放課後の掃除中、なぜか背後に殺気を感じた俺は左に身をかわした。
するとバランスを崩したらしき何者かが倒れる気配がした。
気配の方を確認するとそこにはホウキをもって床に倒れこんでいるあいつがいた。
「よけるんじゃないわよ! このバカキョン!」
どこの世界に後ろから襲撃されてよけない奴がいるんだ? いたら教えて欲しいね。
トコトン理不尽大王だ、いや女だから女王か? 古泉なら女神っていうだろうな。

まぁそれより…今日は白か……意外に普通だな
「このエロキョン! どこ見てんのよ!」 
……いやどこも……ふむコットン100%………さらに基本だな。

いいから早く立て、どうしたどこか怪我したか?
「うるさいわね、痛っ!」
捻挫のようだな。保健室いくか?
「ちょっと痛いわね、アンタのせいなだから……つ、つれていきなさいよ」
俺のせいとは理不尽だが歩けないんじゃ仕方ないな。俺は倒れこんでいるハルヒを両腕で抱え上げた。
「ちょ、ちょっとなにすんのよ!」
何って保健室いくんだろ、足が痛いんじゃ歩けないだろうからこうするしかないだろが。
すまない、みんな。保健室いくからあとは頼む。
「…引き受けたのね」
「ごっごゆっくりー」


「み、みんな見てるじゃない、おろしなさい…よ」
お前が大声で騒いで暴れてるからだろ、おとなしくしてろ。
ハルヒは俺の腕の中でなおも暴れようとする、連打される胸板が痛い。
おい保健室はすぐそこだからおとなしくしてろ。
「は、恥かしいから、早くおろしなさいよ!」
だったら、スカートおさえとけ、でないと今日はお前がクマさんはいてるって学校中に知れ渡っても知らないぞ。
「!……、やっぱり……見たんじゃない…」
スカートを押さえおとなしくなったハルヒを保健室に押し込み、男子禁制との妄言を聞き流し外で終わるのをまった。


「二人の荷物持ってきたのね」
「っておい、持ってきたのは俺だろうが」
あぁすまない、阪中に谷口。あいつは今みてもらってるところだ。
「掃除は済ませておいたのね」
悪い、この埋め合わせは必ず。
「いいもの見せてもらったから気にしなくて良いのね、涼宮さんがうらやましいのね」
「阪中、俺様でよければいつでもいいぞ」
「お断りなのね」
何がうらやましいんだろうな……。あーとにかく二人ともありがとうな。


おっとあれは古泉達だな、SOS団総集合って感じか?
「涼宮さんの怪我の具合はいかがでしょうか」
「キョン君、私心配しちゃいました」
「……」
あぁみんな、ハルヒは捻挫っぽいな。しかし随分早耳だな。
「うわさの広がるのは早いですからね、こういった話題は思春期真っ盛りの我々高校生なら特にですよ」
そりゃ、高校生にもなってホウキなんか振り回したり大声で暴れてれば目立つだろうが、皆暇なんだな。
「……そうではなくですね……」
んっ? どうした古泉。
「キョン君がカッコ良かったって評判ですよ」
いや偶然ですよ朝比奈さん、運が良かったからアイツの攻撃をよけれただけです、別に武芸の達人とかじゃないすよ」
傍若無人な神様や可愛らしい未来人、万年スマイルの超能力者、無口だが頼れる宇宙人などと違いあくまでも俺は一般人中の一般人だからな。わがいとしの朝比奈さんには誤解のないように説明しないと。
「……、そっちじゃなくてお姫様のほうですよ」
お姫様ってなんです? おっ、どうだったハルヒ。
「軽い捻挫みたい、これから病院へ行くから今日の団活は中止にしましょ」
あぁそうした方がいいだろうな、いいですよね、朝比奈さん。
「え、えぇ…」


「みんな! これからどうするの?」
「僕はバイト先に用事があるのでこのまま帰ります」
「私は駅前までお茶の買出しに」
「図書館に…、部室の戸締りはすませてきた」
「なら、このまま一緒にかえるわよ。ほらキョンいくわよ」
おいハルヒ、俺の予定を聞かないのはなぜだ! まぁ確かに決まった予定がある訳じゃないが出来れば朝比奈さんのお供と洒落込みたいね。
「何いってるのよ、キョンはあたしと一緒に病院でしょ、ちゃんと…さ、最後まで責任とりなさいよ。そういう中途半端だからアンタはいつまで経ってもバカキョンなのよ」
仕方ない、理不尽な女神様につき合わされるのは俺の宿命らしい。前世の因縁か? 俺は一体どんな酷いことしたんだろうな、誰か教えてくれ。
それで足は大丈夫なのか? 歩けないんならまた俺がお前を運んでやるぞ。
「だ、大丈夫よ。歩けるから、キョンはあたしの荷物をもってちょうだい。さぁみんないくわよ!」


おいハルヒ、靴を履き替えたんならさっさといこうぜ、なに座ってんだ? それとも足が痛いのか?
「キョン、あたしを病院まで歩かせる気? さっさとアンタの自転車とって来なさいよ」
さっき歩けるって言わなかったか?
「それは短い距離だけよ。ここでみくるちゃん達と待ってるから早くしなさい」
……しょうがないな、さすがにあの長い坂をアイツを抱えておりるのは疲れるしな、自転車をとってくるか。
「僕もお供しましょう」
すまんな古泉。

しかし、また自転車で坂を上らないといかんとは億劫だな。古泉、いつものタクシーかなにかでハルヒを送るのは駄目なのか?
「今日はタクシーはちょっと……」
都合がつかないのか、新川さん達も忙しいんだな。
「いえ都合はつきますよ、ただ重傷ならともかく軽い捻挫でそれは不自然でしょう、毎回都合よく無料送迎ではちょっと……」
あぁ確かにそれもそうだな。
「せっかく上機嫌でいらっしゃるところをわざわざタクシーにして涼宮さんのご機嫌を損ねてはいけませんしね」
あれ、あいつ車嫌いだっけ? というかあれで上機嫌なのか?
「えぇ、これまでにないほど素晴らしく……、やはり状況の変化というか好転でしょうか? 進展への足がかりが見えて来たのがよろしいかと」
好転ねぇ……まぁ確かに怪我したけど捻挫は軽そうだしな。
「……あなたの自転車は我々の方ですぐそこまで運ばせて頂ましたのでこの坂を往復していただく必要はないですよ、たしかそこの電柱の影にある筈です」
サンキュー、古泉。出来れば毎日頼みたいね。


「聞いてよみくるちゃん。全部このバカキョンのせいなのよ」
ふざけるな、いきなりホウキを振りかざしてきたのはどこのどいつだ。俺が押す自転車の後ろに乗るハルヒは上機嫌で俺の悪事とやらを話している。人様の悪口を喚き立てて喜んでるとは随分悪趣味なやつだ。しかし、まぁ確かに素晴らしく上機嫌ではあるな。
「不真面目に掃除してたキョンへの罰よ、いわば正義の制裁ね」
いい加減にしろ俺にはお仕置きとかそういう特殊な趣味はない。
「でも良かったですね、涼宮さん」
あぁ朝比奈さん、捻挫は軽そうですからね、不幸中の幸いでしょう。
「キョン君、そうじゃなくて……あの時の涼宮さんの様子がとても幸せ「み、みんな今日はここで解散するわ、あたし達は……こっちだから、また明日ね、ほらキョンそこを曲がりなさい」
 
「なにやってんのよ、押してないでさっさと自転車にのって漕ぎなさい、歩きのみくるちゃん達に合わせる必要はもうないのよ」
あぁ、無駄だと思うが一応断っておく、二人乗りは道交法違反ってのは知ってるよな。
「それがどうしたのよ、大体ちんたら押してたら病院がしまっちゃうじゃない」
全くワガママな女神さまだぜ、そうだ病院で思いだしたが保健証はいいのか? なんなら家に電話して車で持ってきてもらったらどうだ、ついでに病院まで一緒にいけばいいじゃないか。
「な、なに言ってるのよ、そんなの駄目よ、……と、とにかくあとで保健証を持ってけば返金してくれるから問題ないわよ、それに……な、なんでもないわ、とにかく先に病院よ、あたしんちはその後よ」
そうなのか……って病院だけじゃなくてお前の家までつきあわなきゃいけないのか?
「勿論そうに決まってるじゃない、最後まで責任とりなさいよ、ちゃんと…あ、あたしを……家まで送りとどけなさい!」
しゃーない、自転車を漕ぐとするか。ほらハルヒ、しっかり俺につかまれよ。
「えっ……」
おい危ないから、もっとしっかりつかまれ。
「う、うん……、あ、汗くさいわね……」
あー、いやなら降りろ。
んっ? どうした、顔くっつけ過ぎだろ、汗臭いんじゃなかったのか。
「あ、安全のためよ、背に腹は変えられないっていうでしょ」

ついたぞハルヒ、ここでいいんだな。じゃぁ俺はそこら辺で時間潰してるから終わったら携帯に
「ま、待ちなさいキョン、荷物持ちとして使ってあげるから……い、一緒にきなさい。それに外にいてキョンが風邪引いたりしたら……、だ、団員の健康管理も団長の責任よ」
あぁ、わかった、気を使ってくれてありがとなハルヒ。


制服姿で病院の待合室にいる高校生男女二人、これが産婦人科なら顰蹙モノだが整形外科だから大丈夫だろう……、多分。
念のためレントゲンをということで今は写真待ちだ。
「あたし、ちょっと家に電話してくる、呼ばれたら教えにきて頂戴」
しかし今日のハルヒは様子がおかしいな、ねんだかやけに顔が赤いし、視線もあらぬ方向を見ている、なんだか焦点あってない感じだ。風邪でも引いたんだろうか……。おっとハルヒが呼ばれてるぞ、どれ呼びにいくか。


 ……だ、だからあいつとは…そんなんじゃ……。と、とにかくこのあと一緒にいくから…その…部屋の写真を…


おいハルヒ呼ばれてるぞ。
「!? キョ、キョン……びっくりするじゃない」
そうかすまんな。
「……ねぇ今の聞いてた…」
ん、今のってなんだ?
「な、なんでもないわよ!」


おまえんちはここでいいのか?
「えぇ。……せ、せっかくだから……上がって来なさいよ、御茶くらい出してあげるから。ノドかわいたでしょ」
あー、悪いちょっとトイレ貸してくれないか。


「それでどうなりました?」
別にどうもないよ、ハルヒの部屋で御茶を呑んで早々に退散したよ。
えっ…涼宮さんのご自宅で彼女の部屋で二人きりだったんですよね?
あぁ…なんか丁度俺達が着いたらはみんな出かける所で遅くならないと戻ってこないっていってたな。
「それで直ぐに帰ってしまわれたんですか?」
だって御茶呑みながら俺が話しかけてもアイツは下向いてウンともスンとも何にも言わないんだぜ。
良くわからんが機嫌が悪かったみたいだぞ、これじゃぁすぐに帰るのが正解ってもんだろ?
「……それ本気でおっしゃってるんですか? 馬に蹴られても知りませんよ、もっとも…あなたの場合は他人のではないからセーフですかね」


- 終わり


*おまけ


「こ、この前は阪中さん達にまかせてを途中ぬけちゃったから、今日はあたし達だけで掃除させてもらうわ」
「わかったのね。今度こそ頑張るのね、涼宮さん」
「ごゆっくりー」

「おい、まだ掃除するのか? というかさっきからなんで俺達は並んで床を磨いてるんだ二人手分けして別々に動いた方が効率よくないか?」
「そ、それは……キョンがサボってないか監視するためよ! ほら、しっかり磨きなさい」
なぁ一体何度同じところを磨けばいいんだ。
「ちゃ、ちゃんときれいになるまでよ、阪中さん達に代わって引き受けたんだからしっかり綺麗にしないと駄目なのよ」

「やっと終わったな…というか今何時だ?」
「キョ、キョン。すっかり暗くなっちゃたわね…、あ、あたしを家まで送ってきなさい。団長命令よ!」


*おまけのおまけ


「…そういえばこないだハルヒのお母さんが俺の事見てさ、お前の部屋に飾ってる写真よりずっとカッコいいとかいってたろ」
「……そ、そうだったかしら……覚えてないわ」
「どうせみんなと一緒の写真で俺のとなりがイケメンの古泉だったんだろ。でなきゃそんなこといわないよな」
「そう、たしかそうよ、……そんな写真だったわ」
「ふーん、じゃぁ今日行ったら見せてくれよその写真、こないだお前の部屋にいったけど写真なんて飾ってなかったよな」
「!」


|