私は長門有希。対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの長門有希。…二回言ったのに理由はない。
私の仕事は涼宮ハルヒの観察。しかしそれに支障をきたす問題が発生した。
 
 
帰宅中朝倉涼子を目撃。
 
 
朝倉涼子が再びここに送られてきた情報は確認できない。
情報統合思念体に詳細を確認。やはり送られてきてはいない。
おそらく姿を現したのは一瞬。それについても理解不能。わざわざ私に存在を確認させる意味が無い。
情報統合思念体はこのことを危険と判断。朝倉涼子の再度情報連結の解除を最優先事項とする。
情報の痕跡より追跡を開始。
 
 
 
 
現在午後11時53分18秒。私達にとって時間の概念はさして重要ではない。
しかし涼宮ハルヒの観察をここまで長く中断することは今後の活動に支障をきたす。
彼と涼宮ハルヒのやりとりについて観察できないのは私という個体のエラー発生の原因ともなる。
……とはいえ見たとしてもエラーが発生し無いとは限らない。
 
「それはね。エラーじゃなくて感情っていうんだって。」
 
突然の声に私は驚いた。顔を上げると私の目の前彼女が笑顔浮かべ立っている。
周りの情報変換……。察知できなかった。これは完全に私の油断によるもの。
 
「私には感情なんてもの理解できないわ。それにしてもうかつなのね。この時を待ってたんだけど。まさかこんな簡単に引っ掛かるなんて思わなかったわ。」
「…どういうこと」
 
してやったりという顔で彼女…朝倉涼子はまた笑った。
 
「長門さんならすぐわかると思ったんだけど。エラーの量が多すぎるんじゃない?早くなんとかしないと処分されちゃうわよ?」
「…………」
「まあここで私があなたを消すから関係ないんだけどね。」
 
あまりにもおゃべりな彼女の雰囲気は余裕そのもの。そして彼女は話を続ける。
 
「本当はね。彼を消しちゃえば簡単なんだけど、今彼は涼宮さんと一緒にいるの。それにあなたにも感付かれるのはわかってた。」
「………」
「だからね。あなたを先に消してそれから彼、ついでに朝比奈みくると古泉一樹も消しちゃおうって思ったの。」
 
彼女が余裕である意味がようやくわかった。この空間において私の能力は極限まで制限されている。
 
「わざわざあなたに姿を見せたのもそのため、この空間よくできてるでしょ?」
 
そう言いながら彼女はいつかのナイフを取り出してきた。
 
「そんな物で私は消せない」
「そうね。でもいいこと思いついちゃった。あなたを再起不能なまでにズタボロにして彼の前に曝してあげる。」
「なんのために」
「彼の驚く顔を観察したいのよ。タイミングはそうね。彼が死ぬ直前くらいがいいしら。」
 
インターフェースとして非効率な方法。一体彼女は何を考えている?
 
「長門さんが助けに来るのを信じていた彼の前にあなたを出せばどうなると思う?完全に希望を無くしちゃうわよね。」
 
朝倉涼子が殺人鬼という概念に興味があるとは思えない。彼女の行動には何か引っ掛かるものがある。
 
「それじゃあそろそろおゃべりは止めて目的を達せ「WAWAWA忘れもの~」
 
おかしな歌とともにチェック全開の男が表れた。
 
「「「……………」」」
 
この光景を言語化する場合的確な表現は『空気が死んだ』だと思われる。この流れで始めに話しだしたのは珍入者。
 
「うお。なんだこの状況は?」
「それはこっちのセリフなんだけどなぁ。」
「……ははーん。わかったぞ。これは夢だな。そうだ。でなけりゃカナダに転校した朝倉がいるわけなねぇ。」
 
そう考えるのが人間として至極当然ではある。しかし問題はコレがどうやってこの空間内に侵入したかということ。
 
「そうだよ。じゃなきゃ俺様的美的ランクAA+の朝倉涼子とAマイナーの長門有希が一緒にいるわきゃない。」
 
……この男の固有名詞はこれより馬鹿。先程から蓄積する私のエラーにさらに拍車を掛ける存在。
 
「まあ長門さんより私の方が美人っていうのは覆せない事実よねぇ。」
「………」
 
私を馬鹿にするように笑う朝倉涼子。何がしたいのか理解できない。
エラーが……………………………………
 
「…パーソ……ネーム……朝……子……谷口………を敵性…判…」
「あれ?な、長門さん?どうしちゃったの?」
 
エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー
 
「当………の有………連結を…除……」
「ちょっと!?なにこの展開?長門さん?冷静に……。」
「んっ?なんかあったのか?」
 
エラーエラーエ(ry
 
「情……結の解……開…」
「おかしいでしょ!?あなたの能力は制限されているはずよ?」
「げっ俺の足消えてる!?なんでぇ?」
 
………?…約1分21秒機能停止。その期間の記憶媒体の欠落を確認。
 
「完敗だわ長門さん。………本当ね。私の目的はあなたのエラー除去だったのよ。それが癪だったから意地悪してみたんだけど…ふふ。まるで人間みたい。本当私って馬鹿よね。」
「…情報統合思念体からそのようなことは聞いていない。」
「本人に教えたらエラー除去にならないでしょ?このまま計画を実行するのもよか「まてまて俺の腕戻ってこいぃ!?って朝く…あが…」
 
うるさい馬鹿を彼女が一蹴。つまり彼女は何をしたかった?
 
「ふぅ、まだ足が残っててよかったわ。私の筋書きではこの空間の穴を長門さんが見つけて私が負けるだったのよ。」
「……それは……」
「いいのよ。実際この馬鹿が来なかったら私のやりたい様にしてたかもしれないし。時間はたっぷりあげたしね。」
 
彼女から感じた違和感。無理にしゃべり続けていた理由。私への猶予期間。
 
「それにしてもエラーを全部エネルギーにしてぶつけてくるなんて思わなかったわ。あなたもまるで人間よ?」
「そう……?」
「自分では気付いてないのね。まあいいわ。長門さん、もう私が猿芝居するような舞台を作らないでよね。もう時間みたい。」
 
彼女の体はもう胸辺りまで消えている。本当にもう時間が無い。こういう時何を言えばいい?
 
「………善処する。…さようなら。」
「ええ。次は私の思うとおりになるといいなぁ。」
「それはさせない」
「あら残念。じゃあ私が出ないように頑張ってよね。……じゃあね。」
 
彼女は最後にそう言い光の粒子となり消えた。それとともに彼女の空間も消失。そこは私の部屋。
……彼女には迷惑をかけてしまった。そういえば…あの馬鹿は?
いない……。完全に消してしまった?そう考えている時私の携帯が鳴った。
 
「………」
 
いつも通り素早く出る。画面を確認したところ電話の主は古泉一樹。
 
『長門さんですか?』
「そう」
『こんな時間に突然電話してすいません。少し相談したい事があるのですが、今よろしいですか?』
「……………いい」
 
そう言われ時間を確認したところ時刻は0時を回っている。それから少しおいて古泉一樹は話し出した。
 
 
『…………というわけで谷口くんが消えてしまったわけです。』
「…………」
 
まとめるとこちらも馬鹿が消えてしまったらしい。しかし人間は一度消えたら死ぬ。二度消えることはまず無い。だから
 
「問題ない」
 
と言っておく。おそらく本当に問題は無い。
 
『問題ない。とはどういうことでしょうか?長門さんには何か妙案でも?』
「違う」
『なんと……違うんですか。ならどういうことなんでしょうか?』
 
理由……はない。がかならずあの馬鹿は生きている。これは感というものだと推測する。
 
「………うまく言語化できない…しかし大丈夫」
『それは確証があってのことでしょうか?』
 
そう。
感ではあるが古泉一樹を安心させておいた方がいい。確証は今検索中……。
 
『ならいいでしょう。長門さんが確証を持っておっしゃっているのならば……。』
「……」
 
その後早急に電話を切り馬鹿の情報を検索。原因は不明だがあの馬鹿は無作為転移を4回ほど繰り返し、今は自分の自宅で睡眠中。
さらに検索。馬鹿が転移した先を一ヶ所を覗き特定。不明ヶ所は検索不可能。
これについても原因は不明。ただなんとなく……わかる。これも感。
 
「………感」
 
……原因究明は学校で。
 
 
 
放課後まで動く必要がある問題は発生していない。私が動く必要があるのはこれから。
古泉一樹が部室に入ってきた。やはり時間が無いのは彼も承知している。
 
「長門さん。昨日の件……っと言いましても午前零時を回っていましたから今日の件と言うのが正しいでしょう。に関してご説明して戴きたいのですが……」
「おそらく原因は涼宮ハルヒ」
「っといいますと?」
「昨日の午後11時24分5秒から今日の午前0時42分38秒。馬……彼の肉体は無作為転移し続けた」
 
「無作為転移ですか?つまり瞬間的に他の場所に移動したっということですね。それも何度も。」
 
…危うく馬鹿と言ってしまうところ。古泉一樹はそれに気付かず何か考えるように俯く。
いつものように色々な憶測を考えているのだろうか?しかしそれを私が待つ意味は無い。
 
「無作為といっても涼宮ハルヒの認知している場所のみ」
「それで無作為は何度ほど行なわれたんですか?」
「確認したかぎりでは3回。内わかっているのは…」
 
彼に告げだ場所は閉鎖空間、谷口くんの自宅。私の元へきたのを古泉一樹に教えれば彼にも伝わる。
そうすればかならず彼は私の身を案じる。それは危険。だからそのことは伏せて話を続ける。
 
 
「おそらく昨日の仲直りの仕方が原因」
「彼と涼宮さんのですか?」
「そう」
 
困ったものですねぇ。と古泉一樹は言う。たしかに困ったもの。観察できなかったのは残念。
喜緑江美里が代行したらしいが、彼女はなぜか教えてくれない。………いじめ
 
「聞いてみればわかる……それについて私は観察していない」
「そうですか。」
 
古泉一樹はそのまま黙り込んでしまった。彼の到着を待っているだと推測する。私もそれに習い待機モードに移行する。
 
続く
 


 

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最終更新:2008年03月10日 00:07