時間の無駄遣いよ!
…ま、あたしはまだ死にたくないけどね。
このSOS団の皆と、まだまだ一緒に居たいもの。
卒業?そんなの関係ないわ。SOS団は不滅なんだから!
キョン、みくるちゃん、有希、古泉くん。
皆も、そう思ってくれているのかしら?
ある雷の日に 完