○俺とENOZのZとのラブソング
    第三楽譜『confrontation(The first part)』

 

 
朝比奈さん(大)の未来からのメッセージとハルヒからの意味深な電話の為に

あまり眠れずに目覚まし時計が鳴るよりも早く起きていた
すでに俺が目を覚ましている姿を見て、妹はポカンと口を開けて立ち尽くしている
俺が起きていることがそんなに不思議なことなのかと思い、妹の頭を軽く叩いて洗面所へ向かった

 

 
眠い目をこすりながら待ち合わせの公園へ自転車を走らせた
公園に到着するとすでに舞さんは到着していて昨日と同じように「待った?」「今来たところ」のやりとりをして歩き出した
あれほど目を開くことが苦痛だったのに彼女の笑顔を見ると全身が覚醒するな

 

 

舞さんは本日部活が休みなので俺もSOS団をサボるかなと考えているうちに坂道を登り終わった
下駄箱で別れた俺に第二の組織からのアプローチを受けた
下駄箱には一枚のメモ書きが入っていた
『放課後、中庭のベンチでお待ちしております。古泉一樹』
現状維持を望み、超能力者を多数抱える秘密組織【機関】が次の相手か

 

エスパーとの決戦を前に寝不足の体を癒す為に全授業を寝てすごした
ホームルームまで寝ていた俺は掃除当番の連中に追い出される形で中庭へと向かった

 

 
盛大なあくびをしながら中庭へ行くとすでに奴は到着していた
キョン「よう」
古泉「お待ちしておりました」
古泉は振り返るといつも通りのニヤケ顔だが、本日は目の下にクマを作って顔色も悪い
キョン「顔色が悪そうだが、深夜にでも例の神様もどきが暴れてたのか?」
古泉「いえ閉鎖空間は発生しておりません、顔色の悪さは別件です」
キョン「そうかい…俺と舞さんのことで話したいんだろ?」
古泉「お察しの通り」
キョン「ハルヒの機嫌を損ねるから…別れろってことか?」
古泉は不敵な笑みを浮かべてゆっくりと話した
古泉「…いえ、我々はその件についてはノータッチという結論に達しました」
キョン「何?」
古泉「この結論に達したのも昨日夜分遅くに決定しました、決定するまでは組織は去年の春ぐらいの恐慌状態でしたよ」
去年の春?俺とハルヒが閉鎖空間にいた時か
俺に彼女ができることは世界が破滅する恐れがあるぐらいのことなのか…
古泉は言い終わると立ち上がった
古泉「話が少しばかり長くなるのでコーヒーでも奢りますよ、いつも奢って頂いているお礼に」
古泉は自販機から紙コップに入ったコーヒーを2つ取り出して、1つを俺の前へと置いた
古泉「どうぞ」
眠り薬でも混入されていて、どこかに連れて行かれるのではと思ったが
古泉「警戒しないで下さい、毒などは入っておりませんよ」
そう言われたので口を付けた
古泉「今回の件については意見が割れましたよ、結論の決め手となったのは長門さんの組織がこの件に大変興味を示されているという点です」
キョン「情報統合思念体とやらか?」
古泉「はい、それともう一つはあなたです」
キョン「俺か?」
古泉は少し薄ら笑みを浮かべて
古泉「あなたのことですからこちらから別れてくださいとお願いしても素直には納得してはくださらないでしょうし、それに裏工作で強引に別れて頂いても我々の手で別れさせられたと知ったら、あなたのことですから涼宮さんや鶴屋さんの力を使って我々の組織を潰すという行動を起こすと考えられます」
確かに裏工作で一つの恋が潰されたと知ったら怒り狂うな
古泉「ここで行動を起こして二つの脅威に脅えるよりは、何もしないで起こってしまったことに全力で対処するというのが機関の総意です」
話し終わると古泉は珍しく眉を寄せている
古泉「ただ機関内でも納得していない人物が何人かいます」
キョン「まーそうだろうな、そう簡単に意見はまとまらんからな」
古泉「恐縮ですがそのうちの一人と今晩お会いして頂きたいのですが」
即座に断ろうとしたがいつもニヤケ顔とは違い真剣な顔で俺の返事を待っていた
その顔を見て、もしここで断ったら古泉は消されるのでは?という考えが一瞬頭をよぎった
断ったせいで古泉がこの世からGOODーBYEしたら目覚めが悪いな
キョン「…お前がそこまで頼むのなら仕方がないな、会うだけ会ってやろう」
古泉「ありがとうございます、では8時にあなたの家の前でお向かいに上がります」
古泉は紙コップのコーヒーを一気に飲み干した
古泉「お帰りは遅くなると思いますのでご家族には僕の家へ勉強会の為に泊まるとお伝えください、完璧なアリバイを作ります」
俺は帰りが遅くなるのかと少しメランコリーになっていると
古泉「では今日はこれで失礼します」
と告げて古泉は去っていった
今晩の相手はアイツの組織か
キョン「やれやれだな」
そう呟くと携帯鳴ったので見てみると舞さんからのメールだった
内容は『今日は部活?』
ハルヒと古泉も欠席するしな、俺も有給休暇でも頂こうかと舞さんに『今日は休みです』と返信を送ったら
100m走の日本記録ぐらいの早さで『一緒にお昼ご飯でも食べない?』と返ってきた
この返事についてはYES以外考えられん

 

 
このまま帰っても良かったが一応部室に寄って挨拶しておくかと文芸部に寄った
中に入ると長門がいつものポジションでハードカバーに視線を落としていた
キョン「お前一人か?」
長門は顔を上げてミクロにうなづいた
キョン「すまん今日は用があるので帰らせてもらう、後古泉も欠席するそうだ」
長門にそう告げて、廊下へ足を踏み出そうとした瞬間に昨日と同じ舌打ちが聞こえた…この部屋には長門しかいないよな
振り返る勇気がないのでそのままドアを閉めた

 

 

長門の舌打ちが気になりながらも下駄箱を目指している最中にSOS団名誉顧問の鶴屋さんに出会った

鶴屋さんは急ぐ俺を呼び止めて、舞さんとの件について根掘り葉掘り聞いてきた
何でも鶴屋さん曰く、俺にはハルヒがいるから無理を承知で舞さんの背中を押して送りだしら
その結果が大金星だったので大変驚かれたそうだ
口を開くとみんなハルヒというが端から見れば、俺達はそんなに仲が良さそうなものなのか?
これからSOS団に行くのかい?と聞かれたの「今日は休みます」と伝えたら
「うらやましいさっ!この色男!」と言われて背中を思いっきり叩かれた
最後に「めがっさお幸せに!」と言ってあさっての方向へ走っていかれた
相変わらず、テンションの高い人だ
俺は舞さんとの待ち合わせを思い出して校門へと急いだ

 

 
校門に到着するとすでに舞さんは到着していた
「待たせてごめん」と言うと「全然平気」と言われた
あんまり待たせてばかりも悪いので次は遅れないように努めよう

 

 
ランチは経済的にファーストフード店で済ますことにした
昼飯を食べながらに俺と舞さんは週末のスケジュールの打ち合わせをした
土曜日は軽音楽部があるのと夜に用事があるので残念ながら会うのは難しそうだが
日曜日にライブに行くのはどうかと聞かれた、何でも舞さんの知り合いのライブがあるらしい
別段断る理由はないので快く承諾をした、ライブに行くのは2回目で前回のライブはENOZの人達に招待されたことを思い出した
週末のスケジュールも決まったところで店を出て、舞さんのご希望のアクセサリーショップに行く運びとなった

 

 
行ったアクセサリーショップは同年齢の女性で溢れていた
男同士では間違っても足を踏み入れないところだな
しばらくアクセサリを見つめていた舞さんが一つのネックレスを手に取った
財前「見て、かわいい」
彼女はネックレスを見せてきた、そのネックレスはシンプルで可愛らしいデザインだった
ちなみに値札を見たらそんなに高いものではなかったので俺はどこぞかの舞台を飛び降り気持ちで提案した
キョン「良かったらプレゼントしょうか」
財前「そんな悪いよ」
キョン「付き合った記念のプレゼントってことで」
財前「本当にいいの?」
キョン「うん」
財前「うれしい」
俺はネックレスをレジの店員に渡してプレゼント用に包んでもらい、舞さんへ渡した
舞さんは一生大切にすると言ってくれた
喜んでもらえると照れるなと思ったがすぐに朝比奈さん(大)の顔が浮かんだので顔を引き締めた
その後はいつもの公園のベンチで日が暮れるまで話してからこの日は別れた

 

 
家に帰って晩飯を食べて、テレビを見ていたら古泉の指定した時間になったので
母に今晩は古泉の家で勉強会があるのでそのまま泊まると告げて家を出た

 

表に出ると暗がりからあいつが姿をあらわした
古泉「今晩は」
キョン「会いたい奴はどこにいるんだ?」
古泉「少しドライブでもしましょうか」
そう言い終わると黒塗りのタクシーが俺達の前で止まった
乗り込むと運転席には新川さんがハンドルを握っていた
キョン「新川さん」
新川「ご無沙汰しております」
古泉「では参りましょう」

 

 
車を走らせると不思議なことにあの解説好きな古泉が全く喋りかけてこない
さらに目的地に近づくにつれて、こいつの顔は緊張からか強張っていく
今から会おうとする人物はまさか機関の大幹部もしくは首領なのか…そんな奴と一体と何を話せばいいんだ

 

 
小一時間程走らせたところで車は止まった
車を降るとそこは少し賑わっている繁華街だった
古泉に案内された場所はとある雑居ビルの下へと口を開いて待ち構えている階段の前だった
古泉「こちらです」
階段を下りると俺らの年代では間違っても足を踏み入れない少し小粋なバーだった
店内に案内されるとそこは映画やドラマで見るようなおしゃれな内装で施されいる
キョン「ここも機関の息がかかっているのか?」
古泉「はい、機関のスポンサーが経営している店ですよ」
そう言うと古泉はある壁に仕切られている個室席の前で立ち止まった
古泉「こちらです」
この中に古泉が会うのも緊張する程の機関のトップがいるのかと思って唾を飲み込んだ
俺が魔窟に入るのを躊躇っているのを察したか
古泉「どうぞ」
と催促しやがる、ええいここまで来たら迷ってもしょうがないぞ!意を決して扉を開けた

 

個室の中には白髭を床まで垂らしたじいさんやマントを羽織ったおっさんなどはいなく、一人の女性が座っていた
その女性はメイド服やOL風の服装ではなくラフな服装の森園生さんだった
森さんの前に何本もの空のワインボトルが置いてあり、見るからに森さん自身かなり酔っているようだ
キョン「森さんですか?」
事態を飲み込めないでいる俺を見て森さんは
森「やっと来たわね!早く座んなよ!」
森さんはかなり酔っ払っていた
今まで見たような温和で礼儀正しい森さんとは違い、明らかに…壊れている
前回お世話になった時に「次にお会いするまで、お元気で」で言われたがこんな形で再開するとは
古泉を睨みつけて森さんに聞こえないように小声で聞いた
キョン「どういうことだ」
古泉「簡略して言うと森さんの話を聞いてあげてください」
キョン「簡略しすぎだ」
古泉「では詳しく話します、森さんはあなた達が付き合うことになってからこの世の終わりだと慌てられ、昨日の機関の方針決定後に今のような感じになりました、とにかくあなたに文句が言いたいそうです」
森「何こそこそ話してるんだよ!いいから座んなよ!」
キョン「単に愚痴を聞けってのか」
古泉「まーそういうことになりますね」
キョン「そういうことはお前らでやれよ」
古泉「ええ、昨日まで僕らでお話にお付き合いしてましたが森さんはかなりのうわばみなので全く飲んでいない僕らの方が途中で倒れてしまうぐらいなんですよ、その度に叩き起こされるので身が持ちませんよ」
こいつが目の下にクマを作っていたのはそれが理由か
古泉「この状態で閉鎖空間が発生したら危険ですので上と相談しまして、森さんご所望のあなたをお話し相手に差し出す結果になりました」
森「早くー!」
森さんの怒鳴り声が聞こえて、古泉も手で座るようにジェスチャーを送る
もしこの件で昨年の春のような閉鎖空間が発生したら古泉たちに迷惑もかけるだろうしな
俺は溜息を一つをついてから森さんの横に座った
森「やっと来たわね!あたし達がどんだけ大変なのか、あんたに解る!」
森さんから酒臭い息で話しかけられた
森「しかもなんであたしがメイドになんかならないといけないのよ!」
それは俺に言われてもと思ったが口には出せずに唯々森さんの話を聞くことにした

 

それから俺は明け方まで森さんの愚痴に付き合う運びとなった
森さんは酔うと泣き上戸、笑い上戸、怒り上戸を繰り返されるようで、この3つをワルツのように明け方まで見せられた…

 

 
明け方にやっと森さんが潰れてくれたところで解放された
部屋を出ると新川さんが迎えに来てくれた
新川「あの娘もしっかりしているようで心の弱いところがありまして」
と言葉をかけてくれたが一晩愚痴を聞かされた疲労から俺は何も返事ができなかった

 

車内へ乗り込むと古泉がいたので俺が愚痴を聞かされている間に何をしてたと尋ねたら
こいつは寝ていたらしい、何でも閉鎖空間が発生した時に備えてだそうだ
文句の一つでも言ってやろうかと思ったがそんな体力はなく車内で熟睡した

 

 
家の前に着くと俺は起こされて重い足取りで車を降りた
降りる際に古泉から声をかけられたが返す元気もなく無言でドアを閉めた

 

これから学校かよとうんざりしながら家へと入った

 

 
第四楽譜へつづく

 


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