物語とは突然にして唐突に始まる。というのはみなわかりきったことだと思う。しかし当事者となった場合わかりきっていたとしても、それは大変迷惑な事だ。
何が言いたいかって?そうだな。現在俺がどんな状況かを説明すれば俺が何を言いたいかわかるだろう……
 
 
 
 
俺は今雪山をあいつとともに、明らかに雪山に相応しくない恰好で登っている。
あいつ、というのは俺の混沌なる日常の原因、その元凶たる涼宮ハルヒその人だ。
相応しくない格好、というのはこの頃支給されはじめた学生服装備というやつだ。ホットドリンクがなきゃ凍死してるぜ。そりゃあコック姿やメイド服姿で行くやつもいるって話しだが
 
そんなことを考えている間に吹雪は激しさを増し視界は白一色。こんな時ギアノスに襲われたらたまったもんじゃない。
 
「あ~あこんなに吹雪がすごいなんて思ってなかったわ。これじゃあラージャンを見つけられないじゃない!」
「おいハルヒ。俺達はまだイャンクックも倒してないんだぞ!?いきなりそんな化け物相手に出来るか!」
 
まったくいつもながら俺の予想より数段上のことをしようとするやつだ。
この前なんて一人でレウス狩りに行ったし、さらに前には無理矢理俺を連れてフルフルに行ったし。まあ初めての狩りでグラビに特攻したやつだからなぁ。
村長には迷惑をかけた。
 
「ラージャンどころか。ドドブランゴも出ないなんてどうゆうことよ!」
「俺はそんなものには出てほしくない。大体俺達はポッケ村に移動してるだけだ」
「ついでにでかいの仕留めておきたいのよ。私達の名前を轟かせるためにね」
 
これ以上涼宮ハルヒの名前を轟かせる必要もなかろう。目を輝かせても出ないものは出ない。諦めてくれ。
そんなハルヒの期待を俺が受け流すのもいつも通りのこと。しかしこのやり取りはたまに思わぬハプニングを引き起こす。
今回がそのたまにだったようだ。聞きたくもない咆哮が雪山に響いた。
 
「キョン何今の?ドドブランゴ?ラージャン?それともクシャルダオラ?」
「ちっ。残念ながらすべてハズレ。…あの咆哮は…」
 
厄介だ。ラージャンやクシャルダオラよりはまだマシだが
まだクックも倒してない俺達に倒せる訳無いだろ。
 
「何言ってんのよ。私はやるわよ。相手にとって不足なしだわ」
 
死にたいのか?まだあっちはこっちに気付いてないはずだ。今ならまだ逃げられる。
 
 
だが神はそんな俺を馬鹿にするのが好きなようだ。地震かと思うほどの衝撃とともにやつが現れた。神が本当にいたら一発ぶん殴りたいね。
橙色と青色の、虎のような縞模様が特徴の飛竜…ティガレックス…。
 
「どうするんだハルヒ!?」
「どうする?もちろん倒すのよ!私に続きなさいキョン」
 
背中の大剣を両手でしっかり持ち、ハルヒは構えた。ちなみにハルヒの装備は大剣、俺の装備は片剣だ。普通は逆とか言うなよ。あんな重いもの俺は振り回せない。
ハルヒは特別なんだ。ってそんな説明するより早く俺も構えねば
 
「行くわよキョン」
「ええぃ、こうなったら自棄だ」
 
こちらに気付いたティガは咆哮をあげ、戦闘体制に入る。そんなことせずにどっか行ってくれれば良いのに…。
ティガはいきなり突進してきやがった。はっきり言ってあんなものに当たったら死ぬ。冗談抜きで。
 
「避けるわよキョン」
「くっ言われなくても」
 
やつの突進は広範囲とはいえ避けられないわけじゃない。動きをよく見て横に跳ぶ。
しかしそれがだめだったんだろうな。俺達には経験というものが決定的に欠けている。突進後の回転。当然ながら跳んだ後さらに跳ぶなんて芸当俺には出来ない。
ハルヒも大剣でのガードが辛うじて間に合った程度。後ろは崖。吹っ飛ぶのは目に見えてる。ならせめて
 
「ハルヒーー!」
 
結局俺達はやつに一撃も与えられず崖から落とされてしまった。突進のガードはハルヒがした、なら落下の衝撃は俺が……
 
続く

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最終更新:2008年03月24日 23:14