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いくらハルヒでも朝比奈さんが海に落っこちようとする前には助けるだろう。
俺は天井を見上げてそう願い、鞄を枕にして横たわった。
朝も早かったことだし、少し眠らせてもらうことにする。
 
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こ、こいつは…!まさか…本当に巨大イカが現れるなんて…
なんて、本気具合30パーくらいの驚きコメントを出してから、
俺は先程のハルヒの言葉を思い出す。確かこうだ。
 
『-船ごと流氷に激突するとか、巨大イカに襲われるとか…』
 
あいつの言葉通り、今俺達の乗っているフェリーは巨大イカの襲撃を受けていた。
勘弁してくれ。
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「おや、眠ってしまいましたね」
 
「…」
 
「どこでも眠れるというのはある種の才能だと思いませんか」
 
「適度の睡眠は体力を回復させる。しかし睡眠にもエネルギーを要する」
 
「あまり寝過ぎるのは良くない、ということですか」
 
「…そう。よくない」
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巨大イカは船体に吸盤で引っ付き、うねうねとうごめいていたが突如動きを止め、
嘘みたいにいびきまでかきやがる。
「おや、眠ってしまいましたね」
古泉は相変わらずの気取った身振りで、これまた相変わらずの無表情に語りかける。
「…」
「どこでも眠れるというのはある種の才能だと思いませんか」
 
「適度の睡眠は体力を回復させる。しかし睡眠にもエネルギーを要する」
 
二人とも何を呑気に話しているんだ。
二人にとってはたいした問題でなくとも俺や朝比奈さんには大問題なんだ。
言っておく。俺は高校一年の若さで海の藻屑にはなりたくないぜ。
とりあえず、甲板にいるハルヒ達を呼び戻さなければ。
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「…ハル…ヒ」
 
「…ふふっ…これはこれは…寝言ですよ長門さん」
「ユニーク」
 
「…あっ!ちょっとキョン何やってるのよ!」
 
「涼宮さん」シーッ
「な、なに?」
 
「…ハルヒ」
 
「な…!」
「わぁ、キョンくん…涼宮さんの夢でも見てるんでしょうか」
 
「静かにするべき」
「ひぇ…」コクコク
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「ハルヒ達を呼ばないとまずいだろ!」
 
「ふふっ…これはこれは…寝言ですよ長門さん」
 
「ユニーク」
な…何だって?自分の耳と目を疑う。
こいつらは確かに俺とは『違う』存在だ。
だが、一応はハルヒを気遣かっていたはずじゃなかったか?
この悪意に満ちた顔は何だ?
 
今回のこの合宿、まさかこの為に…
ハルヒに危害を加えるために計画したのか…?
巨大生物の襲撃を望むことを見越して…?
 
いや、ハルヒはそんな事本気で望んだりはしない。あいつは…
「ちょっとキョン!何やってるのよ!」
 
ハルヒ!
「涼宮さん」シーッ
「な、なに…?」
振り返るとニヤケ野郎が俺の首筋にナイフを突き付けてやがる…
「ハルヒ…逃げろ!」
「な…!」
 
「わぁ、キョンくん、涼宮さん…夢でも見てるんでしょうか」
 
「静かにするべき」
 
「ひぇ…」コクコク
 
長門!お前まで…朝比奈さんを脅すとは。
 
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「…ながと…おま…あさひなしゃん…」
 
「…愚か」
 
「このアホキョン!このぉっ!」
 
「待ってください涼宮さん!」
 
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「…愚か」
 
く、くそ…超能力野郎と得体の知れない宇宙パワー使い…
暴れて勝てる相手じゃない…のは、あの夕暮れの教室と灰色の空間の経験で
(どっちも二度と行きたくないな)、分かり切ってる。
諦めるしかないのか…
「このアホキョン!」
 
ハルヒが動いた。畜生、忌ま忌ましい事にこいつは二人のプロフィールを知らない。
特攻しても無意味なんだ!ハルヒ!
「待ってください涼宮さん!」
古泉の手に力が込められるのがわかる。
どっちにしろ死ぬなら、覚悟を決めるしかない…か!
 
…うぉぉ!?
 
「キョン!ぶっ飛ばすわよ!」
 
「わ、わわキョンくん!」
「涼宮さん!やめて下さい」
「揺れ動く船内でその行為は推奨しない」
 
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ガクン、と船が揺れた。体ごと揺さぶられるような揺れだ。
うぇ、気持ち悪い。巨大イカがどうやらお目ざめのようだ。
不幸中の幸い、俺は揺れを利用して古泉から逃れる事ができた。
ハルヒの声が響く。
 
「キョン!ぶっ飛ばすわよ!」
あぁ、やってやるさ。
その声に対する俺の反応はすごいもんだったぜ。
一足飛びでロッカーにあったモップを引っつかむと、すぐさまハルヒと合流。
「わ、わわキョンくん!」
朝比奈さんにも驚いて頂けたようだし、何より。
 
「涼宮さん!やめて下さい」
「揺れ動く船内でその行為は推奨しない」
 
立ち塞がる二人は完全にびびってやがる。いくぜハルヒ。
 
二人まとめて血祭りにあげたあと、巨大イカ焼きでも食うか。
 
「ハ…ルヒ
二人まっ…めて…ぇっちまつり…イカ焼き…」
 
「ふふっ…くくく…」
「何がおかしいのよ古泉君…こいつには厳罰が必要だわ…
みくるちゃん!カメラ!」
 
「は、はぃ」カシャカシャ…
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「ふふっ…くくく…」
ふん、繕うように余裕の笑いか。無駄だぜ。
「何がおかしいのよ古泉君…こいつには厳罰が必要だわ…
みくるちゃん!…メラ!」
「は、はぃ」カシャカシャ…
ざまぁみやがれ。ハルヒと朝比奈さんは俺が守ってやる。
安心してあの世へ行きな。
 
…ん?カシャカシャ?カシャカシャってなんだ?メラはもっと炎っぽい音じゃないのか?
 
あれ…ハルヒは…朝比奈さんはどうしたんだ?
 
俺が朝比奈さんの放ったメラの効果音に違和感を感じた途端、世界が暗転した。
 
 
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「ノンレム睡眠に入った」
「乗り継ぎの島に着いたようですよ」
「キョンくんかわいかったですね、えへっ」
「…」
 
「特に最後のセリフはいつか彼が起きている時にも聞きたいものです」
 
「古泉君、みくるちゃん、有希。荷物をまとめなさい!
あたしはバカキョンを起こすから」
「はぁい」
「わかりました」
「…」
 
『ハルヒ…さ…は俺…守って…やる』
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夢の中では何かファンタジーなことをしていたような気がするのだが、
記憶に定着させる前に俺は叩き起こされ、ハルヒからの命令電波を受信した。
 
「何寝てんのよバカ。さっさと起きなさいよ。
あんたは真面目に合宿するつもりあんの?
行きの船の中でそんなことじゃこれからどうするつもり?」
 
 
おしまい

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