~~~ <Ⅰ> 【 展開 ~spread~ 】 ~~~~   

 

―――なんてこった。

 
 俺は今日あのハルヒと列車に乗ってデパートまでの付き添いをせにゃならん。なぜだ。


 ・・・なぜだといっても、思い当たる理由は特にないのが悲しいところなの だが・・・  

 

・・ 

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

「キョン!新しいビデオカメラ買いに行くからついてきなさい!」

 
 「却下だハルヒ。なぜお前の思いつきに付き合わねばならん。それにもうあの電気屋の親父さんに迷惑はかけたくないんでな。」

 
 「いーじゃないちょっとぐらい!ていうかあんたに断る権限なんてないんだから!」

  
 ちょっとじゃねぇ。膨大だ。そして横暴だ。

 
 「それに今日行くところは隣町の新しい電気屋よ!」

 
 今日チラシに載ってたなそういえば。さぞかし人が多く混雑していることだろう。基本的に俺は人ごみの
中にいても平気だが、団子状態の人ごみとあっては話は別だ。ハルヒと二人っきりというのであれば嫌気度35%増しの状況だ。あいつなら人をけり倒してでも目当てのものを買いにいかねん。
 
     
    ・・・結論。もう少し粘ってみるか。

 
 「なぜ俺なんだ。長門や朝比奈さんに頼めばいくらでもついてきてくれるだろう。」

 
 添付と拉致、だがな。ちなみにいうまでもなく前者が長門で後者が朝比奈さんだ。


 「む、、、だって人がいっぱいで危険かもしれないし、、、」


 おお、ついにこいつにも人並みの常識って物が身についてきたか。ハルヒは女であるし、外見に至っては朝比奈さんには劣るがなかなか、いや美人に入るだろう。中身のことになるといつ終わるかわからないほど愚痴が出てくるのでここは自主規制しておくことにする。

 
 「あー。そういう理由なら別にいいが。だったら団員全員で行くのはどうだ?」


 「ただでさえ人が多いのに、用もないのに苦しい思いをさせたくないわ。」

 
 ・・ちょっと待て。その理屈で行くと、おれはどうなる。

 
 「あんたはいいの!!」

 
 何がいいのか教えてくれ。


 「とにかく!文句は言わせないし言ったとしても光速で却下させてもらうから!」


 光の速さで却下されてはたまらん。もう何を言っても無駄そうだ。

 ・・・・決定。今日は早く寝よう・・


―――――というわけだ。


  結局今は駅前に向かっているところなのだが、このやる気の潤いはゴビ砂漠なみにかわいている。いつも思うがあの女は思いつきでしか行動できない猪の脳を搭載した猪突猛進型にんげんなのだろうか。そうだとしても少しは俺の話を聞け。でないと俺の立場が原子の大きさなみになっちまう。


―俺がつくともうハルヒは憤怒の形相で待ち構えており、


 「キョン!何分遅刻したと思ってんのよ!またおごらされたいの?」


 そんなに遅れただろうか。・・・ぅお。今日のだるさのことを考えていると歩くスピードが尺取虫になっていたようだ。家を出たときは約束時刻まで20分余裕で間に合うつもりだったんだがいやはや。


 「いーじゃねーか少しぐらい。今日はお前の思いつきに付いていってやるんだぞ。」

 
 「思い付きじゃないわよ。チラシを見て、頭の中で審議をしての結果よ!」


 それを世間では思いつきというのだよハルヒさん。それに審議って他人の意見はプレスだろうが。


 「あんたね。この世は何でも最初は自分の意見を通さなければ、いつまでたってもことが進まないでしょ
!!それぐらいわかんないの?」


 うまく言いくるめようとすんじゃねぇ。それだととっくに世界は第十次世界大戦に入ってるし、最初はっ
てお前は最後まで突き通すつもりだろうが。


――そういっている間にいつの間にかハルヒは切符売り場に買いにいっている最中であった。いつのまに?
  一人で話してる俺がバカみたいじゃねえか。くそぅ。


 「ごちゃごちゃいってないでいくわよ!」


 切符を渡されすたすたと改札口を通っていく。そういえば切符は毎回あいつに買ってもらってるようなき
がする。まあ俺はそのほかでたかられているわけだが。

 

 

 

 

 

――このときまでは俺は思いもしなかったよ。これから後が、ビックリすることになろうなんてなになると
  はな・・・―――

 

 

 

 

 

 

 「街中では騒がしいけど、電車の中ってけっこうしずかよねぇ。やっぱりそういう雰囲気があるのかな」


 ハルヒがなにやらぶつぶつ言っている傍ら、おれは体力温存のためにうたたねをしている。


 「わたしさ。前にも言ったと思うけど、こういうみんながやるからやるっていうの、気に入らないのよね。レールどおりにはしってるみたいでさ。そりゃあ、電車の中で静かなのはいいことだと思うわよ?けど、そうしなきゃならないからするっていうの、わたしには我慢ならないのよ。」


 「じゃあどうすれば満足できるんだ。」


 「人と違うことして、自分たちはルールって言う枠に従わなくても、社会に順応できるってことを示したいのよ。」

 
 その思考は大いに結構だが、その反動で俺たちを振り回すのはやめてくれないかハルヒよ。


 「だから私は、このことを思い始めたときから、人と違うことをするように心がけてきたのよ。」


 ・・こいつもどうやら完全なる思い付きで行動しているわけではなさそうだ。

   思いつき:思考・推敲=8:2 だが。


 「じゃあおまえは要するに新しい道を開きたくてこういう突発的なことをしてるのか?」


 ・・・へんじがない。自分はいうこと言って後は無視かこいつ。


 俺はハルヒのほうに振り向いた。

 


 

 

 

 

  ・・・・なんだこれは。

 


 

 

 

 振り向いた先には、どこまででも続いてそうな黒い闇の空間が広がり、俺の座っている部分でいすが切れて、いやもぎ取られている。


 ・・・なんだこれは。そうおもい、ハルヒを探すべく反対側をみる。


 ああ。今日は俺の命日か。マジでどうするよ。おれ。


 

 

 

 

 そのさきには、2度と見たくないと思っていた、灰色の世界が広がっていた・・・


 
 
 
 なんだなんだなんだ?俺は確かにさっきまではハルヒと話をしていた最中だ。こんなところに行く呪文を唱えたとは思えん。とにかくだ。今俺が真っ先に考えなければならんことは、


              ――――――古泉はいるか―――――――


 このだだっ黒い世界の番人はスマイル古泉のはずだ。よかったな。お前の出番だ古泉。今回ばかしは譲ってやるよ。いやまじで。でてこいよ。・・・・・たのむよ。


 俺がそんな泣き言をかましていると、どうやら神は敵さんがわに着いたようだ。


      ――――ナイフを持った美少女が、こちらを向いて笑っている―――――


 もうお分かりになった方もいられるだろう。こいつは以前、長門との戦いで敗れ、砂になって消え、ハルヒが消失したときに復活しては再度消された、宇宙を統括する情報統合思念体急進派、


             ――――――朝倉涼子がここにいる――――――


 ・・まてまてまて!なんかこの状況前にもあったような気がする。いるはずのないこいつに、半狂乱になった自分が・・・・・


 「考えは落ち着いた?」


 ・・・チェックメイト。朝倉涼子を敵性と判定。直ちに警戒態勢にはい・・いやいやいやふざけている場合じゃない。マジでやばいぞこの状況。しかもさっきまではかろうじて電車の中と判断できたのに、いつの間にか灰色の空間が侵食し、元いた場所がどこだったか認識できないまでになっている。


 「なぜお前がここにいる?」


 ・・・ああ、この言葉もどこかで言ったような気がするぜ。やっぱりこの状況はあの時とおんなじか。


 「ふふ。わたしがここにいたら悪い?」


 いいはずの理屈があるのなら教えてくれ。笑っているがどこがおかしいのかわからん。


 「私は必要があってここに再構成されたんだから、別に必然でしょう?」


 必要があったから俺が殺されますなんてバカなことがあるか。俺は1秒でも早くここから出たい。


 「それ無理。」


 お前わざと前の状況繰り返してんじゃねぇだろうな。あいにく俺は戻りたいとは光粒子1個分もないぜ。


 「あなたの意思は別にどうでもいいの。」


 ハルヒみたいなこといいやがる。なんだ?こいつらは、やりたいと思うとそのことで頭がいっぱいになってしまうのか?難儀な頭だな。おい。

 
 どうやら時間稼ぎもここまでのようだ。やつはナイフを手でもてあまし、俺に向けて構え直したからだ。こんなときでも冷静でいられる俺ってすげえな。慣れちまったのかもしれん。慣れって恐ろしい。


 「実は今回は戦いに来たわけではないの。あなたと交渉しにきただけ。」


 ナイフを向けて交渉とは言わん。それは脅迫というんだ朝倉。しかし俺はあえてやつに問う。


 「交渉?」


 「ええ。それも涼宮さんがらみではないわ。」


 ・・・確かこいつらはどこぞの思念体が送ってきた宇宙印の人造人間じゃなかったけか?それも目的はハルヒで。


 「確かに主は涼宮さんを目的としている。けど、今回は目的概念がずれているとしたらどう?」


 「あいにく俺は小難しい話にはミクロほどにも付いていけない才能があるんでな。」


 「理解するかしないかであなたの生命が死という概念に着くかもしれないのに?」


 なら最初から選択肢を作るんじゃねぇ!

 
 「ふぅ。あなたとしゃべっていても一向に話が進まないわ。条件を今からわたしが一方的に言うからあなたはイエスかノーかで答えてくれればそれでいいわ。」


 どうせイエスしか存在しないのであろう。


 「まず一つ目ね。」


 この上なく鬱陶しいのにいくつかあるのか。


 「パーソナルネーム:長門有希に最近感情が出てきたって思わない?」


 

 ・・・・

 

 

 「あのこ、あなたたちと接触していることで、感情を手に入れることに成功しつつあるかもしれないのよ。」

 
 こいつ、長門のことをどこまで知って・・・?

 
 「一番決定的なのが、涼宮ハルヒが思念分岐体への道を開いたときかな。」


 ・・・あのカマドウマか。


 ・・・!?ちょっとまて。こいつなんでしってるんだ?あの空間には俺と古泉と長門と朝比奈さんしかいなかったはずだ。わかったとしても何で俺と古泉しか気づいてない長門の微妙な変化に?


 「それで。あなたがしっているだけでいいの。あの子に出てた感情を教えてくれない?」


 「却下だ。」


 考えるよりも先に言葉が出ていた。あいつは、俺らを信用して助けてくれ、あまつさえ心を少し許してくれてるってのに、助けられた俺がこいつの言うことを飲んでは馬鹿みたいじゃねぇか。


 「やっぱりあなたはあの子のことになると熱くなるわね。」


 「別に特別な思い入れがあるわけじゃない。俺は約束したんだよ。俺にできる限りのことは、長門に協力するってな。」


 「この条件は関係なくない?」


 「関係ないことなんてない。それを教えることで後に長門に不利益がかかるのは見え見えなんでな。」


 そうだ。別に長門だけじゃない。SOS団のメンバーは、微量だが少しずつ変化してきてる。ハルヒも古泉も長門も――朝比奈さんはもともとああだったようなきがするが、あの人もSOS団に溶け込んでいっているような気がするから仲間内だ――だ。こいつらとせっかくわかりあえて来た気がするのに、こんなどこのエイリアンかわからないやつにつぶされてたまるか。


 「じゃあ2つめね。」


 即答で断ったのに、わりとスルーしている。こいついったい何たくらんでいるんだ・・・?


 「またあの子のことだけど、あのこ、ほかのインターフェースとは少し違う気がしない?雰囲気とか。」


 古泉もなんかそんなことをぼやいていたな。俺にはまだわからんが、今度あったときによく観察してみよう。帰れたら、だがな。


 「どう?」


 「俺がどう思っていようがお前に教えることは何もない。」


 「・・・・それは残念。今回は柔和に勤めようと思ったけど、やっぱり力ずくかぁ。」


 俺はとっさに身構える。が、身構えたと思った瞬間の次には俺は床(?)に倒され、喉元に冷たい刃の付いた殺傷性抜群の金属が当てられている。


 「言った方が身のためだと思うけど?」


 「ここで俺を殺したら、本末転倒じゃねえか。」


 「別にあなたがここで死ぬことになっても、本来の任務が完遂されるだけだし。」


 本来の・・・? !!まさか。


 「“あなたを殺して、涼宮ハルヒの出方をみる”よ。おもいだした?」


 こいつ・・!

 
 

 ――3分ほどだろうか。この姿勢のまま俺は朝倉をにらんでいた。これが朝比奈さんだったらどれだけうれしいであろうか。・・・いやいや今はそれどころではない!

 
 

 何とかこいつから離れて距離を・・・


 「無駄な行動は今はあなた達の言う死の概念を受け入れることになるわ。私にはわからないけどね。」


 取ることはできないようだ。宇宙人は人の感情を読む能力でもあるのだろうか。


 「それに万が一わたしから距離を置けたとしても、ここはわたしの情報制御空間。苦労したんだからぁ。あなたと超能力者君がいう閉鎖空間ってやつを作るのは。」


 なんだか非常に気になる部分があるが、今だ!


 俺は朝倉のナイフを素手で握り―――こんなに痛いのか素手は―――、そしてもう片方の手で朝倉を突き飛ば、、、せない。よけられた。なんてこった。
 
 やつは高く飛び俺から離れ、ナイフを放した。すぐに体勢を立て直し、あの不敵な笑みを再度浮かべて俺をみている。勝てるか?情報統合思念体あいてに、ナイフ1本で。


 俺の勝利条件は二つだ。ひとつは、朝倉を倒し、情報なんとか空間をつぶす。もうひとつは、何らかの逃げ道を探し、逃げ切る。前者は論外なので却下だな。


 しかし俺はこのような状況に巻き込まれるのが宿命なのだろうか?だとしたらそれを決めたやつを八つ裂きにせねばならん。責任者出てこい。


 「大体お前は長門に消されたんじゃあ、、」


 「急進派はそれぐらいのことであきらめたりしないわ。」


 ・・・ああそうだ。こいつは長門と違い強引に物事を進めようとする急進派だったけか。


 「けど、ここであなたと戦う気はさっきもいったけどないわ。あの子の変化の報告をしてほしいだけ。」


 「さっきもいったがそんな気はニュートリノの質量ほどもない。」


 こうしている間は現実世界での時間の流れはどうなっているのだろうか?もし普通どうりに流れていたとしたら結構な時間になる。あいつに処刑宣告をされることになるから早く返してくれ。まじで。


 「・・・」


 「まあいいわ。いつかはまた聞き出す。かならずね。」


 ・・・何を思ったか急な展開でやつは帰っていきやがった。それにいつか、、、って。

 

 気づけば俺がやつから奪ったナイフも粉塵と化していて、証拠を隠滅された。さすがだな。それにこの黒

い空間も心なしか薄れていっているような気がする。・・・・・だが、ハルヒが店に行くといったのを見計

らいやつは来たことになる。長門の手から俺が離れたときを。ということはここ最近やつに見張られていた

ことになる。それも、長門が気が付かない方法で。いや、長門は気づいているのか。とにかくこれは長門に報告したほうがいいか。しかしまたあいつに負担をかけることになる。それにあいつのことについてやつは聞きだそうとしていたんだから、今回は黙っていたほうが無難で安全か。

 

 思案変わって、これはやつにいわなければならない。やつとは誰か。古泉だ。


 やつは情報・・なんだったかそんな空間を作り出しさらに、俺や古泉の言う閉鎖空間を作り出した。ということはあいつは気づいているはず。今回は長門に頼るわけではなく、古泉に頼ることになる。


 それにおれがこのような事態に干渉しても成果が出る可能性は日本が突然沈没するよりも低いし、下手すると邪魔をして足を引っ張りかねん。 

  
 ――――気づくとおれは見慣れた色付き風景の世界の戻っており、ハルヒがいぶかしげな目で見ている。


 「しゃべるのはいいけど、しゃべってる途中で突然目をつぶって寝込むのはやめたほうがいいんじゃない?いつも以上に変に見えるわよ?」


 
―――――どうやら俺は現実世界では目をつぶっているらしかった。だがハルヒの反応からすると、現実世界では5~10分、情報・・えぇいめんどくさい!閉鎖空間では30分程度が経過していることになる。それに気付くと俺の手に平には傷ひとつついてはいない。――それとハルヒの最後の文章は余計だ。―――時の流れまでを変更対象にするとは、何でもありだな。俺は長門にテストが100点になるように頼んでみようかな?という誘惑と一人戦っていると、

 

 「!着いたみたいね!降りるわよ!キョン!」


 「いつ聞いてもおんなじ台本のアナウンスを聞き取る能力はあいにくだが備わってる。」


 「・・・・そう?」

 

 

――――いったい俺に対しての認識はどうなんだろうか?本気で心配になってきたぞ?

 
 

 「フフッ。うそようそ。」


 うそとは思えない純真な表情をどうも。

 
 俺たちは電車から降り駅のホームの出口に出る。この町は比較的俺らの町よりも栄えていて、要は都会なわけだが、一瞥すると、小さな従者を周りに従え、中心にキングの駒のように聳え立つ電気屋がある、といったところか。何階建てなんだろうか。


 「さぁ!いくわよ!」

 ハルヒはそう声をかけてくれたが、そのときにはもう既に俺の数歩先をあるいていた。元気なやつだ。その元気を分けてほしいねぇ。


 「分けてあげよっか?」


 ・・デジャヴが俺の脳裏を走馬灯のようによみがえってきたので俺はやわらかく徹底的に辞退した。

 
 
その後俺たちは意外にもあっさりと電気屋に行き着き買い物を済ませ、買物だけでおとなしく帰るはずもないハルヒのキテレツな目的探索をし、再び電車という近未来的(か?)な交通機関に乗り込んだ。俺は常に警戒の糸を張り巡らせていたのだが、狙いやすい行動中を狙わないので、肩透かしを食らった気分になっていた。

 

 「これで部室はもっと便利になるわよぉ~!」

 

 耳を立てるとワクワクという音が聞こえてきそうな100ワットの笑顔で、日常的に使うとは思えない電

子機器を見つめていた。ああ、また部室に無駄なものが増えるのか。なんたってシュレッダーやファックスだぞ?何だこの微妙に使いそうでよく考えたらあまり使う機会のない代物は。増してや碌に作成表を作らないわれらがSOS団が、シュレッダーを使う程刷ったり、ファックス募集するほど不思議調査依頼が来るような状況になるとはおもえん。断じて思えん。朝比奈さんへのファンレターなら話は別だがな。


 
 車内でも俺は細心の注意をはらい――――はったからといって阻止できるわけではないんだが、心の準備ってやつをなぁ?――――、電車に乗る行為に対してトラウマが発生しそうになっていた今この頃、


 「なんか面白いこと起きないかなぁ。特っ別に不思議が大きいやつ・・・」


 なんてことをわれらが団長涼宮ハルヒ様はのたまった。 待ってくれお前がそんなことを願うと俺は絶対運命的に東奔西走せにゃならん。

 
 幸いにもそれ以後も無事に電車も俺の運命共に運行し続け、無事わが町の地を踏みしめることができた。俺ほど高校生でこんなに自分の町に対して感慨が深いやつはそうそういないだろう。


 俺はハルヒを途中まで見送り、町のある十字路で別れた後、俺もそのまま自宅に帰っていった。


―――このときの疲れた俺には看破できなかったよ。まさか朝倉にはるか上空の思念体とやらから俺とハルヒをあの列車での出来事からずっと監視されていたなんてな。まあ気づいていたら俺もハルヒに集う奇妙キテレツ軍団に強制デビューさせられていたんだろうが。

 

 俺は家に帰ると真っ先に風呂に入り飯を食って布団に入り睡魔に敗北宣言を渡してやりたかったところなのだが、第2行動と第3行動の間に今日の俺はしなければならないことがある。それが何かはいうまでもない。ヒントは俺の右手が持てる携帯だ。

 

――――そう、奇妙なプロフィールを持っているとはいえ、頼りになる古泉に、閉鎖空間のことを、どっか

のかなたで作られ飛んできたとはいえ、SOS団の中でもっとも信頼の置ける長門に、朝倉の動向について話さなければならない。最初は長門のほうに今回の件を話すのには抵抗があった。なぜなら最近(というか会ってからずっとの様な気がする)あいつには負担をかけてばかりだからな。そのせいであの世界改変を起こすきっかけとなりえたといっても過言ではない。というよりそうなのだろう。まして朝倉は今回はハルヒがメインではなく、あいつがメインみたいに言ってたしな。

 

 だが、それならなおさら言ってやらなければならない気がした。不意打ちでもされて長門が連れて行かれでもしたら、なぜあの時教えてやらなかったと発狂するかもしれん。


―――まず古泉に連絡。やはり閉鎖空間的存在の発生にはいち早く反応していたのか、0.5コールもさせてもらえなかった。今度は正座ではなく、通話ボタンに指を当て耳に当てていたんではなかろうかという程だ。 


 「お疲れ様です。ぼくも急いで駆けつけるつもりだったのですが、なぜか機関の上司から黙視命令が出されまして。」


 話が早くて助かる。


 「てことはやっぱりあの空間は閉鎖空間か?」


 「はい。それもかなりに精密に作られたものです。僕らが気づくようにもね。」


 「なぜだ?朝倉にとっては不利になるだけじゃないか。」


 「そこが多分彼女の意図ですね。我々や長門さんにも気づかれるよう、わざとそうした可能性が非常に高いです。」


 「それはなんとなく俺たちに急進派のことを植えつけようとしていることぐらいはわかるのだが、なぜお前のところの上司は黙って傍観してたんだ?」


 「申し訳ありません。それは多分、朝倉さんの行動を罠と見て取ったのだとおもいます。」


 なるほどそれだと俺でもわかるぐらいに納得がつく。下手に加わると罠かもしれないものに自ら身を投じるようなものだからな。


 「・・・わかった。じゃあ、お前はこの件についてどう思う。機関的にじゃない。お前的にだ。」


 「・・正直言って今回のことは、我々に対する探求と、挑発行為としか思えません。まるで、今後に何か長門さんに対して行動を起こそうとしていて、それを止められるかどうか僕たちを試しているような気がします。」


 「お前の話を聞くと俺も同感だ。今回俺を殺さなかったのが何よりもの証拠だ。思考を変えたのか?急進派は。」


 「そういうわけではないと思います。あなたが殺され、おっと失礼。別にあなたに亡くなってほしいわけではありません。・・あなたが殺され、涼宮さんが動くのは間違いないですから。」


 「それはSOS団全員に言えることだろう。まぁ殺されるとすれば俺が一番殺されやすいんだが。」


 「・・・もしかしてまだお気づきではないんですか?」


 「なんにだ。」


 「・・・いえ。何もありません。では、今回の件については機関のほうも調査を進めておりますので、また明日にでも言わせてもらいます。」


 「ああ。・・・おっと古泉!」


 俺は古泉が電話を切ろうとしているのを牽制する。 

 
 「なんでしょう?」


 「お前は前、長門が変化してるって言ってたよな?それは本当か?」


 「それがどうかしたんですか?」


 古泉にはあらかた今回の事態のことははじめにつたえたが、朝倉の要求の内容まではい言っていない。これは長門だけに話してもいいことだからな。


 「いや、長門絡みだからふと思い出してな・・」


 「確かに長門さんは、僕が始めて対面したときと比べ、微細ですが心の柔和化が感じられます。それも僕たちとかかわるようになってからね。」


 俺から見ても、心まではわからないが、あいつに感情のレパートリーが増えてきたことが俺にはわかる。だが、それを聞いて朝倉は何をたくらんでいるんだ?


 「そうか。夜分にすまない古泉。また明日学校で会おう。」
 
 
 おれは古泉との通話を終え、もう一人のかけなければならないやつの電話番号を押した。もう何回もかけているからか、命の危険にさらされたこともあったせいか、暗唱できるほどにそいつの番号を覚えていた。なぜこの記憶力を勉学にまわせないかが俺の尽きない永遠になるであろう悩みである。悲しいかな。


 予想していたことだが0.5コールどころか呼び出し音の一端すらなっていないであろうときに長門は出てくれた。おかげでつながっているのかどうかわからずに互いに黙りきった。


 

 「・・・」

 「・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・・用件を」


 

 勝った事には変わりがないがなんかこう虚しいものがこみ上げてくる。


 
 俺はたっぷりその後10分ほどかけて今日あったことをすべて話して、途中、ハルヒから誘われたときのことを話しているときにいつにも増して無表情を突き通されたような気がしないでもなかったが、どうにかこうあれはなすことができた。それに対し長門は、「・・・そう」の、俺を安心させてくれる言語を放って再
び沈黙なさった。

 

 互いに沈黙しあい緊迫した累計5分間が流れようとしたとき、ふいに、


 「あなたは朝倉涼子からの条件を承諾、もしくは許可したか。」

 
 というので、


 「いや」


 の一言でほかにも否定したいことはたくさんあったが終わらせた。正しい選択だったと思う。


 「・・・で、お前としてはどうなんだ?」


 「どうとは?」


 「朝倉の出した要求に対する意見だ。統合思念体じゃないお前のな。」


 「わたしだけでは判断しかねる。」


 「?どういうことだ?私だけって、個人の意見を聞いてるんだぜ?」


 「ちがう。私は今、あなたの報告を聞き、わたしの中の自我は混乱している。わたしが生み出されてからこの4年間、他の有機物生命体からの興味的干渉をしてきたのはSOS団だけだった」


 ・・・朝倉があの要求を出してきたのも、自分でも鈍感だと自覚しているこの俺にもわかる。こいつは造りだされたときの見せる表情が、俺と悔しいことに古泉だけにわかることだが今になり劇的に変化している。本人はきづいていないのかそうでないのか、だからこそ混乱しているんだろうけどな。


 「だからこそ私は要求する」


 「?」


 「わたしにかかわってくれている人たちの思考の補助を」

 

 ・・・あぁ。こいつは変わったんだな。思念体に従うだけのときから。そりゃあ生まれたときからわけの

わからない「お前を作ったのは俺である」といってるやつの奇妙な指令に従い、自分という存在を否定して来たんだ。俺がそんな状況に生まれたとしたら、即座に離反の旗を揚げ非暴力・不服従を唱えていたさ。 俺がハルヒの無理難題のようなお題にしぶしぶながらも結局同意しているのは、ハルヒは人の本当に踏み入れてほしくない領域ってもんをわかってるやつで、それの存在を否定するようなことはしないと信じていたからだとおもう。じゃなきゃ、とっくにこの世界は存在の単語が消えた虚無な塵と化し、きえてなくなっているにきまっている。ハルヒは世界すら意のままの神らしいからな。古泉が言うには。

 

 「・・・そうか。」


 こんな時に限って俺は何を声かけてやればいいかがわからず、再び沈黙の幕が下ろされる。


 「・・・・考慮する。」


 「・・・は?」


 「今回の事項に対しては即決では判断しかねる。したがって時間をかけて問題の解凍を試みる。」


 いつもは考えに考えてしゃべっていて、短い文ですべてが終わるようになっていた長門の言葉が今日はなぜか歯切れが悪く聞き返してしまう。やはりかなり混乱しているのか。


 「ぁ・・・あぁ。ゆっくり考えてくれ。」


 「何?」


 「いや・・・・なんでもない」


 突然のいつもの日常会話が戻ったような気がしておもわず笑ってしまう。


 やはり最後はあいつの「・・・そう」の言葉で会話は終了し、別れの言葉を短く告げ、電話を切った。
そういえば、携帯での会話と思われる姿勢中に、10分も沈黙している姿ってのは、他人にはどう移って見えるのだろうね。


 ・・・長い一日だった。特に後半部分がな。・・・


 俺は携帯を充電器の中にぶち込んで、ハイエナのごとく布団にもぐりこんで睡眠をとった。明日の朝に妹に無理に起こされるときまで―――――・・・

 


 

 

 

 次の日、やはりいつものように太陽は昇り、いつものように起きて支度を済ませ、われらが学び屋北高へ向かおうと玄関へ足を運ぶと、ドアのポストに外にも郵便受けがあるのにもかかわらず何らかの便箋が直接入れ込んである。表面には俺宛だという表記と、切手が貼り付けてあり、裏を向けると、そこには、懐かしいやつの差出人名が律儀に封筒の右下に書いてあり、またそいつの名は、俺が最近頭を悩まさせている問題の渦の中心でもある佐々木であった。

 


 先ほどは深刻そうに語ってみたが、実は佐々木からは、正月や暑中見舞いなど、ちょくちょくと以前から

通信を取り合っていた。この封筒は、先日おれが、佐々木とその他の思い出したくもないメンバーとであったその日から、2,3日に1度送ってくるものである。俺が返事をするのは2,3通に1通程度の割合でしかないのだが、それでもあいつは律儀に送ってきてくれている。手紙の内容は細かくは言えないが、高校生活はどうだの、なぜかハルヒは元気かだのといった事項だ。字は、1流の書道の達人に劣らないゴシック体で、長門とはまた違った、限界まで人間性を削ってはいるが、すべてではない、といった字だ。

 

 「・・・しかし、何でいきなり送ってきやがったんだ?」


 「なにがですか?」


 気が付くとドアの前にいる俺の数歩前には古泉が立っている。長門といい、お前といい、お前らには予兆というものがないのか。

 
 「何言ってるんですか。今のあなたの状況を考慮すれば、機関がどういった対処に出るかぐらいあなたにも見当が付くはずです。」


 俺の保護か?


 「指令でなくても手を差し伸べさせていただきますよ。」

 

 普段ならこんなことを言われると正直嫌気がさすが、いまどきそうは言ってられない。手にある手段を駆

使して、今現在何が起こっているかと、自己防衛を同時にこなさなければならない。機関の助けが言わずもがな手に入ったのは不幸中の幸いか。だとすれば、今の俺に危険があるのならば、これはある意味ハルヒにまつわる事件なのだから、朝比奈さんも禁則事項で示唆的とはいえ何らかの手助けが得られるかもしれないし、長門からは、主流派の意見がまとまったのならば、鍵がひとつ手に入る。今一番ほしいのは長門の力だが、今回の件は長門に最前線を任せるのは危険だ。朝比奈さんはなるべく情報提供のみに――あまり役に立たなさそうだが――徹底してもらうので、今回の最大ポイントは、自然と古泉となってくる。

 

 「・・・・あなたの考察にはときに感嘆を奪われますね。」


 「一晩中そのことを考えてたんだ。誰でもたどり着く。」


 「それにたどり着ける人ばかりではないはずですよ。」


 「どういう意味だ?」


 「そのままの意味です。どう長く本気で考えても本能的に自分の利益に走る人もいるものです。その点あなたは、まず第一に他人への思考が働いています。現に、今のあなたの言い分ですと、あなた自身のことは後回しのようですからね。」


 「俺に哲学的な問答をしてもあまり言い返事は期待するな。」


 「そう受け取っておきます。では本題ですが、長門さんはなんとおっしゃっていましたか?」


 どうやら俺が古泉に携帯をかけた後すぐに長門にかけたことは筒抜けのようだ。だが、守ってもらうには、今の俺の状況を守ってくれる人に報告するのは必然であるので、あらかたではあるが長門との会話を話した。


 「・・・そうですか。あの長門さんが保留をですか。やはり彼女は変わりましたね。あなたと同じ。」


 お前もなんだがな。

 
 「僕は外面的には変わっていないはずです。」


 内面的に変化が見られてるといいたいんだ。


 「まあ・・・わかりました。今の資料をもとに、今後の対処方法を考案させていただきます。」


 「頼んだ。」


 俺が礼を言うと古泉は苦笑をしたような顔になっている。

 
 「一番変わったのはあなたですね・・」


 「・・・振り回されてるだけだ。」


 「とりあえず今は学校へと向かいましょう。時間的にも、心身的にも危険度は増していきますしね。」

 

 

 ―――気が付くと時計は、今から早足で言って間に合うかぐらいの位置を示していた――――

 
 

 今日俺は、来た講への強制ハイキングコースを、朝からは出会いたくはないニヤケ面美少年と登校する羽目になった。谷口あたりに見つからないことを、切に願うばかりだ。


 学校に着き古泉と別れ、われらが教室へとたどり着くと、われらが団長涼宮ハルヒ様が、


 「遅いじゃない!せっかく今日の活動計画をまとめたのにこのあたしを待たせた挙句もう時間がないとはどういったことかしら?」


 そんな理不尽かつ多大な突発的予定調和を聞き流し、なんとか次の休み時間にでも聞いてやるとハルヒをなだめ、岡部が来たところで会話は打ち切られた。

 
―――今の俺にまともに授業の内容が耳に入るはずもなく、(いつもかもしれんが。)放課後どのように動くべきかと、あさって迎える不思議探索への計画を練ることに集中していた。―――――


 「・・・、・・・・・、・・・!!!」


俺の名前が大声で呼ばれ、ハッと顔を前に向けると、顔にしわを寄せた数学教師様がご立腹しておられた。

 
 「前のテストでもあまり芳しくない成績のようですが、ずいぶんと余裕ですね?」


 吉崎の陰険な口調の叱責を受け、うなだれる俺に、国木田は心配そうな顔を向けてきている。あまりに深く考えすぎていたか。

  
 5分ほどの時間しかられて、やっとののことで席に付こうとしたとき、ふと後ろからのきつい視線を感じて振り向くと、 なんなのよ、もう というハルヒがいた。


  やれやれ。俺の周囲には、ご機嫌斜めなやつが多いもんだ。 
  

 俺は当分言わないと誓っていた言葉を、心の中だけで苦笑交じりにつぶやいた。

 

 

 

                                       

                                    ・・・・続・・・・・きたいです、、、。


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