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○俺とENOZのZとのラブソング
  第一楽譜 『encounter』

 

 

春の足跡の聞こえ始めてきた3月上旬
1年前にはこの強制ハイキングコースを3年間も登り続けられるのだろうか?と溜息をついていたが何とか3分の1を消化できた
学期末試験も終わり明日から短縮授業が開始される
今学期の学校イベントも終業式のみとなった週明けの月曜日
後は来週の終業式までの平穏な日々のみだなと思いながら坂道を登っていたが
まさか最後の最後であんなイベントが待っているとは…

 

 
その前兆は朝のホームルームから始まった
始業の鐘の音が聞こえても俺の後ろの席は空席のままだった
われらのSOS団長様も珍しく風邪でも引いたかと考えていたら
担任の岡部からこう告げられた
岡部「涼宮だが何でも涼宮の曾おばあさんが亡くなられたそうで1週間休むそうだ」
そういう理由ならしょうがないが
ハルヒが1週間も休むとは珍しいこった
岡部「なので今週の掃除当番だが涼宮の変わりに日向頼んだぞ」
日向「はい」
アイツと1週間会わないなんて俺が夏休みに田舎に帰省した時以来だな

 

 
高校1年の最後の昼休みを谷口達と弁当を食っていたらハルヒからメールが届いた
内容は『あたしがいない間もSOS団の活動はサボらないように』だと
まーあいつの曾婆様が亡くなったので一応礼儀としてご冥福のメールを返信したら
アイツから返ってきたメールからだとどうも100歳を越えられての大往生だったそうだ
なんでも住んでいた地方の風習として100歳を越えられた方の葬式は一週間行われるらしい
まーアイツが落ち込んでいないようなので一安心して再び弁当に手をつけはじめると
谷口「誰からのメールだよ?」
キョン「ハルヒからだ」
谷口「あいかわらずお熱いな」
キョン「何とでも言え」
国木田「そろそろ付き合わないの?」
俺は米粒を噴き出しそうになった
国木田「お似合いだと思うよ」
谷口「キョン止めとけよ、顔はいいかもしれんが性格は最悪だぜ」
国木田「でもキョンは昔から変な女が好きだし」
アホ共の話に耳を閉ざして弁当をひたすら駆け込んだ

 

 
俺は律儀にも授業が終わると団長様のいない文芸部へと足を向けた
すでに他の団員達は集合しており、俺はハルヒが一週間不在の話をしたが誰一人として帰宅しなかった
俺は古泉とチェスで対戦し、朝比奈さんは編み物に精を出して、長門はいつも通り本を読む
そして長門の本が閉じれてから俺らは帰路についた

ハルヒがいない以外は何一つ変わらない日常だった
後日談になるが平穏という言葉は今日までだったな
これからのジェットコースターのような急展開ドラマを思えば

 

 
前兆は翌日の朝、下駄箱で起った
俺の下駄箱にはかわいらしいレターセットが入っていた
トイレの個室でレターセットを確認したところ
『お話したいことがあります、放課後に軽音楽部の部室に来てください』
とだけ書かれていた…すぐに朝倉涼子の顔を思い出して脇腹に手を当てた
俺は朝倉に5月と12月の2回殺されかけている
下駄箱への手紙とは5月の手口とそっくりではないか
このレターセットのおかげで午前中ずっと俺は頭と腹を痛くしていた

 

 
短縮授業が本日よりスタートした為に本日は午前中で授業が終わり
俺は軽音楽部の部室に向かう前に文芸部に寄った
すでに長門と朝比奈さんと古泉の三人は部室に集まっていた
今日は用事の為に帰宅する旨を皆に伝えて軽音楽の部室へ向かった
とりあえず部屋を出る時に長門へ目で【何かあったら助けてくれよ】と視線を送っといた

 

 
軽音楽の部室へ着いた俺は前回のように飛び込まずにまずは外から様子を伺った
軽音楽の部室は防音が施されており中から音は聞こえんが小窓から中の様子が伺えた
小窓から覗くとショートカットの女子生徒が一人でエレキギターを弾きながら、歌も歌っているようだった
さすがに完全防音の軽音楽の部室だけあって全く外には音が聞こえん
しばらくパントマイム風な演奏風景を見学していた
最初はおもしろがって見ていたがすぐに彼女のギターさばきと表情に見とれていた

 

しばらく見とれていると彼女は演奏が終わったようでギターをはずした
俺は我に返り部室の扉をノックして開けた
キョン「あの手紙見たんですけど」
ショートカットの彼女が振り返った
彼女の顔を見た時に俺はどこかでこの人に会ったことがあるぞ?一体いつ会ったかなって考えていたが数秒で答えが出た
キョン「もしかしてENOZの人ですか」
財前「覚えてくれたんですか」
キョン「ええ、ベースを弾かれてた」
財前「はい!うれしいな」
キョン「お名前は…」
財前「財前舞です」
キョン「確か鶴屋さんとお友達ですよね?」
財前「はい」
無数の点は一本の線となりつながった
文化祭の時にハルヒと長門が代役を務めた軽音楽部の部員バンド【ENOZ】のベースの人だ
その後ライブハウスに招待された時に鶴屋さんから友達と聞いたんだよな
キョン「ギター弾かれるんですか?文化祭とライブハウスの時はベースでしたよね」
財前「3年生の中西さんが引退して、新生ENOZとして私と美夕紀の二人でボーカルとギターを演奏するの」
キョン「ボーカルもやられるんですか」
財前「はい…良かったら演奏聴いてもらえる?」
キョン「構いませんよ」

財前さんは文化祭の一曲目に演奏した曲を歌ってくれた
あまり音楽に興味がない俺だが、間近で曲を聴いた俺は鳥肌が立った

 

彼女は演奏が終わるとちょこんとお辞儀をした
財前「お粗末様です」
キョン「すごく良かったですよ、ハルヒや榎本さんとは違う別の魅力があって、正直鳥肌が立ちました」
彼女に賛辞を浴びせたら、彼女はテレながらお礼の言葉で返してくれた
キョン「それはそうと話があると書いてありましたが一体なんですか?」
と問いかけたら、彼女は急にハニカミながら途切れ途切れに言葉を発した
財前「いきなり…こんなこと聞いてすいません…あの…付き合いしてる人って…いますか?」
ハルヒの顔が一瞬浮かんだが付き合ってはいないよな
キョン「特に彼女とかはいませんが」
財前「そうですか…あの初めて会った時から…とても気になって…鶴屋さんから色々と聞いて…すごく優しい人だなって思って」
彼女は顔を赤くしながら、さっきの歌声と程遠い程の小音量で言葉を搾り出している
財前「気がついたら…あなたのことばかり…考えていました……好きです」
俺の聴力が正常なら彼女は今『好きです』って言わなかったか?
財前「すいません…好きです、付き合ってください」

彼女は今、す・き・で・す、つ・き・あ・っ・て・く・だ・さ・い
って言ったんだよな?

 

頭の演算処理が追いつかない為に俺は数分間フリーズした

 

財前「あの?」
彼女の言葉が俺のフリーズを破ってくれた
フリーズは解消されたが頭はまだ動作不良中で答えがすぐには出ないぞ
キョン「えーと…あの…と、とりあえず、まだ会ったばかりなので少しお話しません」
と俺は結論をとりあえず先延ばしにしてみた
財前「はい、今日は部活が休みなのでいいですよ」

 

それから俺と財前さんは軽音楽の部室色々と話した
共通の知り合いの鶴屋さんのことや新生ENOZの今後の活動構想
財前さんの進路や俺のあだ名の由来などなど
彼女との会話はことのほか盛り上がり、あっという間に夕方になった

 

 
この日は彼女は一緒に下校することとなった
キョン「へぇー中西さんの代わりに加入した人って根岸さんっていうんですか」
財前「そう、だからバンド名もENOZのままなの」

 

そうこう喋っているうちに長門に以前呼び出された公園の前についた
財前「もう少しだけいい?」
キョン「構いませんよ」

 

俺達は長門に呼び出された際にあいつが座っていたベンチに腰掛けた
財前「今日はたくさん話してくれてありがとう」
キョン「俺も楽しかったです」
財前「あの返事は…いつでもいいから…これからも会ってくれる?」

そう言い終わった彼女は夕日を浴びてまるでAngelのように輝いていた

 

頭に浮かんだハルヒの顔を一旦どけて頭の演算処理を開始した
正直彼女は俺には充分過ぎる程もったいない人だ
そんな彼女が俺のことを好きになってくれるとはな
年上の彼女か、中学の頃に憧れたな
演算処理が出した結果は断る理由なんてミジンコ程もないとはじき出した

 

キョン「…返事ですが」
税前「はい」
キョン「…OKってことでいいですか?」
財前「…本当に…いいんですか?」
ここぞという生涯一の笑顔で答えた
キョン「はい」
財前「うれしい」
彼女はそう答えて俺に抱きついてきた、俺も彼女の背中に手をまわした
しばらく抱き合ってからゆっくりと口付けを交わした

 

唇が離れた時に俺達は互いの顔を見れないぐらい照れていた
俺達はメアドと番号を交換してこの日は別れた

 

 
家について俺は今日の素晴らしい出来事を思いかえして二ヤついていた
客観的に見たらかなり危ない奴かもしれないな、そういやシャミセンが俺の方を向いて威嚇してた
ニヤニヤしていると携帯が鳴った、見ると財前さんからのメールが届いていた
『今日はありがとう、これからもヨロシクお願いします』
メールにはハートマークの絵文字がたくさん書かれていた
すぐに返信のメールを送信した
『こちらこそよろしくお願いします』
俺もハートマークの絵文字もつけようか考えたが恥かしいので止めた

 

俺は幸せに気持ちでベットに横になったがすぐに懸念事項が思い描かれた
涼宮ハルヒ
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース
時をかける少女
秘密組織お抱えのエスパー
は果たしてこの俺の恋愛を許してくれるのだろうか?
ハルヒとは来週までは会わないとしても3つの組織はコンタクトをとってくるだろう
明日からの懸念事項に頭を巡らすと思わず
キョン「やれやれ」
とつぶやいていた…とりあえず寝よう、考えるのは明日からだ

 

思えばこの日が最後の安眠だったな

 

 
第二楽譜へつづく

 

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